ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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六話

 「レイジ、俺を抱いてくれ」
 レイジにできる限りのことをしてやりたい。
 全身ぼろぼろに傷付いたレイジを癒してやりたい。
 その気持ちに嘘はない、誓って真実だ。レイジは約束通り100人抜きを達成して俺のとこに帰って来た、ぼろぼろのふらふらになりながら帰巣本能を発揮して俺のとこに帰って来た。
 レイジの頑張りに応えてやりたい。
 献身に報いてやりたい。
 背中を焼かれて片目を抉られて生涯癒えない傷を烙印されて、それでも最後まで戦い通したレイジに最高のご褒美をくれてやりたい。俺を抱いてレイジが満足するってんなら、それが何物にもかえがたいイチバンのご褒美だってんなら、ちょっと痛いくらい我慢してレイジに抱かれてやれよ。煙草であちこち焼かれるよりずっとマシじゃんか、と自己暗示をかけて恐怖を閉めだそうとする……が、うまくいかない。
 怖いものは怖い。レイジが経験豊富だってのはさっきのアレで十分わかった、指遣いも舌遣いも文句の付けようがない。
 俺は五分ももたずフェラチオでイかされちまった、気持ちが良すぎてわけわからなくなって口の中で爆ぜちまった。俺は最初から最後までレイジの思惑通りレイジにされるがまま操縦されて扱かれて勃たされてイかされちまった、あっというまに。
 正直、メイファとは比べ物にならない上手さだった。
 メイファは終始俺に気を遣いながら、口を利く程度の余裕を与えてくれながら丁寧に舌を使った。レイジは逆だった、余裕なんか全然くれなかった、どこまでもどこまでも快感が加速して一気に絶頂に上り詰めるのを憎たらしい薄笑い浮かべて観察してただけだ。
 テクは超一流、処女を快楽に導くのはお手のもの。
 レイジは上手い。めちゃくちゃ上手い。
 腹立たしいけど認めてやろうじゃんか畜生。けど、レイジが超絶上手かろうが関係なく怖いもんは怖い。やっぱり怖い。男同士でヤるのは生まれて初めて、基本的な知識はあるけどいざ事をおっぱじめるとなると緊張と混乱で指一本動かせなくなる。俺自身極力避けてきたのだ、そういうことは。性欲溜まれば自分でヌいて、売春班じゃベッドで扉塞いでだんまり決め込んで、何度タジマにヤられそうになっても危ないところで切りぬけてきた。男に抱かれるのなんかいやだくそくらえと罵詈雑言を浴びせて毛を逆立てた猫みたくタジマの顔引っ掻いて間一髪切りぬけてきたのだ。
 それも今晩までだ。
 俺は今夜、レイジに抱かれる覚悟を決めた。
 恐怖で身が竦み、喉が異常に乾く。全身の毛穴から水分が蒸発して体の内側からからからに干上がっていく。腹の脇で握りこんだ手のひらがびっしょり汗をかく。心臓がばくばく鳴る。
 レイジの気持ちに応えてやりたい、レイジの願いを叶えてやりたい。俺はレイジに感謝してる、言葉じゃとても表せないくらい猛烈に感謝してる。
 レイジが帰って来てくれてよかったと心からそう思う、レイジの生還を心底喜んでる。だから、レイジの望みを叶える。ちゃんと約束を守る。もう決めたんだ、今さら取り消すわけにいかない、一度口にしたことを撤回するなんて卑怯な真似俺自身が許さない。
 尊大に顎を引き、挑むようにレイジを見据える。
 「いいんだな?」
 レイジが肩を掴む。熱い手だ。血が燃えてるみたいだった。至近距離にレイジの顔がある。左目に純白の眼帯をかけて、右目に獰猛な光を湛えている。
