ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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凡夫危うきに近寄り、喰われる5

 「自慰しろ」
 テーブルに敷いた写真を小刻みに叩く。
 「お断りします」
 写真を叩く音がやむ。
 「できないのか?」
 「できません」
 姿勢を正しきっぱり拒否、テーブルにばら撒かれたあの人の写真が目に入らぬよう俯く。
 「やれ」
 「いやです」
 「俺がやれというんだ」
 生唾を飲む。
 体が強張る。
 「許してください」
 「理由を言え。恥ずかしいのか」
 どうしてこうなってしまったのだろう。
 兄さんと話していると底なしの泥沼に溺れていくような気がする。
 毛穴ひとつひとつに泥が詰まって生きながら窒息していくような重苦しさがつきまとう。
 テーブル上に散らばった忌まわしい写真に抗えば抗うほどに目が吸い寄せられる。
 手を触れるのさえ厭わしく抵抗を感じる。僕の手が触れたらそこから罪が伝染してしまいそうだ。
 僕がいないところであの人がどんな残酷な目にあったか裏づける証拠写真。
 僕は卑劣で最低の人間だ。
 助けを求める彼を見捨て見殺しにし一人で逃げた。
 その結果をこうして提示され自分でも驚くほど動揺している。
 しかもその動揺はけっして罪悪感だけに起因しない。
 僕はこの写真に欲情してる。
 淫らに乱れる先輩の姿にかつてないほど欲望を感じてしまう。
 もう手が届かないとわかっているからこその渇望。
 そんな自分が許せない。吐き気がする。どうして僕はこんなに卑劣なんだろう。
 膝の上で手を握りこむ。
 手のひらに爪が食い込む痛みで自分を責める。
 「……あの人を汚したくない」
 「一番最初に汚したのはお前じゃないか」
 言葉をなくす。
 「クズミは手遅れだ。手遅れにしたのは他のだれでもない、バンリ、お前だ。偽善者ぶるなよいまさら」
 「僕は」
 「あいつに男の味をおしえたのはだれだ。あいつにアブノーマルな快楽をおしえたのはだれだ。後ろじゃないとイけない体に調教したのはだれだ、男の手と舌で体のすみずみ指の股までねぶられてそれだけでイけるような淫乱に変えたのは?」
 「………僕です」
 「お前みたいな変態につかまってクズミは気の毒だよ。ちょっと前までフツウに女を抱けてたのに……今頃ベッドの上で火照りを持て余してのたうちまわってるんじゃないか?後ろを使うセックスはやみつきになる」
 耳を塞ぎたい衝動と戦う。兄さんはどこまでも鋭く執拗に僕の欺瞞を抉り出す。
 「お前はどっちだったんだ」
 「どっちって、どういう意味ですか」
 「抱く方か、抱かれる方か」
 「抱くほうに決まってます。……ぼくが抱かれるのはあなただけです」
 「嬉しい事を言ってくれるじゃないか」
 兄さんがご満悦に喉を鳴らし、椅子を引いてやってくる。僕のうしろにまわり、肩に手を置いてのしかかる。
 「立て、バンリ」
 湿った息が首のうしろを這う。
 肩を掴む手に力がこもる。もう片方の手がズボンの腿をさぐり付け根までさかのぼる。
 椅子を蹴倒して逃げ出したい。振り向きざま殴りたい。
 こみ上げる怒りとは裏腹に体は縛りつけられたように動かない。
 合気道の心得がある。
 兄さんなんて簡単に倒せる、はずだ。
