ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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二十九話

 サムライは黙々と廊下を歩く。
 彼を追い立てるのは焦燥と自己嫌悪。普段から景気の悪い仏頂面をさらに渋くして大股に歩く姿には近寄りがたく剣呑な殺気が漂っている。
 
 行くあてはない。
 房にまっすぐ帰るのも気が進まない。 
 房に帰れば直と顔を合わせてしまう。

 薄暗い房で顔突き合わせ直と二人きりで何を話せばいいかわからない沈黙を思えば気分は塞ぎ、房から足が遠のく一方。
 こうして特にあてもなく通路を彷徨しているのは直と顔を合わすのを避ける為だと自分でもわかっている。わかっているが、どうしようもない。
 サムライは苦悩していた。
 脳裏にちらつくのは一昨日の夜の直。
 深刻に思い詰めた表情は自虐の翳りに閉ざされて、囚人服が痛々しいほどに華奢な体はかすかに震えていた。
 抱きしめるのを躊躇うほどに華奢な体。
 指で触れれば砕けそうなほどに脆く張り詰めた横顔。
 『サムライ、僕と性行為に及べ』
 感情が欠落した命令調に耳を疑った。一瞬で眠気は払拭された。
 あれは悪い夢だったのではないかとくりかえし自問する度に、否、あれは現実だと心の奥底から声がする。
 昨夜の直は様子がおかしかった。明らかに異常だった。
 再三におよぶ説得にも耳を貸さず積極的に迫ってきた、スプリングを軋ませ隣に腰掛け淫靡な手つきで彼の太股を撫でた。直の手の平が触れた場所がぞくりと鳥肌立った。悪寒、寒気、それ以外のもの……ふわりと熱を孕み毛穴が開くような、未知なる官能の感覚。体毛が帯電したかのような戦慄。
 あれは一体何だったのだ。ただ、触れられただけだ。それなのに。
 「…………」
 眉間に皺を寄せ物思いに耽る。
 憂いに閉ざされた横顔にはひんやりと人を拒む冷気が漂っている。
 一昨日の記憶を振り払うように歩調を速めるが、そんな彼を責めるように切羽詰った声が追いかけてくる。
 『寝ぼけてなどいない。意識は覚醒している』
 断言。
 『どうした。僕と性行為に及ぶ度胸もないのか』
 挑発。
 『こんな貧相な体は抱きたくないか。痩せた腹も薄い胸も細い首も不健康に生白い肌も』
 自嘲。
 あんな直は知らない。あんな偽悪的で露悪的な直は知らない。毛布に手を潜らせ彼の太股をなでさすりしたたかに微笑んだ、彼が見慣れた潔癖な少年の顔ではなく淫らな娼婦の顔で耳朶に熱い吐息を吹きかけた。誘惑。
 サムライは混乱した。
 何故こんなことをするんだと直を憎んだ。
 売春班では来る日も来る日も男に犯され体も心も酷く傷付けられて死の一歩手前まで行ったではないか。なのに何故今また自分を粗末にする、自虐の衝動に任せて男に身を委ねようとする?
 サムライは直に殴りかかりたい衝動を必死に堪えて誘惑に抗った、肩に凭れかかる直の体温に理性が蒸発するのを感じながら努めて平静に言った、今晩のお前は正気じゃないと、正気じゃないお前を抱くわけにはいかないと頑固に拒んだ。
 そして直は、禁忌を犯した。
 『苗の体と僕の体と、どちらがより君を酔わせるか実験してみたらどうだ』
 直は笑いながらそう言った。苗と自分とどちらの体がよりいいか比較してみろと過去の傷を抉り煽ったのだ。
 瞬間、サムライは我を忘れた。相手が直だというのに手加減を忘れて突き飛ばし押し倒していた。仰向けに倒れた直が悲鳴をもらしてもその目に恐怖の色が浮かんでも、一度飛散した理性をかき集めるには至らなかった。
 表面温度と半比例し体の芯に憎悪が凝り冷えていくのがわかった。
 床に仰向けに寝た直にのしかかり、その胸ぐらを掴み、鋭い眼光で射竦める。
 これまで敵以外に向けたことのない猛禽の眼光。
 『そんなに俺に抱かれたいか。飢えているのはどちらだ』
 『さかるのは勝手だが、相手は選べ』