 「途中で泣いてもやめらんねーぞ」 
 頷く。裏切り者呼ばわりも嘘つき呼ばわりもごめんだ。俺にだって意地がある。いい加減な口約束でレイジを釣ったと邪推されちゃあ引っ込めない。
 守ってやろうじゃんか、約束。お望み通り抱かれてやろうじゃんか。
 レイジが眼光鋭く俺を一瞥、念を押す。
 「加減できねーぞ」
 「処女には優しいのが取り柄じゃないのかよ」
 仰向けに倒れこんだ背中が弾む。
 固くしけった寝心地の悪いマットレス。汗と糞尿の匂いが染み付いた不潔なシーツ。暗闇に漂う異臭は何かが腐ってる匂い。ツンと鼻腔を刺激するこれは豊潤なアルコールの匂い。レイジがベッド下に隠してる蒸留酒が匂いの源だろうか。芯が弛緩した頭でそんなどうでもいいことを考える。
 無抵抗で押し倒された俺は、レイジにされるがまま無防備に体を開く。
 男女の場合も男同士の場合も体位はそんなに変わらない、男同士の場合はケツを使うから後ろ向き四つん這いのが適してるんだろうが……
 成り行きというか何というか、レイジの手で仰向けにされちまった。
 真っ向からレイジと顔を合わせる体勢だ。
 基本も基本、抱く側と抱かれる側がばっちり目を合わせる正常位。
 レイジは無造作に俺の腰に跨った。
 澄んだ旋律が耳朶をくすぐる。胸元の鎖が流れて十字架が揺れる。
 格子窓から射した僅かな光を反射して十字架が黄金に輝く。強い光。レイジが腰をずらして俺の上に被さる。衣擦れの音が耳朶をくすぐる。
 レイジが顔の横に手をつき、耳元で囁く。

 「お前の体に夢中になりすぎて、加減できないかもってことだよ」

 熱い吐息が耳朶で跳ねる。
 耳朶が弱くなってるのか、それだけでぞくりと快感が走った。
 レイジが俺の上で動く。裾のあたりで腕を交差させて無造作に上着を脱ぐ。俺は驚きに目を見開いてレイジの裸を凝視した。贅肉なんてどこにもない、しなやかに引き締まった肢体。過剰でも不足でもない理想的な筋肉の付き方。天性の配分で素晴らしく均整のとれた四肢……
 男も女も夢中にさせる黄金率の体。
 惜しみなく肌をさらしたレイジが次にズボンに手をかける。息を呑む。
 「下も脱ぐのかよ!?」
 「だって、お前だけ素っ裸になるのフェアじゃないじゃん」
 「そりゃ俺だけ素っ裸は恥ずかしいけどそんなあっさり惜しげもなく……ちょっとくらい惜しみやがれ、ただで裸見せるのもったいねえって素振りで!?」
 ああ何言ってるんだ俺、頭が動転して意味不明なこと口走ってる。羞恥心ないのかこいつ、倫理観とか道徳観念とかは?レイジは実にあっさり上着を脱ぎやがった、一抹の未練もなく上着を脱ぎ捨てて上半身裸になりやがった。俺のほうが恥ずかしいじゃねえか!赤面した俺の抗議を無視してズボンに手をかけ、そして……
 「いっ………」
 喉が詰まった。トランクスごとズボンを脱いだレイジの股間をばっちり目撃した。絶句。なんだコレ。コレを今から俺のケツに入れるって、マジ?マジで言ってんのかよそれ。
 俺の想像通り、というか想像以上にレイジのモンはご立派だった。
 俺のモンと大きさ比べて軽く落ち込んだほどだ。俺にはレイジの小便じろじろ眺める悪趣味ないし、レイジがシャワー浴びる時もついてったりしねえから、その、こいつの下半身目にするのは実質これが初めても同然なんだが……同じ男でもこんなに違うのか。
 衝撃に打ちのめされ、目のやり場に困り、恥辱に頬染めて自身の股間を見下ろす。
