ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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四十三話

 金網が倒れて見通しよくなった僕の前で、鍵屋崎とヨンイルが対峙している。
 鍵屋崎は満場の観衆が固唾を飲んで見守る中、劇的に勝利した。
 てのは言いすぎか。この場に集まった誰も固唾を飲んでなんかいないし鍵屋崎の勝利には無関心だし試合の行方に注目してもいない、それも当たり前っちゃ当たり前無理からぬ話で、ヨンイルが「この地下停留場のどっかに爆弾仕掛けた、はよ逃げな十分以内にぼんや」なんて文字通りの爆弾発言したせいで会場は大騒ぎだった。
 まったく人騒がせな話だと、爆弾騒ぎが杞憂で済み、悪態を吐く余裕ができた僕は憤慨する。人を馬鹿にするにもほどがある。
 結局は全部ヨンイルの一人芝居、狡猾で巧妙な狂言、道化のハッタリだったんじゃないか。道化の二つ名が体現するとおりヨンイルは人を煙に巻く天才、人を詐欺にかけておちょくることに才能を発揮する天性の愉快犯なのだ。
 爆弾は最初からヨンイルが持っていた。試合見物に来て爆発に巻きこまれちゃたまったもんじゃないと、先を競って逃げ出した囚人たちの中でそんな拍子抜けの結末を予想できた者が何人いるだろう。
 僕も全然予想できなかった。
 パニック起こして地下停留場の出口に殺到する他の囚人と同様、「うわあどうしよう爆発に巻きこまれたらミンチになっちゃう助けてママ!」とテンパってただけだ。 
 そんな僕の隣にいたのが五十嵐だ。
 話は数時間前に遡る。ビバリーにフラれた、もとい喧嘩中の僕は房の沈黙に耐えかねてふらふら試合会場にやってきた。こないだまではビバリーにお願いしてペア戦生中継を視聴させてもらってたんだけど、今晩はとてもビバリーに話しかけられる雰囲気じゃない。 頑固でわからず屋のビバリーはまだ僕に腹を立てていてはまともに目を合わせようとしないし、おしゃべりだって成立しない。
 ビバリーに無視されるのがいたたまれなくて、ビバリーの隣に居場所がなくなって房をとびだした僕は、ひとりで決勝戦を見に来たのだ。
 ビバリーなんかもう知ったこっちゃない、勝手にしろ。
 心の中で毒づいて地下停留場に下りた僕が、五十嵐を発見したのは偶然だった。試合開始一時間ほど前から地下停留場には人ごみができていて、五十嵐はリングを十重二十重に囲む人垣の最前列に陣取っていた。もちろん要領のいい僕が五十嵐を見逃すはずはなくて、「やっほーラッシー偶然だね!ラッシーも決勝戦見に来たの?」なんて適当に声かけて、試合の一部始終を観戦できる五十嵐の横をゲットした。何食わぬ顔で隣にきた僕を面倒くさそうに一瞥しても、お人よしの五十嵐は邪険に追い払ったりせず、とくに何も言わなかった。僕は五十嵐の好意にちゃっかり甘えて一緒に試合観戦することにした。
 ほら、ビバリーがいなくても大丈夫。こうして生で試合観戦できるんだし、こっちのがずっといい。
 僕にはビバリーなんか必要ない、ビバリーがいなくても一向にかまわない。不自由はない。
 僕の隣には五十嵐がいる、囚人にも分け隔てなく親切にしてくれるできた看守の五十嵐が。ビバリーの協力が得られないなら今度から五十嵐をパトロンにすればいい、猫かぶりの色仕掛けで五十嵐に取り入って顎でこき使ってやる。
 意地悪くほくそ笑み、五十嵐の腕に腕を絡める。ざまあみろビバリー、うらやましいだろ。僕と五十嵐がいちゃついてるとこ見れなくて残念。今も房でひとりぼっち、パソコンを抱えてるに違いないビバリーを想像してこっそり優越感に浸るけど、本音は虚しい。
 ビバリーがいなくて寂しい?
