ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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二十九話

 医務室に嗚咽が響く。
 「ひぐっひぐっ……ねえロンもひどいと思わない思うでしょ、ビバリーってばわけわかんない、あんなつまんないことで腹立ててさ。僕が一生懸命話しかけてもずっと無視で返事もしてくれないんだよ」
 俺の枕元で涙ながらに訴えるリョウをうんざり眺める。
 「つかお前なんでここにいんだよ。ビバリーと喧嘩したのはわかったけど違うとこ行けよ、俺とお前ダチじゃねえし親しくもなんでもねえだろ。いや、それ以前にお前こないだ俺にしたこと忘れたのか?背後から抱きしめて股間まさぐって腕にぶすっと痛いお注射してくれたよな」
 「ロン冷たい、大目に見てくれたっていいじゃんー。笑って許してよあれくらい」
 「あれくらい?」
 こめかみに血管が浮き立つ。
 「そんなことよりビバリーだよ!もうほんっと頭きた、ビバリーが泣いて謝るまで絶対帰ってやんないんだから。僕悪くないもんね、僕が謝る必要ないよね。ねえロンもそう思うっしょ」
 「野郎の飴玉恋しいなら他あたれ男娼。ぶん殴るぞ」
 ビバリーと喧嘩したんだかなんだか知らないが、枕元でめそめそ泣かれるのは鬱陶しい。行く場所もなく頼る人間もいないリョウが医務室にふらふら吸い寄せられたのは泣き落としにかかる人間を邪険にできない俺のお人よしな性格につけこんだからだが、どっこい俺はこないだリョウにされたことを根に持ってる。
 ついこないだ渡り廊下で起きた抗争でリョウが俺にしたこと……思い出すのもおぞましい。
 俺の背後に忍び寄ったリョウが人懐こい笑顔で腕を掴まえて袖をめくりあげて注射針の鋭い先端を突き刺す。血管に注入された覚せい剤がやがて全身に巡り、意識が朦朧として体がぐったり弛緩して、膝が砕けるようにくずおれた俺を背後から抱きしめたリョウのツラがまだ鮮明に脳裏に焼き付いてる。
 それだけじゃない、リョウは意識が朦朧と霞んだ俺の体を好き放題に弄んでくれた。ズボンの内側に手を突っ込んで俺の股間をまさぐって、鍵屋崎やレイジやサーシャが見てる前でさんざん辱められた。
 今思い出しても恥辱で頬が熱くなり、リョウへの憎悪で瞼の裏側が真っ赤に燃える。
 リョウが医務室に入って来た途端、より正確に言うならカーテンをシャッと開けた瞬間に全身の血が逆流して頭が沸騰して、漫画を放りだしベッドに跳ね起きた俺は、自分でも意味不明な奇声を発してリョウに殴りかかろうとしたが、リョウがいきなり腰にとびついてきたもんでそうもいかなくなった。
 一応、俺は怪我人だ。肋骨を骨折した上に全身十三箇所の打撲傷を負って絶対安静を義務付けられた不自由な体だ。そんな俺が腹にタックル食らってベッドに押し倒されたところを試しに想像してみてくれ、ぶっちゃけ死ぬかと思った。怪我人の腹に突撃するなんざお前は鬼かとリョウの胸ぐらを掴んで罵倒したかったが、肋骨が圧迫された激痛にのたうちまわるしかない俺には無理だった。
 で。リョウは今、俺の枕元にちゃっかり腰掛けてる。
 見舞い客用の折り畳み式椅子に腰を据えて、さっきからめそめそぐすぐす泣きっぱなしだ。リョウが支離滅裂に訴えたところをまとめると、ビバリーと喧嘩して、一方的に無視される気まずさ所在なさに耐えかねて房をとびだしてきたらしい。
 時刻は夕方。強制労働が終了して、囚人が続々と引き上げてきた頃だ。
 俺はいい加減うんざりしていた。リョウときたら俺がベッドに寝たきりなのをいいことに強制的に泣き言に付き合わせて憂さを晴らしてるとしか思えない。
 その証拠に涙と鼻水でべっとり顔を汚して、子供っぽいしぐさでごしごし頬をこすり、時々しゃっくりの発作めいた変な嗚咽をあげ、ビバリーがいかに人でなしか思いやりのないヤツか切々と訴えてるのだ。演技が大袈裟すぎて同情を引こうって魂胆が見え見えだ。哀れっぽく鼻を啜り上げながら俺の顔を覗きこむ動作がなんだかリスっぽくて庇護欲をくすぐるが騙されちゃいけない。斜め四十五度に計算し尽くされた角度で小首を傾げるのはリョウの作戦だ。
