ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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四十六話

 「どけよ木偶の坊、目障りだ」
 俺には行かなきゃいけないところがある。
 まっしぐらに駆けていかなきゃならない場所がある。眩い照明を浴びたリング上、レイジが孤高を気取って臨む決戦の舞台、熱狂に沸く地下停留場。
 足止め食ってる暇はない、かかずりあってる暇はない。今の俺には一分一秒が惜しい。レイジに会いたくて、レイジの無事をこの目で確認したくて焦燥で気が狂っちまいそうだ。図体のでかさを利して行く手に立ち塞がる凱を射殺さんばかりに睨みつけるも、凱はてんでとりあわず嘲笑う。
 「土下座が先だ」
 頑として主張を譲らず、土下座を強要する凱。
 タジマを彷彿とさせるおそろしく卑猥な笑顔に二の腕が鳥肌立つ。
 上着の二の腕を抱いてあとじさりたくなるのをこらえ、その場に踏みとどまり、決死の覚悟で特攻を仕掛ける。
 床を蹴り加速、凱にめがけて疾駆。
 小柄な俺じゃ図体のでかい凱を激突の勢いではねとばすこともできないが、もうこれ以上自分の無力に甘んじて焦燥に焼かれるのはごめんだと、きっと前を向く。
 レイジと鍵屋崎を見殺しにしてサムライを先に行かせて、俺だけベッドでじっとしてなきゃなんねえなんてもう懲り懲りだ。俺がベッドでお行儀良くしてるあいだにレイジは死線をくぐらなきゃならない、ひょっとしたら死ぬかもしれない、俺が知らないところでぽっくりあの世に逝っちまうかもしれない。
 牌を片手に握りしめたまま。
 「ああああああぁああああああぁっ、どけよ凱、守りたいヤツがいねえ人間はひっこんでろよ!てめえにゃ三百人の子分がいるけど俺にはレイジしかいねえんだ、俺の相棒は世界中さがしたってレイジただひとりなんだよ!だけどな凱、耳の穴かっぽじってよく聞けよ!レイジはてめえがぞろぞろ引き連れてる三百人の子分どもよかずっと頼り甲斐がある、てめえの子分どもが三百人よってたかってかかったところで勝てやしねえ最強無敵の王様なんだ!」
 片腕を大きく振りかぶり、喉もはりさけんばかりに絶叫する。
 「俺の自慢のレイジなんだよ!!」
 レイジを所有格で語っていいのは俺だけだ。レイジは俺のもんだ。
 大きく片腕を振り上げ、今の俺がだせる全力で凱の鳩尾に叩きこもうとして、失神しそうな激痛に襲われる。腕が痛い、胸が痛い、体中が痛い。体中の関節という間接が、骨という骨が軋みをあげている。
 「ロンさんっ!」
 視界の端、羽交い絞めで拘束されたビバリーが半狂乱に身を捩り、必死な形相で叫ぶ。 人質にとられたビバリーの前で情けない姿を晒すわけにはいかない、醜態を見せるわけにはいかない。俺にも意地がある、いや、今の俺を支え続けるのは気力に拠って立つ意地だけだと言っていい。
 顎が沈むほどに奥歯を食い縛り、胸を苛む激痛をこらえ、余力を振り絞るようにこぶしで空を切る。
 なんとしても凱の鳩尾に渾身の一発を叩きこんでやる。
 風切る唸りをあげたこぶしが虚空を突き進み、無防備な鳩尾へと吸いこまれ……
 「どうしたよ。長い入院生活の尿瓶の世話になってるうちに、下半身ともども腕が鈍っちまったのか」 
 凱の目が嘲弄の色を宿した一刹那。
 「!!!!あがっ、ぐ」  