 全然違う。大人と子供だ。大きさ・色・形・反りかえり方……
 どれをとってもレイジが上だ。
 負けた。完敗だ。
 「それ、ケツに入れんのか」
 半信半疑で聞く。
 目に警戒心と怯えを宿して、肘を使い、無意識にあとじさりながら。
 「無理だ。入るわけねえ。ケツの穴が裂けるに決まってる。もうちょっと縮めろ、具体的に3センチくらい」
 「無茶言うなよ!?」
 「気合いで縮めろ馬鹿!!」
 「発情してっからムリだよ!!」
 くだらない。くだらなすぎ。口喧嘩してる場合じゃねえだろ。俺は早くもさっきの発言を後悔しはじめていた、時を遡り「抱かせてやる」なんて安請け合いした自分を呪い始めていた。当時の俺をぶん殴りたい。後先考えずその場の勢いで物事決めるのは俺の悪い癖だ。畜生……
 「抱いて欲しいんだろ」
 レイジが性悪に微笑む。やめろと叫ぶ暇もなく尻の肉を手掴みで割られて、肛門にひやりと外気がふれる。悪寒。普段人目にふれない、俺自身も見れない場所にレイジの視線を感じる。
 片腕で両目を覆い、顔を隠す。顔の火照りを悟られないためだ。
 「!?んっ、」
 突然だった。
 信じられないことが起きた。
 肛門にぬめった感触……レイジがケツの穴を舐めはじめたのだ。
 「レイジお前なにとち狂ったことしてんだ、そんなとこ口つけて正気じゃねえ、汚ねえっ……あっ!」
 「汚くない。ちゃんとシャワー浴びたろ」
 「そういう問題じゃねっ……あっ、あっ、あっ」
 ケツの穴なんか舐めて何が楽しいんだ?レイジの行動がまるで理解できねえ。熱い舌がぬるりと肛門にすべりこむ。肛門の縁に唾液を塗り込んで揉みほぐして滑りをよくする。
 気持ち、悪い。
 胃袋がでんぐりがえるような吐き気に襲われて下肢が痙攣する。こんなことタジマには勿論メイファにだってされたことない、こんな卑猥なこと……レイジときたら何ら抵抗なく俺のケツに口をつけて、きつく窄まった肛門を舌でねぶりはじめた。
 気持ちいいわけ、ない。気持ち悪い。気持ちが悪くてたまらない。
 唾液にまみれた舌が肛門をべとべとに濡らしてく。
 「はっ………」
 体がじんわり熱をおびて意識が薄れ始める。変だ。ケツ舐められて感じるわけないのに何だか変だ。体が妙に浮ついて、勝手に息が上がって、レイジの舌が動く度に体の最奥で何かが蠢く違和感が膨らむ。
 快と不快の境界線がぼやけだして徐徐に区別がつかなくなる。
 ケツの穴に突っ込まれてよがる奴の気持ちが理解できねえ、理解したくねえと突っぱねてたのに、現に俺はレイジにケツの穴舐められて喘いでいる。おかしい。ケツは出すところであって入れるところじゃない、クソひねり出す排泄器官であって本来セックスに用いる器官じゃない。
 ならなんで、レイジの舌が肛門をほじくって幾重もの襞をかきわけてたっぷり唾液を練り込むのが気持ちいいんだ?
 相手がレイジだからか?
 この位置からじゃレイジの顔は見えない。俺の肛門に顔を埋めて舌でねぶってるレイジが今どんな表情をしてるか確認することさえできない。唾液を捏ねる音が執拗に響く。俺には見えない位置でレイジが何かやってる。
 ケツの穴に舌が出し入れされる。
 肛門の周縁を指で揉みほぐして、肛門に舌を突っ込んで中をぐちゃぐちゃにかきまぜて、下半身から徐徐に俺の体をとろかせていく。
 「レイジ、もっ……やめ、ろ。体が変……熱いっ……」
 レイジはやめない。俺の抗議など取り合わず舌を律動的に抜き差しする。