 つぶらな目を涙で潤ませ、めそめそ泣きべそをかきながらも、男に媚売るのを忘れないしたたかさはさすがだ。言っとくが、俺はこいつが嫌いだ。大嫌いだ。男に縋らなきゃ生きてけないところなんて俺がこの世でいちばん嫌い女、すなわちお袋そっくりだ。男に依存して甘い汁吸おうって魂胆が透けて見える媚びた笑顔もお袋そっくりだ。
 「俺の手足がちゃんと動くなら鼻と前歯へし折って、男相手に商売できないようにしてやりたい」
 本気だった。
 ベッドに上体を起こした俺は、体を満足に動かせない悔しさに歯噛みする。
 リョウに殴りかかろうと片腕振り上げただけで、みっともない悲鳴をあげずにはいられない激痛に襲われたのだ。苦痛に顔を歪めてベッドに突っ伏した俺をひややかに見下ろし、「馬鹿じゃんロンなにやってんの。死ぬよ」と言い捨てたリョウの軽蔑の表情が忘れられない。健康体に戻ったらお礼参りしてやる。
 だが、この体じゃ無理だ。悔しいが、腕づくでリョウを追い払うこともできない。リョウを殴ったら逆に手首が折れちまいそうだ。リョウを無視して大人しく寝てるのがいちばん賢い選択なんだろうが、喧嘩っ早くて気が短い俺には生憎できかねる相談だ。
 「お前うざいよ、他あたれよ。房に帰りたくないんなら客のベッドにもぐりこんでりゃいいだろ、売れっ子なんだからよ。男たらしこむの得意なんだろ?俺にひっつくのはやめろ、迷惑だ、うざったい。お前の面見てるとストレス溜まるんだよこっちは」
 「そんな気分じゃないよ……」
 「知るか」
 俺に泣きつかれても困る。
 だいたいリョウには反省の色がかけらもない、渡り廊下じゃさんざん人を弄んで見世物にしてくれた癖にそんなことまるっきり忘れたみたいに、いや、それどころか最初からなかったみたいにまったく悪びれない態度が神経を逆撫でする。 
 枕元の椅子に腰掛けたリョウが、ぐずぐず鼻水を啜りながらポケットをさぐる。
 「これあげる。お見舞い」
 意外な言葉に耳を疑う。
 「……なにその疑心暗鬼の眼差し。傷つくんだけど」
 リョウの手のひらには草苺……いちごがのっかっていた。
 いちご。たしかにいちごだ。ほのかに甘酸っぱい匂いも漂ってくるし。
 「どうしたんだよこれ」
 「イエローワークの温室でとれた。欲しいって言ったらくれるって言うから貰ってきた。ひとりで食べるつもりだったけど、その……」
 リョウが言い淀む。叱られた子供みたいに首をうなだれた姿に孤独なレイジが重なる。
 リョウが言わんとしたことに察しがついた。
 リョウの尻ポケット一杯に詰まってたいちごは、ビバリーと半分こしようとわざわざ持って帰ったものだった。いちごのお裾分けをきっかけに仲直りできたらいいなと考えたんだろうが物事はそう簡単にはいかなくて、結局リョウは逃げるように房をとびだして現在に至るわけだ。
 ひとりでいちごを食べるのは寂しいから俺にも食え、とそういうわけか。
 実際、ふたりで食べる予定で狩って来たいちごをひとりで摘むのはみじめだろう。ちょっとだけリョウに同情する。いちごを半分こして仲直りという発想は幼稚だが、半面けなげでいじましいといえなくもない。
 「……しかたねえな食うよ、食ってやるよ!それで満足するんだろうが。うざってえからこれ食ったらむこう行けよ」
 リョウを追い払いたい一心でヤケ気味に叫び、いちごをむんずと掴み取る。
 そのまま口に放りこもうとして、はたとやめる。
 「……腐ってないよな」
 「失礼だね、とれたて新鮮だよ。僕が毎日ホースで水やって育てたいちごなんだから」
 「毒入ってないよな」
 「……いいよもう食べなくて」
 リョウがふてくされる。
 「冗談だよ。食うよ食うっつの」
 だが、なかなか口に放りこむ決心がつかない。見た目はたしかにいちごだ。赤い表面に黒い粒粒の可憐な果実。だがリョウのことだ、またなにかよからぬこと企んでる可能性も捨てきれない。
 こいつ、また俺をはめようとしてるんじゃないか?