 鳩尾を狙って叩きこんだはずのこぶしは凱の片手で止められていた。
 片腕だってのに凄まじい怪力だ。手首が捻り潰されちまいそうだ。
 万力めいた握力で手首を締め上げられ、口から苦悶のうめきが漏れる。
 五指で血管を圧迫され、血流を塞き止められた手首がみるみる青黒く変色してゆく。
 視界がはげしくブレた。
 凱に薙ぎ飛ばされ、手形の痣ができた腕を庇って蹲る。
 畜生、これじゃさっきと同じじゃねえか。なんで体が満足に動かないんだ、と悔しさに歯噛みする。俺の体なら主の言うこと聞いてちゃんと動け、命令に従えよ。一度凱に勝てたら今度もまた勝てるはず、通路に立ち塞がる凱を力づくでどけてレイジのもとへ駆け付けることもできたはずなのに、最後まで希望を捨てずに捨て身の勝負を挑んだ結果がこれだ。このザマだ。情けなくて涙がでてくる。
 全身の間接が軋んで悲鳴をあげている。折れた肋骨が痛い、打撲傷を負った手足が痛い。俺の体で痛くない場所なんかどこもない。
 「さあ、土下座しろよ。凱さま素敵に無敵だ万歳って俺さまをたたえやがれ、半々の淫売が」
 顎の下に靴を挟まれ、強引に顔を上げられる。耳に水でも詰まったみたいに声が聞こえにくいのは意識が朦朧としてるせいだろうか。凱の周囲に居並んだガキどもが、口々に野次をとばして囃し立てる。
 「床に手足ついてケツ持ち上げていい格好だな、半々。なんだよそりゃ、俺のモンが欲しいってねだってんのかよ?だったらもっと可愛くお願いしてみな、俺のペニスしゃぶりながら」
 「コイツのペニスは苦いぜ、口に入れた途端吐いちまうよ。こいつの腐れペニスにゃ唾吐きかけて、売春犯仕込みのテクで俺のモンしゃぶってくれよ。飴玉みたいに甘い俺のペニスならきっとお前の舌に合うはずだ」
 ふざけてズボンをひっさげ、汚れたトランクスを覗かせる囚人の近隣で、悪意に満ち満ちた哄笑の渦が巻き起こる。
 大袈裟に腹を抱えて笑い転げる囚人どものうち、何人かは笑いすぎて涙を流していた。
 際限なく膨らむ哄笑の中、ただひとり俯いていたのはビバリーだ。
 「どうせレイジとできてんだろうが」
 ビバリーに目を奪われてたら、いきなり背中を蹴られる。背後に接近した人物が、汚い靴裏で俺の背中を蹴倒し、囚人服の背中に泥まみれの靴跡を刷ってくれた。
 残虐兄弟の……どっちだ、わからない。薄れかけた意識じゃどちらとも判別つかない。
 額に脂汗を滲ませ、冬眠に入る動物のように身を縮こめ、無意識に体を庇う。
 そんな俺を嗜虐的に舌なめずりしながら見下し、残虐兄弟の兄だか弟だかわからない片割れが吐き捨てる。
 「東棟じゅうの、いや、東京プリズンじゅうの噂だぜ。医務室でふたり抱き合って寝たんだろうが。当然ヤられちまったんだよな、手の早いレイジと一晩おなじ布団の中で過ごして処女だなんてしまらねえオチありえねえ。畜生が、レイジに先越されたぜ!」
 「むかつくね、あんちゃん」
 俺の背後に忍び寄ったもうひとりが、そっくりおなじ顔をした囚人と並び、頷く。
 「巷じゃ最低最悪のレイプ犯兄弟、女を犯して殺して背中に刺青刻む二人一組強姦魔と恐れられた俺たち、狙った獲物は逃がさねえのが信条だったのに……ひとの獲物横取りしやがって、くそレイジが」
 今度は頭を踏みつけられる。靴裏で頭を押され、床に顔を埋め、息苦しさにもがく。
 苦しい、痛い、もうやめて終わりにしてくれはやくはやく解放してくれ俺が意識を保ってられるうちにレイジのもとへ行かせてくれ!