 快感が違和感を呑み込んで巨大なうねりとなる。頭の芯がじんと痺れて思考がまともに働かない。シーツが汗でぐっしょり濡れる。汗で濡れそぼった前髪が額に貼り付いて視界を遮る。体の芯が疼く。体の最奥で何かが蠢く。体の中で蛭でも飼ってるみたいな、体の最奥に得体の知れない何かが潜んでるみたいな感覚。
 「ケツ舐められてよがるなよ」
 レイジが嘲笑する。咄嗟に言い返そうとして、舌の動きが激しさを増して再開して何も言えなくなる。声を漏らせばまたレイジのからかいのネタになると我慢して必死に唇を噛む。
 「こんな、の、変……はやく突っ込めよ、ぴちゃぴちゃ音たてて舐めんなよっ……舌、抜けよ……」
 芋虫みたいに身をよじり、途切れがちに訴える。気を抜くと声が漏れそうだ。声……はしたない喘ぎ声。絶対人に聞かせたくない声。体の奥でどろりと熱塊が蠢く。今まで体験したことない未知の感覚。
 俺の体の奥に一筋溶岩流が流れてる。 
 耐え切れずシーツを掻き毟り、握り潰す。もう片方の腕は顔に置いて表情を隠したまま、訴える。
 「……レイ、ジ……このままじゃ頭が変に、な……あっ!?」
 レイジが俺の股間をまさぐり、ペニスを掴む。
 「さっきイったばかりなのにもう勃ってる。元気だな」
 レイジの手がペニスを包み込み、緩やかに動き出す。勃起したペニスを上下に擦る。手のひらの摩擦でペニスが硬さを増して膨張する。最初は緩慢に、徐徐に速度を上げて乱暴にペニスをやすりがけする。手のひらの摩擦が生み出して熱でペニスが温められて射精の欲求とともに強烈な快感が込み上げてくる。
 「うあっ、あっ、あああああっあああっあっ!?」
 さっきイったばかりなのに、俺は今またレイジの手でイかされようとしてる。他方ではレイジの指が肛門を穿ち抉って、直腸の襞を襞を掻き分けている。前と後ろ両方から同時に強烈すぎる刺激と快感を与えられて、俺はもうこらえきれず喘ぎ声をはりあげる。
 「いっ、ひっ、レ……ああああああっあああっ、あ!」
 「唾液だけじゃ足りねーな。出せよ、もう一度」
 レイジにきつく握られた途端、俺は爆ぜた。頭が真っ白になった。先端の孔から勢い良く迸り出た白濁がシーツを汚してレイジの顔に跳ねた。顔に一滴跳ねた白濁をそのままにレイジは笑った。レイジの手は大量の精液にまみれていた。指の間で精液をこねくり回して粘度を高めて、レイジが呟く。
 「たくさん出たな。いい子だ、これでやりやすくなる」
 裸の胸が浅く上下していた。一度目の射精から間をおかずに果てて俺は消耗しきっていた。口を利くのも億劫で無気力にベッドに寝転んだ俺の足をレイジが高々と抱え上げる。
 「!ひっ、」
 喉が引き攣った。
 ザーメンまみれの指が一本、周縁で円を描き、肛門を突き刺す。
 予想に反して痛みは殆ど感じなかった。それまでにさんざん唾液に濡れた指でほぐされていたのだ。人さし指一本なら余裕で挿入できた。
 生理的な不快感がぶり返して胃袋が収縮する。喉の奥に吐き気が込み上げる。酸っぱい胃液が口腔に満ちる。嘔吐の衝動を堪えて強く唇を噛む。
 「すげえ締め付けてくる」
 レイジが興味津々口笛を吹く。俺は売春班にタジマが乗り込んできた時のことを思い出した。タジマに押し倒されてズボンの上からケツに指を突っ込まれた、無理矢理。あの時と同じ圧迫感が胃袋を締め付ける。
 「!!!ひっあ、ああああああああっ」
 指が、二本に増えた。人さし指と中指。先に突っ込まれた人さし指だけで一杯だったのに、さらに中指が捻じ込まれた。無理矢理。タジマみたいに無理矢理。吐き気を伴う気持ち悪さが今度は強烈な痛みに変わる。さすがに二本はきつい、きつすぎる。ケツが裂けて出血しちまったんじゃとかなり本気で恐れた。
