ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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十八話

 『ちぎれても知りませんよ』
 低く脅しつけられ、答える代わりにホセに縋り付く。鉄板でも仕込んだみたいな胸板、呼吸に合わせて収縮する腹筋のうねり、俺を抱きすくめる腕の力強さ、その全てに身を委ねる。
 相手は誰でもよかった。
 俺を滅茶苦茶にしてくれるなら誰でも。
 『!………あっ、』
 『随分レイジくんに仕込まれたみたいですね。先端の感度がいい』
 耳の裏側に唇がふれる。唇で食まれて口に含まれた耳朶がじんわり熱をもつ。ホセの指が背筋を這い上れば快感の微電流が駆け抜ける。背骨に沿って緩やかに滑る指がもたらす快感は快楽に飼い慣らされた体にはもどかしく、もっと強い刺激が欲しいとホセを仰ぐ。
 『悪い子だ』
 ホセが酷薄に笑う。黒い肌に映える白い歯。ベッドに腰掛けたホセが俺の体を軽々持ち上げて膝に座らせる。赤ん坊みたいに膝に座らせた俺の体を上下に揺すりながら、耳元で囁く。
 『本当に後悔しませんね』
 『……しねーよ』
 後悔なんかするもんか。
 そう自分に言い聞かせて吹っ切ろうとするも固く閉じた瞼の裏側にレイジの顔がちらついて決心が揺らぐ。これでいいんだ、これで。こうするのが一番なんだ。俺がホセと寝たと知ればレイジは幻滅する、俺なんか守る価値も意味もないと思い知る。これからは自分を一番大事にしてくれる。
 尻の下にゴツい膨らみを感じる。ズボン越しでもはっきりとわかる、体積を増したペニス。でかい。レイジよりさらにでかい。性器というより凶器に近い鉄串が俺の尻を押し上げる。
 こんな物入れられたらケツの穴が裂けちまう。
 レイジのペニスだって受け容れるの大変だった、何回も深呼吸して体の力を抜いて大臀筋を緩めなきゃ収めきれなかったってのにこんな物無理矢理入れられたら死んじまう、肛門どころか直腸が裂けちまう。
 怖い。体の奥底に蓋して押し込めた恐怖が一挙に溢れ出す。
 こんな物ケツに入るわきゃねえ、ケツってのはクソひねりだすところであってペニス入れる場所じゃねえ、もともと用途が違う場所にこんな固くて太くて長い物突っ込むなんて無茶だ。ホセの膝から飛び下り逃げ出したい衝動を押し殺し、そろそろと腰を浮かせる。尻の下に固い物があたる。下着ごとズボンを引き下げ下半身を露出する。下肢を開いた恥ずかしいポーズのままぺニスの根元に手を添え挿入角度を調整、ゆっくりと腰を沈めていく…
 『怯えることはありません。君は何も間違っていない。レイジくんを守るためにあえて裏切り者の汚名を被るとは素晴らしい』
 うるせえ。
 『ワイフ一筋の我輩としては良心の呵責を感じないでもありませんが可愛い弟子たっての頼みとあれば仕方ない。ロンくんの言い分はご最も、体で責任はとらねば隠者の名が廃ります。さあ、もっと足を開いて、そう……上手いですね。物欲しげな顔だ』
 ホセの誘導に従い、ペニスの根元に手をあてがったまま慎重に慎重に腰を沈めていく。俺の手の中でずくんとペニスが脈打ちひと回り大きくなる。固く目を閉じる。瞼の裏側の暗闇にレイジの顔が浮かぶ。俺の身代わりで輪姦されたレイジ、髪にも顔にも全身至る所にザーメンぶっかけられてそれでも笑っていた。レイジにあんな顔させたくない。俺がそばにいるとレイジは傷付く。 
 レイジが俺のこと嫌いになりゃいい。
 『あっ、ひあふっ………』
 尻の柔肉を割り開き肛門が暴かれる。ペニスの先端が肛門に触れる。熱い。きつい。激痛と息苦しさを我慢してペニスを受け容れる姿勢をとれば、背後に腰掛けたホセが物騒に呟く。
 『君を犯して殺せば思惑通りに動いてくれるでしょうか、東の王は』
 ?どういう意味だ。
 真意を問いただす暇もなく、下肢を激痛が襲った。 
 
