ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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三十八話

 目の前でサムライと静流が抱き合っている。
 「…………っ、」
 胸が引き裂かれる。 
 何か叫びたい。何か言いたい。しかし、声が出ない。舌が硬直して喉を塞ぐ。耳の奥に鼓動を感じる。
 眼前の光景に衝撃を受け、心が麻痺する。
 書架の陰から現われたサムライを見た瞬間、安堵のあまり腰が砕けた。頭の片隅ではこんな都合良い偶然あり得ないとわかっていた。
 サムライを誘惑したあの夜、僕は彼の隣にいる資格を失った。
 だからなおさら書架の陰からとびだしたサムライを見た時は嬉しかった、僕を助けに来たと勘違いして温かい感情が胸を満たした。
 漸く彼に謝罪する機会が巡ってきた、また元の友人に戻れる、サムライを取り戻せる。
 だが、僕がサムライに呼びかける前に静流は走り出した。
 そして、サムライの胸にとびこんだ。
 僕は何も、何もできなかった。無力に床にへたりこんだまま、サムライと静流の抱擁を呆然と眺めていた。サムライは気遣わしげに静流の背中を撫でている。口元に儚い笑みすら浮かべて静流の顔を覗き込んでいる。
 何故だ?
 何故こんなことになった。
 「落ち着いたか?何があったか話してくれるな、静流」
 サムライが慎重に口を開く。静流が漸く顔を起こす。泣き濡れた顔。涙で潤んだ双眸で上目遣いにサムライを仰ぎ、言う。
 「君と別れて図書室をぶらついてたら、看守に捕まって……ここに、人気のない場所に連れ込まれて、無理矢理」
 言葉が途切れ、嗚咽に紛れる。かすかにしゃくりあげる肩を無骨な手が包む。サムライの手。
 「怖かった。無理矢理犯されそうになって、死ぬ気で抵抗したけれど、あんまり騒ぐと外に聞こえるぞって脅されて……言う事聞くしかなかった。だって、貢くんに知られるのは嫌だから。あんな、あんなところを貢くんに見られて軽蔑されたら生きてけない!」
 静流が激しくかぶりを振りサムライに取りすがる。サムライは静流を落ち着かせようと不器用ながら必死にその背中を撫でる、千切れんばかりに首を振る静流に辛抱強く言い聞かせる。
 「大丈夫だ、お前を見捨てたりせん。怖かったな、静流。だがもう大丈夫だ」
 「でも、寸でのところで助かった。折りよく彼が通りかかったおかげで、看守は慌てて逃げていった」
 不意に静流が振り返り、僕を見据える。
 嘘だ、と叫びたかった。それは違うサムライ、静流は自分から誘ったんだと暴露したかった。しかしサムライと目が合い、喉元にまでせりあがった言葉を飲み下す。
 サムライに凭れかかったまま、身を捩るように振り向いた静流が微笑む。
 「ありがとう、直くん。君は恩人だ」
 騙されるな、サムライ。彼は嘘をついている。
 書架に手を付き体を支え、自力で起き上がる。重心がぐらつき、よろめく。動悸が激しくなる。視界が真紅に染まる憤怒。半分書架に寄りかかるように上体を起こし、上着の胸を掴んで呼吸を整える。片膝が砕ける。サムライの腕の中で恥じらうように微笑んだ静流を見た瞬間理性が蒸発、突き上げる衝動に駆られるがまま余力を振り絞り立ち上がる。
 「嘘だ。でたらめだ」
 低く、唸るように言う。
 サムライが胡乱に目を細める。
 こぶしで書架を殴り付ければその衝撃で新たに本が落下、足元の床に激突。静流はサムライの腕の中でこちらを見返している。余裕の表情。僕の言葉に全く心当たりないと目に当惑の色さえ宿している。
 「騙されるなサムライ、静流の言うことは全部でたらめだ。彼は看守に襲われたんじゃない、自分から誘ったんだ。この目で一部始終を見た、間違いない。静流は看守に犯され嬉しそうに嬌声を上げていた、狂ったように腰を振っていた」
 瞼の裏に最前の光景が蘇る。
 看守に貫かれさも嬉しそうにはしゃぐ静流、艶っぽい嬌声。
 静流と看守が繋がった場所から響いてきた赤裸な衣擦れの音、体液と体液が交じり合う淫猥な水音、尻の肉がぶつかる乾いた音。
 僕は書架の影から一部始終を目撃した。
