ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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十五話

 邂逅の日。東京プリズンは朝から異様な空気に包まれていた。
 挙動不審な行動が目立ったのは主に看守で囚人は平常通りだった、東京プリズンの厳密な規則に定められた通り早朝五時に起床して点呼をとった。
 ここまではいい、いつも通りだ。
 しかしその後囚人に下されたのは甚だ不可解な命令だった。
 「今日は朝食前に重大な報せがある。点呼終了次第各自中庭に移動、待機を命じる。いいな、わかったな。三分だろうが一分だろうが遅刻した者は独居房送りだ」
 東京プリズンにおける看守の命令は絶対だ。
 囚人たちは寝不足で充血した目を擦りつつ、無秩序に通路に広がって中庭へと移動する。朝早くに叩き起こされた挙句に一日始めの栄養源となる朝食を摂る暇も与えらず、わけもわからぬまま警棒に追い立てられて移動を開始した囚人たちに混ざり、僕とサムライもまた歩き出す。
 サムライは怪訝な顔をしていた。定時に起床して食堂で一斉に食事をとり、半日を過酷な強制労働で潰したのちに帰還する。それが一年三百六十五日変わることない東京プリズンの日常で営みだ。平凡で単調で退屈な毎日。なのに今日に限って何故囚人が一堂に集められるのかと訝しんでいるのだ。
 僕はサムライの横顔を眺めながら全く別のことを考えていた。
 昨日のこと……中央棟地下一階の薄暗い通路で僕が目撃した光景、静流と交わした会話。
 『帯刀貢を返してもらいに来たのさ』
 静流は怪しく微笑みながら東京プリズン来訪の目的を明かした。
 静流が東京プリズンに来た目的は帯刀貢を取り返すことだった。
 サムライを取り返すとはどういうことだ、静流は一体何を企んでるんだ?
 疑問ばかりが深まり困惑が増す。
 瞼の裏には扇子を翻して闇に舞う白拍子の艶姿が焼き付いてる。足音すらたてぬ静的な足運び、しなやかでゆるやかな挙措、女形のようにたおやかな一挙手一投足。僕は朧に闇に浮かび上がる静流の舞に眩惑された、魅了された。と同時に底知れぬ恐怖を覚えた。静流の核を成すおそろしく物騒なもの、汚泥が沸騰するごとき負の感情の吹き溜まりを幻視したのだ。
 静流の目的は何だ。
 サムライを返してもらいに来たとはどういう意味だ。
 胸に不安が募る。サムライは何も知らずただ前だけを見て僕の隣を歩いている。食堂で話してるサムライと静流を見た時に感じた焦燥がまざまざと甦る。静流は異分子だ、夾雑物だ。過酸化水素水から酸素を発生させる実験で用いられる無機触媒の二酸化マンガンだ。過酸化水素水に二酸化マンガンを投入すれば必ず化学反応が発生する。
 静流は僕とサムライの関係に化学反応を起こす触媒だ。
 「どうかしたか。ジッと俺の顔を見て」
 「!」
 サムライの声で我に返る。思考を断ち切り顔を上げる。隣を歩くサムライが不審げに眉をひそめて僕を覗きこんでいる。自覚はないが、また独り言を呟いていたのだろうか?急に気恥ずかしくなった僕は、顔の赤さを隠して眼鏡のブリッジを押さえる。
 「サムライ、無精髭の手入れはこまめにしたほうがいいぞ。不潔かつ不衛生だ」
 「……今朝は時間がなかったんだ」
 サムライがばつ悪げに顎を撫でる。 
 「君は外にいた頃もそんなに無精していたのか。身だしなみもろくに整えないなんて恥ずかしい」
 「無論外にいた頃は身だしなみにも気を遣っていた。着衣の乱れは心の乱れだ」