 夕暮れの展望台に風が吹く。 
 ホセに付き添われて展望台に赴いた俺は、西空を染め抜く残照の眩さに手庇を作り、目を細める。
 この世の終焉みたいな壮絶な夕焼け。空は不吉な血の色に染まっている。溶鉱炉の空に溶け込むように展望台の真ん中に突っ立っているのは、均整取れた長身の人影。こちらに背中を向け、リラックスしたポーズでポケットに両手を突っ込んでる。ただ突っ立ってるだけだってのにしなやかで隙がない身ごなしが空気に緊張を強いる。
 一目見た瞬間に誰だかわかった。
 アイツを見間違えるわけがない。
 たった一週間やそこら離れてたくらいで忘れるわきゃない。上着の胸を掴んで棒立ちになった俺の視線の先、そいつが緩慢に振り返る。涼しい風に前髪を遊ばせて振り向いたのは……
 夕映えに顔の半面を染めたレイジ。
 「お帰り、ロン」
 奇妙に優しい声音で、その実温かみなんか欠片もない口調で俺を出迎える。怒ってる。当たり前だ。一週間何の音沙汰もなく房を留守した薄情者が今さらひょっこり戻ってきたからって歓迎されるわきゃない。
 深呼吸で覚悟を決め、慎重に一歩を踏み出す。
 靴音がやけに大きく響く。砂利を蹴散らして歩み寄り、僅か3メートルを残した正面で立ち止まる。心臓の音がうるさくてまともにレイジの顔が見れない。たった一週間離れてただけでこのザマだ。レイジに何も告げず房を出た後ろめたさや再会の照れや気持ちを上手く言葉にできないもどかしさがごっちゃになって胸が苦しくなる。
 気まずく俯く俺を一瞥、レイジが大袈裟にため息を吐く。
 「……心配かけやがって。一週間どこ行ってたんだよ?」
 「………わかってるくせに、聞くなよ」
 「ああ、わかってるよ。サムライの房にいたんだろ。王様の耳はロバの耳、東棟の噂は何でも入ってくる。俺もサムライなら安心してお前預けられると思って放っといたんだ。サムライなら俺のロンに手ぇ出す心配ねーし、アイツ鍵屋崎がいなくて寂しがってるから話し相手ができりゃ気分も紛れるかなって大目に見てやったんだ」
 レイジがおどけて肩を竦める。
 「ところが王様の心下僕知らず、お前はいつまでたっても帰ってきやがらねーし昨日はとうとう食堂にも現れなかった。いい加減迎えに行こうかどうしようか悩んでた所に南から使いが来た。たまげたぜ、マジ。お前とホセが一緒にいるなんて。何がどうしてそうなったのか俺にもわかるように説明して欲しくて展望台に呼び出したんだけどさ」
 レイジが鋭い目つきでホセを一瞥、唇をねじ曲げる。
 「南に迷い込んだ猫を保護してくれたことにゃ感謝するけど、どうせならもっと早く知らせて欲しかったよ」
 「別に保護したわけではありません。ロンくんの方から『泊めてくれ』と頼ってきたのです」
 黒縁眼鏡のブリッジに気障ったらしく触れてホセが訂正する。
 レイジが虚を衝かれる。
 俺に向き直った顔には不審の色が浮かんでる。
 「……ホセの言う通りだ」
 レイジの視線を避けて唇を噛む。
 『Fuck』
 露骨な舌打ち、苛立たしげに地面を蹴りつける。乱暴に髪をかき回すさまに焦燥が滲む。自分の思い通りにならない事に癇癪を起こし、ガキっぽく地面を蹴って喉反らし天を仰ぐ。
 「あーもうわけわかんねー、意味不明絶不調!なんだよそりゃ、なんでお前がホセんとこにいるんだよ。そりゃ俺と顔合わせたくない気持ちもわかるし頭が冷えるまでサムライに匿ってもらうのもお前が決めたことなら諦めつくよ。けどさ、まるで俺のこと避けるみてーに南に逃げてホセの懐に潜りこむのはちょっとばかしずるくね?王様の面目丸つぶれだっつの。
 なあロン、この一週間俺がどんだけ心配したかそこんとこちゃんとわかってんのかよ。本音言えば今すぐお前連れ戻したくてうずうずしてて、食堂でサムライと一緒にメシ食ってるお前見かける度に抱きついて髪わしゃわしゃしたくて、お持ち帰りの欲求と戦うのにすっげエネルギー使ったんだぜ?けどそんな事したらうざったがれるだけだし、お前はますますヘソ曲げて家出期間長引くし、いつかは絶対帰ってくるはずだって信じて待ってたのに……」
