ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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十一話

 頭痛がする。
 頭が重い。思考が働かない。
 体がだるい。風邪がまた悪化したのかもしれない。
 頭が朦朧とするのは熱が上がったせいだか得体の知れない薬のせいだかどちらとも判断付かない。
 ぼんやり霞がかった頭を動かし、慎重に薄目を開ける。
 暗闇。視界が暗闇に覆われている。
 おかしい。変だ。目を開けたのに何故暗い。
 毛細血管の赤が仄かに透けて見える瞼の裏の暗闇じゃない、本物の暗闇が眼前に広がっている。黒い布きれで目隠しされているのだと気付いたのはその時だ。
 一瞬パニックを起こしかける。
 誰が目隠しをした?何の為に?気を失う前の出来事を回想、最悪の結論を導き出す。俺に目隠しをしたのはレイジ、あいつしかいない。
 『知ってるか?風邪薬の成分の何十分の一かは媚薬なんだぜ』
 気を失う寸前、勝ち誇った囁きが耳朶にふれた。
 猛烈な睡魔に襲われてベッドに倒れこんだ俺の上にのしかかり、優しく前髪を梳きながら微笑むレイジ。ぼやけた視界に蠱惑的な微笑を捉えたのを最後に意識が溶暗、泥のような眠りに落ちた。
 あれから何時間経ったんだろう。
 視覚を闇に閉ざされた俺は、残る聴覚を研ぎ澄まして周囲の様子を探る。廊下の物音は絶えている。近隣の房が静まり返った状況から察するに時間帯は深夜、就寝時刻はとっくに過ぎている。鉄扉の向こう側に人気がないのを確認後、房の物音に耳をそばだてる。レイジはどこだ?寝ているのか?薬を飲ませた俺をベッドに放置してぐっすり眠ってやがるのか?
 「レイジ、どこにいるんだよ」
 目隠しが邪魔だ。視界をすっぽり覆い隠す布きれが邪魔だ。
 目隠しを剥ぎ取ろうと顔に手を持っていきかけ、両手を縛られていることに気付く。手錠じゃない、縄だ。目で見なくてもささくれだった感触でわかる、粗末な麻縄が俺の両手首に二重に巻き付いてかっちり動きを封じてる。
 「なんだこりゃ」
 気が動転、頭が混乱する。自分が置かれた状況がまったく把握できず右も左もわからず途方に暮れる。畜生レイジの奴、目隠しの上に縛りなんざ長い付き合いの相棒を随分と丁重に扱ってくれるじゃねえか。居場所がわかり次第問答無用で殴りたいが、手首を縛られてるんじゃ無理だと悟り自分の馬鹿さ加減にあきれる。
 「SM趣味はねーんだよ、くそっ」
 唾と一緒に呪詛を吐き捨て、何とか上体を起こす。
 レイジはどこだ?俺に目隠しして手首縛り上げて無造作に転がしといた犯人はどこにいやがる?
 「レイジ、いるのかよ。いるなら返事しろ。タチの悪い冗談やめろよ、いい加減キレるぞ。とっとと縄ほどかねえと承知しねーぞ」
 金切り声で叫ぶが返事はない。
 裸電球も消えているらしい。まさか、俺に変な薬飲ませて目隠しして手首縛り上げるのがアイツの言ってたお仕置きとやらか?確かにこんな格好じゃ寝返りも打てねえ、両手縛られてたんじゃマスもかけねえし便所もいけねえし滅茶苦茶不便だが、もったいぶって「お仕置き」と言った割にゃなまぬるい気がする。
 ぶっちゃけ拍子抜けだ。
 「これがお前の言ってたお仕置きとやらか?笑わせんなよ王様。確かに手え縛られてたんじゃ小便するとき不便だよ、アレをちゃんと持てねえんじゃそこらじゅうに小便まきちらして便器汚しちまうもんな。いや、その前にこのカッコじゃ便器まで歩いてくのも無理か。目隠しされてたんじゃとんでもねえとこでやっちまうかもな、たとえばお前の顔の上とか。ジャーッて小便ひっかけられておったまげるとこ見モノだぜ。なんてな、目隠しされてたんじゃどのみち小便くせぇ間抜けヅラ見れねーけど……」
 声が暗闇に吸いこまれる。返事はない。
 おかしい、レイジはいないのか?両目を覆う布きれがまどろっこいしい。今すぐ目隠しを剥ぎ取りたい衝動に駆られるが、両手を縛られてたんじゃ悔しさに歯噛みするしかない。
 両目を覆った薄地の布が顔の皮膚に擦れて無性にかゆくなる。
 最悪だ。いるのかレイジ、いるなら何か言えよ、知らんぷりするなよ。俺は起きた時からレイジがいると根拠のない確信を得ていた。
 証拠はない、ただの勘だ。けど、俺の勘は動物並に冴えてる。レイジは房のどこかにいる、たとえ返事がなくても反応がなくても絶対いると本能が疼く。
 「だんまり決め込んでんじゃねえよ。ちゃんと説明しろよ」
 どこだレイジ、どこにいる?不安と恐怖と混乱とで発狂しそうになる。目が見えない、ただそれだけで人間は動物に退行する。頼れるのは視覚を除く全感覚、聴覚と嗅覚と触覚と味覚、そして第六感。
 聴覚を鋭く研ぎ澄ます。
 房に俺以外の誰かがいるなら何か物音がするはずだ、どんなかすかな物音だっていい、絶対聞き逃すものかと生唾を嚥下するのも我慢し全方位に聴覚を開く。