 「さぞかし苗に口うるさく注意されたんだろうな」
 苗。サムライの恋人。サムライが今でも心寄せる盲目の女性。僕は実際に苗に会ったことがないが、静流は幼少時から故人と面識があったらしく苗の人となりを回想する口ぶりには郷愁が滲んでいた。かつてサムライが恋した苗とはどんな女性だったのだろう。静流の言う通り僕は苗と似ているのだろうか?だからサムライは僕に接近した、東京プリズン入所以来十ヶ月も献身的に尽くしてくれたのか。
 僕は所詮苗に顔が似てるだけの身代わりに過ぎなくて。
 サムライがあの夜僕にキスしたのは、苗を思い出したからで。
 「………」
 無意識に唇に触れる。下唇の膨らみをなぞり、物憂く目を伏せる。僕の物ではない唇の感触を反芻しようとして、既に彼のぬくもりが失せたことに気付く。サムライと唇を重ねた時に感じたのは無精髭が皮膚を擦る荒削りな感触で、あのキスはきっと、苗にしたものとは感触が異なるのだと追認する。
 「キスする時は髭を剃るのが常識だろう」
 苛立ちを込めて吐き捨てる。当然サムライには聞こえない声で。サムライだって髭を剃れば十分若く見えるのに、脂じみた長髪をざんばらに伸ばして無精髭を散らした容姿はお世辞にも垢抜けてるとはいえない。有り体に言えば野暮ったい。まるで素浪人か世捨て人だ。君は何世紀の人間だと問いたい。
 やがて、その他大勢の囚人とともに中庭にでる。
 「なんだこれは!?」
 時刻は夜明け前。砂漠の気温は零下に近く、中庭には藍色の闇が立ち込めている。白い息を吐きながら中庭を見渡した僕は、愕然と立ち竦む。
 人、人、人。
 中庭は全包囲見渡す限り人で溢れて猥雑な賑わいを見せていた。召集をかけられたのは東棟の囚人だけではない、東西南北全棟の囚人が朝早くに呼び出されたのだ。中庭に集合した囚人の数は肉眼では把握できない、東京プリズンのほぼ全ての囚人が集合してるのは間違いない。
 二週間前のペア戦では地下停留場もこれと同じ賑わいを見せたが、中庭のほうが面積が狭いため反比例して人口密度が高くなる。
 人口過密状態の中庭を見渡してあ然とした僕の肘をサムライが引っ張る。何をするんだと抗議しかけ、口を閉ざす。たった今まで僕が突っ立っていた場所を囚人の大群が通過したのだ、怒涛の如く。
 「余計なことをするな。接近には二秒前から気付いていた、引率されずとも場所を空けるつもりだった」
 サムライの手を邪険に振りほどき、意を決して中庭に歩み出り、雑踏に身を投じる。人ごみに翻弄されながら見知った顔を捜して視線を巡らせば、周囲から頭一つ抜けた長身が目にとまる。明るい藁色の髪を冠した頭だ。
 「よ、キーストア」
 レイジがこちらに気付いて軽薄に手を振る。隣にはロンがいた。昨日食堂を飛び出して行って以来だがあの様子だとまだ仲直りしてないと見える。
 サムライと顔を見合してレイジに接近、背後に並ぶ。
 「一体この騒ぎはなんだ、早朝から。火事か浸水か異常事態が発生したのか。避難訓練の一環か」
 「さあ?知らね。俺もわけわからず叩き起こされて、看守にケツひっぱたかれて中庭に来たんだよ。なんか面白いショーでも始まるんじゃねえの?たのしみ」
 「楽天家だな。上の人間がそんな愉快な催しを仕掛けるわけがないだろう」
 「わかんねーぜ、たまには囚人にサービスしてくれたってバチあたらねーと思うけど……なあロン」
 レイジがなれなれしくロンに声をかける。が、ロンは応じない。憮然とそっぽを向いてポケットに手を突っ込んでいる。わかりやすく不貞腐れた態度にもへこたれずレイジが機関銃の舌鋒で畳みかける。