 激しくかぶりを振って嘆くレイジを醒めきった目で眺めるホセ、二人に挟まれて居心地悪くなる。
 不意に訪れた重苦しい沈黙。
 眉間を顰めた不機嫌ヅラから叱られた子供のように拗ねた表情へと変化、レイジがぽつり呟く。
 「………一週間前のこと、怒ってんのか?」
 ふてくされた態度に反し、目は暗く翳っていた。
 俺は言葉をなくす。レイジの言葉が何を意味してるかすぐにわかった。一週間前の記憶は鮮明に残っている……忘れようったって忘れられないおぞましい記憶。看守に裸に剥かれた夜の事を思い出し、無意識に二の腕を抱く。
 にわかに青ざめた俺へと手を伸ばし、虚空で引っ込める。
 レイジが、俺にさわるのをためらった。
 「仕方ねーか、怖がられても。ひどいことしたもんな」
 違う、と心の中で叫ぶ。
 俺が怖がってるのはお前じゃない、お前に犯されたからびびって逃げ出したんじゃない。俺が怖いのはお前を傷付けること、足手まといの俺を守り通してぼろぼろになってお前が死んでいくことだ。
 一週間前の夜、確信した。
 俺がこのまま一緒いたらレイジは駄目になる、どこまでも自分を粗末にする。俺はレイジを傷つけることに鈍感になってた自分を激しく憎悪して、いつしかレイジに守られる事を当たり前と受け止めていた自分を激しく呪って衝動的に房をとびだした。
 レイジは淡々と続ける。
 「正直こうなるんじゃねーかなって予想してた。お前は東京プリズンじゃ珍しくマトモなヤツだから、看守の前で俺に犯されるなんて我慢できねーだろうなって……そうなったら俺に愛想尽かして出てくかもなって半分諦めてた。だけどやっぱ嫌だったんだよ、他の男にヤられるのは。王様のわがままだ。他の誰にもお前を渡したくなかった。それならいっそ俺がヤられるほうがマシだった。俺は別によかったんだ、全然構わなかった。獣姦も輪姦も初体験じゃねーし、犬や犬にも劣る看守どもにお前がヤられるとこ見せ付けられるくらいならいっそ俺がこの手で押し倒したほうがマシだって」
 「黙れ」
 別によかった?構わなかった?
 レイジが虚を衝かれたように振り向く。
 胸を上下させ息を吸い込み、きっぱり言い放つ。
 「お前うざいんだよ」
 レイジの顔から表情が消失、隻眼が虚無に呑まれる。
 俺はレイジを真っ直ぐ見据えたまま、隣に突っ立ったホセへと寄りかかり、腕を絡める。
 「聞こえなかったか?お前うざいんだよ、レイジ。俺を守る為に自分から喜んで看守にヤられてやったとか恩着せがましく言われて感謝すると思ったか。迷惑なんだよ、ひとりよがりの思い込み。重いんだよ、そーゆーの。正直お前にはうんざりだ、お前と一緒にいると息が詰まるんだよ、お前は俺のことしか見えてなくて俺を守るためなら自分がどうなろうがお構いなしでそんな風にべったり尽くされるほうはたまったもんじゃねーよ!!」
 愕然と立ち竦むレイジの眼前、ホセの顔を両手で挟む。
 「お前よかホセのが百万倍マシだ」
 眼鏡のレンズに顔を映し、媚びるように笑う。
 お袋そっくりの笑顔に吐き気がする。我慢だ。喉元に込み上げる吐き気を堪え、生理的嫌悪に耐え、爪先立って首を伸ばす。固く固く目を閉じ喉を仰け反らせる。唇に柔らかい感触。気持ち悪いのを堪えて舌を這わし唇の隙間から口腔に潜りこませる。唇をこじ開けて潜らせた舌で頬の内側の粘膜をつつき、歯を舐める。
 「ん、ぐ…………っ」
 もういいだろ、放せ。もどかしく身悶える。
 だがホセは放さない。俺の体を抱きしめて口腔を貪り続ける。舌と舌が絡まり、口の端から溢れた唾液がしとどに顎を濡らす。やりすぎだ。口腔で舌が暴れるせいで呼吸ができず頭が真っ白になる。
 「んんっ、うぐぅ……んっ、んっ」
 横顔に視線を感じる。目だけ動かしてそちらを見る。
