ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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二十六話

 容赦なく鞭が飛ぶ。
 『軸がぶれているぞサーシャ、このサバーカめがっ!』
 団長の激が飛ぶ。酒焼けした濁声で年端もいかない少年を罵倒する。
 天幕の内側は凍えるように寒い。
 少年が身に着けているのは粗末な衣服だ。
 氷点下に近い気温の中、防寒の用を足さないボロを纏った少年は腕が攣るまで際限なくナイフの投擲を繰り返す。
 傍らには酒焼けした顔の団長が尊大に腕を組み、少年がサボらないかミスしないか見張っている。底意地の悪い目つきをした中年男で、恰幅の良い体躯を毛皮のコートに包み、鞣革の鞭を持っている。
 吐く息が白く昇天する。
 皮膚に霜柱が立ちそうなほど寒い。
 ナイフを取る指がかじかみ感覚が失せる。
 息を吸い込むたび氷針が肺を刺す。
 それでも少年は弱音一つ吐かず愚痴一つ零さず、遥か前方の的だけを揺るぎ無く見据える。
 襟足が見えるまで刈り込んだ銀髪が清涼に流れる。
 栄養状態が悪く痩せて骨ばったうなじが痛々しい。
 年の頃は十歳位だが、同年代の少年と比べて手足が長く筋肉が発達し均整が取れている。
 体の線をくっきり浮き立たせるタイトな衣装に身を包み、天を仰いで深呼吸する。空気を取り込んだ胸郭が膨らみ、肺に酸素が満ちる。
 緩く閉ざした瞼は銀の睫毛に縁取られている。
 極上の絹糸を一本一本植毛しような睫毛は、それ自体が至高の飾りとなり切れ長の眦を際立たせる。
 瞑想から目覚め、ゆっくりと瞼を上げる。
 銀色の睫毛が震え、うっすらと瞼が開く。
 瞼の奥から現れたのは神秘的なアイスブルーの瞳、孤高を貫く氷雪の青。
 『いいかサーシャ、的の中心にあてるんだ。ど真ん中を狙うんだ。俺を失望させたら承知しねえぞ、この愚図めが。何のために今日まで無駄飯食いのガキを養ってやったと思ってる?お情けじゃねえ、道楽じゃねえ、愚図でどうしようもねえお前を立派に鍛え上げてたんまりおひねり巻き上げるためだよ。今度失敗したら足腰立たなくなるまで鞭でしごいてやっから覚悟しやがれ』
 品良く整った目鼻立ちが高貴さを感じさせる少年は、団長の叱責にも怯える事なく新たなナイフを手に取り、真剣な面持ちでためつすがめつする。
 刃を照明に翳して反射させる。
 白銀の閃光が目を射る。
 鋭利で滑らかな刃に指を這わせ、固い芯を秘めた金属板の感触を確かめる。眉間に翳した刃を手際よく翻し表裏を照明に舐めさせる。
 恍惚と目を細める少年の手の中で、ナイフが光り輝く。
 『ぼうっとするんじゃねえ!』
 団長が鞭で足元を叩いてどやしつける。
 まるで家畜に対する扱いだ。
 事実この冷酷無比な男は、早くに母を亡くし父には捨てられた幸薄い少年に対し家畜に等しい境遇を強いてきた。気に入らないことがあれば激しく折檻して鉄の檻に閉じ込めた。飯を抜くなど日常茶飯事だった。少年は幼い頃より生傷の耐えない生活を送ってきた。 
 続けざまに鞭が唸り、地面を穿つ。
 鞭で打ち砕かれた土塊が宙に舞う中、癇性を爆発させた団長が口汚く悪態を吐く。
 『いいかサーシャ、お前に教えてやる。お前はな、「捨てられた」んだ』
 嗜虐の悦びに目を濡れ光らせて、分厚い唇を涎に照り光らせて、団長が邪悪に微笑む。
 折檻の恐怖を煽るように鞭をしごき背後に接近、しゃっくりを上げる。