 もう子供じゃない、兄さんに力づくで犯されもてあそばれていたあの頃とは違うのだと言い聞かせても芯まで根付いた恐怖は消えず服従心が実を結ぶ。
 肩口に顎をのせるように前傾し、耳元に吐息を吹きかける。
 「事を聞かないとクズミを代わりにつれてくるぞ」
 兄さんはぼくの扱いを心得ている。
 飴と鞭をどう使い分ければぼくを従わせることができるか、熟知している。
 名を囁かれただけで表情が凍りつく。膝に置いた手のひらがじっとりいやな汗で粘る。
 テーブル上を埋め尽くす無数の写真が目に映る。
 苦痛に歪む顔、快楽に喘ぐ顔、シーツを掻き毟ってよがり狂う裸の背。
 「………わかりました」
 努めて表情をださぬように、ごくかすかに頷く。
 身代わりとか犠牲とか偽善的な言葉は使いたくない。
 あの人を不幸にしたのはぼくだ。
 ぼくにさえかかわらなければ、ぼくさえ巻き込まなければこんな目にあわずにすんだ。
 あの人を守るのはぼくの義務だ。
 あの人が受けた分の痛みを被る形でしか繋がりあえないのなら甘んじてそれを受け入れる。
 せっかく戻れた日常を奪わせてたまるものか、あの人が手に入れたささやかな幸せを壊させてなるものか。
 虫がいいと思う。
 巻き込んだのはぼくだ。
 ぼくがあの夜オフィスで強姦におよばなければあの人は普通に女性と付き合ってそのうち家庭を持った、わかっている、あの人の日常をぶち壊したのはぼくだ、あの人の人生をめちゃくちゃにひっかきまわし責任もとらず逃げ出した。
 ならせめて痛みをもって、償えないものを償う。
 椅子を引いて席を立つ兄さんに、絶望に病んだ心でついていく。
 「服を脱げ」
 「……下だけでいいですか」
 「好きにしろ」
 兄さんが数枚写真を放る。 
 扇状に散らばった写真にはどれも先輩が。
 「いりませんよ、こんなもの。ジャマです。しまってください」
 「手助けがいるだろう」
 「あの人の顔ははっきり憶えてますから。目をつぶればすぐ思い出せます」
 衣擦れの音をたてつつできるだけ無表情にズボンを脱ぐ。
 下着と一緒に足首まで下ろし、俯きがちに立ち尽くす。
 「這え」
 鞭打つ声に従う。
 言われたとおり体温を奪うフローリングにのろのろ手足をつく。
 上はシャツを着たまま、下半身を剥きだした姿は心許なく不安感を煽る。
 兄さんの方は見ないようにしつつ、左肘で体を支え前にのめり、腰をぎこちなく掲げ右手を股間に忍ばせる。
 「―っ……」
 四つん這いで自慰を命じられるのは初めてじゃない。
 兄さんは好奇心と欲望の赴くまま昔から色々な体位を試したがる。
 マスターベーションは座位が一番やりやすい。四つん這いはひどく不自然できつい。
 兄さんが椅子を持ってきてちょうど正面に陣取る。特等席で見物するつもりだろう。
 「すごいかっこうだな。オスを誘うメス犬みたいだ」
 嘲笑は無視し、半勃ちのペニスに右手を添え軽くしごく。
 あの人の写真を見ただけで節操なく昂ぶったペニスは、兄さんの命令でズボンを脱ぐや、みるみる硬度を失ってしなだれてしまった。
 あせる。
 失われた硬度を取り戻そうと右手で支えておずおずとしごく、緊張に強張った手でペニスをこすっても快感はちっとも訪れない、ただただ痛みと痒みに似たもどかしさばかりが募り行く。