 レイジがいた。微動だにせず硬直していた。全身がカッとなる。何もここまでするこたない、ただキスするだけで十分だった、ホセといちゃつくさまを見せ付けるだけで十分だった。ディープキスの世界記録に挑戦したいなんて打ち合わせた覚えはない。
 予定外の展開にうろたえる俺の口腔から唾液の糸引き舌が抜かれ、ホセが誇らしげに宣言する。
 「ご覧に入れたとおりです。ロンくんは自ら望んで我輩のもとにやってきた、我輩に体を開いて庇護を求めた。早い話君は用済み、君はロンくんに捨てられたのです。その様子ではまだわかりでない?よろしい、ならば説明しましょう。君が今日ここに呼び出されたのは別れ話を切り出すため、今日この日よりロンくんは身も心も我輩の物となりました。異存はないですね」
 「大ありだよ」
 物柔らかな声音に返されたのは物騒な異議申し立て。
 口腔が蕩けてふやけた俺の腰にホセが腕を回す。腕の支えがなけりゃたちまち腰砕けに座り込んでじまいそうだった。
 薄っすら頬を染め、涙で湿った目を虚空に泳がす。
 レイジは笑っていた。邪悪に邪悪に笑っていた。前髪のかかる隻眼に憤怒が表出、全身から好戦的なオーラが漂い出る。
 「冗談は七三分けだけにしろ。王様の許しなくロンの唇奪ったら万死に値するぞ」
 凄みを含んだ声で宣告。憤怒に燃える目でホセを睨み付け、申し分なく長い足を優雅に繰り出す。
 レイジがゆっくりと着実にこちらにやってくる。
 暴君の怒りに感応し、夕映えに染まった空気が不穏にさざなみだつ。
 レイジ……呪われた名が示す通り不吉な気配を漂わせてやってくる暴君と対峙、ホセが不敵に微笑む。
 「たかだか唇を奪った程度で万死に値するならば、それ以上の禁忌を犯せばどうなるか」
 独白に似せた挑発。
 俺を後ろから抱きしめ、上着の裾を捲る。
 「!ホセやりすぎだ、こんなの聞いてねっ……」
 手足をばたつかせる俺を押さえ込み、上着の裾を捲り上げて裸を晒す。展望台に射した夕日が裸身に朱線を引く。妙に扇情的な光景。ホセにまさぐられて蠢く腰がやましさを引き立てる。恥ずかしいのに、嫌なのに、レイジに見られてるだけでどうしようもなく体が疼いて膝が砕けそうになる。
 「『たかだか』だと?」
 「ふあっ……」
 首の後ろに唇が落ちる。体の前に回った手が乳首をつねる。
 唇を噛んで堪えても巧みな愛撫に熱を煽られ快感を汲み上げられ、しまいには声が出る。赤裸な衣擦れの音、興奮した息遣い、唾液を捏ねる音……外気に晒された上半身がしっとり汗ばんでいく。
 夕日に照らされ赤く染まる裸身をよじり、必死に訴える。
 「レイジ見るな、こっち見んな……」
 「顔をお上げなさい。駄々をこねる子には痛くしますよ」
 ホセが俺の顎を掴み、強引に顔を上げさせる。
 レイジが来る。
 ひどく緩慢な足運びでこっちにやってくる。
 靴裏が砂利を擦る耳障りな音、風の音……レイジの表情は逆光に塗り潰されてよく見えない、暗闇に沈んだ顔がどんな表情を浮かべてるか想像したくもない。これは、俺が決めた事だ。後悔はない。
 そのはずなのになんでどうして胸が痛む、ホセの腕を振りほどいてレイジに縋り付こうとする?わかってる、こうするのが一番いいって頭じゃわかってる。俺は馬鹿だから他の手が思いつかなかった。
 だからわざとホセといちゃついてるところを見せてショックを与えて、レイジが俺を憎むよう仕向けた。
 レイジが俺のこと嫌いになりゃいい。
 俺を憎めばいい。
 「……………っ、」
 ぎこちなくホセの股間に腰を擦り付ける。
 「もっと、激しくしてくれ。最後までヤってくれ。中途半端はツライんだ。滅茶苦茶にしてくれよ、ホセ」
 俺は今ちゃんと笑えてるだろうか。ちゃんと嘘をつけてるだろうか。誘うように浅ましく腰を上下させ、ホセの股間を刺激する。腰の動きを止めずに前を向けばレイジがいた。
 レイジから目を放さず、卑屈に笑う。
