ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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四十一話

 い、
 「じゃかあしい!!」
 医務室のドアが蹴破られ、何かが放りこまれ、乾いた破裂音が連続。
 空中で次々と破裂した玉から噴き出したのは大量の煙。
 「なんじゃこりゃあ!!」
 錯乱したタジマが衝立を薙ぎ倒しベッドに激突、悲鳴だか怒号だか区別のつかない奇声をまきちらす。煙幕越しに聞こえてくるのは深夜の静寂をぶち破る騒々しい物音、煙を肺に吸いこんだ人間のはげしい咳。開け放たれたドアの向こう側、廊下の蛍光灯を背に仁王立ちしているのはでかいゴーグルをかけたガキ。憤然と腰に手をつき、煙が充満した室内をぐるりと見まわす。
 「深夜になにやっとんじゃこンだあほっ、どったんばったんうるそうてかなわんわ!」
 ヨンイルだ。
 医務室に殴りこんできたのはヨンイルだった。シーツにしがみつき煙を避けながら、売春班での出来事を思い出す。タジマにヤられかけた俺を颯爽と助けに来たレイジが通気口に転がした煙玉、あれも確かヨンイルが作ったものだ。中に仕込まれていた煙には催涙効果もあるらしく、ひどく涙腺に染みて視界が曇る。咳をすると肋骨に響く。喉の奥に物が詰まったような異物感を堪えてシーツに顔を埋めれば、ヨンイルがふと俺に気付く。
 「怪我人ならおとなしゅう寝てろ!」
 「無茶言うな、寝れるもんならそうしてえよ!寝かせてもらえねえんだよ!」 
 とんでもない誤解だ、なにも好き好んで騒いでるわけじゃない。タジマに無理矢理起こされたりしなけりゃ今ごろ夢の中でレイジを殴ってた頃だ。俺に怒鳴り返されたヨンイルの眉間に皺が寄り、ぐるりと闇を見まわす。
 白煙たなびく暗闇に顔を巡らせたヨンイルめがけ、床を蹴り加速し、低姿勢で突っ込んでいくのは。
 「よけろ道化!」
 「どけえ!!」
 タジマだ。体当たりでヨンイルを跳ね飛ばして逃げ出そうって魂胆か。怒り狂ったタジマが暴走、ヨンイルをどかそうと風切る唸りをあげて腕を振りかぶる。タジマの行く手に立ち塞がったヨンイルに動揺の色はない、まだよく状況が呑みこめてないのかぽかんとその場に突っ立ってる。
 ヨンイルが危ない。
 タジマが咆哮をあげ、こぶしが無防備な顔面を狙い、ヨンイルが仰け反る幻覚を見た。上体を起こし、反応の鈍いヨンイルに迫り来る危機をしらせようと……
 した、瞬間だ。
 「!!」
 廊下から射した蛍光灯の光を浴び、晧晧と暗闇に浮かび上がったヨンイルがいっそ無造作に片足を振り上げる。ヨンイルは柔軟性に恵まれてるらしく、足が半弧を描き、高々と頭上に達する。殆ど垂直に振り上げたせいで足と額が接してるように見えたが、それも一瞬のこと。
 ヨンイルの踵が、闇に半弧の軌跡を描いてタジマの後頭部を直撃した。
 タジマの後頭部に踵落としが炸裂。無防備な後頭部に痛恨の一撃をうけ体勢を崩したタジマに肉薄、流れるような動作で次の攻撃へ移る。たたらを踏んだタジマの背後に回りこんだヨンイルが鋭い犬歯を閃かせ―
 跳んだ。
 冗談みたいな脚力で床を蹴り、落下の加速をつけた片足をタジマの背中に振り下ろす。その瞬間、ズボンの中にたくしこんでいたシャツが風圧にめくれ、広がり、ヨンイルの背中が暴かれる。