 やっぱりいる。
 誰かがいる。

 衣擦れの音、押し殺した息遣い、唾を嚥下する音……
 俺の勘は当たっていた。ここには俺以外の人間がいる、爛々と目を光らせ気配を殺し獲物に飛び掛るタイミングを計っている。そいつは暗闇に潜んで獲物を狙っている。
 獲物は多分、俺だ。俺しかいない。
 距離はそれほど離れてない。俺のベッドから5メートル位……隣のベッドだ。普段レイジが使ってるベッドの上に誰かがいる。喉が緊張で干上がる。レイジじゃない。違う人間だ。
 今、俺を熱っぽく見つめてるのはレイジじゃない。
 「誰だお前」
 どういうことだ?なんでレイジのベッドに違う男が座ってる?
 何が何だかわからない。目隠しの向こう側、ベッドに腰掛けたそいつは下品に笑っている。下卑た笑い声が房にこだまする。
 ぎょっとする。
 一人だけじゃない。二人、三人……三人。三重奏の笑い声が響き渡る中、息を呑んであとじさる。なんだこいつら。一体なにがどうなってやがる、レイジはどこへ消えた?畜生、目隠しさえなけりゃ声と顔がぴったり一致するはずなのに……
 「お目覚めか、ロン。ぐっすり眠ってたみてえだな」
 「もう真夜中だぜ。助けを呼んだって誰も来ねえよ」
 「頼りの王様だってほら、この通り」
 「レイジもそこにいるのか!?」
 声が跳ね上がる。
 暗闇の向こうで失笑の気配、ベッド周辺にたむろった男たち三人が目配せを交わすのが砕けた雰囲気が伝わってくる。
 ぎしりとベッドが軋む。
 俺のベッドじゃない、隣のベッドだ。
 一人がベッドに座りなおし、もう一人が億劫そうに腰を上げ、残る一人を伴いこっちにやってくる。コンクリ床を叩く尖った靴音が次第に近く大きくなる。
 電撃に打たれたように勘が冴える。
 「……暇人の看守どもが、俺の房に何の用だ?」
 看守の靴音と囚人の靴音は違う、一発で聞き分けることができる。
 看守は革靴を履いている。囚人はスニーカーを履いている。
 薄っぺらく磨り減ったゴム底がコンクリ床を叩く音と固い靴裏がコンクリ床を穿つ音ではまるで響きが異なる。威圧的で支配的、コンクリ壁に殷々とこだまする硬質な響きは看守の靴音の特徴だ。
 正面に立ち塞がった看守が全身から威圧感を発する。
 ごくりと生唾を飲み込む。緊張が最高潮に達する。
 看守がにやにや笑ってる。口元を弛緩させ黄ばんだ歯を剥いて醜悪な笑みを顔一杯に浮かべてるのが目は見えなくてもまざまざ想像できる。
 どうやって俺を料理しようか、楽しい妄想と一緒に股間を膨らませてるに違いない。
 突然、頭に手が触れる。
 くしゃりと髪をかきまぜられる。
 必要以上に親しげな、反吐がでるほどなれなれしい手つき。
 「可哀想になあロン。お前は『売られた』んだよ」
 「は?」
 手が使えない代わりに激しく首を振り、看守の手から逃れる。
 俺が売られた?誰に?
 俺は売り物になった覚えはない。 
 「売られたって誰にだよ。なああんた、目ん玉かっぽじってよく見ろよ。俺の首から値札が吊り下げられてるか?ロン一匹五百元って書いてあるか?ないだろ馬鹿。断っとくが俺は体も心もプライドも安売りした覚えはない、お前らみてーなゲスどもに金に困ってるから買ってくれって揉み手でご機嫌とりした覚えもねえ。わかったか?わかったらとっとと房から出てけ、ついでに俺の目隠しとって縄ほどいて……っ!?」