 指の関節を折り曲げ、床に爪を立て、頭を押さえ付ける重しと全身の激痛に声もない俺の耳元で、凱が囁く。
 「いいこと考えたぜ」
 足首の捻挫個所を覆った包帯が弛み、凱が引っ張れば抵抗なくほどける。
 「な、にするきだ」
 足首に触れる外気が冷たい。骨にまで染みこむようだ。
 漠然とそんなことを考えながら、苦労して顎を起こし、かすんだ目で凱を見上げる。 
 唐突に目に暗闇が覆い被さった。  
 「!!?っあ、」
 すぐにわかった、包帯で目隠しされたのだと。手足を振りまわし暴れても無駄だ、満身創痍の怪我人のよわよわしい抵抗など残虐兄弟ふたりがかりでたやすく押さえこまれてしまう。肩を押さえつけられ、背中を踏まれ、頭の後ろで包帯をきつく結ばれる。目隠しをずりおろそうと手を前に持ってこうとしても、周囲の囚人に拘束されて自由が利かない。
 視界が真っ暗になる。
 何も、何も見えない。正面にいるはずの凱も周囲の囚人もビバリーも、通路にたむろった連中全員の姿が見えない暗闇にただひとり。
 視覚を閉ざされたせいで他の感覚が過敏になり、異常に研ぎ澄まされ、匂いや音や触感などさまざまな刺激が一挙に殺到し、あわや精神が崩壊しかける。 
 周囲で蠢く大勢の人間の気配、衣擦れの音、意地の悪い忍び笑い。
 「くそっ、ほどけよ、外せよ!俺に目隠ししてなにするつもりだ、なにさせるつもりだよ!?」
 売春班にいた頃、空腹の俺を餌で釣って、鉄扉をぶち破ったタジマを思い出す。
 興奮に鼻息荒く俺の上にのしかかり、汚いハンカチを顔に回し、そして……
 あの時の恐怖がまざまざと甦り、冷水を浴びせ掛けられたような戦慄に襲われる。
 「せっかくだから、その格好で土下座しろよ」
 凱の非情な命令に喉がひきつる。それが凱の望みなのか、土下座さえすりゃ解放してくれるのか、許してくれるのか、レイジのとこに行かせてくれるのか?
 一縷の希望に縋るように顔を上げた俺は、凱がいるはずの暗闇へと目を凝らし、乾いた唇を開く。
 背に腹はかえられない。
 くだらないプライドなんか捨てちまえ。
 大丈夫、恥をかくのは慣れてる、笑い者にされるのだって。これから何が起きてもきっと耐えぬける、耐えぬいてみせる。だって俺はレイジのとこに行かなきゃなんないんだから、あいつのそばについててやんなきゃいけないんだから。
 「…………っ、」
 恥辱に頬を熱くし、唇を噛み、頭を垂れる。
 目の前は暗闇、一寸先も見えない真っ暗闇だ。
 今ならできる、視力を奪われた今なら。
 ためらいを振りきり、床においた手を広げ、深々と頭を下げる。
 「もっともっともっとだ」
 熱に浮かされたように凱が呟けば、周囲の囚人が呼応し、「凱さんは不満だそうだ、ちゃんと頭下げろよ」「誠意の見せ方がなってねえな」「額が削れるまで床に擦りつけろよ」と口々に言い、俺を小突き回す。
 両腕を突っ張り、最後の一握りのプライドを捨て去るように首を打ち振り、深く深く頭を沈める。
 包帯の奥で目を閉じれば、二重の闇に内包される。
 床に擦りつけた額に、ひんやりと硬質な感触を感じる。  
 「ロンさん!!!」
 ビバリーの泣き叫ぶ声。
 「これで満足だろ。さっさとそこをど」
 「け」を言い終える前に、おもわず悲鳴をあげそうになった。後ろから腋の下に突っ込まれた手が、かってに上着をはだけ、腹をまさぐる。誰だ、耳元でねちっこい息を吐きながら俺の腹を揉みしだいてるのは?
