ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

最近のトラックバック
ブロとも申請フォーム
スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

関連記事 [スポンサー広告]
スポンサー広告 | コメント(-) | ------------ | 編集
九龍探訪(グレッグ・ジラード/吉田一郎)

九龍城探訪 魔窟で暮らす人々 -City of Darkness-九龍城探訪 魔窟で暮らす人々 -City of Darkness-
(2004/02/21)
吉田 一郎尾原 美保

商品詳細を見る


何故ひとはこうも九龍城に惹かれるのか。
世には廃墟マニアという人種が存在する。私にもまたその傾向がある。
恩田陸は著作の中でこう語る、廃墟とは人がいたところ、過去の残骸、かつてたしかにあった営みの記憶の焼きついた場所であると。
歳月が経ちその営みの記憶が風化してもなお形骸化した器は―「建物」は残る。
九龍とはかつて混沌の代名詞であった。
世界最大のスラムであり、犯罪の温床と忌避される危険地帯であった。しかし私たちはどれだけ正確に九龍の本当の姿を知っているのか、一人歩きする風聞に惑わされ果たして往時の九龍の姿を把握してると言えるのか。
本書は九龍内部を撮った多数の写真とともにそこに住む人々へのインタビューで構成されている。
一口に九龍城といえど中は広く多数の区域や通りに分かれている。
本書ではその様々な区域に居住する様々な職種のもの、飴職人、歯医者、宣教師など幅広く取り上げて、それぞれの波乱万丈の半生を九龍城の歴史に絡め振り返る形での取材を試みている。

九龍城は要塞である。
そして有機的に胎動する一つの都市である。

犯罪が多発する危険地帯として外の住人に恐れられた九龍城も、中に住まう者からすればそれが日常であり、けっして危険で不潔なばかりの魔窟ではないのだ。九龍城で生まれ九龍城で育ったものにとっては九龍城こそがかけがえのない故郷であり、彼らは自分が生まれ育った土地に愛着を抱いている。
九龍城は闇を抱えている。上下水道の整備も整っておらず、家庭で出たゴミは中庭に張った網の上に投げ捨てられ何層も積み上げられる仕組みだ。
しかし、託児所がある。保育園がある。教会がある。老人ホームがある。
人が人らしく生活する為に必要な最低限の施設はちゃんと備わっている。
汚水滴る壁や床で絡み合いのたくる配線、迷宮の如く複雑怪奇に入り組んだ路地、猥雑に立て込んだ建物と足場の悪い狭隘な通路。

九龍城とは何十棟もの高層建築の複合体である。

すなわち、九龍城は生きている。
無数に枝分かれし入り組む路地は毛細血管、壁は胸壁、幾何学的に交差した配管は骨。
九龍城とは生ける異形の都市なのだ。

九龍城にひきつけられる人間は後を絶たない。
あるものは知的好奇心からあるものは野次馬的興味から、撤去されて十数年経った今なお新たなファンを呼び込み続けている。
九龍城をモデルにしたフィクションも多数存在する(奪還屋の無限城、クーロンズゲートのそのものずばり九龍城など)。

ある種の建築物はただそこに在るだけで人を圧倒する。
そのものがそこに在るという事実自体が驚異と賛嘆に値するのだ。

人の意図をはるかに超え人の生き様を呑み込み人の営みを紡ぎだし巨大化していく一つの都市は独自の意志をもつと、恩田陸はそう言った。人はしぶとくしたたかに、どんな劣悪な環境でも粘り強く繁殖していく。
どんな劣悪で過酷な環境にも代を経て適応し、そこを住みやすいよう改善する柔軟性に恵まれている。
外側から見た九龍城についてしるした書籍はたくさんあるが、実際に九龍城に潜入し、そこに住まう人々に接触した本は希少だ。
本書はそういう意味でも価値が高い。
外側から眺めて無闇に恐れるだけではわからなかった真実の一片、外の人々にとっては「魔窟」であり「スラム」である九龍城の生活空間としての実態が本書にはたっぷりと収録されている。
しかし、本書は九龍城を美化してるわけではない。

たしかに犯罪はある。
環境は劣悪だ。
清潔と快適さが同義の世の中においては九龍城はスラムに違いなかろう。

しかしそこに根付いた人々が生々しく語る濃密な人生が九龍城と化学反応を起こした時あざやかに立ち現れるのは「生き物」としての九龍城、数多の人の生き様と営みを呑みこんで途方もなく巨大化した空前絶後の都市の姿である。

九龍の前に九龍なく、九龍の後に九龍なし。

かつて香港の地に存在した九龍の伝説は、彼の地を愛する人々によって末永く語り継がれていくことだろう。


一緒に読みたい本

九龍城というか香港好きにおすすめ。角川ビーンズからも出てますがこっちの方が表紙の雰囲気が好き。
双子好きとへタレオヤジ好きにも。

九龍城ではなく軍艦島がモデルの孤島ミステリ。こだわりある廃墟描写がいい。

廃墟を見ると心洗われる。

関連記事 [読んだ本感想]
読んだ本感想 | コメント(-) | 20021113171431 | 編集
ブログ内検索
     © 2017 ロールシャッハテストB  Designed by 意地天
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。