 ひゅっと喉が鳴る。
 看守の手が上着の胸元に滑り込んできたのだ。
 激しく身を捩って執拗な追跡から逃れようとしたが、手首を縛られ動きを制限されたせいでバランスを崩し、肩口からベッドに倒れこむ。
 ベッドが耳障りに軋む。
 やばい。
 すぐさま起き上がろうとしたが、すかさず看守が覆い被さってくる。手が使えないなら足だ。看守の腹に蹴りくれようと必死に暴れるが効果なし。相手は二人だ、俺にのしかかった奴の他にもう一人が見張り役に就いて俺の足を押さえこむ。
 「まだ暴れる元気があったのか。感心だな、たっぷり眠って全身に薬が回った頃なのによ」
 「薬ってさっきレイジが俺に飲まさせたアレかよ、なんなんだよアレ!?」
 「知りたいか」
 顔に生臭い吐息がかかる。
 はちきれんばかりに膨らんだ股間が内腿を擦る。
 俺の内腿にいきりたった股間を押し付け、はだけた裾から手を潜らせる。
 体が熱い。風邪が酷くなったせいだ。
 熱く湿った吐息が口から漏れる。
 風邪?馬鹿な。
 不快に汗ばんだ手の感触。
 気持ち悪いはずなのに気色悪いはずなのに何だこの感じ、上着の内側に潜り込んだ手に素肌をまさぐられてちりちり火種が燻って快感を誘発する。体が変だ。こんなのいつもの俺じゃない、レイジ以外の男にさわられて感じるなんざ俺じゃない。
 本当に熱のせいだけか、熱のせいだけで体がこんな過敏になるのか?
 全身の皮膚が性感帯に造りかえられる。
 目隠しされたせいで相手の顔が見えず、次にどこを触られるか抓られるか揉まれるか全く予想つかず恐怖が膨らむ。
 「ひっあ、あっ、っふ、く……さわ、んな……」
 心の準備が出来ず、喘ぎ声を押し殺す余裕すら与えられない。
 レイジは?
 暗闇で必死にレイジを捜す、レイジが俺を見捨てるなんてありえないと反駁する。唾で湿した指が乳首を潰して捏ねくりまわす。針で刺し貫かれるような快感に喉が仰け反り、「ひあっ」と悲鳴が漏れる。
 恐い。俺が俺じゃなくなる。こんなの嘘だ、悪い冗談だ、何かの間違いだ。レイジ以外の男の愛撫で感じるわけない、よがるわけない。そう自分に言い聞かせて快感の波に抗うも、尖りきった乳首を爪で引っ掻かれて背中が撓る。
 「痛っあ………!!」
 体の表面が熱い。体の中が熱い。
 悪寒と快感が交互に押し寄せて気が狂いそうだ。
 体の細胞がどろどろに溶けてく。
 全身の皮膚が性感帯となり、指での愛撫はおろか上着が素肌に擦れる感触やシーツと擦れる感触さえもじれったい快感に変換する。
 酸素を欲して喘ぐ俺の顔を覗き込み、看守が哄笑をあげる。
 「薬の正体はお前の体が知ってる。はは、レイジは何も言わなかったのかよ可哀想に!大方風邪薬だってだまくらかしてお前に飲ませたんだろうが『アレ』を、まったくとんでもねえ大嘘つきだ、言葉通りの裸の王様だ!いいかロン、お前が飲まされたのは風邪薬なんかじゃねーぞ。何倍何十倍にも感度を高める媚薬、一錠飲めば一晩中どころか二晩ぶっつづけでイきっぱなしの催淫剤だ!」

