ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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四十二話

 開いた口がふさがらない。
 「なんだそのオチ」
 昨晩起きた出来事、医務室の大乱闘の顛末をビバリーが報告する。
 「フィクションなんてとんでもない!なんだそのオチって言われましてもそれが真実っス。深夜、こりずにロンさんを犯しにきた歩く性欲の権化こと東京プリズン最凶の看守タジマが道化と隠者の連携プレイでノックアウト。隠者のアッパーカットで白目剥いたタジマは現在独居房に監禁中。自業自得っスね」
 ま、ビバリーが喜ぶのもわかる。東京プリズンの囚人でタジマに恨み持ってないヤツなんかいない。地震雷火事タジマ。東京プリズンで猛威を振るう自然災害の一種だと思えばまだ諦めがつくが、犠牲者の数は年々増えこそすれ減りはしない。
 そのタジマも、遂に悪運尽きた。
 東京プリズン最凶と悪名高い看守が道化と隠者の最強コンビに倒され、その場に居合せた安田の指揮で独居房に放りこまれたニュースは棟から棟へと伝わり、囚人たちはバンザイと狂喜した。なんで謹慎中のタジマが普通に出歩いてるの?なんていまさらな疑問抱くヤツはいない、タジマならいつどこで何しでかしてもおかしくない。
 一部じゃ有名な話。タジマには警察庁高官の兄貴がいて、愚弟の不祥事は身内の恥だから圧力かけて揉み消してたわけだ。上からお咎めないのをいいことに殺りたい放題犯りたい放題の看守の暴君には東京プリズン殆どすべての囚人がうんざりしていた。
 だから、タジマが独居房に放りこまれたのはすごく嬉しいんだけど。
 「ヨンイル、最後の台詞言いたかっただけじゃないの」
 「リョウさんもそう思います?」
 「思う、てか絶対そうにちがいないって。道化の性格からして」
 ヨンイルがパクッたのは二十世紀に流行った漫画の名台詞。僕は読んだことないけど、外で売春してた時に客から教えてもらった。その客ってのが正真正銘のバカで、憧れの主人公まねて胸に七つ星の刺青入れてたのも今となっては懐かしい。若気の至りといやヨンイルも全身に龍の刺青入れてるらしいけど直接お目にかかったことないから半信半疑の噂の域を出ない。長袖長ズボンの囚人服を着てたら肌を露出する機会もないし真偽は今もってさだかじゃないけど、めったに図書室からでてこない漫画オタクが全身に彫った龍の刺青ってなんだかちぐはぐな組み合わせだ。
 「大体さあ、道化はともかく隠者はなんで図書室にいたわけ?消灯時間過ぎてたのに」
 「さあ、わかりません。何はともあれ、お二人の活躍によりロンさんの貞操は救われ害虫が一匹駆除されました!道化と隠者には感謝しなきゃ、東京プリズンの平和を守ってくれてサンキューベリーマッチ!」
 虚空に投げキッスするビバリーをよそにパソコンによりかかる。
 「甘いよ、タジマはゴキブリ並にしぶといんだ。どうせまたすぐ独居房からでてくる」
 看守が独居房に収容されるなんて前代未聞の例外的措置だ。
 安田もよっぽど頭にきたんだろう、タジマの頭が冷えるまで独居房に入れておけと独断で命令を下した。糞尿垂れ流しの独居房で後ろ手に手錠かけられクサイ飯を犬食いする数日間を送ればさすがにタジマも懲りるかもしれない、なんて世間の厳しさをよく知る僕が甘っちょろい期待をするわけない。あのタジマが独居房送りを食らったところであっさり反省するわけない、狂気が加速してさらに手におえなくなるだけだと冷めた見解を挟めば、ビバリーがちっちっちっと舌打ちする。