 廊下から射した蛍光灯の光と懐中電灯の丸い光とが交差する中、盛大に上着がはだけ、刺青が晒される。
 日焼けした背中に映えるのは鮮烈な緑の鱗、獰猛に蛇腹をくねらせる一頭の龍。
 ヨンイルが踊れば、龍も踊る。
 「ぐあっ、」
 床に突っ伏したタジマの背中を踏み、ヨンイルが着地。風を孕んだめくれあがった上着がふわりと背中に落ち、刺青を隠す。
 「なんやねんいきなり、事情もはなさんと人襲って。そんなに飢えとんの、タジマはん」
 ヨンイル登場からタジマが床を舐めるまでおそらく十秒もかからなかった。あっけらかんとしたヨンイルに脱力し、ベッドにもたれかかる。西の道化は強かった。さすが西のトップを張ってるだけのことはある、ただの漫画オタクじゃなかったんだなと見直す。
 「いやはや何事ですか、こちらの方からただならぬ物音が聞こえてきましたが……」
 ヨンイルの横からひょいと顔を覗かせたのはホセだ。なんでこいつまで?と当惑した俺ににこやかに片手を挙げ、「今晩はロンくん」と挨拶。
 「お前らこんなとこで何してんだ!?」
 「図書室でホセと捜査会議開いとったんや。そしたら医務室のほうから悲鳴と物音聞こえてきて……夜分遅く迷惑な輩がおるなー、よっしゃ、ちょっとひとっ走りしてとっちめてきたろ!って」
 「捜査会議?」
 「ヨンイルくん、例の件はお口にチャックです」
 ホセがわざとらしく咳払いしヨンイルをつつき、ヨンイルが「あ」と口を塞ぐ。どうやら俺に知られちゃまずいことらしい。
 「ずいぶん派手にやりましたねえ。何が起きたんです?」
 手庇をつくり、医務室の惨状を見渡したホセが顔をしかめる。白煙が腫れた医務室には濛々と埃が舞い、衝立は倒れて折り重なり、ベッドの位置は移動していた。床に筋をつけ、大幅に位置のずれたベッドを一瞥して嘆かわしげにかぶりを振るホセの横、ヨンイルが驚く。
 「あ、安田さん」
 ぐったりと床に伏せていたのは、背広を乱し、オールバックを乱した安田。小さく咳をしながら上体を起こした安田が、神経質な手つきで眼鏡の位置を直す。
 「消灯時間をすぎてからの外出は規則で禁じられてるはずだが」  
 「俺らが出歩いてへんかったらあんたピンチやったで」
 副所長をあんた呼ばわりなんて、度胸があるのかただの馬鹿か。背広の埃をはたき落とし、なんとか立ち上がった安田はみすぼらしい風体だった。タジマに殴られた顔は腫れ、唇は切れ、オールバックが乱れて前髪がたれていた。前髪をおろすと意外と若く見えるんだなと感心し、同時に違和感を感じる。
 前髪をおろすと、ますます鍵屋崎に似てくる。年の離れた兄弟か、親子でも通じそうだ。
 他人の空似ってあるんだな。
 ネクタイの位置を正し、疲労困憊立ち上がった安田がため息をつく。タジマにひどくやられたせいで眼鏡に亀裂が入った副所長を見上げ、怒鳴る。
 「なんで逃げなかったんだよ、さっき俺が瓶投げたとき!絶好のチャンスだったのに」
 それがひどく不満だった。俺が痛む体で無理をおし、そばの戸棚から瓶を抜き取りタジマに投げた直後なら逃げ出すチャンスはあった。タジマは俺への怒りで我を忘れ、肩の激痛で動きが止まり、安田から完全に注意が逸れていた。あの時とっとと逃げてりゃ、背広をぼろぼろにすることもなかったのに。
 体が言うこと聞くなら襟首でも掴んでやりたい心境だった。こぶしでベッドを殴り付け、不満げに黙りこんだ俺を一瞥。壊れた眼鏡を外し、亀裂の入ったレンズを指でなぞり、副所長が言う。