 「正直言ってレイジ、お前の体に飽きたんだ。ホセのがデカいしタフだし俺のこと楽しませてくれる。ホセのペニスはお前とは比べ物にならねーくらい太くて硬くて長いんだ。俺はお袋譲りの淫売だからそりゃアソコがデカいほうがイイに決まってる。ホセとは体の相性も抜群、お前が割り込む隙なんかこれっぽっちもねーよ」
 おっかなびっくり、笑っちまうくらい不器用な手つきでホセの股間をまさぐる。なでる。揉む。
 徐徐に大胆さを増し、ホセの内腿に手を滑らして性感を煽る。
 俺は半笑いのまま地面に膝を付き、ホセのズボンを掴み、下着と一緒に下げおろす。従順な奉仕。ホセは指一本動かさず俺を見下している。 生理的嫌悪に顔が強張る。
 ごくりと生唾を嚥下、震える手で一気にズボンを下げおろせば天衝くように屹立した赤黒い肉塊が目に入る。下着を取り去った股間に聳える巨大なペニス……目にするのはこれが初めてじゃないが、何度見ても本能的な恐怖を覚える。戦慄。俺とは比べ物にならない、レイジと比べてもまだでかい、醜悪な……子供の腕位の大きさがある、それ。
 「ほら、な。見てみろよレイジ、ホセご自慢のムスコを。羨ましいだろ?お前と比べてもまだでっけえ。こんだけ大きけりゃどんな女だって満足する、どんな女だってホセを選ぶ。俺だってそうだ。俺は男だけどケツに淫売の穴が付いてるんだ、淫売の穴がコイツを欲しがってるんだ、俺をいちばん気持ちよくさせてくれるヤツ選んで何が悪いよ!?」
 喉の奥で吐き気が膨らむ。
 ホセのペニスから眼をそらしたい、顔を背けたい衝動を必死に押さえ込む。ペニスの根元に手を添え、顔を近づけ、口を開く。とても入りきらない。顎が外れんばかりに大口開ける。フェラチオ。さすがにここまですりゃ諦めてくれるだろう。
 俺はホセをしゃぶる、フェラをレイジに見せ付ける。
 そうすりゃ俺が本気だってわかるはず、レイジの物だって咥えたことない俺が無我夢中でホセにむしゃぶりついてるさまを目の当たりにすりゃいくら強情な王様だって……
  
 『Nothing doing』

 一陣の暴風が吹き荒れる。
 四肢を撓めた豹の如く跳躍、俺の頭上を軽々跳び越して上段から蹴りを放つ。
 風圧で上着の裾が膨らみ、鞭の痕に舐められた肢体が覗く。
 風切る唸りを上げて弧を描いた足がホセの側頭部に炸裂、鈍い音が響く。下半身素っ裸のホセが蹴りの衝撃に吹っ飛び5メートル向こうの地面に激突、展望台が揺れる。
 ホセの頭に蹴りをくれたレイジが鮮やかに着地を決める。
 「俺のロンにディープキスしただけじゃ飽き足らず背後から抱きすくめてあちこちまさぐってフェラさせるなんざ調子乗りすぎだぜ、たかだか南のトップの分際で。お前今日から『愚者』に改名しろ。王様に反逆するヤツあ直接相手してやる。俺はどっかの皇帝と違って心優しい王様だからちょっとやそっとのことじゃ怒らねえ、俺のこと陰で所長の性奴隷だ飼い犬二号だなんだとぬかしてるマザーファッカーどもも笑って見逃してやる。けどな」
 風に吹き流された前髪の奥、隻眼が異様に輝く。
 爛々と光る隻眼で地面に倒れたホセを射止め、無造作に足を踏み出す。俺はその場に腰を抜かし、ぱくぱくと口を開け閉めしていた。レイジがキレた。激怒した。
 ホセが殺される。止めなきゃ。
 金縛りにあった俺の眼前、レイジがこの上なく楽しげに笑みを広げる。
 「ロンに手え出したら百万回億万回殺されても文句言えないだろ」
 折りから吹いた風が髪を舞い上げ、狂気渦巻く隻眼を暴き出す。
 「東の王が宣告を下す。今この時よりここは処刑台、王の怒りに触れた愚者を罪人と定める」
 容赦なく砂利を踏み砕き蹴散らし迷いない足取りで展望台を突き進む。ホセがこめかみに手を添えてゆっくり起き上がる。
 ホセのこめかみはぱっくり裂けて大量の血が流れ出てた。ホセの顔半分を朱に染めて地面に滴り落ちる血が傷の深さを物語るも、暴君は動じない。 
 西空に夕日が沈む。
 熱のない業火に炙られ、展望台に煉獄が出現する。