 「ポジティブシンキングでいきましょうよ、リョウさん。東京プリズンから一匹変態が消えたんだ、めでたいじゃないスか。ほんの数日間でもタジマがいなけりゃ天国っス」
 「そりゃそうだ」
 ほんの数日間でもタジマがいないのは嬉しいし、口臭くさい息に晒されることなく過ごせるのは喜ばしい。パソコンに背中を凭せ、ビバリーに共感する。
 「でもさ、レイジも薄情だよね。ロンのピンチだってのに結局姿現さなかったんでしょ?ちょっと前までロンにべったりで他棟の連中からさんざ色惚けキングって囃されてたのにロンがタジマに犯されてもどうでもよかったのかね。一度も見舞いにきてないってゆーし」
 「最近レイジさん見てませんねえ。食堂でも廊下でも図書室でも全然」
 「房にこもりっきり?」
 「さあ?」
 ビバリーもお手上げ。僕もここ最近レイジの姿を見てない。廊下ですれ違うこともなし、食堂で顔を見ることもなし、遭遇率が激減してる。僕とビバリーの指定席、食堂の二階からは一階の様子がよく見渡せて、ちょうど手摺の真下が鍵屋崎とサムライ、レイジとロンが指定席にしてるテーブルなんだけどそこにも姿がない。席に着いて食事をとってるのは鍵屋崎とサムライだけで、入院中のロンはもとよりレイジの姿はどこにもない。
 「どうしちゃったんだろ、王様」
 「またロンさんと喧嘩したんすかね」
 「いつもの喧嘩ならとっくに仲直りしてる。今度のはやけに長引くじゃん」
 レイジの姿がないのも不自然だ。落ち着きないレイジは用があってもなくても鼻歌まじりに廊下ほっつき歩いてることが多いのに、ここ数日、いや正確にはロンと凱の試合翌日から全然さっぱり姿を見せず消息を絶ってる。こりゃ事件だ、大事件。
 「貼り紙でもだす?『王様行方不明』って」 
 「ふざけないでください、マジなら一大事っスよ。入院中のロンさんほっぽりだしてどこでなにやってんだかレイジさんは……まったくもう!」
 お人よしなビバリーはロンにひどく同情し、一度も見舞いにこないレイジに憤慨してる。僕はロンに同情しないけど、レイジ失踪事件には好奇心を刺激される。次のペア戦まで間がない。ここまでレイジたちは順調に勝ち進んで、予定試合も残りわずか。あと一週間か二周間後には西南北の3トップとぶつかる可能性が浮上した。
 決勝戦を目前に控えた大事な時期に、出場者のレイジが消えた。
 ロンが入院中でレイジが行方不明中の現在、まともに戦えるのはサムライしかいない。鍵屋崎は戦力外。もしレイジが帰って来ないまま試合当日を迎えれば、サムライと鍵屋崎の二人だけで戦うことになる。
 結論。勝てるわけない。
 「あーあ、折角ここまで順調に行ってたのに残念!100人抜き惜しくも達成ならずで親殺しは売春班に逆戻り、毎日のように男に犯される地獄の日々再開か。お気の毒さま」
 笑いを噛み殺した表情で言い放てば、「リョウさんあんた全然気の毒がってないっしょ」とビバリーに指摘される。ご名答。本音を言えばざまあみろ。他人の不幸は蜜の味、鍵屋崎の不幸は麻薬の味。鍵屋崎が不幸になればなるほどうっとりしてもっともっといじめたくなっちゃう、それが僕の愛情表現。
 軽いノックが響いた。
 「ん?」 
 誰だろう、とビバリーと顔を見合わせる。夕食終了後の自由時間、規則で縛られた囚人に許された数少ない娯楽の時間。ビバリーとの雑談に興じていた僕は、てっきり客が訪ねてきたんだと勘違いして立ちあがる。ドアに向かいながらビバリーに目配せ、パソコンを隠すよう指示。ベッド下にパソコンを収納したビバリーが、客と入れ違いに房を出ようと僕の背中に続く。
 「悪いねビバリー、どっかで適当に時間つぶしてきて」
 「毎度毎度のことで慣れてまス。僕が廊下うろついて風邪もらうまえにヤること済ませてくださいよ」