 顔に疑念がでたらしい。
 気分を害したリョウが憤然と椅子を蹴り、俺の手からいちごをもぎとりにかかる。
 「ああもうビバリーもロンも頭くるっ、人の親切疑って無駄にして!そんなに僕が信用できないならいいよ、いちご返してよ!ぼくひとりで欲張って食べておなか壊してやるっ」
 「なんだよお前が先に言い出したんだろ、こらさわんなこれはもう俺の手に渡ったんだから俺のいちごだよ!いちごなんか見るのも食うのもひさしぶりだししみじみ感慨に浸ってただけだよ、食いたくないってかってに決めつけんなよ!」
 「嘘つき、ほんとは食べたくないくせに!いやな顔してたくせに!」
 「いてててて指こじ開けにかかんなよ怪我人にゃ親切にしやがれこの男娼!?」
 「ああっ信じらんないっ、いちごに唾かけたばっちい!」
 「これで俺以外食えねえだろざまあみろ、いちごは俺のもんだ!」
 子供っぽい上に意地汚さ全開の喧嘩だ。
 得意げに開き直った俺に降参したか、がっくり肩を落とし、椅子にへたりこむリョウ。勝った。ささやかな勝利の余韻に酔い痴れながら、ゆっくり五指を開いて口にいちごを放りこもうとして愕然とする。
 いちごが手の中で潰れていた。
 『………………煩死了』
 リョウとの攻防で指に力をこめすぎ振りまわしたのが原因らしい。
 五指から滴る赤い汁がシーツに点々と染みる。くそ、こんなオチってありかよ。いちごにお目にかかるのなんて何年ぶりだかわかんねえのに。落胆した俺は、手のひらに舌をつけて甘酸っぱい汁を啜る。舌でねぶるように一本ずつ指をしゃぶり、丁寧に汁を舐め取り、いちごを頬張る。
 よく熟れていて、美味かった。
 「……意地汚いよロン。育ちの悪さがまるわかり」
 「だってもったいないだろ。
  形が悪くても味は変わんねえし、食いもん残すなってお袋に厳しく躾られたんだよ」
 むきになって反論すれば、こらえきれずにリョウが吹き出す。
 前にいちごを食べたのはいつだったっけ……もう思い出せないほど昔、俺がまだガキの頃。客が土産に持参したいちごがテーブルにおかれてて、お袋の目を盗んでつまみ食いしたことがあったっけ。
 手のひらに顔を埋め、夢中で汁を舐め取りながら、ふと呟く。
 「あいつにも食わせてやりたかったな」
 レイジはちゃんと飯食ってるだろうか。後ろ手に手錠かけられたまんまじゃさぞかし飯も食いにくいだろうに。俺ばっかいちごを味わって、ひとりじめして、後ろめたい。
 そんな俺を見て、リョウがあきれたふうに首を振る。
 「お熱いね。のろけてんのそれ?」
 「なんだよ、独居房にぶちこまれたダチの心配して悪いか」
 「ダチねえ」
 ベッドにだらしない姿勢で頬杖つき、小馬鹿にしたように鼻を鳴らすリョウ。
 「どいつもこいつもダチだとか相棒だとか仲間だとか僕に言わせりゃくだんないね。自分以外の他人に対する評価は利用価値があるかないかだけでしょ?使えないやつはぱぱっと切り捨てる、使えるやつはかわいがる。違うの?そうじゃないの?ねえロン、教えてよ」
 今日のリョウはやけにからんでくる。ビバリーと喧嘩した八つ当たりだろうか。挑発的な上目遣いで覗きこまれ、胸に反感が湧きあがる。自分の分のいちごをベッドにばらまき、すぐに食べるでもなく指でつついて転がし、ひょいと摘み上げては下方から覗きこむ。食い物で遊ぶなってお袋に教わらなかったのか、と一喝したいのをぐっとこらえる。
 リョウの目が、ひどく寂しげだったからだ。