 「そんなことはできない」
 「なんで」
 「囚人を残し、副所長が逃げだすことなどできない」
 「……は?」
 レンズに付着した埃を拭い、続ける。
 「但馬看守を捕まえるため私は君をおとりにした、何も知らせず危険な目に遭わせた。その私が重傷で動けない君一人医務室に残し、逃げ出すわけにはいかない。絶対に」
 そう、か。だから安田は逃げなかったのか。ベッドから動けない俺ひとりをこの場に残し、副所長の自分が逃げ出すわけにはいかないと、責任感の強い安田はタジマに殴られ続けた。結果スーツはぼろぼろになって、オールバックはぐちゃぐちゃになって、眼鏡は壊れて顔は擦り傷だらけで……
 「……ばっかじゃねーの」
 「私もそう思う」
 安田がため息をつき、背広の胸ポケットに眼鏡をしまう。気だるげに前髪をかきあげ、タジマのもとへ歩み寄る。気絶してるのか、床にうつ伏せたタジマはぴくりともしない。 
 終わったのか。
 最悪の夜だった。衝立のカーテンが開き、顔面の毛布を毟り取られ、タジマに覗きこまれた時は心臓が止まるかと思った。タジマは執念深い。入所当初からずっと俺に目をつけて絡んできて、俺が肋骨折ってベッドから動けない今が絶好のチャンスだったのだ。おとりにされたのは腹が立つが、今晩決着をつけなきゃタジマはまた懲りずに何度も足を運んできた確信がある。そして俺は、医務室のベッドでタジマに犯されてた。
 「あ、」   
 遠くから足音が聞こえてくる。医務室の騒ぎに気付いた看守が遅れ馳せながら駆け付けてきたらしい。全部終わってから来ても遅いっつの、と胸中毒づきながら、安田に声をかける。何か言おうとして口を噤んだ俺へと向き直り、眼鏡がないせいで別人みたいな安田が目を細める。
 「いい友人を持ったな」
 「え?」
 レイジのこと、か?
 「ヨンイルとホセのこと言ってんならとんだ誤解だ、こいつらはダチでもなんでもねえ。ただの漫画オタクと七三メガネだ」
 むきになって抗弁すれば、安田が苦笑する。
 「……いや、わからないならそれでいい」
 「お互い自覚はないようだな」と意味不明のことを感慨深く呟く安田を不審がる。「ただの漫画オタクってそらあんまりや、俺は一流の漫画オタクの自負持っとんのに」「ひどいですよロンくん、吾輩と君とは心の友と書いて心友同士ではないですか!忘れたのですか、こぶしで友情を語り合った青春の日々を」と騒ぐヨンイルとホセはこの際ほっとこう。相手にするとうざいし。
 「!痛っ、」
 安心したら肋骨の激痛が再発した。苦痛に顔をしかめた俺に「大丈夫か」と安田が声をかけ、背中に手を添え、ベッドに戻るのを手伝おうとした。
 瞬間だった、タジマが復活したのは。
 「あああああああァあああああァ頭くらあああ!!」
 脳震盪がおさまったタジマが跳ね起き、
 「!但馬看守を取り押さえろ」
 医務室になだれこんだ看守連中に安田が指示をとばし、
 「おとなしくしろ!」
 「お前謹慎中だろうが、手え煩わせるのもいい加減に」