 まさか、そんなわけない。僕は鍵屋崎やロンのように相棒にべったり依存してない、ビバリーとはギブアンドテイクのドライな関係だったはずだ。ビバリーと今までどおりいかなくなったからって落ちこむ謂れがない。
 ビバリーのことなんかどうでもいいもんね。関係ない。
 さて、決勝戦第一試合に話を戻す。第一試合で実現したのは鍵屋崎VSヨンイルの異色な組み合わせ、誰がどう考えたって鍵屋崎の勝ちはありえない無謀な対決。だってそうでしょ?相手は西の道化だ、天才気取りの軟弱な坊やがどう足掻いたって勝てる相手じゃない。
 ヨンイルは強い。
 単純に喧嘩でも敗けなし、加えて爆弾作りの天才ときた。ヨンイルが東京プリズンに送致されたのは爆弾で二千人殺したからだって真偽不確かな伝説があるくらいで、過去の試合でもヨンイルは爆弾を巧みに用いた戦法で敵をかく乱していた。煙幕で敵の視界をくらましてとどめをさすという卑劣だけど効果的な戦い方。
 何故鍵屋崎にそれをしなかったのは謎だ。ヨンイルが提案したのは爆弾さがしゲーム、制限時間十分以内にこの地下停留場のどこかに仕掛けた爆弾を見つけ出せば鍵屋崎の勝ちという異例の勝負。ヨンイルに持ちかけられたこの悪趣味なゲームを鍵屋崎は自信満々に受けて立って、有言実行、制限時間十分以内に爆弾を見つけだしてしまった。
 お見事。ぱちぱちと拍手でもしてあげたいくらい。
 「勝負は決着した。試合は僕の勝ちだ」
 一目瞭然の事実をわざわざ口に出して言う鍵屋崎。自分の勝利を強調したいの?結構自己顕示欲旺盛だね。周囲に自分の勝利を印象づけるためか知らないけど、爆弾を手に持った鍵屋崎は余裕の表情。危険物が手中にあることを感じさせない落ち着き払った物腰で、冷ややかにヨンイルを眺めている。
 「いかにも君が好みそうな幼稚で悪趣味なゲームだ。が、突飛な発想には敬意を表する。いつ爆発するかわからない爆弾を自分で持ち歩いて一人芝居を演じきるなど頭が狂った人間にしか不可能な芸当だ」
 ヨンイルのゲームを幼稚で悪趣味と吐き捨てた鍵屋崎の顔は苦かった。鍵屋崎自身、爆弾さがしなんて死と隣あわせの危険なゲームに付き合わされて怒りをおぼえているのだろう。不愉快そうに目を細めた鍵屋崎を前にしても道化は悪びれもせず飄々としてる。氷針の眼光に射貫かれてもたじろがないなんて大した度胸だねと口笛でも吹きたくなる。
 「直ちゃん、ええんか」
 ヨンイルがにやにや笑いながら鍵屋崎の手中を指さす。ヨンイルに促されて自らの手中に目を落とした鍵屋崎が顔に疑問符を浮かべる。当惑した鍵屋崎を愉快げに眺めながら、ヨンイルがしれっと指摘する。
 「残り時間、あと二十秒もないで」
 「それを先に言えこの低能!!」
 「ヨンイルのバカ、知ってんならなんで親殺しの長話を中断しないのさ!?」
 鍵屋崎と同時に非難の声をあげる。爆発まであとたった二十秒っきゃないって正気かよ、今からじゃどこに逃げても間に合わない、地下停留場にいるヤツら全員が爆発に巻きこまれちゃう!