 『知ってるかロン。風邪薬の成分の何十分の一かは媚薬なんだぜ』
 暗闇の中でレイジが笑う。とても邪悪に、楽しそうに。

 「でたらめ言うな、レイジが俺にクスリなんか使うわけねえ……」
 いくら俺の浮気を疑ってるからって、そんなことあってたまるか。
 「でたらめなもんか。お前の体が証拠だ。どうだ辛いだろロン、俺に乳首こねられてどうしようもねえくらい感じまくってんだろ。乳首責められただけで軽くイッちまいそうだろ。ははっ、これがホントの敏感肌ってか?いいかよく聞けロン、レイジはもうお前に愛想尽きたんだとさ。恩師らずで浮気性、可愛がってやった恩も忘れてやらしい痣こさえて帰って来るような猫はいらねえから俺たちにくれてやるとさ」
 「嘘だ」

 レイジが俺を、看守に売り渡した?
 俺が滅茶苦茶にされるのを承知で?

 『逃がさねーから』
 暗闇の中でレイジが微笑む。戦慄に背筋が凍る。
 『めでたいなお前。これで、この程度でおしおきが済むとマジで思ってたのか?耳朶にピアス開けた程度で?ははっ、まさかな!いくらなんでもそんなにおめでたくねえよな。ロン、お前もいい加減わかったろ。俺の名前はレイジ、英語の憎しみ。キレたら怖い王様、嫉妬深い暴君。そんな俺がお前の耳に針通したくらいで許し与えるわけねえだろ。もっともっとこらしめてやんなきゃ』
 もっともっとこらしめてやんなきゃ。
 耳朶に針通すだけなんざなまぬるい、もっともっとこらしめてやんなきゃ。
 これがレイジのやり方、暴君のお仕置き?
 俺の耳朶針通すだけじゃ飽き足らず、淫催剤飲ませて目隠しして手首縛り上げて看守に輪姦させるのが暴君の復讐?
 レイジの嫉妬深さは異常だ。執念深さも異常だ。
 レイジは本気で俺の浮気を信じてるのか…… 

 「どうしてだよ?」
 愛してるって言ったじゃねえか。
 信じてるって言ったじゃねえか。
 俺を愛してるくせに信じてるくせにこんな目に遭わせるのか輪姦させるのかクスリで自由奪って看守に売り渡すのか、レイジ何とか言えよどこにいるんだよお前「愛してる」って言ったじゃねえかあれ嘘か、愛してる奴が他の男にヤられてもそれでいいのかよ、「恨むなよ。お前が悪いんだからな、ロン」とかへらへら笑いながら吐き捨てるつもりかよ?