 『てめえのお袋は空中ブランコ乗りのスタア、アナスタシア。親父はさるロシアンマフィアの大物幹部。ある日サーカスに寄った折にアナスタシアを見初めてお持ち帰りと相成った。だけども一度手に入れたらあっけないもんで、腹ボテのアナスタシアがサーカスに出戻ってきた頃にゃ空中ブランコ乗りのスタアは代替わりしていた。だあれもアナスタシアの事なんざ覚えてなかった。
 ああ、可哀想なアナスタシア不憫なアナスタシア!ロシアンマフィアの幹部なんぞに見初められたばっかりに不幸街道一直線、お前を産んでっからすっかり体が弱くなって挙句にガキ遺してぽっくり逝っちまった。おお可哀想なアナスタシア不憫なアナスタシア、空中ブランコ乗りのスタアとして輝かしい将来が約束されていたのにお前とお前の親父のせいで全部台無しだ!』

 芝居がかった身振りで悲嘆に暮れる団長を一顧だにせず、ナイフを手に集中力を高める。
 的は十メートル離れている。
 少年の手は既に血まみれで十メートル先の的には数十本ものナイフが刺さっている。
 矢立ての様相を呈した的にはしかし、中心に空きがある。
 ナイフはどれも的の中心を逸れて刺さっている。
 少年の手はもう傷だらけだ。何時間も休みなくナイフを投げ続けたせいでひどく体力を消耗している。二本足で立っているだけで奇跡に近い体調なのだ。額には汗が浮かんでいる。唇は青ざめている。
 それでも少年は前方の的を見詰め続ける。
 的の中心を貫くまでは決して引き下がらないと目標を己に課して、投擲のポーズをとる。
 団長の呪詛は連綿と続く。
 集中力を乱して失敗を招こうというのか、熱狂的に腕を上げ下げして慨嘆する。
 『お前の親父ときたら全くどうしようもねえ人間の屑だ!そうは思わねーかサーシャ。お前だって心ん底じゃあ自分とお袋を捨てた親父を恨んでるんだろう、憎んでるんだろう?お前は親父に見捨てられたも同然だ、その証拠にお前の親父ときたら忘れ形見の息子をサーカスに預けっぱなしで一度も訪ねてきやしねえ。ああそうか、正妻がいるんだもんな。跡継ぎもちゃんといるんだもんな。昔捨てた愛人が産んだガキなんざとっくに忘却の彼方だよなあ!』
 団長が嘆かわしげにかぶりを振り、見苦しく頬肉を弾ませ盛大ににたつく。
 少年は一直線に的と対峙する。
 襟足で刈り込んだ銀髪がざわめく。
 刃の根元を指に挟み上げ下げし、慎重に目測を割り出す。
 音が消える。色が消える。
 的と自分、二つの点のみが世界に存在する。点と点が不可視の糸で繋がる。線になる。空気の流れを皮膚に感じる。
 自分が起点で的が終点、その間を繋ぐナイフの放物線を幻視する。
 高貴に整った顔の中、怜悧に薄い唇が吊り上がる。
 『黙れ、愚民』
 『なん、だと?』 
 吠え声が止む。天幕の内側に静寂が立ち込める。
 腹に力を矯め、鋭く呼気を吐く。アイスブルーの双眸が燃え上がる。全身に闘気が漲る。心地よい緊張感が充溢して筋肉が躍動する。
 世界から音と色が消える。
 五感が異常に研ぎ澄まされ刺激が飽和し無に近くなる。
 時が停滞する。時間の流れが鈍くなる。水の中にいるように一挙手一投足を緩慢に感じる。
 ナイフを投擲する。鞭のように腕が撓る。 
 刃の表面が照明を反射、長大な放物線を描いて的に至る。
 軽やかな音をたて、的の中心にナイフが突き立つ。
 『…………』
 団長が絶句する。
 少年は大股に的に近付き、無造作にナイフを抜き取る。
 片手に握ったナイフを惚れ惚れと見詰め、薄っすらと微笑む。
 この上なく幸せそうな、しかし見るものを不安にさせずにおかない狂気を孕んだ微笑。
 『僕の末はロシア皇帝だ。じきにお前のような卑しき民草とは口を利くこともなくなる。やがて皇帝の馬車が迎えに来て僕をロマノフの宮殿に連れて行く。お前に鞭打たれ檻に入れられ飯を抜かれる日々も大きくなるまでの辛抱だ』
