ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

最近のトラックバック
ブロとも申請フォーム
四畳半神話大系(森見登美彦)



「……俺はもっと他の道を選ぶべきだった」
「慰めるわけじゃないけど、あなたはどんな道を選んでも僕に会っていたと思う。直感的に分かります。いずれにしても、僕は全力を尽くしてあなたを駄目にする。運命に抗ってもしょうがないですよ」
小津は小指を立てた。
「我々は運命の黒い糸で結ばれてるというわけです」


主人公「私」は自意識の塊のような若者。
大学三回生の現在に至るまで有意義なことなど何ひとつとしてしてないと豪語する彼には腐れ縁の悪友・小津がいる。
しかしそんな私にも薔薇色のキャンパスライフに夢膨らませたぴかぴかの新一回生の頃があった。
サークルのビラをどっさり抱え右往左往していたあの時、別の選択肢を選んでいれば自分はもう少しマシな人間になっていたのでは、ひょっとしたら幻の至宝といわれる薔薇色のキャンパスライフを手中にしていたのではないか?
これは誰もが人生の途上で通過するだろうそのな問いに一つの答えをつきつける物語である。
即ち、「あんたどの道選んでもそんなに変わらないよ」という単純明快にして身も蓋もない事実を!

有り得たかもしれぬ未来の可能性に妄想を膨らませ……もとい思いを馳せ、悪友に駄目にされた現実と引き較べては四畳半の下宿でうだうだくだ巻くモラトリアム絶賛謳歌中の腐れ大学生「私」。
「私」の親友にして悪友の小津はわがままであり傲慢であり怠惰であり天邪鬼であり他人の不幸をおかずにして飯が三杯食える男、四畳半にひきこもりがちな私にしつこくつきまとっては色んなトラブルに巻き込みやがる始末。

本書で語られるのは四つの並行世界の話。
入学間もない頃に手にしたサークル勧誘のビラ、そのそれぞれを選んだ場合の二年間が綴られていくのだが、どの選択肢も微妙な差こそあれ大筋は似たような流れに収斂していくのが面白い。
どの選択肢を選んでも小津との出会いは回避できず、明石さんに淡い恋心を抱く運命であり、胡散臭さ爆発の樋口師匠はあえて呼び込まずとも干渉してくる。
だけどその微妙な相違点がキャンパスライフに僅かずつ違う色をつけていくのが妙味。
撞球の如く意外な所で意外な人にぶち当たる人間関係やサークルの裏話が暴露され、並行世界という設定を踏まえ伏線を回収していく構成も巧み。
「私」は明石さんという黒髪の乙女に惚れているのだが、その恋の行方が縦糸だとすると、小津との友情は横糸。野菜嫌いで月の裏側から来た人のような顔色をしてるだの夜の道を歩けば十中八九妖怪に見間違われるなどさんざんに罵ってますが、「四畳半恋ノ邪魔者」ではいつまでたっても煮え切らない「私」の為に一肌脱ぎ、何故こんな馬鹿なことをしたのだと問い詰められるたび、「僕なりの愛ですわい」と告白する。なんだよ小津健気じゃねえか。

恋愛成就の影に小津の暗躍あり。
なのに今いち感謝されず哀れを誘う。
そんな小津の献身(?)が漸く報われるのが最終話の「八十日間四畳半一周」。

これはドアを開けても窓から出ても四畳半が続く異次元に迷い込んだ「私」が世界の仕組みを解き明かしていく、いわば全体の集大成となる話なのですが、それまで傍迷惑な腐れ妖怪としか小津を思っていなかった「私」が、「あんな奴でもいないよりはいてくれたほうがはるかにマシだ」なんて言い出してしんみり。

明石さんのこともちゃんと好きで純粋に恋してるんですが、彼女は聖域。
聖域の四畳半にずかずか土足で上がりこみ積極的に「私」を引っ張りまわす小津はゴキブリの如く卑近な存在。

そんなゴキブリ野郎がいかに孤独を癒してくれていたか、ゴキブリが沸く日常がいかに尊く楽しいものだったか、本当の意味で独りになって切実に痛感する……。
ぶっちゃけ恋愛的な意味で恋してるのは勿論明石さんなんですが、四畳半を脱したその足で小津のもとへ走る姿を見るにつけ、宿命的な意味で愛し愛されてるのは小津じゃあないかと邪推してしまいます。
もういいよ勝手にやってろよ、明石さんが「また阿呆なことやってますね」ってクールに見守ってくれるよ。
恋あり友情ありフシギあり、おすすめ青春残酷です。


アニメにもなってるらしいです。よくできたMADだなあ。

一緒に読みたい本

ご都合主義者かく語りきが一番好き。女装が似合う事務局長カッコイイ!

関連記事 [読んだ本感想]
読んだ本感想 | コメント(-) | 20021112084659 | 編集
ブログ内検索
     © 2017 ロールシャッハテストB  Designed by 意地天