 「跪けひれ伏せ頭を垂れよ。王の怒りを思い知れ。全力で地上から取り除く」
 「やはりこうなりますか」
 ホセが深いため息を吐き、こめかみを押さえて立ち上がる。
 下着と一緒にズボンを引き上げ、顔半分を血の朱に染めた壮絶な姿で暴君を迎え撃つ。こめかみに怪我をしてもホセは余裕だった。口元には不敵な笑みが浮かんでいた。
 なんで笑ってるんだ?殺されるが怖くないのかよ。
 イカれてる。レイジもホセもイカれてる。この場でまともなのは俺だけだ。止めなきゃ。 
 「レイジやめろ、やめてくれ!違うこれは違うんだ、ホセはただ俺の頼みを聞いて協力してくれただけ、芝居に付き合ってくれただけなんだ!悪いのはホセじゃなくて俺だ、卑怯な手使ってお前と別れようとした俺なんだ、怒る相手間違えてんじゃねーよ!!」
 レイジの背中に食い下がり訴えるも完全に無視される。怒りのあまり正気を失ったレイジに俺の言葉は届かない。
 地面にへたりこんだ俺が成す術なく見守る前で着実に距離が縮まり、夕闇迫る展望台でホセとレイジが対峙する。
 ひどく穏やかにレイジが言う。
 「ホセ。お前、ロンを抱いたのか」
 ひどく穏やかにホセが返す。
 「ようこそ穴兄弟」
 肉眼では捉えきれない速度でレイジが動く。
 レイジがかき消えたと思ったのは目の錯覚、地に這いつくばった姿勢から低空の蹴りを放つ。まともに食らえば足の骨がへし折れてたかもしれない蹴りを半歩退いて難なく避けるホセ、間合いから脱する暇を与えず次なる攻撃に移る。足腰のバネを利かせて跳ね起き、瞬時にホセの懐に潜り込んで鳩尾に一発くれる。
 「筋肉は鎧。肉体そのものが防具にして武器」
 ホセが腹筋を矯める。
 鍛えに鍛え抜いた鋼鉄の腹筋に拳を弾かれ、レイジが狼狽する。
 「――っ!」
 「東の王ともあろう者が飼い猫にフラれたくらいで短気を起こすものではありません。悲観することはない、東京プリズンに君臨する東の王ともなれば一人に固執せずとも愛人はよりどりみどりでハーレムを満喫できる。去るもの追わず来るもの拒まず、それこそ王者の賢さです。ロンくんのことは忘れなさい。一年半の間愛情注いだ猫を手放せない気持ちはわかりますが所詮野良は薄情なもの、次から次へと男を渡り歩くのが習性……」
 「るっせえ!」
 空気がびりびり震える。
 腹筋への攻撃が無力化されたと知るや、筋肉で防御されてない人体の急所めがけて必殺の拳と蹴りを放つ。膝裏、股間、顎、頭……まともに当たれば一発で沈む威力を秘めた蹴りと拳をホセは全て回避する。
 無敵無敗のブラックワーク覇者と名高い王様でも、一対一の肉弾戦では分が悪い。何せ相手はホセ、地下ボクシングの元チャンプとして何十人もの挑戦者を撲殺した伝説の持ち主で肉弾戦のプロだ。オールマイティに戦闘力が優れたレイジじゃ肉弾戦に特化したホセにかなわない。
 「諦めなさい東の王よ。君は捨てられたのです」
 口元だけで微笑み、おもむろに腕を振り上げる。
 ガツッ。鈍い音。指の骨と頬がぶつかる音。レイジの頬に凄まじい威力の拳が炸裂、勢い良く体が仰け反る。ホセに殴り飛ばされたレイジがそのまま5メートルもんどり打って転がる。
 尖った砂利で服を裂かれてあちこち素肌を覗かせたレイジのもとへホセが接近、打撲と擦り傷でぼろぼろになった王様を見下す。
 「その目で見たはず、その耳で聞いたはず。先ほどロンくんは何て言いました?君の愛情が重荷だとはっきり言った、君に付き纏われるのがうざくてたまらないと憎憎しげに吐き捨てた。いい加減真実と向き合いなさい、受け容れなさい。ロンくんを束縛から解放なさい。君はなるほど東京プリズンを支配する東の王だ、しかし独占欲をもって人の心を支配するのは不可能だった。結果として君の愛情は報われず、東京プリズンに君臨する孤独な王は誰をも愛さず誰からも愛されない……」
 違う、違う。俺はレイジを愛してる、大好きだ、今だってレイジに駆け寄りたいのを必死に抑えてるんだ。