 右手の動きに心が抗う、瞼の裏にちらつく倒錯した痴態を追い払う、想像の中であの人を汚す事に抵抗を覚える、兄さんが現れるまでそうすることになんの躊躇も呵責もなかった、ぼくはあの人を何度も何度もマスターベーションの材料にした、殆ど毎晩といっていいほど彼の面影を反芻して自分を慰めた、だけど今ここで兄さんの前で自慰を強制されてる状況であの人の淫らな姿を思い描くのはいやだ、兄さんはぼくの頭の中にあるものを盗む、すべてを見透かして嗜虐の悦に浸る……
 「ぅ、く」
 「なかなか勃たないな。さっきまで元気だったのに……」
 兄さんが微笑む。
 「なにを我慢してるんだ、バンリ」
 「我慢、なんて、してません……ひさしぶりだから、感覚が掴めないだけです……」
 快感の波は掴んだそばからすり抜けてどこかへいってしまう。
 「刺激が足りないのか?」
 兄さんの揶揄は無視し、意地になって柔らかなペニスをしごきたてる。
 勃起と言える硬度ではないが、機械的な摩擦をくりかえすうちに血が集まってきた。
 「クズミはディルドがお気に入りだったぞ」
 鼻先で靴がぶらつく。歌うような抑揚で声が流れる。
 上目遣いに見上げた表情はサディスティックな愉悦に酔いしれ、目が異様な輝きを増す。
 「黒くて固いラバーのディルドを奥までぎっちり咥えこんではなさなかった。じゃぷじゃぷ激しく抜き差ししてやれば背中を撓らせて悦んだ。亀頭が誇張された外人サイズのディルドだ、アナル用の細いのじゃない、それが奥まで入ったんだ。だいぶゆるんでたからな、俺の精液と腸液が代わりをしてローションを足さなくてすんだ。異物挿入は本気で抵抗した、あの時のヤツときたら傑作だった、化け物でも見たみたいな顔だった。その前にそう、取り引きを持ちかけたんだ。自分から跪いて俺のものをしゃぶればこれは入れないでやるって」
 膝の上で手を組み身を乗り出す。
 ひくつく喉の奥でいっそ無邪気に笑いが転がる。
 「クズミのヤツ、なんていったと思う?『わかった、しゃぶるから、やめてくれ、いれないでくれ、切れる』って混乱しきって……はは、切れる!切れるわけないじゃないか、あんなにどろどろのぐちゃぐちゃでゆるみきってたくせに!二本挿しだって楽勝だった、なのにディルドはいやだとさ、拒否反応がすごかった。たぶん女にも使った事ないんだろうな、いい年してとことんノーマルで退屈なセックスしか経験ないなんてモテないわけだ。それでクズミはどうしたと思う?俺の言うとおりにしたぞ、あの気の強い男が!床に跪いて、俺の股間に顔突っ込んで、べちゃべちゃ汚く舌を使った。汚い顔だった。涙と鼻水と汗でぐちゃぐちゃで、目隠しの布もぐっしょり湿って、口からはしまりなくザーメンと涎の混じった汁がたれおちて……」

 耳を貸すな

 「『美味いか』と聞けばこくこくカルピスを飲む子供みたいに必死に頷いた、それが刺激になって連続で射精した、ザーメンが喉を直撃してひどくむせた。とにかく必死だった……必死で俺のご機嫌をとった。嗚咽しながら俺の靴を舐めた、蝋が滴る乳首を靴で踏まれて呻いた、突っ伏して悶絶した、鼻水もながしてたぞあいつ、はは」

 「うるさ、い」
 「ひとりじゃつらそうだから手伝ってやってるんだ」
 左手は体を支えるのに精一杯右手は自分をしごくので精一杯、耳を塞いで聞かないふりをしたいが無理、狂気にまみれた兄さんが嬉々として語るあの夜の実態、乳首を靴で踏まれてよがるあの人が酸欠で顔を赤くし口を窄め股間をしゃぶるあの人がディルドを後孔に咥え込んで這うあの人が瞼に浮かぶ、そのたび僕のペニスは力を取り戻し覚醒した蛇の如くカリ首もたげていく、鈴口からあふれた滴が表面を伝い巻きつく指をしとどに濡らす、先輩、違う、あの人の名前なんか呼ぶな顔なんか思い浮かべるな想像するだけで侮辱だ、あの人とはもう関係ないあの人はもう僕の世界にいない、いない、いない、いない人を追い求めたって虚しくなるだけだ。