 静流は看守に犯され悦んでいた。口の端から一筋涎を垂らして恍惚と弛緩した表情で虚空を仰いで、もっともっとと快楽をねだるように看守の腰に下肢を摺り寄せていた。
 断じて幻覚などではない、錯覚でもない。
 僕はこの目で見た、音を聞いた。ズボンを脱がせば太股には一筋白濁が伝ったあとが残っているはず、指で掻き出しきれなかった精液が肛門から溢れているはず。
 「静流は自分から看守を誘ったんだ、合意で行為に及んだんだ!一方的に強姦されたわけじゃない、自分から快楽を求めて行為に及んだんだ、看守に貫かれてはしたない嬌声をあげてたのが証拠じゃないか!何故嘘をつく静流、そうやって同情を乞おうとでもしてるのか、そうまでしてサムライを独占したいのか!?」
 言葉の洪水が止まらない。
 自制心を総動員して喉元で塞き止めた言葉があとからあとから堰を切ったようにあふれ出す。
 無様だ、僕は。
 だが、自己嫌悪を感じる余裕もない。僕はただただ必死だった、サムライに静流の本性をわからせたい一心で語気激しく糾弾を続けた。
 全身に怒りを漲らせ激情を吐露する僕を、静流は不審げに眺めていた。全く心当たりないどころか僕の言葉すべてが酷い誤解だとでもいう風に上品に眉をひそめていたが、その表情は非難よりもむしろ哀れみに近い。
 哀れみ?僕を、哀れんでいる?
 敵愾心を剥き出しにプライドをかなぐり捨て、サムライを振り向かせようと必死の形相で、サムライ以外の何者も何物も目に入らない愚直に思い詰めた眼差しで罵詈雑言を吐く僕を哀れんでいる?
 「どうして嘘をつくんだい」
 耳を疑った。
 口汚く罵倒された静流が純粋に問いかける。偽りの無垢。
 絶句した僕をよそに、儚げな風情漂う伏し目がちに続ける。
 「直くんに嫌われてるのは薄々感付いていたけど、そんな酷い嘘をつかれるとさすがに傷つく。僕と貢くんが仲良くしているのが気に入らないならはっきり言えばいいじゃないか」
 「馬鹿、な。僕は嘘などついてない、ありのままの真実を述べているだけだ!」
 「僕から看守を誘ったなんてあるわけないじゃないか。そんな帯刀家の誇りを汚す行い、死んだ母さんが許すわけない」
 漆黒の目に悲哀が宿る。可憐な面差しが憂いに沈む。うちひしがれたように首を項垂れる静流の肩にサムライがそっと手を添える。
 静流を庇うのか?ここまで言ってもまだ静流を信じるのか?
 喉元に吐き気が込み上げる。
 視界が暗く翳るほどの絶望。
 静流はまっすぐに僕を見る。
 「僕が襲われてるところに偶然通りかかってくれて感謝する。君が通りかかってくれなきゃ僕はあのまま犯されていた。でも、妄言を弄して帯刀家を侮辱するのはやめてほしい。僕から看守を誘ったなんて真っ赤な嘘だ。僕は腐っても帯刀の人間、看守に体を売って見返りを要求するなど不埒な振る舞いは矜持が許さない」
 断崖絶壁の如く書架が聳える狭苦しい通路に立ち塞がり、女々しい容姿に似合わぬ堂々たる態度で静流が言い放つ。
 「君はどちらを信じるんだ?」
 静流に寄り添うサムライは無言。僕らの意見に翻弄されてる様子が視線の揺らぎから伝わってくる。
 煮え切らない態度に怒りが沸騰、感情的に声を荒げる。
 「看守だけじゃない、こともあろうに僕まで誘惑したんだ!僕の下着の中に手を入れて性器をまさぐって良ければ相手をしてやると挑発したんだ、いい加減目を覚ませサムライ、静流の本性に気付け!幼少期の静流がどんな心優しい人間だったか知らないが歳月はどうしようもなく人を変える、現在の静流は君の記憶の中の静流とは別人だ!君の目は節穴か、静流が僕の上にのしかかり下着に手を入れたところを見なかったとでも」
 「上に落ちてきた本から庇ってあげたんじゃないか」
 あっけらかんとした指摘に狼狽する。
 そうか、角からとびだしたサムライの位置からは静流の背中が邪魔で僕の下着に手を入れるところが見えなかったのだ。
 サムライは何が起きてるかわからなかった。
 僕が書架に激突した弾みに大量の本が降り注ぎ、静流が屈みこんだところまでしか見えなかったのだ。
 そこまで推理し、恐ろしい可能性に思い至る。サムライの位置からは本の落下から僕を庇ったように見えても不自然ではないどころか、事情を知らない人間はそう考えるのが当然だ。
 僕の下着に手を入れ性器をまさぐってると邪推する人間こそ少数派だろう。