 だけど今俺が駆け寄ったら何もかも振り出しだ、レイジはまた俺を庇って守ってボロボロになって無茶しすぎで死んじまう。
 だから耐えろ、耐えるんだ。こうするのがいちばんいいんだ、これが正しいんだ。
 ホセがレイジの前髪を掴んで乱暴に顔を上げさせる。レイジは無抵抗に従う。ホセに殴られた衝撃で唇が切れて血が滲んでいた。もんどり打って転がった際に砂利であちこり引っかかれて四肢に無数の擦り傷が生じていた。情けない。格好悪い。格好悪い王様。
 もういいよ、やめろよ。
 俺のことなんか諦めろ。お前がそこまでする価値ないよ、俺に。
 「降参なさい」
 前髪を掴む手を緩め、隠者が哀れみ深く促す。
 レイジは首を項垂れたまま、無心に唇を動かして何か呟いている。
 かすかな呟きに耳を澄ます。
 『主よ。私はあなたを憎むものたちを憎まないでしょうか』
 折から風が吹く。レイジが自分の耳朶に手をやる。
 『私はあなたに立ち向かう者を忌み嫌わないでしょうか』
 レイジが顔を上げ、耳朶に這わした指でピアスの留め金を外す。やばい。俺は直感した。理屈じゃなくやばいと感じた。ホセはまだ気付いてない。今度こそ俺は駆け出した、縺れる足を叱咤して一散にレイジに駆け寄った。
 「レイジ、やめろ、殺すな!!!」
 「―『否』」
 暗唱の続きか、独白か。
 どちらとも付かぬ言葉を吐き、レイジが行動にでる。レイジの指の狭間、残照を集めたピアスが眩く輝く。ピアスの反射光に目が眩んだ一瞬で肉薄、俺が割り込むより早くホセにとびかかって押し倒し、鋭く尖ったピアスの切っ先で喉を掻き切るー……

 レイジは笑っていた。
 その瞬間も笑っていた。
 『私は憎しみの限りを尽くして彼らを憎みます。彼らは私の敵となりました』

 「やめろっ!!!!!」
 俺が背中にぶつかり手元が狂い、ホセの首に薄く血が滲むも致命傷には至らない。間一髪、俺が背中に激突した衝撃でホセの上から転げ落ちたレイジの胸ぐらを掴む。カチン、と澄んだ音が響く。レイジの指の隙間からピアスが零れ、地面で跳ねる。俺の手は震えていた。俺が止めなきゃレイジはマジでホセを殺していた、ホセの喉笛切り裂いて全身に返り血を浴びていた。俺の、せいだ。俺がくだらない芝居したから、卑怯な手を使って別れようとしたからこんなことになった。
 直接気持ちをぶつけず、逃げてたから。
 全力でホセを殺しにかかったレイジを目の当たりにして自分の愚かさを思い知った。

 俺がいたら駄目になる。
 俺がいなけりゃもっと駄目になる。
 どのみちこいつは破滅する。

 「違う、そうじゃない、違う、違うんだよっ………」
 最初は激しく、次第に力なくレイジを揺さぶる。隻眼に困惑めいた色が浮かぶ。
 「ホセに抱かれたなんて、うそだ。確かに抱いてくれって頼んだ、頼んだよ。けど入らなかったんだ、無理だったんだ。俺はホセに抱かれてなんかない。今でもお前以外の男に抱かれたくない、そう思ってる。けどこうでもしなきゃお前はこの先ずっと俺を守り続ける、自分なんかどうなっても構わねえって俺を守り続けていつか無茶しすぎて死んじまう。だからレイジ、俺のこと嫌いになれ。頼むからお願いだから俺のこと嫌いになってくれ。嫌なんだよもう、耐えられないんだよ、自分を粗末にするお前が哀しくて悔しくてどうすりゃいいかわかんねーんだよ………」
 「…………じゃあ、浮気は嘘?」
 間抜けな声でレイジが確認。
 「嘘に決まってるだろ馬鹿」
 レイジの胸にコツンと額を預ける。
 よかった、ちゃんと心臓が動いてる。鼓動を感じる。
 俺の頭に手を置き、深く深くため息を吐くレイジ。
 「………あ―――、よかった。そっか、嘘か。嘘か!脅かすなよ、フェラまでするから本気にしちまったじゃんか」
 お気楽な笑い声。暴君が王様に戻った。
 安心したように肩の力を抜き、俺に凭れかかるレイジの腕の中で呟く。