 と逆上した看守が数人がかりでタジマを組み伏せようとし、腕の一振りで逆に跳ね飛ばされ、ある者は壁に背中から叩き付けられある者はベッドに激突しある者は床でひっくり返る。打ち所が悪かったのか、意識が回復したタジマは同僚だろうがベッドだろうがおかまいなしに殴り付け、めちゃくちゃに暴れだす。俺を犯しに来た現場を副所長に目撃され、囚人に蹴りを食らい、同僚も敵に回り、四面楚歌のタジマは完全に冷静さを失っていた。虚勢をかなぐり捨て、理性を投げちぎり、ベッドを蹴飛ばしてひっくり返し衝立を薙ぎ飛ばし戸棚を横倒しにし、狂ったように咆哮をあげる。床に横転した戸棚のガラスに亀裂が走り、砕け、消毒液の瓶が床一面に足の踏み場もなく散乱する。消毒液の瓶を踏んだ看守が悲鳴をあげ手を泳がせ、尻餅をつく。
 タジマの暴走がさらなる混乱を招き、事態の収拾がつかなくなった。 
 ベッドの脚によりかかった俺は胸の激痛をこらえるのに必死で、タジマを止める術もない。タジマが医務室をめちゃくちゃに破壊してくさまを指をくわえて傍観するしかない。
 「ちっ、」
 舌打ちし、安田が行動にでた。ただでさえぼろぼろなのに、再びタジマにとびかかってゆく。タジマを背後から羽交い絞めにし、凶行を止め、安田が叫ぶ。
 「但馬看守、君は正気じゃない!完全に狂ってる、頭がおかしい!」
 「俺が狂ってる?そんなの承知だよ、狂ってて何が悪いんだ!東京プリズンじゃ看守も囚人も狂わなきゃ生きてけねえんだよ!!」
 東京プリズンの狂気の象徴たるタジマが、背中にしがみついた安田を振り落とそうと腰に回転をかけ身をよじる。タジマに振りまわされる安田、だがその手はタジマを羽交い絞めにしたまま決して放そうとしない。
 「はなせよ若造、俺はロンを犯しにきたんだ、邪魔するとてめえも犯っちまうぞ!」
 「放すわけにはいかない、これ以上君の横暴を放置できない!私は東京少年刑務所の副所長だ、看守を管理し監督すべき立場の人間だ!看守が不当に囚人を虐待する光景を見逃すなどあってはならない事態だ。私は鍵屋崎に約束した、ここにも確かに正義はあると証明すると!但馬看守、今の自分をよく見ろ。深夜の医務室に侵入し絶対安静の怪我人を犯す、そんな非人道的な行為許されるはずがない!」
 「許されるはずがない?面白えこと言うじゃねえか。ここは砂漠のど真ん中のゴミ捨て場だ、だれがなにしようが勝手だろう、俺がなにしようが自由だろうが!?いったい全体どこの誰サマが許さないって、」
 「私だ!!」
 安田がタジマを殴った。
 顔面を殴られ、タジマの巨体がよろめく。衝立ごと奥のベッドへと背中から倒れたタジマを見下ろし、肩で息をして立ち尽くす安田。前髪をかきあげる余裕もなく、額には汗が浮かび、呼吸は不規則に乱れていた。背広を脱ぎ捨て、片手で器用にネクタイを緩め、シャツの胸元を寛げる。続き、シャツの袖を肘までめくりあげ、中腰の姿勢から慎重に足を開く。
 「よく聞け、但馬看守」
 冷徹な眼光を放ち、こぶしを握り締める。
 「二度と鍵屋崎に手を出すな、ロンに手を出すな。私はこの東京少年刑務所の副所長だ、彼らを更正に導き社会復帰させるのが私の役割だ。私はそれを誇りに思う。誰になんと謗られようが嘲られようが誇りに思う」
 その言葉に嘘はないのだろう、安田は誇らしげに言いきった。
 「金輪際、私の囚人に手を出すな」
 ああ、これが。
 これが、信頼できる大人ってやつか。
 壁に背中を預け、床に横たわり、ベッドの脚によりかかり、看守がほぼ全滅した状況でタジマと対峙する安田の背中には、どんな手を使ってもタジマを止めなければという覚悟が滲んでいた。
 「………くっ、」
 俺にはなにもできないのか?