 サムライは冷淡に直を拒絶して背を向けた。あれ以来直とは言葉を交わしていない。彼らの一日は沈黙で始まり沈黙で終わる。直もまたあれ以来サムライを避けて房で二人きりになるのを極力避けている。
 食堂で隣り合った席に座っても食事に集中するふりでお互い目も見ず会話もせず倦怠を共有するのみだ。 
 いつまでこんな日々が続くのかと考えると気が滅入る。
 失言は認める。多少言いすぎたと思わないではない。
 しかし、直にも非がある。
 「……あんなはしたない真似をして、けしからん」
 粛々たる大股で歩きながら激しく唾棄するサムライは、いつのまにか自分が房を遠く離れた別の区画に来ていることにも気付かなかった。武士にあるまじき失態、一生の不覚。電池切れかけの蛍光灯が短い間隔で点滅する荒廃した区画に迷い込んだサムライは、いい加減引き返そうと踵を返し……
 「散歩?貢くん」 
 「!」
 振り返る。
 電池の切れた蛍光灯が瞬きをくりかえす通路、一際濃く闇が蟠った一角に少年がいた。壁に背中を凭せて、謎めく笑みを浮かべてこちらを見つめている。流れる黒髪の下には物憂げに煙る双眸、スッと通った鼻筋と薄く整った口元に含羞の風情が漂う少年だ。容姿は全く違えど、どこかサムライと似通った印象を与えるのは両者に流れる血の宿業だろうか。
 「静流」
 驚き名を呼べば、少年が微笑む。
 人の心を虜にする魅惑の微笑。
 壁から背中を起こした静流がゆっくりとこちらに歩いてくる。サムライは微動だにせず静流の接近を待った。
 逃げも隠れもせず堂々と通路の真ん中に立ち塞がるサムライの手前で静止、対峙。 
 「こんなところにいたのか。得物もなく出歩くのは物騒だ。いつ不埒な輩に襲われるともわからん、即刻房に帰れ」
 「相変わらず心配性だな貢くんは。その性格変わってないね、昔から」
 喉の奥で愉快そうに笑い声をたて静流が目を細める。
 サムライもつられて目を細める。
 眼前の笑顔が子供時代の面影に重なり、当時の記憶が鮮やかに甦る。 とうに葬り去ったはずの過去の情景が瞼の裏で像を結ぶ。
 四季折々の花が爛漫と咲き誇る風情ある庭で、無邪気に戯れる子供達。
 地を刷く振袖をたくし上げて桜の枝に手を伸ばすのは、幼き日の静流。
 かつてあった平和な日々に思いを馳せ、束の間感傷に耽ったサムライを現実に呼び戻したのは静流の声。
 「僕のことなら心配しないでも大丈夫。こう見えても帯刀分家の嫡男、自分を身を守る術くらい仕込まれてるよ。貢くんも覚えているでしょう、分家に生まれた者の宿命を。万一本家の跡取りが急逝した場合の保険として、僕は物心つく前から徹底して剣を習わされた。万一君に何かあった時は本家の跡取りが務まるようにって、帯刀の姓を名乗るに恥ずかしくない教育を施された」
 「……ああ。そうだった」
 「でも、結局は凡人どまり。僕も精一杯努力してみたけど、君にはかなわなかった。打ち合いの稽古でも一度として勝てなかった。容赦ないんだもの、貢くん」
 「手加減は相手への無礼にあたる。そんな卑劣な真似できるものか」
 「ふふ。堅苦しいところも相変わらずか。嬉しいよ、君が変わってなくて」
 幸福そうに静流が笑う。
 何故そんなふうに笑えるのか理解できない。
 静流とは疎遠になって久しい。父と叔母が仲違いして分家との行き来が絶えてから既に何年も経つというのに、数年ぶりに再会した美しいいとこは、サムライに屈託なく声をかける。
 サムライは戸惑うばかりだ。
 「本当によかった。安心したよ、僕が思い描いた通りの君でいてくれて」
 二度くりかえし、静流が意味ありげにサムライを見る。
 漆黒に濡れた目でまっすぐ見据えられ落ち着かなくなる。
 こうしてここで会えたのも縁だと割り切り、咳払いをする。
 「静流。お前に聞きたいことがある」
 「なに?」
 静流が首を傾げる。サムライの双眸が鋭くなる。
 凄味を帯びた双眸で静流を睨み、慎重に口を開く。
 「直に苗のことを話したのは、お前だな」
 静寂に支配された廊下にその声は予想以上に大きく響く。