 この上なく愉快そうに笑い声を立て、少年がダンスを踊る。
 優美なステップを踏み回転する。人を惹き付ける華麗な身ごなしは稀代のブランコ乗りと喝采を浴びた母から受け継いだものだ。
 少年は踊る。
 吐く息も凍る天幕の内側、誰もいない客席を見上げ、現実には聞こえない喝采を一身に浴びて。
 ナイフをきらびやかに閃かせ。
 『僕の母さんは皇女アナスタシアだ、皇女の産んだ子が皇帝になるのは当然だ。そうなったらお前なんかギロチンにかけて処刑してやる、これまで僕が味わった屈辱を倍返しにしてギロチンにかけてやる。ざまをみろ愚民めが、愚民どもめが!お前ら全員僕のナイフで血祭りに上げてやる、僕が不遇の年月に耐えてロシア皇帝に即位した暁にはこんなくそったれたサーカス一声で潰してやる!!』
 甲高い哄笑が爆ぜる。
 背骨がへし折れんばかりに仰け反り哄笑する少年のもとへ憤然と団長が歩み寄り、おもむろに鞭を振り上げる。
 鋭利な唸りを上げて鞭が肉を打擲する。
 『!?っあう、』
 背中を打たれた衝撃によろめき、力なく膝を屈する少年に続けざまに鞭が振り下ろされる。
 『誰が愚民だ、このクソガキが!お前がロシア皇帝たあ笑わせるぜ、お前はただの捨て子のクソガキだ、ナイフ投げっきゃ取り得のねえサーカスの荷物のクソガキだよ!わかったかサーシャ、わかったなら返事しろ、申し訳ありません団長もう逆らいませんごめんなさいて泣いて謝れ!』
 少年が腕を掲げて顔を庇う。
 服が破れて肌が裂けて血が飛び散る。
 頭を抱え込んで突っ伏す少年に怒りに任せて鞭を振るう。少年の手から零れ落ちたナイフが澄んだ音を立て地面に転がる。ナイフを追って顔を上げる、その頬を鞭が掠めて肉が爆ぜる。
 地に腹這いになりナイフを拾おうとぎりぎりまで腕を伸ばす、その背中に息を荒げて圧し掛かる。
 既にボロ屑同然となった服を破り取り、裸に剥く。
 布切れの下から暴かれたのは鞭打たれた傷跡が刻まれた白い背中だ。
 『ナイフ投げの他にお前に何ができるってんだよ、サーシャ』
 醜く肥えた指が傷だらけの背中をまさぐる。脇腹をまさぐられる不快さに少年の肌が粟立ち、喉から悲鳴が漏れる。必死に身をよじり己を組み敷く男の支配から脱しようと足掻く少年、その無駄な抵抗を嘲笑しつつ後ろ髪を鷲掴む。
 鈍い音が耳底にこびりつく。
 少年の後ろ髪を掴んだまま、固い地面に顔を打ち付ける。
 『こうして俺様の慰み者になる以外お前にどんな使い道があるってんだ、ええっ?お前がロシア皇帝たあ笑わせるぜ、そんなら俺はロシア皇帝をたぶらかす怪僧ラスプーチンだ、お前のケツの穴に精液ぶちまけて背徳の愉しみを教え込む淫蕩な坊さんだよ!』
 背中に跨った男が哄笑する、少年の頭を何度も何度も地面に強打して勝利の哄笑をあげる。男が漸く飽きて少年の後ろ髪を引っ張る。何度も何度も地面に減り込んだ額は割れて鼻梁を血が伝っている。
 額と鼻の穴から血を垂れ流した少年がぐったり地に横たわる。
 芋虫めいた指が少年のズボンを剥ぎ取り、幼い尻を晒す。
 団長が生唾を嚥下する。
 『股を開け、腰を振れ。ふっくら可愛いケツを俺のナイフで貫いてやる。団長の命令は絶対だ、天幕の内側で俺に逆らう身の程知らずぁぶち殺されたって文句言えねーんだ。サーシャ、サーカスを出て行くあてあるのか?ないだろうそんなもん、路頭に迷ってのたれ死ぬのがオチだぜ』
 血と泥に汚れた顔が屈辱に歪む。
 アイスブルーの目が怒りに漣立つ。
 憎しみに燃える目で振り返った少年を鼻で笑い飛ばし、はちきれんばかりにいきり立った股間を少年の内腿に擦らせ、唾液を捏ねる音も卑猥に耳朶をしゃぶる。
 『С ума сошёл 』
 灼熱の杭が打ち込まれる激痛に理性が蒸発、悲痛な絶叫が天幕を突き抜けた。