 胸を押さえ、ベッドに突っ伏した俺の視線の先じゃタジマと安田が睨み合ってる。安田がタジマに殴り殺されるのはいやだ。ベッドに手をつき上体を起こし、安田と一緒に戦おうとして……
 俺の行く手を遮ったのは、ヨンイルとホセの背中。
 「怪我人は大人しゅう寝とれ」
 「でも、」
 「道化と隠者におまかせください」
 不安を拭いきれない俺の眼前、ヨンイルとホセがゆっくり動き、壁に沿うように二手に分かれる。
 「は、はははは」
 タジマの哄笑が響く。絶望的に乾いた笑い声、自暴自棄の前兆。
 「あはははっはははっははははあ!格好いいなあ安田さん、あんまり格好よすぎて腹の皮よじれちまいそうだ。俺の囚人に手えだすな?いつから囚人を所有格で語れるほど偉くなったんだよ、え」
 ぎしりとベッドに上体を起こしたタジマと安田の肩越しに目が合う。
 精力旺盛にぎらついた目、脂でぎとついた顔。けだものに堕した人間の顔。
 「勘違いすんなよ安田…ここの囚人はお前の所有物じゃねえ、全員ひとり残らずこの俺サマの所有物だ」
 タジマが床に足をおろし、安田と向き合う。腰の警棒を引き抜き、鼻息荒く構える。あれで安田をぶん殴る気だ。衝立を蹴りどかし、消毒液の瓶を蹴飛ばし、大股に突き進む。安田との距離が徐徐に狭まり、殺気が膨張する。
 タジマの手に掲げられた警棒が、尋常ならざる握力にみしりと軋む。
 万力めいた握力で凶器を握り締め、憤然と安田に歩み寄り、目を爛々と輝かせる。
 「あばよ副所長。あんたがいなくなりゃ、ロンも鍵屋崎も壊れるまで犯りたい放題だ」
 くそ、なんで体が言うこと聞かないんだ?このままじゃ安田が殺されちまうってのに!
 一歩、また一歩と確実に安田との距離を縮めつつ、恐怖心を煽るように警棒をもてあそぶ。タジマの手の中で警棒が回転、安田の頭上へとおもむろに振り上げられ―……

 ―「副所長の椅子は俺のもんだああああぁあああああぁっ!!」―

 勝利の咆哮をあげたタジマの体が、吹っ飛ぶ。
 床を滑ったベッドと衝突して。 
 
 「!」
 ベッドが滑ってきた方角を振り返れば、ヨンイルが会心の笑顔で親指を立てていた。背格子と壁との隙間にもぐりこみ、壁に背中を預けた反動でおもいきりベッドを蹴ったのだ。
 人影が、跳ぶ。
 ベッドで跳躍したホセが、タジマの背中めがけて落下。ホセとタジマが埃まみれでもつれあい転げまわる、うるさい物音で看守が意識を取り戻す。 
 「くっ、」
 安田が足元の背広を拾い上げ、内側をさぐる。銃をだすつもりだ。実際射殺するつもりがなくても脅しには使える、足止めにはなる。その動作ではじめて安田が銃を持ち歩いてると思い出したらしく、ホセの下敷きになったタジマの顔が「しまった」と強張る。 
 が、予想に反し、安田は銃をださなかった。
 「今撃たなくてどうするんだよ!?」
 背広に手を突っ込んだまま躊躇する安田。と、背広から手を引き抜いた安田が一散にタジマに走り寄る。銃に頼らず素手で決着つけるつもりか?んな無謀な。
 「但馬看守を取り押さえろ!」
 号令をかけられ、看守が一斉にタジマにとびかかる。漸くホセをどかしたタジマが鈍重な体躯に似合わぬ素早さで跳ね起き、開け放たれたドアへと全力疾走。
 「吾輩ホセ、少々頭に来ましたよ」
 タジマに髪を毟られ、七三分けを乱したホセが剣呑に呟く。タジマに襲いかかる看守数名をよそに、床に片膝をつき、左手薬指の指輪にそっと口付ける。
 「力を貸してくださいマイワイフ。靴下に穴の開いた独身者なんかに負けるものですか」
 ホセがベッドに飛び乗ると同時に、ドアまであと五歩の距離にタジマが接近し、その背中に追っ手が覆い被さる。ベッドのスプリングで高度を上昇させ、ホセが跳躍。タジマを追跡する看守の背中を踏み、蹴り、また跳ぶ。看守の肩と背中に足跡をつけ、一気に距離を詰めたホセがタジマの行く手に回り込み……
 「どけえええええ!!」

 切れ味鋭いアッパーカットが、タジマの顎に炸裂した。

 「タジマはん……おまえはもう死んでいる」
 格好つけて腕を組み、ヨンイルが言った。 

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少年プリズン(未完) | コメント(-) | 20051018024730 | 編集
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