ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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一話

 ディープキスってさ、息が続かないよね。もって三分が限界。
 試してみるといいよ、口で口を塞いで舌を絡めてお互いの前歯がぶつかるくらいやってごらんよ。呼吸困難に陥るから。
 でも素人ならともかく、僕の場合ディープキスの上手い下手ってのは商売の本質に関わってくるから。自分で言うのもなんだけど、僕はディープキスひとつで男を骨抜きにできる自信がある。経験値ってやつ?それがちがうから。伊達に六歳から小遣い稼ぎで体売ってないよ。ごたぶんに漏れず僕んちは母子家庭で貧乏だったからとうぜんお小遣いなんてもらえなかったし、そしたら自分の欲しいものは自分で稼いだ金で買うしかないっしょ?オヤジにケツの穴貸してそれでお小遣いはずんでもらえるなら万万歳。まあ、最初はちょっと(かなり?)痛かった気がするけどむかしむかしのことだし殆ど覚えてないんで結果オーライ。
 今じゃ単純に純粋に気持いいよ。よっぽどプレイが荒っぽいか愛撫がへたな奴はべつとして。
 で、今僕の上にまたがってる奴はどっちかというと前者かな。
 囚人服を脱いでベッドに横たわった僕の上に座っているのは、上半身裸の囚人。天井中央から吊り下がった仄明るいランプを受け、光の輪を冠した銀髪がもぞもぞとうごめいている。女も羨むような白い肌は大理石のようになめらかできめこまやかだけど、裸の上半身のいたるところに刻まれているのは無残な傷痕。ナイフで切り裂かれたとおぼしき無数の傷痕が、ランプの光を受けておぼろげに浮かび上がっている。
 さらさらの銀髪となめらかな肌でとんでもない美形を期待しちゃったひとはお生憎様。
 僕の上で連続して腰を動かしてる男はお世辞にも美形とはいえない。頬骨がとがってせりだした鋭角的な顔に嵌めこまれているのは、ぞっとするほど冷たいアイスブルーの双眸。肉の薄い神経質な鼻梁と口角のさがった酷薄そうな唇。げっそり痩せこけた頬はクスリをやってる証、どす黒い隈がおちた目はどこか狂信的な光をたたえている。
 死神のフードを剥いでみたら案外こんな顔がでてくるのかもしれない。皮が朽ち果てて骨になってゆく途中段階の人間の顔。
 骸骨と寝るなんてぞっとしないね。けど、お金のためお金のためと念じて耐える。
 「うっ」
 僕の上にのっかっていた男が低く呻いて果てた。
 銀髪を乱し、僕のおなかに上体を突っ伏して荒い息を吐いている男にあっけない気分で見下ろす。はやっ、もう?プレイが自己中な上に早漏だなんてすくわれない。銀髪を乱し、裸の背中におびおただしい玉の汗を浮かべた男をものたりなく感じつつ、そっと上体を起こす。
 「気持よかった、サーシャ?」
 あでやかな笑顔を浮かべて、聞く。
 緩慢な動作で上体を起こしたサーシャが、殺意を秘めた目で僕を睨む。サーシャは呼び捨てされるのに慣れてないのだ。サーシャに傅いている少年たちはいつも彼のことを「サーシャ様」と呼んで恐れ奉っている。北の皇帝をなれなれしくも呼び捨てにした僕は不敬罪に問われてギロチンにかけられてもおかしくない。
 けど。
 サーシャは指ぱっちんで手下を呼び、ギロチンをもってこさせようとはしなかった。
 情事で乱れた呼吸を整えながら、アイスブルーの双眸に氷点下の殺意を閃かせただけだ。 
 「―ああ」
 やがて、息がおさまったサーシャの口から感情の欠落した声がもれる。
 寝乱れて皺になったシーツから体を起こし、上半身の汗が乾いてゆくのを待ちながら、淡々とサーシャが言う。
 「お前は薄汚い私生児の混血だが、舌使いのうまい良い犬だ。役に立つ犬は嫌いじゃない」
 わあ、さすが皇帝。こんな時まで無駄に偉そうで堅苦しい物言いだ。
 苦笑したくなるのをこらえながら、床におちていた囚人服を拾い上げてささっと身につける。汗と垢の染みついた囚人服の袖に腕をとおしながら、ベッドに腰掛けて虚空に目を馳せているサーシャをちらりと流し見る。