 真っ青になった僕の隣、茫然自失と立ち尽くした五十嵐の指がぴくりと動く。ズボンの腰に手をかけた体勢でヨンイルを凝視する五十嵐の様子は切迫していて、ヨンイル以外の何も見えてないように目が血走っていた。
 「ラッシーはやく逃げなきゃ、爆発のとばっちり食ってミンチになりたいの!?」
 五十嵐の腕にすがり、揺さぶる。だけど五十嵐は僕の必死の訴えを無視し、憑かれたようにヨンイルを凝視するばかり。充血した目でヨンイルを追い続ける五十嵐の様子は普通じゃない。一体なにがどうしたっての、わかんないことだらけだよ!とりあえずパトロン候補に死なれちゃ困る、一刻も早く五十嵐を正気に戻して地下停留場から脱出しなけりゃ他の観客どもども爆発の巻き添えでミンチになること請け合い。
 「ラッシーぼさっと突っ立ってないで早く逃げるよ、このまま死にたいの!?ラッシー死んだら奥さんどうなるの、ひとりぼっちになっちゃうよ!娘さん死んだうえに旦那にまで先立たれたんじゃ奥さんまた手首切っちゃうよ!」
 「逃げられないんだよ、俺は」
 「え?」
 五十嵐がぼそりと呟く。片腕にすがりついた僕へと向き直った顔には、諦観の笑みが滲んでいた。
 「あいつを殺すまで、逃げられない」
 「あいつ……?」
 五十嵐はおかしい。異常だ。腕を掴んだ五指から力が抜け、膝が砕けそうになる。腰砕けにへたりこみそうな足を叱咤し、その場に踏み止まり、五十嵐に食い下がる。
 「あいつってだれさ、ラッシーが殺したい人間ってだれさ?ここにいるヤツ、僕の知ってるヤツ!?」
 「ああ」
 五十嵐の目が狂気の光を帯びる。
 口元に柔和な笑みを湛え、双眸に狂熱を宿し、五十嵐がゆっくり口を開く。
 「すぐそばにいる」
 ぞっと二の腕が鳥肌立つ。こんなに近くいるのに五十嵐を遠く感じるのは何故?僕と五十嵐の間に聳えるのは正気の人間と狂気に侵された人間とを隔てる壁。五十嵐は理性的に狂ってる、自分が狂い始めたことを理解しながら平常な人間を装い日常に溶け込み復讐の機会を窺っている。
 五十嵐が復讐したい人間って、だれだよ?
 五十嵐の肩越しに対峙する鍵屋崎とヨンイルを見比べる。さっき五十嵐はずっとヨンイルを見ていた、執拗に見つめ続けていた。五十嵐が復讐したい人間がヨンイルだとしたら、看守と囚人、立場の違う二人を結びつける因縁の真相は? 
 「ラ、」
 僕が言いかけると同時に、地下停留場は再び大混乱に陥る。
 「死にたくねえならはやく逃げろ、一刻も早く逃げろ!」
 「もうペア戦なんかどうだっていい、決勝戦なんか勝手にやってろ!」
 「爆発の巻き添え食ってミンチになんのだきゃごめんだぜ、親だって見分けがつけねだろうさ!」
 爆弾はまだ解除されてない、いや、今からじゃ解除するのも不可能だ。生き延びるには逃げるしかない、逃げるが勝ちと判断した囚人たちが地下停留場の出口に大挙する。押し合いへし合い罵り合い、あちこちで乱闘騒ぎが勃発して流血の惨事へと発展し、暴徒化した囚人たちがはしゃぎまくって収拾がつかなくなる。地下停留場の惨状を見渡して恐れおののく僕をよそに、平常心を失わなかった人間が四人いる。
 鍵屋崎とヨンイル、ホセとレイジ。
 「レイジは逃げないの!?」
 「あったりめーだろ」
 声をはりあげて問えば、レイジはしれっとうそぶく。
 「ダチを見捨てて逃げらんねーよ。ロンにケツ蹴られちまう」
 余裕を滲ませた微笑、無敵の自信のあらわれ。レイジが今なお笑っていられるのは、死と隣あわせの極限状況を鼻歌まじりに生き残れる自信があるからだろうと痛感する。  
 「次試合は吾輩の出番です。戦わずして逃げだしたらワイフに軽蔑されてしまう」