 低く威圧的な声音がコンクリ壁に反響し、殷殷と鼓膜に沁みる。
 声の残響が大気に呑まれて消滅するまで、静流は一言も発さずただそこに佇んでいた。
 緊迫。サムライの双眸がさらに鋭くなる。苛烈な白刃に似た切れ味の眼光……
 「あたり。もうバレちゃったか。そのぶんだと彼、相当思い詰めてたみたいだね」
 翻した手で口を覆い、しとやかに笑う静流を油断なく見据えたままサムライが一歩を詰める。
 「苗のことを知っているのはお前しかいない。ならば直に吹き込んだのはお前しかおらん。静流、お前はやはり」
 そこで言葉を切り、苦しげに顔を歪める。
 「やはり、俺を憎んでいるのか?」
 次第に二人の距離が縮まる。サムライの足が速まる。激情に駆られるがまま静流に歩み寄ったサムライはしかし、体の脇でこぶしを握り固め、抑制した声音で吐き捨てる。
 「俺のせいで帯刀家は没落した。累はお前や薫、伯母上にまで及んだ。帯刀家はおしまいだ。お前が俺を憎むのは当然だ。お前は幼い頃から必死に剣の修行を積んだ、やがては伯母上の期待に応えて立派な後継ぎになる為に励んできた。しかし俺が撒いた醜聞により帯刀家は一族郎党を巻き添えに終焉を迎えた。分家の跡取りたるお前の無念はいかばかりか察するにあまりある。お前が俺を憎むのは当然だ、俺はそれだけのことをしたのだから……帯刀の恥さらしなのだから」
 感情を抑制した無表情で、淡々と言う。
 自責の念に苦しみ葛藤するサムライを静流はただ醒めた目で眺めていた。深々と項垂れたサムライはそれに気付かない。
 体の脇でこぶしを結んだままおのれの罪と向き合いその重さを抱え込み、深呼吸してやっと顔を上げる。
 「俺を許せないならそれでいい。しかし、直を傷付けるのはよせ。直は関係ない、あいつは!」
 「真実を知られるのが怖いの?」
 静流が、動く。衣擦れの音も涼やかにサムライに摺り寄り、その頬へと手を伸ばす。咄嗟のことで払いのける暇もなかった。
 「本当に彼のことが大事なんだね。初めて見た時にわかったよ、ああ、彼が苗さんの代わりなんだって」
 「違う」
 サムライが反駁する。
 直は苗の代わりなどではないと心が叫ぶが、口には出せない。そんなサムライに憫笑を捧げて静流が続ける。
 「展望台で君に寄りそう彼を見てびっくりした。彼、苗さんにそっくりじゃないか。似てるのは顔じゃない、雰囲気さ。君にすべて任せて頼りきって、庇護に甘んじて依存に安らいで、全面的に信頼して。ほら、苗さんにそっくりじゃないか。苗さんも君のことを盲目的に信頼してたものね。ああ、これは悪い冗談だ。僕としたことが無神経だったね、謝るよ。気を悪くしないでね。苗さんは盲目的もなにも実際目が見えなかったんだから」
 「やめろ」
 「光のない世界に生きる苗さんにとって君だけが唯一心を許せる存在だった。苗さんは君のことを心底慕って幸福に結ばれる将来を夢見ていた。一途な女性だったね、苗さんは。苗さんは君のよき理解者であり君は苗さんのよき庇護者だった。そういうのなんて言うか知ってる?共依存って言うんだよ。お互いに縋って溺れて傷を舐め合う優しい関係のこと。ここだけの話、僕、貢くんに嫉妬してたんだよ。苗さんと仲睦まじく寄りそう姿を見て、なんて似合いの二人なんだろうって……」
 「静流、やめろ」
 静流はやめない。
 サムライの傷を抉る行為に残酷な快楽を見出し、嬉々と続ける。
 「君は今も昔も変わってない。よい意味でも悪い意味でも。真実から目を背ける君の卑劣さが苗さんを追い詰め首を吊らせたんだ。君がもっと早く真実に気付いていれば誰をも不幸にする結果にはならなかった。莞爾さんは君のことを心配していた。だから苗さんとの仲を引き裂こうとした、手遅れになる前に。でも、駄目だった。君は何も知らなかった。苗さんの苦悩も、莞爾さんの焦燥も、そして……」
 「やめろ!!」
 恐慌に駆りたてられたサムライが肩に掴みかかるのにも動じず、儚く微笑する。
 薫の面影を宿した笑顔。
 