 「わけわかんないよ、もう。なんでレイジがロンみたいに使えないやつ大事にするのか。ロンなんてなんにもできない、ただの足手まといじゃないか。レイジに比べりゃ喧嘩なんか全然弱いし、豹に守られてばっかの甘ったれの子猫。王様の懐でしっぽ逆立ててにゃーにゃー暴れるしかない乳臭い子猫じゃん」
 淡々とした指摘が、容赦なく胸に突き刺さる。
 リョウの言葉はどこまでも真実だ。今の俺はどこからどう見ても立派に足手まといで、レイジに比べれば全然喧嘩も弱くていつだってあいつに守られてばかりだ。俺だって強くなりたい、レイジの相棒として恥ずかしくないくらい強くなりたい。レイジが売春班撤廃の条件に100人抜き宣言したのも元はといえば俺が原因で、本来なら俺はこんなところで呑気に寝てる場合じゃないのだ。 
 「使えないねロン。ほんとーに使えない。レイジが100人抜き宣言したのだって元はいえば君のせいじゃん。ねえ教えてよ、どうやって王様たらしこんだの。僕がどんだけ口説いてもダメだったのに、君ときたらレイジと出会ってからたった一年半で骨抜きにしちゃって。野生の豹を手懐けるなんてすっごい調教師の才能でもなきゃ不可能だよ。
 ああ、そういえば」
 リョウがにっこりとほほえむ。
 男を翻弄して愉悦にひたる、底意地悪い娼婦の微笑。お袋がよく、この手の笑顔を浮かべていた。
 「決勝戦もうすぐだよね。大丈夫なの、勝てるの?右腕怪我してるんだよね。そんな状態で西と南のトップに戦い挑むなんて自殺行為じゃない、命投げてるよ。そんなに死にたいのかな、レイジってば。まあ可愛い可愛いロンちゃんのためなら喜んで死んでくれるだろうけどさ」
 「だまれ」
 「ホセとヨンイルだけじゃない、いちばんおっかないのはサーシャだ。サーシャは本気でレイジ潰しにかかるよ、殺しにかかるよ。ロンはそれでいいの?レイジは君のために命がけでリングに上るのに、君は応援も行かずベッドでじっと寝てるつもり?あんまり薄情じゃない、それ。相棒を名乗る資格あるの?」
 「だまれよ」
 「ねえロン、レイジが死んだら次はだれにすりよるの?レイジがいなくなったら次はだれにケツ貸すの?最有力候補は凱かな。東棟じゃサムライに次いでナンバー3の実力者で取り巻きもいっぱいいるし相手に不足はない。相棒とか友達とか仲間とかどうせ口先だけだよね、レイジが死んだら途端にレイジのこと忘れて次のパトロンさがすんだよね?君がよく口にする相棒って言葉も所詮、馬鹿な王様をつなぎとめとくための餌なんでしょ?」
 リョウがいちごを口に含む。
 「レイジ、ああ見えて寂しがり屋だもんね。ひとりぼっちは怖いだろうね。君のことを絶対手放したくないから、そりゃペア戦だって頑張るだろうさ。体ぼろぼろになっても笑顔を絶やさずに、全部君のために、君だけのために。ロン実は頭いいよね。仲間とか相棒とかレイジがそういう言葉に弱いって知ってて、軽い見た目に反してそういうのに人一倍こだわる甘いやつだって見ぬいて、お前は俺の大事な相棒だとかこれみよがしに言って聞かせてるんでしょ?」
 「違う、レイジは俺の相棒だ。嘘じゃない、マジでそう思ってる!」
 「ほらまた。僕にまで嘘ついてごまかしてる。ホントは自分さえよけりゃレイジのことなんかどうでもいいくせに。レイジだけじゃない、鍵屋崎もサムライもほんとはどうだっていいんでしょ?自分だけ助かるなら東京プリズンで無事に生き残れるなら、仲間を犠牲にしたってかまわないって利己的に計算してるくせに罪悪感から逃れたくて綺麗事ばっか」  
 いちごを口の中で転がしながら、椅子の背凭れに背中をあずけ、リョウが肩を竦める。