 「いたっ……マジで痛え、畜生、いてえよ。さっさと指抜けよ、裂けちまうよ!!」
 「ちょっとくらい我慢しろよ。俺のペニスは指二本分よりでかいぜ、今馴らしとかねーと後で死ぬ」
 無茶苦茶言いやがって。今だって十分、十分すぎるほど痛え。あんまり痛すぎて目に涙が滲む。唾液と精液を潤滑油に、滑りをよくして肛門に挿入された指が複雑に蠢く。
 「ひ、ぎ……あ、あ……あ……」
 喉が仰け反り、瀕死の魚みたいに不規則に体が跳ねる。なんでこんな痛い思いしてまでレイジの言うこと聞かなきゃいけないんだかだんだんわけがわからなくなってきた。指がまた増えた。今度は三本。人さし指と中指と薬指。たった二本でもナイフで抉られてるみたいにきつかったのに今度は三本だ。
 指が三本とも喉を突き破って飛び出してくるんじゃないか、と思った。目尻から涙が零れた。うまく呼吸できずに喉がひゅうひゅう鳴った。酸素が急激に薄くなったみたいだ。
 「よく頑張ったな」
 レイジがなれなれしく俺の頭を撫でるが、何の慰めにもならなかった。
 「指、抜けよ……内臓でちまうよ……」
 口を利くのが辛かった。間に何度も深呼吸を挟んで漸くそれだけ言えば、レイジが当惑する。
 「辛い?」
 ただ頷く。 
 「喉乾いた?」
 前より力を込めて二度頷く。レイジがしばし逡巡の末に俺のこめかみに顔を近付ける。何する気だとこっちがびっくりした。虚ろな目で顔のすぐ横を見れば、レイジが俺のこめかみに接吻して涙を啜っていた。
 こめかみを滴る涙の雫を舌先で舐め取り、俺の口へと運ぶ。
 唇を塞がれ、口移しで涙を飲まされる。
 レイジと唇を重ねたまま、喉を鳴らして涙を嚥下。
 たった一滴の塩辛い水が、甘露のように喉を潤す。
 「ちょっとはマシになったろ」
 「……ばか。俺から出たもん呑ませてどうするんだよ、意味ねえじゃん」
 本当に、ばかだ。レイジが苦笑する。誘われたように俺も苦笑する。レイジの首に腕を回し、しっかりと抱きつく。もうどうにでもなれと俺はヤケになっていた。こうなったらとことんレイジに付き合ってやる、満足いくまで抱かれてやる。 
 だから。
 「……早く、次いけよ」
 さっき飲まされたアレは、本当に涙だったのか?俺の涙腺から分泌されたただの塩辛い水だったのか?そのはずだった。けど、俺の涙とレイジの唾液が混ざり合って変化が起こったんだ。俺の涙はレイジの唾液と溶け混じって強烈な媚薬になった。激痛を和らげて快感を増幅する薬になった。あんまりケツに指入れられてる時間が長いから痛覚が麻痺して徐徐に違和感が薄れはじめてもいた。

 体が物足りなさを覚えはじめていた。
 レイジを求めはじめていた。

 レイジが指を抜く。唾液と精液にぬめった指が、粘着質の糸を引いて肛門から抜ける。
 「!んっ……」
 ぞくりとした。悪寒と紙一重の快感。
 「物足りね?」
 レイジが悪戯っぽく笑い、俺の腹に指をなすりつけて白濁のぬめりを拭き取る。熱があるみたいに体がぞくぞくして肌が粟立った。もっと刺激が欲しかった、何も考えられなくなるくらい気持ち良くなりたかった。レイジが再び俺にのしかかり、膝を掴んで足を押し開く。ベッドに仰臥したまま視線を下げた俺はぎょっとする。レイジの股間は勃起していた。殆ど垂直に屹立して反りかえっていた。
 あれを、入れるのか?
 入るのか?