 「僕と姉さんの恋情も」

 壁が振動し、蛍光灯が揺れる。
 蛍光灯に降り積もった埃がぱらぱら舞いちる。
 白い綿埃が舞う中、静流に引かれるように通路の暗がりへと誘い込まれたサムライの唇が塞がれる。
 柔らかく熱い何か……静流の唇。
 「!ぐっ、」
 壁に背中を押し付けたサムライにのしかかり強引に唇を奪う。
 唇にねっとりと舌を這わせ、愛撫し、唇の隙間から舌を潜らせて歯を舐める。口腔に侵入した異物の不快感に顔を顰めたサムライは、反射的に直の唇の感触を思い出す。
 図書室の鉄扉に押し付け直の唇を奪った夜の記憶が、熱く柔らかい感触に重なりまざまざと甦る。
 あの夜、直の唇を奪ったのには理由がある。夢を、見たからだ。おそろしく不吉な夢。おそろしく生々しい夢。いつも見る悪夢にでてくるのは苗だった。しかし、あの夜は違った。夢に出てきたのは直だった。
 そして。

 『サムライ!』  

 直が、呼ぶ。
 声を限りに助けを求める。しかし間に合わない。必死に走り手を伸ばしてもぎりぎりで間に合わず、直の体はゆっくりと、滑るように奈落へ落ちていく。彼のほうに手を伸ばしたまま、眼鏡越しの目に静かな諦念を宿して、絶望に凍り付いた顔で……
 真紅の劫火が燃え盛る地獄へと堕ちていくのだ。
 夢だと思いたかった。夢であってほしかった。目覚めた時は心の底から安堵した。房を出て人に会いに行くと言い出した直についていったのは、不吉な夢を見た直後だったからだ。直の唇を奪ったのは、直が今確かにここにいると己に言い聞かせて安心したかったからだ。
 夢の中ではいつも苗だった。
 疾駆が間に合わず劫火に呑まれるのは苗だった。
 再び大事な人を失う予感に怯えて、気付けば眼前の直の唇を奪っていた。
 ただそれだけのことなのだ。
 「んっ、は……しず、る!いい加減にしろ!!」
 華奢な細身に反して静流の力は強い。
 引き剥がすだけで腕が疲れた。
 漸く静流を引き剥がしたサムライは、手の甲で唇を拭い、肩を浅く上下させつつ言い放つ。
 「俺に男色の趣味はない、接吻など言語道断……」
 そこまで言いかけ、絶句。
 静流がおもむろに服を脱ぎ出したからだ。
 上着の裾に手をかけ艶めかしく身をくねらせ脱いでいく静流に驚愕する。
 「静流、何の真似だ!?」
 静流の手を掴み制止する。服を脱ぐ手を止めた静流が虚ろな目でこちらを仰ぐ。
 説教を続けようとして、サムライは見た。
 しどけなく裾が捲れた下腹部に乱れ咲く無数の痣。
 指でおされた手形、口唇で吸われた痣……よくよく見ればかつて直の体にあったのと同じ淫らな烙印が全身至るところに散り咲いている。
 「これ、は」
 「強姦されたんだ。だれに、とは聞かないで。答えられないから」