 「で?ヤる前に聞いたけど、もっかい確認していいかな」
 上着の裾をおろしてへそを隠した僕は、乱れた髪を軽くかきあげる一動作の間に非の打ち所ない接客スマイルをこしらえる。
 「きみたち北棟の連中は本気でレイジを潰す気なんだね」
 「ああ」 
 言葉少なくサーシャは頷いたが、その目に荒れ狂っているのは長年王座を独占し続ける東の王に対する憎悪。おびただしい傷痕が刻まれた裸の上半身をランプの光にさらしたまま、口の端をかすかに歪めて吐き捨てる。
 「もうこれ以上、あの薄汚い混血児に私の上に居座られるのは我慢ならん。あの男を王座からひきずりおろして敗北と屈辱を舐めさせるためなら手段は問わん」
 「ブラックワークのリングで正々堂々戦って勝利しようとは思わないのかな」
 「痴れたことを」
 口にするのも汚らわしいと、サーシャの表情が一段と険しくなる。
 「あの男とおなじ空気を吸うのさえ汚らわしいというのに、私に同じ舞台を踏めと?軽佻浮薄な混血の王気取りと同じ舞台にあがって満場の観衆の見せ物になれと?正統ロシアの血をひく皇帝と、どこの淫売の股から産み落とされたかもわからん混血めが東西南北の愚民どもの前でともに王座を競えと?」
 サーシャの目には狂熱的な野心が輝いていた。
 まったく、コイツはいかれてる。サーシャに悟られないよう、こっそりため息をつく。サーシャのプライドの高さは異常だ。ほとんど病気といっていい。サーシャに目をつけられたレイジにちょっぴり同情。
 大上段に大義名分をふりかざしてはいるけれど、サーシャはレイジとの力の差を自覚している。入所以来不敗の王として東西南北トップに君臨してるレイジと正規試合でぶつかった場合、一対一ではサーシャに勝ち目がない。だから正規試合が行われる前に北棟のガキどもに召集かけて、目の上のたんこぶであるレイジを再起不能にしようという魂胆なんだろう。
 サーシャの陰険な策略にうんざりしつつ、そんな内心はおくびにも出さず、続ける。
 「はいはいわかりました、ジ・エンペラー。皇帝の犬の役目はレイジの弱味を嗅ぎ出してご主人様にご報告すること」
 「賢い犬は好きだ」
 サーシャが顔筋を痙攣させる。ひょっとして笑ってるのかなこれ?
 爬虫類の笑顔を訝りつつ、サーシャの隣に腰掛ける。片ひざを折り、懐に抱えこむ。抱き寄せた膝の上に顎を乗せ、小首を傾げる。
 「でもさ、一斉攻撃しかけるのに遠まわしに弱味なんて探って意味あるの?まだるっこしくない、それ」
  「不満か?」
 「いいえ全然!」
 眼光鋭くサーシャに睨まれ、ぶんぶんと首を振る。
 「『念には念を』と日本語の言い回しにもあるだろう」
 正面の壁へと視線を戻したサーシャが、もったいぶってつけくわえる。
 「北を率いる皇帝たるもの、戦争を仕掛ける前の情報収集は必至。敵のことをよく知らなければ全力で叩き潰すことはできん」
 サーシャがなにかを握りつぶすように拳を握る。
 「奴の弱味を掴めばさまざまな趣向が凝らせる。可能なかぎり奴の苦痛を長引かせ、最大級の屈辱を舐めさせる方法がな」 
 後半が本音とみたね。
 おもむろにサーシャが腰をあげる。手前の床におちていた囚人服を拾い上げ、手早く身につける。洗練された手つきで上着の裾をおろしたサーシャが、首だけ捻って僕へと向き直る。
 「皇帝直々に北の間者に任命されたことを光栄に思え、赤毛の犬」
 「報酬は?」
 「働き次第だな」
 そうきたか。予想はしてたけどね。
 ぴょんと身軽にベッドからとびおり、身支度を終えたサーシャが優雅な歩みで房をでてゆくのを見送る。小走りにサーシャの前にまわりこみ、皇帝の御手がふれるより早くノブを握り、恭しく鉄扉を開ける。鉄扉の脇にしりぞいた僕を満足げに一瞥し、感じ入ったようにサーシャが呟く。
 「本当によくできた犬だ」
 「お褒めにあずかり光栄です」
 ふざけてお辞儀してみせたけど、サーシャはこれを本気と受け取ったようでますます頭に乗る。廊下にでる間際、僕とすれ違いざまに赤毛に手を乗せてぽんぽんと叩く。しっぽを振って骨をとってきた愛玩犬にするみたいな、ありありと優越感がうかがえる動作。