 やりきれなさが込み上げて口の中が苦くなる。
 レイジにとって俺はその程度の存在だったのか?
 惜しげもなく他の男に払い下げれる程度の存在?ペア戦のアレはなんだったんだ、俺を売春班に戻すのが嫌でリングに上がって戦い抜いて勝利の代償に片目を失った男がたった一度の浮気に怒り狂って俺を看守に売り渡したなんて……
 誤解なのに。

 俺が好きなのはレイジなのに。
 俺が抱かれたいのはこの世でたった一人レイジだけなのに―――

 感情が爆発、喉から咆哮が迸る。
 「いいのかよレイジ、俺がこいつらにヤられちまってもいいのかよ本当にそれでいいのかお前は満足なのか、看守三人にかわるがわる犯されてボロ雑巾になった俺が『これに懲りて二度と浮気はしません』て泣いて縋り付きゃ許すのか、クスリと目隠しと縄なんて姑息な手使いやがって畜生、見損なったぜ王様!!お前にとって俺はそれっぽっちの存在だったのか、処女はいただいたからあとはお好きにどうぞって看守に分け前くれてやれる程度の娑婆に出て女食い漁るまでのつなぎの恋人だったのかよ!!?」
 「うるせえよ」
 横っ面を殴られた。怒号が止んだすきにズボンごと下着を引き摺り下ろす、下半身を脱がされ両足を抱え上げる恥ずかしい格好をとらされる。開脚。看守の肩に両足が乗せられる。口笛。
 裸の股間に手が触れる。
 「いっぐ、ひ……!」 
 看守がペニスをいじる。
 唾に塗れた指がねちゃねちゃと淫靡な音をたてる。
 先端に血が集まる。薬で敏感になった体が即座に反応を示す。先端に血が上り詰める、ペニスが固くなる。
 反射的に足を閉じようとしたが、看守の手で強引に押し開かれる。
 片手で俺のペニスをいじくりながらもう片方の手で太股をなでさする。爪で内腿を逆撫でされ、羽毛で刷かれるような快感が走る。
 手が、手の縄さえほどけりゃこんな奴ぶん殴ってやるのに!自力で縄がほどけないかと手首を擦り合わせるが無駄、ささくれだった縄が手首と擦れて皮膚に血が滲んだだけだった。
 「ふ、あ、あっ……やめろよ変態、男が男のアレいじくって何が楽しいんだよ、正気疑うぜ……っくあ!」
 「こないだはいいとこで邪魔が入ってお預け食ったからな。今夜は最後までヤり抜くぜ。俺のブツは看守仲間の内じゃいちばんでっけえって評判なんだ、お前のケツの穴がきちぃきちぃって悲鳴上げるところが目に浮かぶぜ。たっぷり潤滑油しぼりだしておかなきゃな」
 「あ、ああっ、あっあっふあ……やめ、そこ、そこはっ……」
 「感じてるのか?可愛い声だしやがって……ほら、腰が上擦ってきた。可愛いペニスが上澄み滲ませてるぜ」
 恥ずかしい。死ぬほど恥ずかしい。いっそ舌を噛み切って死んだほうがマシだ。くちゃくちゃいやらしい音。看守の手で扱かれてペニスが勃起する。
 悪寒と快感が混ざり合った慄きが下肢を襲う。
 目隠しの布きれが湿る。瞼がじんわり熱くなる。
 乳首が勃ってる、ペニスが勃ってる。