 ホセがおどけて肩を竦める。東棟の王様と南の隠者はここから逃げ出す気はこれっぽっちもないらしい。でも、鍵屋崎は?あいつは僕とおなじ一般人、非力で無力な普通の人間。頭脳以外は何一つ特別なところのない脆弱な人間がヨンイルに立ち向かったところで返り討ちされるのがオチなのに、鍵屋崎はまだリングを下りてない。
 試合を続ける気だ。
 「かっこつけんのもいい加減にしろよ親殺し、とっととリングから下りなきゃ妹にも会えずに死ぬよ!」
 僕の叫びが聞こえているのかいないのか、鍵屋崎はこっちを振り向きもせず、颯爽と駆け出す。爆弾はまだ鍵屋崎の手元にある。もう十秒は経過した。残り十秒、だめだ、間に合わない!今からじゃどこか遠くに爆弾を捨てようにもとても無理、鍵屋崎は爆発に巻きこまれて死んじゃう。
 いやだ、こんなところで死ぬのはやだ、ママ、ママ……
 地面にへたりこみ、両手で耳をふさぎ、膝に顔を埋める。今から逃げたって間に合わない、ちびでやせっぽちな僕じゃ地下停留場の混雑に呑みこまれて出口に辿り着くのは不可能。僕は鍵屋崎と心中する運命だ。
 固く目を閉じ、来るべき衝撃に備えた僕の脳裏を、ビバリーの笑顔が過ぎる。

 ああ、死んじゃうまえに仲直りしとくんだった。
 いちごも半分こできずビバリーと永遠に別れ別れなんて……

 「伏せろ!!」
 鍵屋崎の声が、僕の目を開かせた。
 甲高い快音が響く。
 激震。
 大気が震え、重低音が足元を揺らす。
 「うわあっ!!?」
 「ば、爆発か!?」
 悲鳴と絶叫が交錯する中、頭上から瓦礫が降ってくる。
 鍵屋崎はバットを振りかぶる要領で、腰を捻り、木刀を構えていた。
 サムライの木刀を。
 「……つまり、サムライの木刀をバッド代わりにして爆弾を投げ飛ばしたってわけ?んな無茶な!」
 開いた口が塞がらない。天才のやることは滅茶苦茶だ。腰を抜かして地面にへたりこんだ僕が抗議の声をあげれば、木刀を下ろした鍵屋崎が、眼鏡のブリッジに指をあてつつ振り返る。
 「僕はこの場で最も効率よい方法を選んだまでだ。爆発まで残り二十秒ではどこに捨てに行っても間に合わず、囚人で溢れたこの地下停留場内で爆発するのは避けられない事態。ならば、人がいないところに爆弾を遠ざければいいだけのこと。柔軟な頭脳が成せる逆転の発想だ。上空ならば人はいない、何もない虚空で爆発すれば被害は最小限で済む。まわりを見まわしてみろ、僕の言ったとおりになったろう」
 「これが最小限って?冗談言うなよ!」
 上空で爆発した爆弾の衝撃で、天井の一部が崩落し、瓦礫と粉塵が降り注ぐ。こぶし大の瓦礫の直撃を避け、出口までの道のりに頭を庇って倒れ伏す囚人たちを見渡し、理解不能と首を傾げる鍵屋崎。
 「死者はでてないじゃないか」
 何か問題があるのか、とでもいうような顔と口ぶりだった。
 「逆転場外ホームランだな」
 呑気に口笛を吹くレイジだが、片手は十字架を握りしめていた。爆弾抱えた鍵屋崎が心配で神様に祈りでも捧げてたんだろう。軽薄な口ぶりで鍵屋崎を労い、小首を傾げる。
 「けど、サムライから預かった木刀そんなふうに使っていいの。バレたら説教されないか?正座で」
 「……危急の措置だ。他に飛距離を稼げる長物が見つからなかったから木刀で代用するしかなかった。サムライの木刀は前に握ったことがあるから手に感覚が馴染んでいて、失敗が許されない局面で実力を最大限発揮できた」
 「話すりかえてね?」
 「サムライは自分の身を守れと木刀を貸した。僕は言うとおりにしただけだ」
 うわ開き直りやがった。
 木刀で爆弾をかっ飛ばす、なんて無茶をやらかした鍵屋崎に囚人どもは呆然としていた。ふとホセを振りかえれば音のない拍手で鍵屋崎をたたえていた。 