 悪夢の沼から意識が浮上する。
 「……………ここは、どこだ……」
 こめかみを疼痛が刺し貫く。
 覚醒と同時に酷い頭痛に襲われてサーシャは顔を顰める。
 身動きせず頭痛がおさまるのを待ち、再び目を開ける。
 配管剥き出しの天井、殺風景な灰色の壁とコンクリート打ち放しの床……
 見慣れた房の光景にどこか違和感を覚える。
 体を起こして違和感の原因を突き止めようとして、自分の意志で体が動かせないのに愕然とする。
 「何だ、これは。どうしたことだ」
 サーシャはパイプベッドに寝かされていた。
 ペンキの剥げたパイプベッドに仰向けになり、四肢は鎖で二重に拘束されてベッドの脚に繋がれていた。緊縛。寝ている間に自分の身に起きた異常を悟り、顔から音たてて血の気が引く。
 「お目覚めですか、サーシャくん。随分うなされていたようですが、どんな夢を見てたんですか」
 穏やかな声に目を向ける。
 ベッドの端に男が座っている。
 几帳面な七三分けの下、野暮ったい黒縁眼鏡の奥には慈愛に満ちた垂れ目がある。サーシャは敵愾心もあらわに男を睨み付ける。 
 「………貴様、南の隠者か。何故私がこんな無様なナリで拘束されているのか、納得いく説明を乞いたいものだ」 
 「お忘れですか?渡り廊下でレイジ君に戦いを挑んだ事を。君はヨンイルくんに蹴り飛ばされて失神したんです」 
 朦朧と記憶が蘇る。
 そうだ、私は渡り廊下でレイジに殺し合いを挑んだ。
 今度こそ決着を付けようとペア戦の雪辱を晴らそうと、南の隠者立ち会いのもとで出自卑しき東の王に聖戦を挑んだのだ。
 瞼の裏に浮上するレイジの顔、狂気を孕んだ眼光と不敵な笑み。
 胸の内に憎悪が煮え滾る。
 「そうだ、私は殺し合いを挑んだ。今度こそペア戦の雪辱を晴らし北のトップに返り咲く為に殺し合いを挑んだ。ところがだ、私とレイジの聖なる殺し合いは西の道化の乱入より妨げられた!道化の靴裏を舐める屈辱を味わいあっけなく失神したのだ私は、全てあの道化のせいだ、不快な道化さえいなければナイフは今頃レイジの血を吸って…!!」
 全身の血管に怒りが循環する。
 サーシャは我を忘れ起き上がろうとした、今すぐ起き上がり房を出ようとした。
 しかし出来ない。
 四肢には鎖が巻かれている。
 サーシャは半狂乱で身を捩る、肩の長さに切り揃えた銀髪を振り乱し焦燥を滲ませ渾身の力で鎖を引きちぎりにかかる。
 「放せ、放せホセ!気高き皇帝に対し無礼な振る舞いにも程がある、私を誰だと心得る、恐れ多くも正統ロマノフの末裔たる偉大なるロシア皇帝サーシャだ!黒き肌持つ卑しき民の分際で皇帝に鎖を掛けるとは言語道断、ギロチンで処刑を命じる!否ギロチンで処刑などと生ぬるい、私とレイジの邂逅をはばむ不届き者はナイフで生皮剥いでくれるぞ!!」
 レイジに会いたい。
 会いたくて会いたくて気が狂いそうだ。
 あの目を抉りたい、肌を切り刻みたい、レイジの全てを私の物にしたい。片目だけでは足りない、レイジの全部が欲しいと魂が渇望する。薄汚れた褐色肌も硝子めいた瞳も魔性の微笑みも全部私の物だ他の誰にも渡さん渡してなるものか、レイジの血の一滴たりとも私の許しなく流させるものか!!
 サーシャは咆哮する。
 皮膚が破れる程に鎖を軋らせ狂おしく身を捩る、故郷の言葉であるロシア語でホセを罵倒する。自分をベッドに縛りつけるホセに団長の面影が重なる。幼き頃より自分を虐げ続けた団長の面影を打ち砕かんと激しくかぶりを振るサーシャ、その喉が濁った音を立てる。
 「ごぼっ……」
 喉から血が迸る。
 上着の胸元が朱に染まる。
 激しく噎せ返るサーシャの上にホセが圧し掛かる。 
 「無理は禁物ですよ、サーシャ君。渡り廊下で血を吐いたのを覚えてますか」
 前髪に指を絡め、吐息のかかる距離で囁く。
 「クスリのやり過ぎです。君はそろそろ覚せい剤を断つべきだ。放っておけば内臓に障害がでる」
 「お、前の指図は受けん……汚らわしい手で触れるな……」
 「そう言うと思って強硬手段をとらせていただきました。手足を縛り付けてしまえば注射が打てないでしょう」
 生温かい吐息が睫毛を湿らす。ホセが前髪をかき上げる。
 黒縁眼鏡の奥の目は深沈と凪いで本音を語らない。
 続けて何か言おうとして、サーシャは豁然と目を見開く。
 「………っ、あああああああああぐうぁあああああぅぐ!!?」
 「おや、禁断症状が来ましたね」
 呑気に嘯くホセをよそにサーシャは見苦しく苦悶する。
 毛細血管の浮いた眼球が眼窩から迫り出す、顎間接が外れる限界まで開けた口から声にならぬ絶叫が迸り空気を震わす、背骨がへし折れそうに体が仰け反り手足が不規則に跳ねる。
 鎖で縛られていなければベッドから転げ落ち頭を割っていた。