 「はっはっはっはっ……ははっ、たまんねえなこりゃ!絶品のオカズだ」
 「同僚に自慢できるぜ」
 生臭い匂いが鼻腔を突く。
 ザーメンの匂い。
 甘い喘ぎ声を上げる俺の痴態をズリネタに看守が自慰してる。
 今この時だけは目隠しに感謝した。まともに目撃したら胃袋ごと戻す勢いで吐いていた。看守の手が加速、腰から下が溶ける。理性が剥奪される。尿道がむずがゆくなる。
 そして……
 「うあっああああああ……!!」
 瞼の裏で閃光が爆ぜる。頭が真っ白になる。
 粘つく精液が股間と内腿、下腹に付着する。俺が射精すると同時に、粘ついた液体が顔にぶちまけられる。
 苦いザーメン。
 俺のペニスをいじくる傍ら片手で分身をしごいてた看守が、顔面めがけて白濁をぶちまけたのだ。
 「げほっかほっ!」
 「よっしゃ、当たった。ガキの頃から射的は得意だったんだよ」
 「惜しいな、もうちょっと右にずれてりゃど真ん中だったのに」
 「わざとだよ、口狙って飲ませようとしたんだよ」
 激しく咳き込む俺の頭上で哄笑が渦巻く。悪夢。悪い夢なら今すぐ覚めてくれ。
 唾と一緒にザーメンを吐き捨てる。
 俺の目から染み出した液体と外側に付着したザーメンとで目隠しの布きれが濡れそぼり顔に吸い付き皮膚と一体化する。
 「潤滑油はたっぷり出たけどお前がイっちまったんじゃ意味ねえじゃんか」
 「気合で勃たせるよ」
 「年考えろよ。精力ぎらつく二十代じゃねーんだからすぐに勃つもんか。バッターアウト、ファウルボールで選手交替だ」
 枕元の看守が同僚を押しのけ、入れ替わり俺の上にのしかかる。
 俺の股間に手をやり、白濁をすくいとる。俺の内腿を伝って尻の方まで濡らした白濁を指で伸ばすのが、くちゃくちゃと濡れた音でわかる。
 尻の柔肉を乱暴に割り開く。
 肛門の窄まりにひやりと外気がふれる。
 「!っ、痛あう……いっで……」
 人さし指が肛門に刺し込まれる。痛い。気持ち、悪い。
 人さし指が腸の内壁をひっかく。看守の忍び笑いが漏れる。指が二本に増える。きつい。肛門がぎゅっと収縮、食いちぎりそうに指を締め付けるのがわかる。
 「どうせ毎晩王様と楽しんでるんだろ。たまにゃ俺たちとも遊んでくれよ」
 「毎晩王様のモン受け容れてるわりにゃ綺麗なケツだな、色も形も悪くねえ」
 「締まりも良好だ。もっと緩んでるかと思ったが」
 「赤く充血して物欲しげに襞ひくつかせて男誘ってやがる。いやらしいケツマンコだ」
 頭上で卑語が飛び交う。頭が朦朧とする。
 抵抗する気力を削ぎ取られた俺は、足を開いてされるがまま肛門を嬲られる恥辱に耐える。肛門に突っ込まれた指が卑猥にのたくる。
 体の奥で何かがもぞりと蠢く感覚。信じたくないが、体が勝手に反応しはじめてる。クスリのせいだ。全部レイジに飲まされたクスリのせいだ俺は感じたくなんかないのにレイジ以外の男に抱かれて感じたくねえのにくそ、くそ、くそっ…………