 「すごい直ちゃん、ドカベンみたいやわ」
 腹を抱えて笑い転げるヨンイルをひと睨みし、鍵屋崎が言い捨てる。
 「さあ、これで本当に決着がついた。幼稚なお遊戯はおしまいだ、僕は今日から『道化を倒した男』を名乗らせてもらうぞ」
 ゴングが鳴り響き、決勝戦第一試合が終了した。
 木刀ひっさげてリングを下りた鍵屋崎をレイジが笑顔で出迎え、私語を交わす。第二試合が始まるまでの間に進行役の看守が今の試合が無効か有効かを協議し、別の看守たちが金網の柵を立て直す。金網の柵が元通りになった頃、ゴングを鳴らして試合の開始と終了を告げる役の看守がリング中央に立ち、咳払いの後に宣言。 
 「えー、協議の結果今の試合は有効!」
 「ちょっと待て、そんなのありかよ!親殺しは場外に出てただろうが、選手はリング外にでちゃいけねえってルールはどうしたんだよ!?」
 「ひっこめ審判、試合はやりなおしだやりなおし!ヨンイルさんが敗けるなんてありえねえ!」
 ―「じゃかあいしい、黙っとれアホたれども!!」―
 結果が不満で喧々囂々野次をとばす西の応援団を一喝したのは他ならぬヨンイル。威圧的に腕を組みぐるりを見まわし、西のガキどもに懇々と言って聞かせる。
 「審判の取り決めは絶対や。俺は直ちゃんに敗けたんや、お前らも大人しゅう納得せえ」
 「でも」
 「自分から言い出したゲームで敗けたんや、これ以上言いがかりつけられへんやろ。みっともない」
 「ペア戦に参加した選手が独自のルールを採用するのは規則で禁止されてない。金網が倒れてリングと会場の境目がつかなくなったのは不測の事態だが、選手がリングの半径十メートル内に常にいたことを考慮して今の試合を有効と見なす」
 「話がわかるやないか審判」
 鍵屋崎よりむしろヨンイルのが嬉しそうだ。レイジの隣に戻った鍵屋崎は自分が勝利したというのに手中に木刀を抱え、複雑な顔で黙りこんでる。まあ、微妙な勝ち方をして素直に喜べないのは心情的にわかる。
 次は第二試合。
 ヨンイルに代わってリングに立つのは南の隠者ことホセ。素手で人を殴り殺せる人間凶器。
 「お疲れさまですヨンイルくん。お次は吾輩にお任せあれ、仇をとってさしあげます」
 「頼むわホセ。レイジは手加減いらんらしいから、おもいっきりやったって」
 黒縁眼鏡の奥で柔和に目を細めたホセが、ヨンイルに会釈をし、リングへと上る。すれちがいざまホセの肩をぽんと叩いたのはヨンイルなりの励ましなのだろう。
 「よっしゃ、次こそ俺の出番だな。キーストアはひっこんでろよ、ホセの腕の一二本へし折って快音響かせてや……」 
 
 ―「待て!!」―
 レイジの参戦を妨げたのは、地下停留場に響いた大声。

 全員がおなじ方角を振り返る。地下停留場の出口に仁王立ちした人影が、人ごみを突っ切るように一直線にリングへと歩いてくる。ぽかんと口を開けたレイジの隣では、木刀を手にした鍵屋崎が呆然と立ち竦んでいる。目にした光景が信じられないとでもいうような驚愕の表情。
 「僕は幻覚を見ているのか。馬鹿な、何故君がここに!?」
 地下停留場に乱入したのはサムライだった。
 ズボンの太股に鮮血を滲ませながらも、負傷した片足をひきずるように鍵屋崎の正面までやってきたサムライがきっぱりと断言する。
 「次の試合にでるのは、俺だ」
 そして、サムライとホセの対決が実現した。

少年プリズン(未完) | コメント(-) | 20050817104009 | 編集
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