 「く、クスリはどこ、だ。私のクスリはどこだ私のクスリあれがなければ私は理性を保てない私は私でいられない私が崩壊する、あああああああっ、クスリ、クスリが欲しい欲しい誰か私の静脈にクスリを打ってくれ快楽を注ぎ込んでくれええええええええええぇえええええええぇえええええっ!!!」

 憎い憎いレイジが憎い殺す殺したいあの情熱の肌を裂き血を啜り臓物に頬ずり至福恍惚甘い臓物ナイフが皮膚の下を通る素敵なナイフ私の僕の    
 「ナイフはどこだ?私の大事なナイフはどこだ私の半身に等しいナイフはどこだあれがなければ」

 氷のように冷たいナイフ銀に光るナイフ血潮に濡れて団長の怒声振り上げる鞭振り下ろされて肉が爆ぜて血飛沫

 醜悪な顔
 裸の背中に圧し掛かり尻を犯す男
 弛んだ腹が背中に密着
 尻肉と腰がぶつかる乾いた音が連続する

 『景気良くケツ振れや雌犬が、薄汚いサバーカめが!はははははっもっと高く鳴け高く高く、声変わり前の声でひぁんひぁん喘げよクソガキめが!!母親に死なれて父親に捨てられた哀れな捨て子のサーカスの足手まとい、お前の居場所なんざどこにもねえ宮殿にもサーカスにも!!』 

 内臓に灼熱の杭を打ち込まれる激痛 裂けた肛門からゆるり垂れた血が内腿を伝う生温かい感触 
 違う、あの男はもういない、いないのだ。悪夢の中にしかいないのだと自分に言い聞かせ平静を保とうとするも現実と妄想が混沌とまざり合い男の手が肌を這い肉を貪り 熱い肉塊が肛門の中で鼓動に合わせて脈打ち 前が滴をたらし……

 「レイジいいいいいいいいいいいイいいいいいいいいいいいいいいいいっっ!!!」

 鎖と接する皮膚が破けて血が滴る。
 サーシャは絶叫する、声帯擦り切れて喉から血を吐いてもなおレイジを求めるのをやめず絶叫する。
 その様をホセはにこやかに見守る。
 銀髪をぐちゃぐちゃに乱し目を極限まで見開き半開きの口から涎を垂らし股間は勃起し、地獄の苦しみに悶えるサーシャを冷徹に観察する。
 「クスリがぬけたらレイジくんに会わせてあげます」
 サーシャの胸板に手を置き、官能的になでる。
 「君にはやって貰いたいことがある。裏社会で悪名馳せたナイフ使いたる君を手駒にできれば心強い、また一歩野望の実現に近付く」
 ホセの笑みが深まるのに反比例し薬物中毒の醜態は極まる。
 失神寸前、口から泡を噴いて不規則に痙攣しながらも目だけ動かしてホセを見据え、たどたどしく言葉を紡ぐ。
 「わ、たしに、なにをしろ、と」
 眼鏡の奥の目を悪戯っぽく細め、唇の前に人さし指を立てる。
 「我輩の『カルメン』になってほしいのです」 

少年プリズン(未完) | コメント(-) | 20050509192822 | 編集
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