 「……よくねえよ。何も解決してねえよ。レイジ、お前いつか所長に殺される。変態所長の暇つぶしで嬲り殺される。お前の弱味は俺だ。俺を人質にとられたらお前は逆らえない。俺が殺されるか自分が殺されるかどっちか選べって言われたらお前は迷わず自分が殺されるほう選ぶ、だけど俺は嫌だ、お前が殺されるなんて冗談じゃねえ、これからもずっとずっとお前と一緒に生き延びたいのに肝心のお前が東京プリズンから消えちまったらどうすりゃいいんだよ!!レイジ聞けよ笑うなよ、自分を粗末にすんのやめろよ、お前が好きなんだよ、好きで好きでどうしようもねえくらい好きなんだよ、だから……っ」
 深呼吸で心をしずめ、挑むようにレイジを見据える。
 「死ぬな。死ぬな。俺を守り通して庇って死ぬな、そんなかっこいい死に方ぜってえ許さねえ。いいか、最後まで足掻け。足掻いて足掻いて足掻きまくれ。往生際悪く。最高に格好悪く。格好良く死ぬよか格好悪く生き延びたほうがずっとマシだ。心中はお断りだ。片方生き残るのは最悪だ。俺はお前と一緒に生き延びる道しか行きたくねえ」
 西空に夕日が沈む。残照が展望台を燃やす。
 夕焼けに溶け込むように輪郭をぼかしたレイジにしがみつき、誓う。
 「俺、強くなる。早くお前に追いつけるよう頑張る。だから簡単に諦めるな、簡単に命を捨てるな。『生きたい』って言ってくれ。『生きたい』って足掻いてくれ。多分お前は俺に出会った頃から、いや、多分それより前から生きることを諦めてて、だからどんな酷い場所でもしぶとく生き延びてこれたんだと思う。でもさ、俺と出会えたんだから変わってくれよ。変わろうとしてくれよ。もうちょっと自分を大事にしてくれよ」
 レイジのぬくもりに抱かれて目を閉じる。 
 「もうちょっと自分を好きになってもバチはあたらねーぜ」

 やっぱりレイジと一緒にいたい、こいつのそばを離れたくない。
 レイジは俺が守る。
 誰にもこいつを渡さない。

 「お熱いですね。ワイフと引き離された単身赴任者の嫉妬を煽るつもりですか」
 声がした方を仰ぐ。喉をさすりながら起き上がったホセが、あきれた表情でこっちを眺めている。
 ホセの指摘に恥ずかしさが込み上げてそっぽを向いた俺をよそに、レイジが中指を突きたてる。
 「ロンの唇奪った上にあちこちまさぐった借りは高くつくぜ。延長戦やるか?」
 「遠慮しておきます。少々油断したとはいえ王の実力衰えずと痛感したので……それよりも」
 レンズに付着した砂利を払い、眼鏡をかける。
 分厚い眼鏡の奥で柔和に目を細め、そこはかとなく謎めく笑顔を浮かべる。
 「我輩折り入ってレイジ君にご相談があるのですか、よろしいでしょうか」
 「フェラチオの続きなら却下。上の口も下の口も俺の物だ」
 「そんな下世話な事ではありません。本日君をここに呼び出したのも別れ話が本題ではない。それは表向きの用件、我輩の目的は別にある。まあロン君の反応が面白くてついうっかり調子に乗りすぎたのは認めるし反省もしますが、我輩の思惑通りに事が進んだのは結構結構。ロン君絡みで揉め事を起こさねば王の本気を引き出せず実力をかいま見る機会もなくレイジ君を手駒……もとい協力者にするか否か、計画の要となる判断が付きかねたので」
 計画?手駒?
 不穏な単語に眉をひそめる。
 「ホセ、お前何企んでるんだ?」  
 声を低めて問いかける俺を無視、律儀に腰を折ってレイジに手を差し伸べ、微笑む。
 分厚い眼鏡が残照を照り返す。
 完全に夕日が沈む間際、どす黒い陰影に隈取られた笑みが酷く禍々しく邪悪なものへと変貌する。
 「殺しのプロたる東の王に所長の暗殺を依頼します」 

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少年プリズン(未完) | コメント(-) | 20050517230125 | 編集
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