ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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ダイヤとバブル前

 「一緒に風呂入ろう」
 むっつりすけべが突然んなことを言い出した。
 「は?」
 熟読中の雑誌ではモテ男ファッション大研究の特集が組まれていた。
 街で見かけたイケメンに声をかけモデルになってもらうというありがちな企画で、掲載された写真では俺と同年代の若者たちがポーズをとる。
 平凡な男がやればただただだらしないだけの腰パンやはみシャツも、モデルがよけりゃ遊び心ある着崩しとかエッジがきいてるとかもてはやされるんだからつくづく顔がいいやつは得だ。俺的にはモテ男ファッション大研究なんかより平凡な男もそれなりにイケて見えるコーディネートを特集して欲しいところである。アンケートハガキに書いて出すか。
 若干の羨望と嫉妬を覚えつつページをめくる。
 「頭沸いてんじゃね?シャンプーしてこい」
 ところでこのアホ王子は酔った勢いで一線越えちまってからというものすっかり彼氏づらにおなりあそばされて(この言い方もなんだかなあと思うが亭主づらというとますます微妙だ)大学終わったら俺のアパートに寄り道する習慣がついた。
 一応弁護するとバイトがある日を除いてだ。
 脱ぎ散らかした服を適当に脇にのけて寛ぐスペースを確保した部屋は雑然として、お世辞にも整理整頓が行き届いてるとはいえない。
 自分で言うのもなんだがずぼらでいい加減な性格。
 コップを洗うのが面倒だから大抵はペットボトルかららっぱ飲み、雑誌や漫画の単行本を本棚にもどしに本棚に這って行くのも億劫がってそこらへんに転がしとくせいで足の踏み場もない。だがしかしこれはこれで居心地いい、なんたって一人暮らしには自由がある。
 実家にいた頃は掃除機ひっさげ来襲したお袋にベッドの下からエロ本を押収され赤っ恥かいたもんだ。
 一人暮らしを思い立った最大の動機はコンプレックスのもとの幼馴染と腐れた縁を切りたくて。
 フジマとは幼稚園小中高とずっと一緒、家が近く部活も同じだったせいで行き帰りも自然と被った。
 だけど大学生になるにあたっていつまでも幼馴染離れできないのはさすがにまずい、こいつにつきまとわれ引き立て役の運命に甘んじるのはこりごりだと、渋る親を説得し親戚の不動産屋をあたって半ば押し切る形でアパートに転がりこんだ。
 現状、俺は満足してる。
 最寄り駅まで徒歩十五分、間取りは狭いけど風呂は備えつけだし大学まで電車で二駅の距離。……が、仕送りにばかり頼っちゃられない。元をただせば俺のわがままで始めた一人暮らしだ、甘えっぱなしは筋違いだろう。
 てなわけで現在はケーキ屋で週四のバイトをこなし生活費の足しにしている。仕事内容は主に接客とレジとキッチンの事は殆どやらせてもらえてないが、ときどき売れ残りのケーキをお持ち帰りできる文字通り美味しいバイトで気に入ってる。バイト仲間も気安く話せるいい人ばかりだ。
 しかしフジマはご不満らしい。
 理由は単純、俺がバイトにかまけてばっかで構ってくれないから。
 アホか。
 ガキじゃあるまいし。
 俺には俺の事情がある、交友関係にまでとやかく口出しされたくない。
 この頃フジマは少しでも俺と一緒に過ごす時間を増やすため、バイトがない日はこうして夜遅くまで入り浸ってる。でかい声じゃ言えないが泊まってく事も多い。そこまでつらつら考え、おれんちにお泊まりしたいがために終電なくなるまで帰りを遅らせてるんじゃないかとけしからん疑いを抱く。
 そんなかんじで、フジマとああなってからも目立った変化はなく……まあフジマの愛情表現がオープンになって二人っきりの時はやたらべたべたひっつきたがるようになったってのが変化か……友人以上恋人未満のぬるい日常にどっぷりまったりつかってる。
 関係は進展してない。
 むしろ停滞してる。
 フジマが求めてるものは、一応わかる。
 俺だってガキじゃない、いっぱしの知識はある。性欲は言うまでもなく。
 しかし俺の性欲や妄想の対象はその、女だ。きっぱりはっきり女の子なのだ。
 断っとくが、俺はホモじゃない。
 偏見とかはない方だし差別とかする気はないけど、自分がそういう対象として見られる事にはやっぱり抵抗がある。フジマと今みたいな微妙な関係になったのだって成り行き上しかたなくで、酔った勢いでわけわかんないうちに流されて、気付けばフジマの手の内だったのだ。
 が、不本意だ。
 合意の上の行為じゃねーし、だまし討ちに近いじゃねえかあんなの。  
 フジマに対し煮え切らない態度をとっちまうのはおそらくそこらへんに原因がある。
 俺の感覚から言うとあの行為はだまし討ちに近く、してやられた感が強い。
 色気を獲得するためのレッスンとか口車に乗せられた俺も馬鹿だけど、被害者なんだから開き直ったっていいだろう。いくら気持ちよくて最後の方は喘いじまったとはいえ、いまだ健在な男としてのプライドとか意地とかが踏ん張ってる現状でフジマの求めに応じる気にはなれない。

 そうとも、俺はそんな安い男じゃないのだ。
 尻軽じゃあないのだ。
 尻軽って女に使う言葉だっけ?