 人肌恋しくサムライの肩に顔を伏せ、静流が気弱に呟く。
 「東京プリズンに来たばかりで囚人の名前と顔が一致しないんだ。相手は複数いた、抵抗できなかった。泣いて叫んで許しを乞うても無駄だった。助けを呼べば殴られた。耐えるしかなかった」
 静流がサムライに抱きつく。
 「君の大事な友達に嘘を教えた前の日だよ。嘘を教えて、彼には悪いことをしたと思ってる。あの日の僕はどうかしていた。自分がされたことを誰かに返したくて、とんでもなく残酷な気持ちで、犠牲者をさがしてあてもなく歩いてるさなかに偶然彼を見つけたんだ」
 「もういい、静流。無理に話さずともいい」
 サムライが苦しげに言い、ぎこちなく静流を抱擁する。
 いい匂いがした。むかし薫がつけていた香水と同じ匂い……静流を抱きしめるのは初めてではない。幼い頃の静流は臆病で、蜘蛛の巣にひっかかったと言っては泣きじゃくり、姉にいじめられたと言っては彼に頼った。
 なかなか泣き止まない静流をこうして抱きしめてやった日のことを思い出し、優しく背中を撫でてやる。
 脳裏に直の顔が過ぎる。
 直を抱いて寝た夜のことを思い出す。
 首筋から匂い立つ清潔な石鹸の香り、直のぬくもり―……
 あれは、直の匂いだ。静流の匂いとは違う。
 直からはこんな甘い匂いはしない……
 「……お前がここに来たわけは、今は聞かん。落ち着いてからでいい。最前俺にあんな振るまいをしたのも、辛い目に遭い錯乱していたからだ」
 静流には聞きたいことが山ほどだった。何故東京プリズンにきたのか、どんな罪を犯したのか、叔母と薫は今どうしているのか……それら全てを一度に聞きたい欲求を押さえ込み、今は静流をなだめることだけに専念する。静流の肩を抱く手に力を込める。
 幼い日、姉にいじめられたと泣くいとこにそうしたように。
 性欲はない。あろうはずがない。疚しい気持ちなどもとよりありはしない。
 ただただ傷付きうちひしがれた者を癒したい一心で、その体を抱きしめる。
 「辛かったな、静流。だがもう大丈夫だ。俺がついている」
 腕の中でかすかに震える静流の体温を感じ、目を閉じ、断言。
 「下郎どもに手だしはさせん」
 サムライの腕の中で顔を伏せ、肩を震わせ静流は泣いていた。

 否。
 笑っていた。
 邪悪に、邪悪に。とんだ茶番もあったものだと、肩を震わせ声を殺し笑っていた。

 肩の震えを嗚咽と勘違いしたサムライはますます強く静流を抱きしめる。
 そうして静流を抱きながら、あの夜抱いた直は静流よりさらにかぼそく震えていたなと思い出した。

少年プリズン(未完) | コメント(-) | 20050620014737 | 編集
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