 「……」
 音たてて生唾を呑み込む。金縛りにあったように手足が硬直して体が動かない。レイジが俺の膝を掴んで尻を持ち上げ、ペニスの先端を肛門に添える。
 「体の力抜けよ」
 よわよわしくかぶりを振る。助けを求めるようにレイジを仰ぐ。助けて。許してくれ。怖い。腰が萎える。膝が笑い出す。俺は多分半泣きにも半笑いにも似た情けない顔をしてるはずだ。俺はタジマに襲われた時の恐怖を克服できない、タジマの醜悪なペニスが目に焼き付いて……
 『いい子にしろよ半々、ケツの穴に黒くて太くて硬いモンぶち込んで躾てやる』
 『逃げるなよ。聞き分けねえガキだな、土壇場で怖気づきやがって。そうやってべそかけばレイジが助けにきてくれると思ってんのか、レイジがとんできてくれると思ってんのか。けっ、めでたい奴だな』
 『いいかよく聞け、お前は俺のもんだロン。東京プリズンに来た時からこうなるって決まってたんだよお前の運命は、俺の下で腰振る運命だって決まってたんだよ。どうだ、俺のペニスは。遠慮せず触ってみろよ。黒くて硬くて立派なもんだろう。どうした、いやがるなよ。こぶしに握るなよ、手え開けよ。五本の指で上下に扱いてみろよ。
 初めてだって関係ねえ、淫売の血が流れるなら上手くできるはずだろが』
 「あ…………、」
 肘を使い、ベッドを這いずり、できるだけレイジから距離をとる。もう東京プリズンにいないタジマの気配が俺に寄り添って悪夢を見せる。暗示をかける。違う。俺はお袋じゃない、お袋みたいな淫売じゃない、出来ないことは出来ない、無理なことは無理だ。心が悲鳴をあげる。酷い耳鳴りがする。悪夢と現実の境が溶けて混じり合って、耳元にタジマの息遣いを感じる。ベッドについた手に、股間の膨らみを感じる。
 ズボンの股間でテントを張ったペニス……硬く勃起したペニス。
 見るもおぞましい醜悪な性器。
 違う。目の前にいるのはレイジだ。タジマじゃない、別人だ。俺のよく知る相棒だ。怖がる必要なんてどこにもない。砕けろ、幻。消えろ、悪夢。タジマの幻覚を打ち消したくて、レイジの背中に腕を回して必死に縋りつく。
 「教えてくれレイジ。どうすれば悪夢を追っ払えるんだ?お前さっき言ったろ、俺が見てる悪夢なんか鼻歌まじりに追っ払ってくれるって。じゃあそうしてくれよ。今もすぐそこにタジマがいるんだ、タジマが笑ってるんだ、汚いイチモツぶら下げて……」
 両手で俺の顔を挟み、レイジが目を覗きこむ。
 真実を見抜く、強い光を湛えた隻眼。
 「タジマはいねえよ」
 「いるんだよ」
 「いない」
 「いるんだって、ほらそこに、枕もとに……ベッドパイプに肘かけてヤニ臭い歯を剥いてこっち覗きこんでやがる、へらへら笑いながら俺のこと見下してやがる!また何かろくでもねえこと企んでるに決まってる、畜生、やっぱりあの時殺しとくんだった、医務室で首絞めて!!」
 「ロン」
 レイジが静かに俺の名を呼ぶ。俺は、答えられない。やっぱりタジマを殺しとくべきだった。包帯で首絞めて息の根とめときゃよかった。この手できっちり落とし前つけときゃ……いや、待てよ。俺は、タジマを殺したのか?俺がタジマを殺したから今もタジマの亡霊が枕もとに立ち続けてるのか、東京プリズンの地縛霊になってしつこく俺に付き纏ってるのか?記憶がすりかわる。ありもしないことが捏造される。
 頭が混乱する。いる、いない、いる、いない……どっちだ?どっちが本当なんだ、事実なんだ現実なんだ真実なんだ。一体何を信じれば……
 「愛してるよ」
 不意に、レイジに抱きしめられた。
 「愛してる」
 レイジが強く、強く俺を抱く。レイジの腕の中で目を見開けばタジマの亡霊は跡形もなく消えていた。まるで最初からいなかったみたいに……いなかったのか。そうか。俺はまたレイジに救われた。守られた。レイジは約束通り地獄の最果てに悪夢を追っ払ってくれた。レイジはそうだ、いつだって約束を守ってくれる。レイジは絶対に俺を裏切らない。 
 俺が、好きだから。
 俺が。
 俺は?