 「なにむずかしい顔して考えこんでるんだ。似合わない」
 頬に手がふれる。
 フジマの顔が目と鼻の先にある。
 「お前こそいきなり何言い出すんだよ。どうしてお前と風呂入んなきゃいけないんだ」
 「俺が入りたいから」
 「納得しねえよ。何が楽しくて大学生にもなって男同士で裸の付き合いしなきゃいけねーんだ、だいいち見ろこの部屋」
 雑誌をはためかせ散らかり放題の周囲を手で示す。
 「うちの風呂手狭なの知ってるだろ?男二人入りゃお湯が殆ど出ちまう」
 頭のデキを疑う。いや、小中高とずっとテストじゃ高得点で成績優秀だったし頭がいいのは確かなんだろうけど発想が突飛すぎてついていけねえ。どうして風呂?どうして俺と?疑問符が脳裏に舞う。
 「とにかくやだね、野郎とふたりで風呂なんて。おとといきやがれ」
 「恥ずかしいの?」
 「~どうしてそうなる……」
 「むかしはよく一緒に入ったじゃないか」
 「むかしっていつ」
 「幼稚園から小学校二、三年まで。うちによく遊びにきてさ」
 それは事実だ。
 「どっちが長くもぐってられるか競争したりタオルふくらませて遊んだり水かけっこしたり……背中洗いっこしたの忘れた?」
 「ちびんときの話もちだすなよ。何年たったと思ってるんだ、とっくに時効だよ。お互いもういい大人だろ、ブリキのあひるさん浮かべてちゃぷちゃぷなんて恥ずかしいぜ」
 しつこさにうんざりする。
 こいつは抜群に記憶力がいい、いつどこでなにしたか細かいとこまでよく覚えている。
 たしかに幼稚園の頃はフジマにべったりだった、ふたりして泥んこになるまで転げまわってフジマんちの風呂をよく借りた。
 もっともフジマは当時から大人しくお上品なお子様で、俺はといえば親も手を焼くやんちゃ坊主だから、やつは俺につきあわされブランド物の子供服を汚してたわけだ。
 ……が、大学生になってまで一緒に風呂だなんて常識的にありえねえ。誰得?
 「いいだろう、たまにはさ」
 「いやだよ狭いし。ずーっとこぢんまり体育座りで睨めっこか?つーかさ、うざいよお前。風呂なら家帰って入りゃいいじゃん、俺ひっぱりこむ意味ねえよ。お前んちの風呂のが広くてキレイだし高くていい匂いのするシャンプーだってそろってるし、安アパートの安風呂に執着する動機が不明」
 「どこで入るかじゃない、だれと入るかが重要なんだ」
 「むっつりすけべの自己弁明にっきゃ聞こえねえよ」
 「顔にでてた?」
 「なにが」
 「下心」
 「……でねえからタチわりぃんだよ」
 混浴を断固拒否する理由のひとつはいわずもがな、貞操の危機をひしひし感じるからで。
 フジマは強引だ。
 いつもはにこにこ笑ってるくせに一度こうと決めたら絶対ゆずらない。
 俺にはそのこだわりどころがわからない。
 頬にじゃれつく手を払い、奪われた雑誌を取り返す。
 「却下。反対」 
 「どうして」
 「風呂くらい一人でゆったりつかりたい。お前の顔がちらついたんじゃ落ち着いて足の指の股流せねえ。大体風呂ってのはプライベートな時間だろ、い~い湯だなビババンだろ、一日のうち肩の力ぬいてリラックスできる貴重な時間までめちゃくちゃにされるなんてごめんだね。プライバシーが欲しい」
 「バストイレは一人でゆったり入りたい派?初耳」
 「トイレに二人でこもりたい派って実在すんの」
 一呼吸おき、威嚇を込めて睨みつける。
 「……あのなあ~こんだけ付き合ってやってるのにまだ足んねえの?」
 「足りない、全然足りない」
 さいですか。即答ときたよ。
 雑誌の端をしおり代わりに折って口を尖らす。
 「俺さ、すっげえ譲歩してるんだけど」
 「譲歩って?」
 「フツー自分にあんな事したヤツ部屋に入れて仲良くおしゃべりするか?ホントなら玄関から入ってこれるような立場じゃないってわかれよ、出入りはベランダ伝いに窓からだ」
 フジマが皮肉っぽく唇の端を吊り上げる。
 「それってさ、俺が悪いの?」
 「おまっ、居直んのかよ?!」
 「まんざらでもなかったくせに」