 「また無視かよ、つれねーなあ。昨日からさんざん謝ってるのにまだ許してくれないわけ?ねえ、何語で謝ったらいい?ソーリー・謝謝・パルドン・ミスクーズィ……」
 「上から英語中国語フランス語イタリア語。言葉を変えても誠意がこもってないなら意味がない。おまけに謝謝は『ありがとう』だ、謝罪の言葉じゃない。中国語で謝罪するなら『対不起』だ」
 レイジの言い間違いを淡々と訂正すれば本人が非常にいやな顔をする。無知で無教養な人間に疎まれても一向に僕のプライドは傷付かない、よって不快ではない。
 レイジはだらしなくロンに寄りかかり、両手を合わせて拝み倒す。
 「俺が悪かったって、反省してるよマジで。な、このとーり!」
 「嘘だろ」
 不信感に凝り固まったロンがぶっきらぼうに呟く。今日初めてロンから反応があったらしいレイジはそれだけで狂喜して笑み崩れる。何というか、単純な男だ。
 「嘘じゃねーって。昨日のアレは俺が無神経だったよ、処女喪失したばっかで不安定なお前の気持ちも考えず恥ずかしい思いさせちまったって反省してるよ。俺の腕の中で喘いでたお前があんまり可愛かったからまわりの連中に自慢したかったんだよ」
 「調子いいこと言ってんじゃねえ、俺の身になれ俺の身に!東棟のヤツらでごったがえした食堂でどんなふうに喘いだかよがり狂ったか全部バラされて大恥かいたんだぞ、もう東京プリズンで生きてけねえって深刻に悩んだんだぞ!?どうしてくれんだよ色鬼、俺が大手振って表歩けなくなったらお前のせいだからな、責任とれよ!!」
 怒り爆発したロンがレイジの胸ぐらを掴んで食って掛かる。
 「お前ときたらいっつもそうだ、俺はお前と違ってまともな神経の持ち主なんだよ、食堂であんなことバラされて笑って済ませるはずねーだろが!お前に抱かれてやったのは人生最大の間違いだった、もう絶対お前になんか抱かれてやんねーから、指一本だってさわらせてやんねーから!俺最初っから普通に女好きだしお前に抱かれた時だって痛いだけで全然気持ちよくなかったし」
 「嘘つけ。俺のテクでメロメロになったくせに」
 「吹かしてんじゃねえ」
 胸ぐらを掴む手に力を込めて凄んだロンに笑いかけ、レイジが言う。
 「だってお前、俺のこと考えながらオナニーやったんだろ」
 「………………………な!!?」
 僕はロンの顔が赤から青へ、また白へと変色するのを確認した。レイジの胸ぐらから手を放したロンが口を開閉、混乱を極めて反論を試みるも呂律が回らずに舌を噛む。
 「誰に聞いたんだよ、ってリョウか、あいつしかいないもんな畜生!あいつ黙ってるって言ったくせに早速音速で広めやがって裏切り者、チョコで買収されるんじゃなかった、ほいほい追い返されてやるんじゃなかった!一本残らず赤毛毟ってから喉にチョコ突っ込んで窒息死させてやるんだった!!」
 「照れるなロン」
 「触るな、無節操が伝染る」
 激しい自己嫌悪に苛まれたロンが頭を抱え込んで項垂れる。僕はロンに同情した。よりにもよってリョウに自慰の現場を見つかるとは運が悪い。噂好きなリョウは昨日から今朝にかけて東棟じゅうを飛びまわってロンの自慰を目撃したとすれ違う囚人に片っ端から吹き込んでるに違いない。
 「そんなに深刻に思い悩むほどのことでもない、思春期の少年なら誰でも日常的にすることだ。健康かつ健全な証拠だ。君の年頃なら異性に対する性的興味や性欲が昂進して夢精したり股間に手が伸びるのは当然だ。医務室のベッドで自慰に耽った点に関しては不注意だとあきれなくもないが」
 「そんなフォローいらねえし頼むから自慰とか夢精とかまわりに聞こえる声で連呼しないでくれ!」