 現実と妄想がネガとポジのように二重に反転し境が溶け合う、現実と妄想と二重に犯して辱める、どこまで最低になれば気がすむ、どこまで堕ちれば……

 「あっ、う」
 「勃ってきたな。クズミの痴態を聞かされて興奮したのか?」
 肘が痛い。
 膝が痛い。
 それでも右手は止まらない、勢いづいてしごき続ける、先走りにぬるつく竿を手のひらで包んで上から下へと律動を刻む、床を這いずって唇を噛む、瞼の裏であの人が腰を振る、喘ぐ、獣の体勢で後ろから貫かれシーツを掻き毟って快楽でとろけきった表情を見せる、眼鏡を取り払った素顔の無防備な淫らさに心臓が鼓動を打つ……

 扉が開く。

 「待ってたぞ」
 リビングに進んだ靴音が途絶え、息を呑む気配が背後に伝う。
 自分自身を握ったまま振り向けば、リビングの入り口、曇りガラス入りの扉を開けたところに椎名がいた。
 愕然とした表情で立ち尽くし、床に突っ伏して自慰にふけるぼくと椅子に腰掛けた主人とを見比べる。
 「………なんで」
 「さっき呼んだんだ。こいつにも見せてやろうとおもってな」
 「有里さま、これは……」
 「そこで見ていろ、椎名。バンリの自慰だ」
 右手が硬直する。喉がいびつにひくつく。
 反射的にズボンと下着を引き上げようとし、視界がぐらつく。 
 兄さんが椅子に掛けたまま、自慰を中断し下着を穿こうとした手を蹴りどかしたのだ。
 「誰がやめろと言った?」
 「……椎名の前ではできません、よそにやってください」
 「家族のようなものだろ?」
 「兄さん!……本当に、もう……」
 あられもない姿を見られている現実を強く意識し羞恥心に火がつく。
 下半身剥きだしで這い蹲るぼくを見つめる同情の眼差しがなおさら耐え難い。
 灼熱する顔を俯け、足元にひれ伏して情けを乞う。
 「…………帰ってください、今日は」
 死ぬほど惨めだった。
 兄さんに自慰を見せるだけでも屈辱的なのに、今、リビングには椎名がいる。
 兄さんは靴を揺らし思案するふりをし、先走りの汁に塗れたぼくの手に目をとめる。
 「そっちじゃないだろう」
 椅子を立つ。
 鼻先でしゃがむ。
 ぼくの顔を手挟んで起こすや極端に接近し、額にじゃれて接吻をおとす。
 「後ろを使え」
 一瞬、意味がわからなかった。
 ささやきの意味を理解するのを、頭が拒否した。
 ポケットから透明な液体を封入した小瓶をとりだすや、ぼくの手にむりやり握りこませる。
 「わかってるんだ、バンリ。お前はいつも抱くふりをしている。本当は抱かれるほうが気持ちいいのに、俺へのあてつけで男を抱く。なら後ろを使え、後ろの孔にローションをぬりこんでぐちゃぐちゃにほぐすんだ、自分の手で」
 プラスチックの瓶の中、奇妙にとろりとした光沢の液体が揺れる。

 「前はさわるな」
 もうすぐ射精できる状態まで追い詰めておいて
 「アナルオナニーをしてみせろ」

 「有里さま、それは」
 「黙ってろ、椎名」
 手の中のローションを見下ろす。
 目と鼻の先で兄さんが威圧的に微笑む。
 反抗の意志を根こそぎねじ伏せる笑顔。
 「…………」
 はちきれそうに昂ぶった股間が外気にあたって切ない。
 鈴口からあふれた汁が、生き物のようにそそりたつ竿を伝う。
 椎名が見ている。
 兄さんが見ている。