 雑誌を取り上げ放り投げ、俺の肩を掴んでずいずい迫り来る。
 どうしたんだ、今日のフジマはやけに積極的だ。真剣な目つきにうろたえてしまう。
 咄嗟に両手を掲げ、急接近しつつある顔と顔の間に挟んで阻む。
 「よせ、顔近い……」
 「子供の頃は一緒に入ったじゃないか。今だって入れるだろう」
 「昔と今は別だって何回言わせるんだよ、いい加減怒るぞ!」
 「もう怒ってるくせに。予告意味ないよ」
 うわこいつめんどくせえ。
 「~っ、わけわかんねーよお前、俺と風呂入ったって殆どお湯こぼれて楽しくねーぞ」
 肩をつかむ手が上腕に滑り、額がくっつく至近距離でフジマがあっけらかんと呟く。
 「風呂まで行くのがいやならここで脱がすけど」
 「え?」
 いやな予感に顔が引き攣る。
 フジマが腹黒く笑う。俺の服の裾を掴むや力づくで脱がしにかかる。
 「!?うわ、ちょ、やめ」
 裾がべろりと捲れ貧相な腹筋と薄い胸板が露わになる。無理矢理ずり上げられた服が絡んで顔を覆い抗議の声がくぐもる。首にひっかかった服が視界を遮り、一糸まとわぬ無防備な上半身をさらす。この体勢は非常にまずい、デジャビュとフラッシュバックが仲良く手を繋いでやってくる。
 いつのまにか馬乗りになって鼻ひくつかせ匂いを嗅ぐ。
 「甘い匂いがする。……ケーキの残り香?」
 「やめ、ひゃは、くすぐって!」
 「動かないで、カスタードか純生かあててみせるから」
 「こら、ジョンかお前は!」
 おもわずフジマんちの飼い犬の名前を口走る。
 こんなお行儀の悪いやつと比べられたんじゃジョンもさぞ不満だろう。ごめん、ジョン。
 俺を押し倒しのしかかったフジマは、服の裾を大胆に捲り上げ、ひくつく鼻で入念に匂いの出所を辿っていく。吐息がくすぐったい。敏感になった皮膚がざわつく。
 暴れる俺をおさえつけ、ひっぱたこうと振り上げた手をも振り払う。
 「!いっあ、」
 首筋を甘噛みされ変な声が漏れちまう。肩を殴りつけようとして空振り、つまさきが窄まり撓う。
 首筋に吸いつく。
 刺激に弱い皮膚をついばむ。無意識にフジマの背中に手をまわしきつく抱きつく。
 「カスタード……?」
 「―いっ、正解……今日厨房でカスタードシュークリーム作んの手伝って、じゃなくて離れろって、変なとこなめんな……!」
 しきりに背中を叩いてギブアップを表明するもあっさり無視、裾に差し入れた手をいかがわしくもぞつかせる。フジマは美味そうに舌なめずりしつつ俺を味見する。反省の色のない態度にむかっぱらがたつ。
 「俺がいやがってるのにわかんないのかよ、重いどけよ、ふんふん嗅ぐな犬かお前!ジョンにお行儀習ってこい!」
 「ジョンは人形食うよ」
 「食っていいのは焼いたのだけ!」
 一瞬フジマが黙る。
 「ああ、人形焼き……巧のつっこみたまにわかりにくい」
 自信があっただけにちょっと傷つく。
 「つっこみにつっこみいいから!お前いまリアルに俺食おうとしてるじゃん!」
 「巧のほうがうまいもの」
 体がぞくぞくする。
 フジマの吐息があたると疼く。
 背中を連続で叩いて行為の中断を訴える、だけどフジマはやめない。
 俺の首筋に唇をおしつけねっとりと舌を這わせる。
 「巧のせいだよ。そんな甘ったるい匂い垂れ流して誘ってるかと思うじゃないか」
 「こっぱずかしい上につっこみどころ満載だぞその台詞!!」
 まいった、ジョン以上の悪食だ。
 「ふっ、あ、ま」
 「一口かじらせてくれる?」
 接吻が伴う熱にちりちりと皮膚が燻り毛穴が縮む、唾液に湿った唇が乾いた皮膚をたどる感触はえもいえず淫靡でキスだけで高ぶっていく、視界にちらつくフジマは意地悪い笑みを顔に刻み俺の腰に添えた手の位置を徐徐に上へ上へと……
 「わかった、入る、入るよ!!」
 ついに降参する。
 フジマの手があっけなく離れていく。
 「そうこなくっちゃ」
 フジマの作戦勝ちだった。

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