 サムライは、僕を疑っているのか?
 静流を信じるのか?

 「…………………っ!!」
 瞼裏で閃光が爆ぜる。
 血が滲むほど唇を噛み本を蹴散らし走り出す、サムライと寄り添う静流を引き離し彼の上着の裾をたくしあげる。
 僕の手に暴かれた下腹部には仄赤い痣が散っている、看守の指のあとが捺されてる。裸身を揉みしだかれた名残り。よわよわしく抵抗する静流には構わず上着の裾を力任せに引っ張り、上気した痣が散った下腹部をサムライに見せ付ける。
 「よく見ろサムライこれが証拠だ、静流が今さっき淫らな行為に及んだ動かしがたい証拠だ!これでわかったろう静流に騙されてると、静流は書架を背に高く足を掲げて看守を受け入れていた、看守に深く貫かれ喉仰け反らせ悦んでいた!静流の本性はとんでもない淫乱、度し難いニンフォマニア、良識など鼻で笑い飛ばしひたすら貪欲に快楽を追い求める堕落した人間だ!!」
 「やめろ!貢くんには見せたくない、見られたくない!」
 狂乱した静流が金切り声の悲鳴をあげる。耳障りだ。
 上着の裾を引っ張り下腹部を覆い隠そうとする手を邪険に払いのけ、サムライにもよく見えるよう大胆に下腹部を晒してやる。
 仄赤く上気した痣が無数に散らばった下腹部。
 暗い喜びが体の底から湧き上がる。
 今の僕はきっと、ひどく邪悪な顔をしてるだろう。上着を取り返そうと虚しくもがく手を叩き落し、憎悪を剥き出しに静流を睨みつける。
 「いい加減へたな演技はやめろ同情を引く芝居はやめろ、君の本性はすでにわかっているんだ!看守だけでは飽き足らず僕まで誘惑したくせにサムライの前では偽りの演技を続ける気か、一体何を企んでるんだ!」
 「直、落ち着け!」
 喉を焼いて迸る絶叫。
 僕の手を振り払おうと必死に身をよじる静流の姿がさらなる反発を煽り、これでもまだ納得しないならとズボンに手をかけ引きずり下ろそうとする。
 「ズボンを脱げ静流、サムライの前でズボンを脱いで余すところなくありのままの君を見せてやれ!知ってるんだぞ、君の太股にはまだ白濁が伝ったあとが生渇きの状態で残っている、男を受け入れた肛門はだらしなく弛緩してる!!」
 僕は完全に冷静さを欠いていた、悲鳴が嗚咽に変わったのにも気付かない程に。僕の手から逃れようと力なく首を振る静流の頬を一筋涙が伝う。それでも手加減せずズボンを掴み膝まで一気に引き摺り下ろそうとする、太股を外気に晒して証拠を見せようとする僕の腕をサムライがねじり上げる。
 激痛。
 力づくで静流から引き剥がされた僕は、執念深く虚空を掻き毟りつつやり場のない怒りをぶちまける。
 「軽蔑するぞ帯刀静流、帯刀家の恥さらしめ!」