 ビバリーは頑固だ。ベッドの下に隠れてタダ見していいよって進めても頑として首を縦に振ろうとしない。僕は3Pしてもいいんだけどね、なんてどうでもいいことを考えながらノブを握りドアを開く。
 「いらっしゃい、お一人様ごあんな……」 
 接客スマイルでドアを開け、固まる。そこにいたのが鍵屋崎だったから。
 「客と勘違いしたのか。不愉快だな」
 眼鏡越しに注がれるのは絶対零度の侮蔑の眼差し。針のように鋭利な眼差しに貫かれ、接客スマイルも強張る。
 「なんか用?」
 「中で話す。部外者には聞かせたくない用件だ」
 噂をすれば影。ドアを開けたらそこにいた鍵屋崎が「さあ入れろ」と顎をしゃくる。偉そうに、何様のつもりだよ。嫌われ者の親殺しのくせに相変わらず態度でかいなコイツ、と心の中で悪態をつきながら鍵屋崎を招き入れる。
 「ええっと、僕はどうしたら」
 「話があるのはこの男娼兼情報屋だけだ。率直に言うが、君には関心がない。のみならず君が視界に入ると集中力が散る、三秒以上黙っていられない躁病傾向の人間を交えて話し合いをもてば内密の用件を不特定多数の人間に口外されるおそれがある……僕としたことが少々前置きが長かったな。簡潔に訳せば三文字だ。『でてけ』」
 あ然とする。
 それ人にものを頼む態度じゃないよとつっこみたくなった僕の横をすりぬけ、しょんぼりうなだれたビバリーが出てく。
 「あはは……そうっスよねえ、僕はいつもいつでもお邪魔虫なんだ。いつでも仲間外れで除け者でお二人の話にまぜてもらえない可哀想なビバリー・ヒルズ……僕のお友達はロザンナとサマンサだけ」
 哀愁漂う背中を廊下に閉め出したときはさすがに良心が咎めた。後ろ手に鉄扉を閉め、気を取り直し鍵屋崎と向き合う。
 「で、ご用件は」
 「リョウ、君は北のサーシャと交流があったな」
 突然昔の話を蒸し返され、たじろぐ。いきなり何言い出すんだこいつ?鍵屋崎の口からサーシャの名前がでてくるとは思わなくて動揺する。鍵屋崎は腕を組み、ひややかな眼差しで僕を見つめてる。優れた観察眼と優れた洞察力とを兼ねた聡明な眼差しは嘘を看破する名探偵のそれだ。
 「半年前、君は北のスパイとなりレイジを嵌めた。ロンをおとりにレイジを監視棟におびきだし、一網打尽にしようとした。今でもよく覚えている」
 「だからどうしたの。いまさら復讐しにきたの?」
 皮肉げな笑みを浮かべ、鍵屋崎を真似て腕を組み、開き直る。
 「サーシャと君の関係は今でもまだ続いてるのか」
 「……言いたいことがよくわかんないけど、答えはノー。半年前の失敗で僕はサーシャに切られた、あれからサーシャとは会ってない。役立たずのスパイ飼ってても意味ないっしょ」
 自嘲的に言い放てば、鍵屋崎がなおも食い下がる。
 「君とサーシャは面識がある。たとえ一時期でもサーシャは君をスパイとして利用していた、君の情報収集能力を見込んでレイジの身辺をさぐらせていたのは事実。……ここからが重要だが、僕がサーシャと交渉するなら仲介人をおく必要がある」
 「サーシャと交渉だって?ちょっと待ってよメガネくん、話にさっぱりついてけないよ。最初からちゃんと話して」
 独走する鍵屋崎に不満を訴える。神経質な手つきで眼鏡の位置を直し、ためらいがちに視線を揺らす。ため息をつき、覚悟を決め、毅然と顔を上げる。 
 「前回話したろう。副所長の安田がさる大事な所持品を紛失した、よりにもよって人で混雑した地下停留場でだ。現在、その所持品をどの棟のだれが所持してるかは全く不明の状態だ。ヨンイルの助力を得て西棟を捜索したが見つからない、東棟と南棟は現在捜索中だが有力な手がかりは掴めない。残るはサーシャがトップに君臨する北棟だけだ」
 点が線になった。