 熱い吐息を俺の耳の裏側に吹きかけ、ねっとりと腹をこねまわしながら、そいつは言う。
 「土下座続けろよ。凱さんがいいって言うまで顔上げんなよ」
 「この声……てめえヤンだな、なに勝手にひとの体まさぐってやがる!?とっとと離れねえと、っあ!」
 ズボン越しに、股間を握り潰される激痛。
 俺の背中にぴったり体を密着させ、のしかかるように被さったヤンが、固く勃起した股間を尻の狭間にあてる。ズボンさえずりおろせば今すぐ挿入できそうな位置。
 「濡れた声あげんなよ。興奮してきちまったじゃねえか」
 「ずりいよヤン、俺にもやらせろよ」
 「売春班仕込みの淫乱な体がどれほどのもんか、皆で味わってやろうぜ」 
 「レイジがこなしてくれたケツの穴をみんなで味わうのも一興だな」
 かってなことほざくな、俺はレイジにこなされてなんかいねえ。俺の入院中に東京プリズン全体に出まわったのはでたらめな噂だと反論したいが、前後左右から伸びてきた腕という腕に体のあちこちを無遠慮にまさぐられ、薄い胸板を撫でられ腹筋を擦られ上腕を抓られ、はては股間を扱かれて、強制的に注入される快感にたまらず体を二つに折る。
 やめろと声を大にして振り払いたかったが、指一本動かすのさえ苦痛で、喉が掠れて悲鳴もでない。
 「っ、あ……熱、痛っ……はなせ、変なとこさわ、な……あっ!?」
 情けない。
 なんで俺は自分ひとりの力で先に進めない、レイジのとこに辿り着けない?自分の手足さえ見えない暗闇に這って、顔といわず背中といわず胸といわず腹といわず太股といわず這いまわる手と指に犯されなきゃならない。
 答えは簡単だ。
 俺が弱いからだ。
 「!ひっ、ぐ」
 だれかが髪を掴んで引っ張り、毛根を毟られる激痛に喉が仰け反り、苦鳴が迸る。一体いつになったら終わるんだ、飽きるんだ?俺はいつまで床に額を擦りつけて土下座してりゃいいんだ。今ごろもう次の試合が始まってリングにレイジが上って……
 「待て、そいつ手になに持ってる?」
 暗闇の中で目を見開く。
 『不要這様』
 やめろと制止しても遅かった。慌しい衣擦れの音とともに何人かが素早く動き、俺の手を無理矢理こじ開ける。固く強張った五指の隙間から転がり落ちたものが、床で弾み、澄んだ音をたてる。
 レイジと分け合った麻雀牌。
 中腰に屈みこんだ凱が、牌を拾い上げ、うろんげにためつすがめつする気配。
 「返せ、それは俺の牌だ、俺のもんだ!ザーメンくさい手で触れてイカくせえ匂いつけんじゃねえ!!」
 はげしく肩を揺さぶりさかんに首を振り、半狂乱の体で抗いながら、凱の手から牌を取り戻そうと声を限りに叫ぶ。常軌を逸した俺の狂態に気圧された囚人が手を緩め、四肢の拘束が解かれる。
 突き放されるように床に倒れこんだ俺は、縋るように虚空に手をのばし、五指を開いて牌をさがし求めるも、一連の行動を前もって読んでいた凱は微塵も余裕を失わない。
 「この安っぽい牌が、そんなに大事かよ」
 やめろ。
 「床に叩きつけりゃ一発で壊れちまいそうな脆いプラスチックの塊がそんなに大事なのかよ」
 やめてくれ。
 焦燥に焼かれる俺の鼻先に凱が近付いたのが、吐息の湿りけでわかる。
 そして凱は、ある提案を口にした。
 「ゲームをしようぜロン。この牌を今からおもいきり遠くへぶん投げるから、床に手をついて、犬の姿勢でそれを拾って来い」
 「……そんなの簡単じゃねえか、馬鹿にしてるのか」
 「そうだな、ただ拾ってくるだけなら簡単だ。だが」
 包帯に手をかけ顔からずり剥がそうとした俺の指が、凱によって邪魔される。
 包帯が外れた一瞬に俺が目撃したのは、至近距離に迫った凱の、嗜虐の官能に蕩けた顔。
 「目隠しをしたままならどうだ?」
 タジマそっくりの、反吐がでる笑顔だった。

少年プリズン(未完) | コメント(-) | 20050814104348 | 編集
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