 ―「いい加減にしろ!!」―

 サムライが。
 僕を、殴ろうとした。

 目を瞑るも間に合わない。風圧が前髪を舞い上げる。だが、いつまでたっても予期した衝撃が訪れるおそるおそる薄目を開ける。
 サムライが手を振り上げた姿勢のまま硬直していた。
 「僕を殴るのか」
 放心して、問う。
 サムライは答えない。憤怒と悲哀と苦渋とが綯い交ぜとなった表情で、虚空に片手を振り翳した姿勢のまま固まっている。
 「僕に暴力をふるうのか」
 売春班の客と同じように。僕を犯した男たちと同じように。
 四肢から力が抜ける。後ろによろめいた拍子に書架に衝突、背中に鈍い衝撃。そのまま書架に背中を預け半ばずり落ち、卑屈に笑う。
 「どうした?殴ればいいじゃないか。僕の言うことが気に入らないなら力づくで黙らせればいいじゃないか」
 眼鏡が鼻梁にずり落ちる。視界が歪む。虚脱した四肢を無造作に投げ出し、一面本が散乱する床に座り込む。サムライが僕を殴ろうと手を振り上げた瞬間その姿が売春班の客と重なり、恐怖で体の芯が凍り付いた。サムライが僕に暴力をふるおうとした。
 かつて僕を抱きしめたその手で、僕を殴ろううとした。
 書架に背中を凭せて崩れ落ち、口元に虚無の笑みを吐く。
 心が分裂し、粉々に砕け、塵になる。
 書架に背中を凭せることで何とか体を起こす僕と対峙。怒りに震える五指を握り込み、サムライが顔を背ける。
 「……あんな振る舞い、お前らしくもない。売春班にいたお前なら静流の辛さがわかるはずだ」
 そして、続ける。かすかに顔を傾げ、悲哀を宿した目に僕を映し。
 「お前はもっと優しい奴だと思っていたのに、残念だ」
 そうか。君は僕ではなく静流を選ぶのか。静流を信じるのか。 
 もう胸の痛みは感じない。心が麻痺して何も感じない。足元に深淵が裂けて呑み込まれていく感覚。背中にあたる書架の硬さだけが拠り所。緩慢な動作で顔を起こし、サムライを見上げる。
 漂白された表情の僕がサムライの目の中にいる。
 「は、ははっ」
 急に何もかもがどうでもよくなり、自虐を突き詰めた笑いの発作に襲われる。
 不快な笑い声は次第に大きくなり振幅が激しくなり、気付けば僕はへし折れそうなほど背中を仰け反らせ狂気の哄笑をあげていた。
 肩が不規則に痙攣し喉が膨らむ、胸郭が大きく上下し自分の意志に反して背中が仰け反る。
 「直」 
 「笑える、笑えるじゃないか。知ってるかサムライ、人間とは相反する矛盾を抱え込んだ生き物だ。かつて僕を抱いた手で僕を殴ろうとした男が今更何を言う?
 どうやら僕は思い上がっていたようだ。僕は君の友人だが、君の中における優先順位では格段に静流に劣る。当たり前だ、僕にしても恵がいちばん大事だ。僕より君より誰よりいちばん恵が大事だ、恵以外の人間など絶滅しようがどうなろうが知ったことか!君が静流を選ぶのは当たり前だ、血の繋がりを重視するのは人の本能だ、だから君が静流を選んだのは上なく正しいことだ、君は君自身の選択に誇りをもち胸を張ればいい!」
 苦しい。笑いすぎて息が続かない。
 笑い過ぎて過呼吸に陥りかけ、書架に寄りかかるように立ち上がり、おもむろにサムライを突き飛ばし走り出す。
 背後から追いかけてくるサムライの声を無視、書架と書架の間の通路を全速力で走り抜けて開放的な空間に転げ出る。
 書架の狭間から飛び出した僕に猥談を中断、机に陣取った囚人たちが何の騒ぎだと注意を向ける。