 バタンと鉄扉が閉じる。
 格子窓の向こうをきびきびした大股で去ってゆくサーシャに、僕はおもわず叫んでいた。
 「チップはくれないの!?」
 なんだよ、わざわざ先回りして扉を開けてやって損した。
 サーシャに撫でられた頭が途端に汚らわしくなってわしゃわしゃと乱暴にかきまわす。これでよし。前よりひどく逆立った赤毛をひとふりし、ぷりぷりしながら房の中に戻る。
 と、僕とサーシャが話してたベッドの向かい側、もう一対のベッドの下で何かがごそごそしてるのが目に入った。ゴキブリにしては大きすぎる。あれは……
 「ぷはあっ!」
 ベッドの下から息を吹き返したのは、天然パーマの黒髪に黒い肌、いつもなにかに驚いてるようなまん丸の目の組み合わせの男の子。
 「いやー暑くて暗くて死ぬかと思いましたよ、ゴキブリまで沸いてきて危なく叫び声あげるところでしたよ!」
 ハイテンションな早口でまくしたてる男の子のそばにしゃがみこみ、その顔を覗きこむ。
 「デバガメなんていい趣味してるね、ビバリー」
 「人聞き悪いこといわないでくださいっス、リョウさん!」
 きっとして僕を見上げた男の子の名はビバリー。もちろん本名じゃない。本人がビバリーヒルズ出身と主張して譲らないところからこのあだ名がついたけど、なんでビバリ―ヒルズの高級住宅街でお上品に育った坊っちゃんがこんな極東の刑務所にぶちこまれてるのか不明。たぶん九割九部九厘の確率で嘘だ。
 「デバガメじゃないならなにさ、盗撮?」
 「だれがヤロウとヤロウが乳くりあってる現場好き好んで盗撮するんすか、だいたい東京プリズンじゃ盗撮なんてしなくても薄暗いとこ通りかかればヤロウがヤロウ犯ってる現場拝めますから売れませんよ!」
 「失敬だね、そんじょそこらの素人と僕のセックスを一緒にしないでよ」
 僕は十四年間「コレ」で食ってきたんだから、そんじょそこらの素人と一緒くたにされちゃあプライドが傷つく。
 「リョウさんが床上手なのはよーっくわかりましたから……さすが渋谷最大の広域売春組織のリーダーです、あっぱれです、万歳!」
 「馬鹿にしてるわけビバリー。なんなら今ここで試してみる、僕のテク?三秒で天国にイカしてあげるよ」
 「お断りしまス、再三言ってますが僕はノーマルなんス!上も下もおことわりです!」
 上着の裾に手をかけて脱ぐ真似をしたら、とうとうビバリーは半泣きになった。可哀相だし、これくらいにしといてやるか。
 「僕はたんに逃げるタイミングを逃しただけです、リョウさんとお客人が廊下を歩いてきたと気付いた時にはもう時間的な余裕がなかったんス……」
 「だからベッドの下に頭つっこんで覗き見してたわけね」
 哀れっぽい声で釈明するビバリーを愉快げに観察してた僕の脳裏に、疑惑の暗雲がたちこめる。
 「―ということはビバリー、僕とサーシャの話聞いてたの?」
 「え、まあはあ、最初から最後までばっちりと。喘ぎ声こみで」
 まずったなこりゃ。
 考えてることがもろに顔に出たみたいで、ビバリーが慌てて首を振る。
 「大丈夫っスよリョウさん、このことはだれにも言いませんから!リョウさんが北のスパイでレイジさんをハメようとしてるだなんてそんな恐ろしいことはキング牧師に誓って僕の胸の中だけにしまっておきまス!」
 首と手を振って必死に訴えるビバリーをしばらく疑り深く観察してたけど、長々と息を吐いて彼の言い分を認める。べつにビバリーの人柄を信頼したわけじゃない。ビバリーだって危ないヤマは踏みたくないだろう。もし何かの間違いで僕が北のスパイだってことがバレて同房の彼に危害が及んだ場合も「知らぬ存ぜぬ」で通すつもりなんだ、きっと。
 「しっかしリョウさん、危ない橋渡ってますねえ」
 他人事みたいな口ぶりでビバリーが感心する。
 「リョウさん今だってイエローワーク外の副業で稼いでるじゃないスか。この上まだお小遣いが欲しいんスか?」
 「欲しいよ。お金ダイスキ」