 ロンをフォローするつもりが逆に追い詰めてしまったらしい。羞恥心に火がついたらしく顔を紅潮させて地面にへたりこんだロンを見下ろし、ため息を吐く。レイジはにやにや笑ってる。やはり反省の色がない。
 「いっそ開き直っちまえよ、俺の女だって。そっちのほうが人生楽しいぜ」
 「お前の女になったら人生お先真っ暗だ」
 「同感だ。ロン、レイジは昨日も君のいないところで……」
 「シャーラップ!」
 レイジがすかさず僕の口を塞ぐ。僕の口から静流と接触した真相が漏れるのを未然に防いだレイジは安堵に表情を緩め、ロンの懐柔に着手する。
 「これからは十分気をつけるよ、お前の気持ち考えてお口にチャックするよ。だから頼む、今回だけは許してよ。ね?」
 「死ね」
 「ロンの腹の上で死ねるなら本望だ」
 「本当に死ね。今の発言でお前の評価地の底まで暴落したよ」
 痴話喧嘩中のロンとレイジは放っておいて、サムライと並んであたりを見まわす。人口過密状態の中庭では囚人が押し合いへし合いして数十箇所で乱闘が起きていた。夜明けの空には闇の帳が落ちて視界を翳らせる。中庭に漂う冷気に肌寒さを感じ、二の腕を抱いて身震いした僕にサムライが声をかける。
 「大丈夫か」
 「だいじょう、っくしゅん!」
 語尾はくしゃみになった。あまり大丈夫じゃないようだ。風邪をひいたらこの後の強制労働にさしつかえると上着越しの二の腕をさすり暖をとる。鼻がむず痒い。もう一回くしゃみをしそうだ。口を手で押さえて俯いた僕の肩を、不意にぬくもりが包む。
 背後に佇んだサムライが、僕の肩に腕を回していた。
 「……俺が盾になれば少しはマシだろう」
 「……人間の平均体温は34度から36度、現在の気温は2度か。なるほど、少しはマシかもな」
 僕だって好き好んで風邪をひきたくない。僕は免疫力が弱いから一度風邪をひくと長引くのだ。風邪が悪化して肺炎を併発したら即命取りになりえる。サムライに肩を抱かれ、身を凭せる。僕らのそばでは相変わらずロンとレイジが喧嘩してる。元気がいいな、と羨ましくなる。
 これから何が始まるんだろう。
 得体の知れぬ不安が募る。僕らが中庭に呼び出された理由はまだ知らされてない。僕らは何も告げられぬまま朝早くに叩き起こされて駆り集められたのだ。居並ぶ囚人の顔にもこれから起こる出来事に対する不安が表出してる。 
 ふと、前方で動きがあった。
 「!」
 サムライと同時に顔を上げ、前方を注視する。
 その時初めて気付いた、中庭の前方に演台が設けられてることに。昨日まであんな物なかった、存在しなかったのに今日になって忽然と出現した。
 胸騒ぎがいや増す。心臓の鼓動が高鳴る。演台の存在に気付いたのは僕だけではない。それまで演台を隠すように並んでいた看守が散開したせいで俄かに異物が目にふれて、囚人何名かが違和感を口にする。
 空気の質が変容する。無秩序な喧騒が興奮のさざめきに一掃され中庭の空気が剣呑に塗り替わる。
 静電気を帯びたように空気が殺気立ち、肌が粟立つ。
 「……面妖な」
 サムライが虚空に目を据えたまま、かすかに唇を動かす。サムライの腕に抱かれた僕は心臓を鷲掴みにされたような戦慄に竦んで、ただただ目を見開き、正面中央の演台を凝視する。
 脳裏にフラッシュバックする光景。幾つかの断片。
 イエローワークの強制労働中に不吉な予感に突き動かされて砂丘の頂に立った僕が見た『車』そうだ黒い車、砂漠には場違いで不似合いな黒塗りの高級車が砂煙をもろともせず颯爽と走りぬけて『タジマ』高部座席の車窓を掠めたのは確かにタジマだった否違うタジマはもういない、もはや永遠に東京プリズンを追放されたのだ。じゃああれは?あれは誰だ?タジマに酷似した別人だとでも言うのか。