 早く、早くここを出たい。
 ここから離れたい。

 四囲から注がれる強迫的な視線に耐えかね、再び走り出した僕の肩を誰かが掴み、振り向かせる。
 「人の話を最後まで聞け!」
 サムライがいた。
 僕の肩を容赦なく揺さぶり檄を飛ばすサムライに視線が集中、周囲のざわめきが大きくなる。
 「お前の言い分が嘘だと決め付けたわけではない!だが俺は静流を信じたい、幼い頃から一途に慕ってくれた静流を信じたいのだ!俺は帯刀の面汚し、一族郎党を破滅させた元凶だ。その罪はどれだけ悔いても拭いきれん、一生涯背負わなければならん」
 伏せた顔に苦渋が滲み、手に力がこもる。
 「静流がここに来たのは俺のせいだ。俺が父上はじめ門下生を殺したせいで静流や叔母上、それに薫流にまで累が及んだ。身内から人斬りをだした家が存続を許されるわけがない。静流がここに来た理由は知らぬが、俺が殺人さえ犯さねば静流が自暴自棄な振る舞いにおよぶこともなかったのだ!」
 「だから責任を感じて静流を庇うのか、それが君の償いか!?」
 「償いではない、贖いだ!」
 二階の手すりに人だかりができる。激しく口論する僕らの周囲に野次馬が集まりだす。サムライの手から逃れようと必死に身をよじるも五指は肩に食い込んだまま、苛烈な気迫を込めた双眸で追いすがるサムライに感情が爆発。

 「僕と静流どちらが大事なんだ!?」
 「お前も静流も大事だ!!」

 反射的に手首が撓る。
 甲高く乾いた音が響く。

 「…………汚い手でさわるな。不潔だ」
 やりきれない想いを吐き出し、五指を握りこむ。サムライの頬が赤く腫れる。僕に殴られ顔を背けた姿勢のまま立ち竦むサムライのもとへ静流が小走りに駆けて来る。「大丈夫、貢くん?」サムライを気遣う声に背を向け、未練を断ち切り走り出す。 
 「待て、直!」
 サムライの声が追ってくる。だが、足音は追ってこない。
 サムライを殴った手がじんと痺れる。
 喉の奥で自己嫌悪が膨れ上がる。
 野次馬の嘲笑を浴びながら図書室を駆け抜けて鉄扉に手をかけ大きく深呼吸、痛みを堪えて笑みを拵える。
 鉄扉に手をかけ、振り向く。
 カウンター前にて静流と寄り添うサムライをひややかに睨み付け、口角を吊り上げる。
 「僕の誘惑を拒んだのは静流と関係を持っていたからか。そんなに静流の体がいいか?感度なら僕が上だ。売春班で来る日も来る日も犯され不感症を嬌正させられたからな。僕も今や立派な男娼、静流と抱き比べてどちらが相性いいか試せばよかったんだ」
 もっと彼を追い詰めたい、痛め付けたい、傷ついた顔が見たい。
 苦渋に満ちた顔つきで押し黙るサムライを眺め、嬉々とする胸中とは裏腹に感情を抑圧した口調で続ける。
 「肛門の締りのよさを比較したくはないか?勃起の角度を比較したくないか?分泌される精液の量を比較したくはないか?どちらが感度がいいか交互に抱いて試したくはないか」
 「やめろ」
 鉄扉にもたれて腕を組む。挑発のポーズ。
 二階と一階の野次馬の視線を意識しつつ、上着の裾をつまみ、わざとらしく下腹部を見せる。上着の裾を直すふりで摘みあげ、中心の窪みを覗かせる。
 二階の野次馬が手すりから転落しそうなほど身を乗り出す。
 滑稽だ。いっそ愉快だ。
 生唾を呑んでこちらを見つめる野次馬の表情と固く強張ったサムライの表情とを見比べつつ、上着の中に手を探り入れる。
 衣擦れの音で劣情をそそり、上着の内側で腕を交差させ、緩慢な動作で肩を抱く。
 体の火照りを持て余すように肩を抱き、しどけなく捲れた上着の裾から肉付きに乏しい腹を覗かせ、確信犯の笑顔を作る。
 顔の皮膚の下で沸々滾る憎悪が発露した邪悪な笑み。
 「覚えていろ、帯刀貢。あの夜僕を抱かなかったことを後悔させてやる」
 宣戦布告した僕を盗み見て、静流は愉快げにほくそ笑む。
 僕には絶対に帯刀貢を渡さないというふうに。

少年プリズン(未完) | コメント(-) | 20050611211400 | 編集
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