 欲望にひりつく視線が四肢にまとわりつく。
 目を閉じて呼吸を整え、震える手でキャップを外す。
 瓶を逆さにし、右手のひらにローションをたっぷりたらす。
 瓶の口からたれた透明な液体が指の股までもぐりこむ。
 「万里さま、」
 椎名が制止に代えて叫ぶ。
 膝を大きく開き、おずおずと腰を上げ、交尾をねだるメス犬のような姿態を演じる。
 右手にたらしたローションを糸引くまで丁寧に伸ばして馴染ませ後ろに回す。
 「膝を広げて尻をあげろ。椎名に孔の皺まで見せてやるんだ」 
 自覚的に心を麻痺させ、床についた膝を少しずつ大胆に開いていく。
 手を後ろに回し、双丘の中心に潜らせる。
 尻たぶに隠れて見えない窄まりに指で触れ、ひっこめる。
 「…………っ……く」
 椎名に裸の尻を向ける。
 ローションを塗布した手で窄まりの入り口をひっかく。
 怯えにも似た震えが腰を覆う。
 時間が経つにつれ兄さんは不機嫌になる。
 いやなことは早くすませてしまえ、早く終わらせてしまえ。
 四つ足で這う床の固さに麻痺したはずの心が挫ける。
 間違っても感じてる声なんかあげないよう快楽に流されやすい惰弱な己を戒めつつ、窄まりの中心を指圧する。
 きつい。
 脂汗が伝う。
 ローションで多少滑りをよくしたところで、排泄器官に太い異物をねじこむ痛みはごまかしきれない。
 日頃兄さんを受け入れていても、自分の手で秘密の部分を暴く痛みと違和感には胃がしこる。
 自分で自分を犯してるみたいだ。
 「俺が帰ってくるまでそっちは使わなかったのか」
 「……はい……」
 「俺のためにとっておいてくれたのか」
 下顎に固い物が当たる。
 兄さんが靴を使い、顎を上に向かせる。
 「抱くのに、必要、ありませんから」
 内臓を圧迫する苦しさに負けて声が途切れがちになる。
 掠れた呼気のはざまから喘鳴をしぼり、脂汗がながれこんで霞む目をやっとの思いで見開く。
 「まあ、結果オーライだ。しばらく後ろを使わないでいてくれたおかげでがばがばにならずにすんだ。……尻の孔を広げろ」
 不自由な右手で綴じこまれた窄まりを慎重にさぐる。
 「……っ、あく……」
 大量のローションを塗した指で孔を穿ち、入り口のあたりを浅くかき回す。 
 「どんな感じだ、バンリ」
 「気持ち悪い……です……中が、引き攣れる……」
 「もっと激しく」
 言われたとおりにする。
 指を二本に増やす。
 限界まで足を開き、高く高く尻を上げ、人さし指と中指を根元まで深々咥えさせる。
 両膝を支点に全体重を支えるのは拷問だがなんとか持ちこたえる。
 まとわりつく視線を意識しつつ指を出し入れすればローションと空気が攪拌され卑猥な水音が立つ。
 「―うっ、く、あくぅ」
 兄さんが帰ってくるまでの数年こっちは使ってなかった、使い方もしばらく忘れていたが体はちゃんと覚えている、入り口を浅くひっかいて間をもたそうにも兄さんは浅ましい抵抗を見抜いて靴で肩を蹴る、孔の皺ひとつひとつまで引き伸ばすよう幅広に足を開く、抽送に伴う疼きに腰が上擦る、惨めさと情けなさで朦朧とする頭にそれでもしぶとく居残る理性を憎悪する。
 腰が意志を裏切って勝手に動く。
 「顔が赤いぞ。感じてるのか」
 「……っう……」
 「前も反応してきた。先走りでぐちょ濡れだ」
 兄さんが椎名を招く。
 背後に歩み寄る気配。