 レイジ。
 出て来いレイジ。こんな変態どもにまわされるくらいならいっそ……
 「お前らにヤられるくらいならレイジにヤられたほうがマシだ!!」

 「呼んだか?」
 落ち着いた声が割り込んできた。
 哄笑が止む。肛門からあっけなく指が引き抜かれる。
 俺の叫びに答えたのは……甘く掠れた独特の響きの声。
 一度聞いたら忘れられない声。
 コンクリ床を叩く靴音……誰かが優雅な歩幅でこっちにやってくる。今の今まで隣のベッドに腰掛けて俺の痴態を鑑賞してたらしいそいつが、偉そうに看守に顎をしゃくる映像が目に浮かぶ。
 腰に手をあてた尊大なポーズが様になる男の名は。
 「レイジ、お前………」
 『憎しみ』。
 「来るのが遅いんだよ馬鹿、焦らすのも大概にしやがれ、もう少しでヤられちまうとこだったろうがっ……」
 目隠しされててもわかる、レイジの気配を間違えるはずない。
 今の今まで衣擦れの音ひとつたてず空気に溶け込んでいたから気付かなかっただけでレイジはずっとそこにいたのだ、退屈そうに俺の痴態を眺めてやがったのだ、人が悪いにも程がある。
 職業柄気配を消すのに慣れたレイジなら造作ないことだ。
 安堵のあまり泣きたくなった。
 やっと、やっと許してくれる気になったのか。
 俺の話を聞いてくれる気になったのか。
 気まぐれな王様を心の中で罵倒、それでも助けに来てくれた嬉しさを抑えきれず、泣き笑いに似た表情が込み上げて……
 ベッドが不吉に軋む。
 「……え?」
 誰かが俺に覆い被さった看守をどかし、場所を入れ替わる。
 澄んだ旋律が耳朶をくすぐる。
 金鎖が涼やかに流れ落ちる音……褐色の首筋を鈍くきらめきながら金鎖が流れ落ちる妙なる旋律。
 俺の上にいるのはレイジだ。
 「悪ふざけはやめろよ。暴君の気まぐれに付き合わされるのはうんざりだ」
 「言ったろ?こらしめてやるって」
 額が熱い。体が熱い。全身の細胞が発火する。
 レイジの囁きに全身の細胞が歓喜する。
 俺の腰に跨り、いつかと同じように優しく前髪をかきあげ、汗ばむ額にキスをする。 
 「コイツらにヤられるくらいなら俺にヤられたほうがマシだって、さっきそう言ったよな」
 耳の奥に鼓動を感じる。動悸が激しくなる。俺の髪に指を絡めて遊ぶレイジを布越しに仰ぎ、皮肉げに口角を吊り上げる。
 「嫌だ。どけよ。人が見てるだろ。人前でヤる趣味はねえんだよ。露出狂に成り下がるつもりはねえ」 
 「関係ねーよ。ヤりたい時にヤる、抱きたい時に抱く」
 「無茶苦茶な理屈。マトモじゃねえよお前、どうかしてるよ。俺の耳朶にピアス開けた次はこれかよ、クスリ飲ませて手首縛り上げて目隠しかよ」
 「ノーマルなセックスに飽きたんだ。手加減して抱いてると無性に刺激が欲しくなる」
 「お前に本気で抱かれたら死ぬよ。お前、俺を殺したいのかよ?」
 冗談のつもりだった、俺は。
 返されたのは沈黙。腹の上でレイジは押し黙ってる。
 不意に恐怖を覚える。体の芯から凍り付くような恐怖。
 俺の腹の上にいるのが暴君か王様かわからない。
 生唾を嚥下する音がした。多分、俺のベッドを取り囲んだ看守の一人。これから眼前で繰り広げられる行為に期待を高めてるのか、暴君の沈黙に不安定な揺らぎを感じ逃げ出したい衝動と戦っているのかどちらかは分からない。
 殺伐とした空気が漂う中、唐突に歌声が流れる。
 『王のくちびるには神の宣告がある。さばくときにその口に誤りがない』
 唄うような節回しの託宣を下し、俺の顔を両手で抱き起こす。強引に上を向けられた鼻先に吐息がかかる。
 レイジがすぐ近く、唇が触れ合う距離にいる。
 神の宣告が宿るくちびる。
 『愚かな者には愚かさが懲らしめとなる。悪を行う者は邪悪なくちびるに聞き入り、偽り者は人を傷つける舌に耳を傾ける』
 額に、瞼に、耳朶に、頬に、顎に、首に、鎖骨に。
 唇以外の場所にキスを落とし、囁く。
 『そむきの罪を覆う者は愛を追い求める者。悟りのある者を一度責めることは愚かな者を百度むち打つよりもききめがある』
 目隠しの向こうで優しく残酷に微笑む気配。 
 見えるはずのない光景が網膜で像を結ぶ。
 愛しさと憎しみとを矛盾なく隻眼に映したレイジが、どこまで残酷になれるか自分を試練に投げ込み試すように俺の唇をついばむ。
 『Which are you?』
 お前はどっちだ?
 優しい微笑みをかき消し、王様の面影を捨て去った暴君に押し倒されたのは次の瞬間だった。

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