 刑務所で貨幣が流通してるってのも妙な話だけど。今ぼくが話題にしてるお金ってのは、看守が横流ししてるエロ本や煙草やチョコレートやガムやその他嗜好品―どうかするとイケナイおくすりなんかもあるね―とか、全部こみの名称。東京プリズンでは物々交換が主流だけど、資本主義社会の荒波の余波ってのは刑務所内にだってちゃーんと波紋をおこしてる。
 まあ、僕の場合はそれだけじゃないんだけどね。もちろんお金は好きだけど、囚人相手に体売ってるのは趣味みたいなもんだし。趣味が実益を兼ねてたらこりゃもう言うことなしっしょ?違う?まあ東京プリズンにはタチの悪い性病が蔓延してるから、その点はしっかり予防してるけど。
 『君の性生活には全く関心がないし知りたくもないがこのコンドームは生地が薄い南米産だから、エイズや性病感染を防ぎたいなら安全性の保障された国産品を買え』
 ズボンのポケットに手をやり、ごわごわしたふくらみを確かめる。
 鍵屋崎の言葉が脳裏に響く。苦労知らずの日本人のくせに偉そうに知ったかぶって……気に入らない。僕だって自分が使ってるコンドームがいまいち安全性が心許ない安物だってのはよく知ってる。でも、看守が卸してくれるのは不良品のコンドームっきゃないんだから仕方ないじゃないか。生地が薄くてぺらぺらに頼りない安物でもないよりマシだ。
 「ところでリョウさん、聞きましたよ。例の親殺しがイエローワークでどえらいことやらかしたって!」
 「さっすがビバリー、情報早いね」
 好奇心むきだしで顔を輝かせたビバリーに苦笑する。僕がベッドに腰掛けて話を聞く体勢を整えるまでに、ビバリーは唾をとばして続ける。
 「大人しそうな顔してるくせにやるじゃないっスか、彼。えーと……ヤギ?」
 「カギヤザキ ナオ」
 「そうそうカギヤザキ!ったく日本人てなんでこんな覚えにくい名前してるんでしょうね、早口言葉みたいだ。で、そのカギヤザキが何ですか、仕事中に自分のケツおっかけてきた凱の一味を針金でぐさっとやったって!」
 「その針金ぼくが貸したんだよ」
 「マジですか!?え、てことはリョウさんがいつも持ってるあの……?」
 「そう、僕の大事な商売道具。まいったよ、ちゃんと洗って返してほしいよね」
 冗談めかして首をすくめてみせる。僕が鍵屋崎の件に関係してたと知ったビバリーは俄然興味津々と身を乗り出してくる。
 「リョウさん、現場に居合わせたんならそうと言ってくださいよ!水くさいじゃないスか!」
 「唾とばさないでよ汚いなあ。たしかに居合わせたけど、べつになにも言うことないよ。凱に追いまわされてぷっつんキレた日本人がぼくから借りた針金でガキの目ん玉ぐさっとやっただけ。で、台湾・中国その他の国々入り乱れての大乱闘にケリつけたのは安田の銃声一発」
 人さし指でピストルを撃つ真似をしてみせる。興奮した面持ちで僕の話に耳を傾けていたビバリーが、頬を上気させて感嘆の声を発する。
 「すっげえ!日本人怒らしたら怖いっスねー」
 「そうだね。特にメガネは怒らせたら怖い」
 偶然かもしれないけど、鍵屋崎も安田もメガネをかけてる。なんとなく、顔と雰囲気も似てる。……あっと、そうだ。
 「どこ行くんですかリョウさん?」
 ベッドから立ち上がって鉄扉へと向かいかけた僕を見て、ビバリーが目をしばたたく。ノブに手をかけて振り向いた僕は、含みありげにウィンクする。
 「東棟で話題沸騰中のメガネくんから商売道具を返してもらいにいくのさ」
 僕はイエローワーク担当の囚人だけど、ほかにいくつかの副業をもっている。娼夫、ドラッグストア、北のスパイ。
 そして数ある副業の中で、売春の次に需要があるのは……
 key store、だ。

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少年プリズン(未完) | コメント(-) | 20060507011443 | 編集
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