 「サムライ、僕は悪夢が現実を蚕食する瞬間に立ち会ってるのかもしれない」
 震える声で言葉を紡ぎ、サムライの腕に、ぬくもりに縋る。   
 中庭に集った囚人が何かに呼ばれたように一斉に正面を向く。興奮のさざめきが急激に膨れ上がり驚愕のどよめきとなる。
 最初に「それ」に気付いたのは最前列の囚人だった。
 最前列に位置した囚人が悲鳴をあげて指さした場所には、一匹の犬がいた。
 犬。間違いなく犬だ。ネコ目イヌ科イヌ属、鼻腔が突出した顔貌が特徴的な狩猟動物。種類はドーベルマン。よく手入れされた毛並みは艶々と輝いて磨き抜かれた黒曜石の如き光沢を放っていた。だが、獰猛な目をしていた。誰にでも媚を売る愛玩動物ではないと自己主張するかのように闘争心を剥き出した苛烈な双眸で、飢えに息を荒げて口から大量の涎を垂らしていた。
 ドーベルマンの口から零れた唾液が、コンクリートの地面で跳ねる。
 東京プリズンに来て初めて、鼠以外の動物の姿を目にした。
 東京プリズンには元から犬などいなかった。この犬は外部の人間の手によって連れ込まれたのだ。
 群れの頂点たる貫禄で四肢をそびやかした犬から、そのリードを取る人物へと視線を移す。
 高級感ある三つ揃いのスーツを隙なく着こなした痩せぎすの男がいた。 
 この上なく陰湿かつ陰険な性格を反映するかのごとく粘着質な目つき。 
 タジマと酷似した目つき。
 犬のリードを引いて優雅に歩き出す男に満場の視線が集まる。犬は従順に頭を垂れて男に従った。夜明けの空に硬質な靴音を響かせ、軍人めいて律動的な歩調で中庭を横切り演台に上った男は、自分の影響力が浸透するのを待つかのように尊大に顎を引く。

 演台に立った男からは権力の匂いがした。
 腐敗した権力の匂いが。

 男の顔は二週間前、東京プリズンを去った人物に酷似していた。体重こそあからさまに違うが陰険な眼光を宿した双眸も酷薄な口元もタジマそのものだ。血の繋がった実の兄弟のように容貌は似通っているが男は知性を加味する縁なし眼鏡をかけていた。
 レンズの奥から覗く目には剃刀めいて冷徹な光があった。
 誰もを圧倒して誰もを従わせる傲慢なエリートの目……人を人とも思わない冷血な自信家ぶりが窺える眼差しは鋭利に研ぎ澄まされて、催眠術でもかけるようにたった一瞥で僕ら囚人の心を掌握した。
 鞭のような痩身を高級スーツで包み、犬を連れて演台に上った男が厳かに口を開く。
 そして、自己紹介する。
 「囚人諸君、初めまして。この私こそが無能な元所長に成り代わり新たに東京少年刑務所の所長に就任した政府直々に派遣された優秀かつ完璧なるエリート、やがてはこの日本を掌握するエリートの中のエリート、君たち愚鈍なる家畜を徹底的に管理教育して従順な牧畜へと調教せよと任命された……」
 背広の胸に手をあて、男は余韻たっぷりに言った。
 冷静沈着に落ち着き払っていながら侮蔑もあらわな態度で、嘲るような口調で。
 僕ら囚人を愚鈍な家畜としか見ず、家畜を調教する為なら悦んで鞭を振るうサディストの笑顔で。
 「但馬 冬樹だ」
 新所長の就任を祝うように、足元の犬が高らかに吠えた。

少年プリズン(未完) | コメント(-) | 20050703023724 | 編集
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