 「愛してる。マリアより誰よりお前が大事だ。俺に当たり前のこと教えてくれたお前が、暗闇の中で膝抱えてた俺に手をさしのべてくれたお前が、こんなどうしようもない俺のこと見捨てないでいてくれたお前が……お前が欲しい。お前を抱きたい。お前が痛い思いして泣き叫んでもお前を抱く。これしか方法ねーから、これしか思いつかねーから……お前のこと愛してるって証明する方法が」
 レイジの顔が悲痛に歪む。一瞬泣き崩れるかと思ったが、笑顔になる。
 ガキの頃からセックス隠れ蓑に人を殺してきて、だからそれしか思いつかなくて、気持ちを伝える方法を思いつけなくて。
 そんな自分を憐れむような笑顔だった。
 「俺を見ろよ。ロン」
 レイジを見る。左目に眼帯をかけて、右の隻眼を沈痛に伏せた顔を。
 「頼むから、今この瞬間だけは嘘でもいいから愛してよ。俺のこと愛してるって言ってくれよ。そんなに沢山はいらない、一回だけでいいんだ。俺がお前を好きで、お前も俺を好きで、体も心もちゃんと繋がってるって……そう思いたいんだ」
 レイジは不器用だ。「愛してよ」と懇願することでしか愛情を得られないと諦めている。無償の愛なんかこの世にないと、愛情には必ず代価が伴うと諦めてる。だから今も、くりかえし懇願する。嘘でもいいから愛してくれと痛切に乞い願う。
 レイジの愛情は、痛い。レイジの愛情は自己犠牲と同義だ。
 本当に、不器用な奴。
 「頼むなよ」
 そんなふうに必死に頼まなくても、縋るような目をしなくても、俺は……
 レイジの頬に手をあて、そっと包み込む。
 レイジの目に怯えが浮かぶ。人に優しくされるのに慣れてない手負いの獣みたいに警戒の色が混ざる。「愛してくれ」と言っておきながら、こうやって愛情を返されると戸惑うしかない脆さが、俺は好きだ。
 レイジの強さも弱さも。
 俺に似てないところも、似たところも。
 「『頼むから』なんて言うなよ。頼んだりしなくても、お前が好きだよ。頼まれなくても好きになったよ。俺の為に100人抜き成し遂げたからじゃなくて、俺の為に背中焼かれたからでも片目になったからでもなくて……それより前から、好きだったよ。いつから好きになり始めたかなんて覚えてない。お前は生まれて初めてできたダチで、凄く大事な存在で、いつのまにか隣にいるのが当たり前になって……」
 俺は今までずっとレイジに支えられてきた。
 レイジがいてくれたから東京プリズンで生き残ることができた。
 レイジの頬に手をおき、優しく撫でる。   
 『謝謝。我認識弥眞好。永遠不曾忘記弥』
 ありがとう。お前に会えてよかった。絶対に忘れない。
 心を込めて言う。本当に伝えたいことを伝える時には台湾語がでるのが俺の癖だ。
 頬に被せた手に手が重なる。頬の上から俺の手を取ったレイジが、今度は台湾語で言う。
 長い睫毛に縁取られた右目を閉じて、誓いを立てる。
 『我愛弥』
 愛してる。
 『我也一様』
 俺も愛してる。
 レイジの手のぬくもりに身を委ねながら微笑む。
 レイジが俺の手を右目に持っていき、深々と顔を伏せる。指に雫が染みた。ちょうどレイジの右目を塞いでる指だ。指を濡らした水の正体を確かめる間もなく、レイジが乾いた声で笑った。
 「はは。片目だとうまく泣けねえな」
 それで漸く俺は理解した。
 レイジが欲しかったのは俺の体じゃない。全身ぼろぼろになって背中を焼かれて片目をなくして、そうまでして手に入れようとしたのは俺の体じゃない。
 「愛してるよ」の一言だったのだ。
 今まで誰からも貰えなくて、欲しくて欲しくてたまらなかった一言だった。
 俺の手を顔からどけた時、レイジの右目はもうすっかり乾いていた。けど、涙を吸った指は確かに濡れていた。それだけが唯一レイジが涙を流した痕跡だった。
 俺の顔を両手で挟み、正面に向ける。
 額と額がぶつかり、コツンと軽い音が鳴る。レイジの首からぶらさがった十字架が顎にふれる。
 「ロン。天国を見てこいよ」
 レイジが微笑み、唇を奪う。格子窓から射した光を弾いて十字架が清冽に輝く。俺の唇を荒荒しく貪りながら両手で足を抱え上げて、息継ぎの合間に囁く。
 「俺が連れてってやるから、さ」
 ……自信過剰な王様め。

少年プリズン(未完) | コメント(-) | 20050712040922 | 編集
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