 「どうだ椎名よく見ろ、大人になったバンリだ。尻に指を咥え込んでぐちゃぐちゃいやらしくかき回してる、俺たちに見られてるのにやめようともしない、こいつはどうしようもないな。前をさわってやれ」
 いやだ。
 「兄さ、やめ―!っあいぐ、」
 「……失礼します」
 前を掴まれた衝撃で背中が弓なりに撓う。
 拒絶の叫びも虚しく椎名が傍らに跪き、半勃ちの状態で放置されたまま汁を零していたペニスを握る。
 「手がとまってるぞ、バンリ。二本で足りるのか?」
 兄さんが冷たくせせら笑う。
 「お前の穴は淫乱だから二本じゃ物足りないってぐいぐい締めつけてくるぞ」
 前は椎名に塞き止められ射精を禁じられた。
 椎名の手を振り払いたい、噛み付いてどかしたい、それは命令違反だ。
 二律背反の葛藤に苛まれ首を振る、顔を伏せた床に散らばった写真が目に入る、あの人がいる、犯されて喘いでいる、今のぼくと同じ体位で男にのしかかれ助けを呼んでいる、時間を巻き戻せたら助けに行く、知らなかった、ここまでひどいことになってるなんて知らなかった、知ってたら助けにいった、ドアを破って助け出した、どうして見捨てた見殺しにしたあの人はぼくの
 「―っ、せんぱい、」
 「呼ぶ名前がちがうだろう?いけない子だな」
 兄さんが半円を描いて移動し後ろに回る。靴音が高らかに響く。
 とうとう指を三本に増やす。
 中指と人さし指と薬指で孔を深く抉る、腸液とローションで潤んだ内壁をぐちゃぐちゃかき回す、うねりくるう襞ひとつひとつの動きに翻弄される、前立腺をくりかえし突き上げるうち前が連動して硬くなる、椎名の顔が見れない、まるで蛇口の水漏れを防ぐように義務的に根元を押さえている。
 こいつは兄さんの命令ならなんでも聞く。
 主従の契約で結ばれた操り人形だ。
 「万里さま……」
 「見る、な」
 勢いづいて前立腺を刺激すればすっかりほぐれた胎内に淫蕩で濃厚な熱が渦を巻く、口の端から垂れた唾液が首を伝ってシャツに染みを作る、少しでも椎名が動けばイッてしまう、出してしまう、体がびくつく、不規則な痙攣が襲う、卑猥な水音立つ後孔に三本指を抜き差ししつつ床に突っ伏す、左手で写真を払う、中の一枚が頭上に舞う、肘がずりさがって焦点が傾ぐ、口の端から垂れた涎を吸って写真がふやけてしまう。
 「あっ、あっ、―ぅく、はっ、ああ」
 「ぬるいな。手伝ってやる」
 嫌な予感がした。
 振り向く間も与えられなかった。
 「-------------!!んあぅ、」
 夢中で出し入れしていた指に非情な圧力がかかる。
 兄さんが靴裏で軽く右手を蹴ったのだ。
 硬い靴裏が容赦なく手の甲を圧迫する、泡が潰れる音を伴い深々根元まで指が沈む、一気に三本突き刺さった指をぐいぐいと靴裏で押す、兄さんの靴に押され蠕動する孔が指をぎっちり咥えこむ。
 「召し上がれ」
 「―いっ、は、ぅあぅく……兄さ、やめ」
 「靴を食え」
 靴裏でねじり手を押しこむ。
 こぽりと気泡が潰れ、指で栓した孔が泡立ち、少量のローションが垂れる。
 「物欲しそうにぱくぱく唇を開け閉めして涎を垂らしてるんだ、喰えるだろ」
 「おやめください、有里さま!」
 血相変えて叫ぶ椎名には目もくれず、爪先でローションをすくい窄まりの筋にくりかえし塗りこめる。
 「はは、見ろ、お前の尻から垂れたローションで俺の靴がてかってる!猥褻な眺めだ」
 「ふ………、ふぅ、あく、あっ………」
 靴で犯され喘ぐ。
 がくがくと腰が震える。
 鞣革の靴が窄まりを寛げ、蕾に隠れた襞ひとつひとつを暴き出し外気に干す。