 こないだ鍵屋崎は、情報屋の僕なら何か情報を掴んでるにちがいないと一縷の希望を手繰りこの房にやってきた。副所長の安田がペア戦が催された地下停留場で大事な所持品を紛失した、その行方を知らないかと無茶を言ってきた。その時はまだ何も知らなかった。
 安田のなくし物が銃で、ビバリーが銃を持ってることも。  
 安田のなくし物が銃なら鍵屋崎も必死になるわけだと納得した。ビバリーが拾った銃には六発弾丸が装填されていて、ぶっちゃけ乱闘なんかに使われたらすぐ火を噴ける状態だった。
 鍵屋崎はまだ知らない。安田の銃をビバリーが拾い、ビバリーが五十嵐に渡し、今ごろは五十嵐の手を経てとっくに安田に返されてるはずなのにそれすら知らされてない。
 とんだピエロだ。
 「?なにがおかしいんだ」
 「気にしないで、こっちの話」
 こいつ、格好つけてるくせに間抜け過ぎる。鍵屋崎が必死になって捜してる銃はとっくに安田の手に戻ってて、鍵屋崎が今やってることは全部骨折り損のくたびれ儲けなのにさ。むくわれないのに頑張ってる鍵屋崎がおかしくておかしくて笑いを噛み殺すのに苦労した。安田と鍵屋崎のあいだに行き違いがあって情報が錯綜してるのかもしれないが、じきに鍵屋崎も自分がやってることが全部無駄だったって思い知ることになる。それともまだラッシーが返してないとか?……まさか。人望厚いラッシーがいまだに銃なんて物騒な凶器持ち歩いてるはずがない、殺したい相手がいるなら別だけど。
 「それで、折り入って君に相談がある。サーシャとの仲介役を頼めないだろうか」
 「へ」
 間抜けな声をだしてしまった。が、鍵屋崎は本気らしい。 
 「サーシャは東棟の人間を敵視している。特に僕は地下停留場でレイジの隣にいるところを目撃されている。僕が直接交渉に行くのは危険だ、サーシャが冷静でなければ話し合いが成立しない。僕は一日も早く、一刻も早く安田の盗難品を見つけだしたい。北の囚人がそれを所持してると仮定した場合、トップの助力を乞わないことには捜査が進展しない」
 「北との仲介役頼もうとしたんならお生憎サマ。言ったでしょ、サーシャは僕のこと憎んでるって」
 「君しか心当たりがないんだ。君に協力を頼むのは僕としてもはなはだ不本意だが致し方ない。東棟の人間で最もよくサーシャを知るのは君だ、サーシャと気安くしていたのは君だ。仲介役にはリョウ、君が適任だ」
 物言いは威圧的だけど、声には一途にすがる響きがある。そんな鍵屋崎を見ていたら悪戯心が芽生え、多少自分の身を危険にさらしても遊んでやりたくなる。
 好奇心猫を殺す。
 「そこまで言われちゃ仕方ないなあ」
 参りましたとかぶりを振り、わざとらしくため息をつく。わかってる、僕もどうかしてる。命惜しさにサーシャに近付きたくないって言ったのはついこないだのこと。サーシャの身辺をうろついてるのがバレたら最後僕は顔をナイフで切り裂かれ誰だかわからなくされる運命だ。わかってるよそんなこと、自分が危険な橋渡ろうとしてることぐらい。鍵屋崎をおちょくるのが楽しくて、利口なつもりで単純で、騙されやすい鍵屋崎を嘘でふりまわすのが快感で、僕は今からとんでもないことしようとしてる。
 「引きうけてくれるのか?」
 一縷の希望と淡い期待とをこめ、鍵屋崎が僕を見る。そんな鍵屋崎に笑いかけ、首を振る。
 「仲介役は引き受けらンない。そのかわりと言っちゃなんだけど北棟を案内したげる」
 「何?」
 「知ってる?半年前までサーシャは僕の常連だった。サーシャが買いにきたのは情報だけじゃない。サーシャは僕の体目当てにわざわざ東棟まで足を運んだ。そして僕も」
 挑発的に舌を覗かせ、唇を舐めあげる。 