 俺のことはなんでもお見通しだと言わんばかりの達観した表情。
 「正直に吐いちゃいなよ。腹ん中じゃレイジのことうざったいって思ってるんでしょ?鍵屋崎もサムライもうざったいって思ってるんでしょ、自分には仲間なんかいらないって思ってるんでしょ。ロンも僕とおんなじだよ、友達とか仲間とか相棒とか言葉には反吐がでるタイプの人間」
 唾液に濡れ光るいちごを口から引っ張り出したリョウが、唇の端を邪悪につりあげる。  
 「仲間なんかくだらないね。くだらない仲間のために死ぬつもりでいるレイジもくだらない」
 
 頭の血管が切れた。
 発作的に、リョウの胸ぐらを掴む。

 「……前言撤回しろ、レイジはくだらなくねえ」
 舌にいちごをくるんだリョウが驚いたように目を見張る。滑稽な芝居。
 「どうしたのロン、そんなおっかない顔して」
 「黙れよ男娼」
 くだらない?くだらなくなんかない。
 「くだらないもんか、レイジは俺の相棒だ。俺に相棒を名乗る資格がなくてもそうなんだ。あいつはいつだって俺のこといちばんに考えてくれるどうしようもないイイやつで、ときたまそれが空回って身勝手に結論だしちまうこともあるけど、でもそれだって俺のためなんだよ」
 「なにそれ自慢、のろけ?」
 リョウの挑発を鼻で笑い飛ばし、言い返す。
 「ああそうだよ、自慢だよ。のろけてるんだよ。俺はいい相棒持って幸せだなってダチのいないお前に自慢してやってんだよ、どうだ、死ぬほどうらやましいだろ。いいかよく聞けよ男娼、レイジはくだらなくなんかねえ。あいつは最高だ。俺の人生は今だってかなり最低だけど、あいつがいるからどん底から救われたんだ。俺は東京プリズンに来てから何度も何度も何度もレイジに救ってもらって助けてもらって、そんでいつのまにかあいつのことがめちゃくちゃ大事になった。あいつのことがめちゃくちゃ好きになった」
 お袋よりもメイファよりもずっと、俺にとっちゃなくてはならないやつで。
 俺の人生にはなくてはならないやつで。
 大きく深呼吸し、揺るぎない眼差しでリョウを睨みつける。
 「あいつは俺を裏切らないし、俺はレイジを裏切らない」
 レイジが俺を裏切るときは、俺のことが嫌いになったとき。
 俺がレイジを裏切るときは、レイジのことが嫌いになったとき。 
 だからそんなことはありえない。絶対に。
 「リョウ、お前はどうなんだよ。そう思える相手いるのかよ。いないのか?可哀想にな。俺は今までの人生ろくなことなくて、しまいにゃ東京プリズンに送られてずっとヤケになってたけど、レイジと出会えた今はそれなりに人生楽しいよ。あいつがいてくれて幸せだよ」
 まっすぐリョウを見つめ、皮肉げに笑う。
 「その分だと、お前の人生はつまんないだろうな」
 リョウの顔が怒りで紅潮する。
 椅子を蹴倒して立ち上がったリョウが、体の脇でこぶしを握りしめ、肩で息をしながら俺を睨みつける。
 「ロンもレイジも鍵屋崎もサムライもみんな死んじゃえ、お前ら全員ペア戦で心中すればいいんだ!!」
 残りのいちごを床にぶちまけたリョウが、ベッドの脚をおもいきり蹴飛ばし走り去る。
 医務室のドアが乱暴に閉じられ、靴音が急速に遠ざかってゆく。 
 床一面に散らばったいちごを見下ろし、ため息まじりに呟く。
 「…………………ガキ」
 一応年上だよな、あいつ。

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