 「僕も、二・三回だけ北棟に足を踏み入れたことがある。サーシャにとって東棟は敵地、憎きレイジがおさめる敵の本拠地。アウェイよかホームでヤるほうが心身ともにリラックスできるっしょ」
 東棟の人間で北棟に足を踏み入れたのはレイジ以外では僕しかいないはずだ。
 僕は記憶力がいい。サーシャの房への道のりは今でもちゃんと頭に入ってる、鍵屋崎を案内することもできる。鍵屋崎を北棟の目的地に案内したら、そこでほっぽりだして物陰に隠れてればいい。鍵屋崎がサーシャのナイフの餌食になろうが北の人間に捕まって二度と帰って来れなくなろうが知ったこっちゃない。
 鉄扉に背中を凭せ掛け、腕を組み、小首を傾げる。鍵屋崎がどうでるか、期待と不安とが入り交じった複雑な気分で上目遣いに表情を観察。鍵屋崎は眉間に皺を寄せて逡巡していた。僕が案内役なのが不安なのか、直接北に乗りこむ無謀ともいえる行為に抵抗を感じるのか、眼鏡越しの双眸に葛藤が生じる。
 「僕はどっちもでいいよ、メガネくんの判断に任せる。でもさ、安田さんのなくし物なにかは知らないけどよっぽど大事な物なんでしょ?一日も早く取り返さないとやばいんでしょ?だったら……」
 猫のような動作で鍵屋崎にすりより、耳元で囁く。
 「北に行こうよ」
 一緒にイこうよ。
 耳朶に吐息を吹きかけ、誘惑する。鍵屋崎が諦念のため息をつき、そっけなく僕をどかす。眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、表情を隠し、呟く。
 「わかった、案内を頼む。サーシャとは直接交渉する、それ以外に方法がないなら仕方ない」
 とうとう鍵屋崎が決断を下した。僕に案内役を頼み、北に潜入し、サーシャに直接交渉するという決断。
 実際には東京プリズンの誰も銃なんか持ってないのに、どの棟の囚人も銃なんか持ってないのに、ありもしない銃のために危険を承知で北棟に乗り込もうとしてる鍵屋崎がおかしくておかしくてちょっと油断するとすぐ顔がにやけてしまう。サーシャと鍵屋崎を引き合わせたらあとは知らない、鍵屋崎が鉄扉をノックしてサーシャがでてくる前にさっさと逃げてしまえばいい。僕には関係ない、責任もない。全部鍵屋崎が自分の意志で決めて自分の判断で行動した結果、鍵屋崎自身の浅慮が招いた不幸だ。  
 僕に踊らされてるとも知らないで、ばかな親殺し。
 「じゃあ、決行は明日の昼。昼なら一部の囚人以外出払ってるし、人いないほうが都合いいっしょ。待ち合わせ場所は……図書室がいいか。昼間空いてるもんね。中央棟の渡り廊下通って北棟行けるし、」
 ピクニックを計画するみたいに明日の予定を決める僕に鍵屋崎は逆らわなかった。東京プリズンで最も冷酷なトップが仕切る北棟に潜入することになり、鍵屋崎なりに緊張してるらしい。切迫した表情は崖っぷちに立たされた人間のそれだ。
 明日の予定を決め、鍵屋崎を送り出すため鉄扉を開く。思い詰めた目の色の鍵屋崎が肩越しに振り返り、まったく関係ないことを聞いてくる。
 「ついでに質問だ。レイジを知らないか」
 「知らないよ。最近姿見てないねって、君が来る直前までビバリーと話してたとこ。そっちこそ、レイジがどうしてるか知らないの?気になるなら房訪ねてみたら」
 「友人でもない男のためにそこまでする理由が存在しない。時間の無駄だ」
 自分から聞いてきたくせに怒る理由がわからない。
 レイジのことなど思い出したくもないとはげしくかぶりを振り、憤然と立ち去る鍵屋崎を見送る。今の質問で判明したが、鍵屋崎もレイジの消息は知らないらしい。レイジは誰にも何も告げず、僕らの前からふっつり消えてしまった。
 まったく、人騒がせな王様だ。


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