 「なんで、構うんですか、だと?」
 押す力に悪意が加わる。
 「あっ、ん―っく、ぁ、あぐっ……」
 後ろに立つ兄さんがぼくの手を軽く蹴りつけつつ、奇妙に抑揚を欠いた声で言う。
 「憶えてないのか、バンリ。まさか忘れたのか?あの日おれになにをしたか」
 根元までぎりぎりと、前立腺を絞り上げ苛め抜くように指がめりこむ。
 串刺しにされ、靴の圧力によって抜くことも叶わず、二度目に蹴られた瞬間に達していた。
 それでも兄さんは靴をどかさない、ぐいぐいと押し付けねじこんでくる、憎しみをぶつけるように執拗に深く深くえぐりこんでくる。 
 左肘が滑り尻を立てた姿勢で突っ伏す。
 ワックスで磨いた靴の先端が尻たぶを捲り襞を広げて窄まりを曝す。
 「―んぅ、やあっ、ふあ」
 「靴でイッたのか?変態め」
 硬く冷たい靴の先端で拡張された孔をつつき、指ごとめりこませる。
 「俺はお前に人生を狂わされたんだぞ」
 「有里さま、いい加減になさってください!あなたのそれはやつあたりです!」
 椎名が何か叫んでいる。兄さんが言い返す。口論。
 床に飛び散った白濁を蔑みきった目つきで見下ろし、兄さんが突き放すように言う。
 「バンリを抱きたいか?俺のお古でよければどうぞ」
 椎名が動く。
 僕を床に横たえたかとおもいきや敏捷に跳ね起き、憎しみと悪意にそまりきった蔑笑を浮かべる兄さんに詰め寄り―
 甲高く乾いた音が爆ぜる。
 目に映る光景の衝撃に打たれ、余力を振り絞って体を起こす。
 極端に緩慢な動作で上体をおこした視線の先、頬をぶたれた兄さんは立ち尽くし、椎名は怒りよりも哀しみに近い表情で立ち尽くす。
 一瞬の緊迫を破り、無表情を回復した椎名が口を開く。
 「失礼しました、有里さま」
 「……ああ。本当に失礼だ」
 先に背を向けたのは兄さんだった。
 下半身裸でへたりこむぼくの前を素通りし、リビングを突っ切って玄関に向かいがてら、一方的にことづてる。
 「見合いの日にちを忘れるなよ。迎えの車をよこすからな」
 ぼくの意見などもちろん聞かず、決定事項を事務的に通達してからドアを開ける。
 「先に行く。後始末をしてやれ」
 「かしこまりました」
 閉まり行くドアの向こうに消えた背に向かい、椎名が律儀に一礼する。
 兄さんがそっけなく立ち去り、写真が舞う広々したリビングに二人きりで残される。
 「……椎名さんも行っていいですよ。明日早いんだし」
 「一人で大丈夫ですか」
 「ここはぼくのマンションだ」
 早くシャワーを浴びたい。
 ぐったりした体をひきずって、壁にもたれつつバスルームへ向かう。途中、足が縺れて何度も転びそうになる。
 自慰を強制されたショックで麻痺した心に、ひとつ疑問が浮かぶ。
 手近の壁に寄りかかって振り返り、聞く。
 「なんで兄さんがぼくに当たるのか知ってるんですか」
 「…………」
 「知ってたら教えてください」
 さぐりあう視線が交錯し、張り詰めた空気が漂う。
 危うい均衡の上に成り立つ沈黙を破ったのは、サングラスのむこうに沈痛な面持ちを隠す椎名だった。
 「今は言えません」
 「ぼくに原因があるんですか」
 「……万里さまは悪くありません」
 「じゃあぼくは、」
 舌が縺れる。
 荒れ狂う激情を深呼吸で抑圧し、抑圧しすぎていっそ無感情な声音で、どれだけ悩みぬいてもどうしてもわからない事を聞く。
 「ぼくは何の為に、どうしてただ家族というだけで、あんなヤツに好きにされてるんですか?」

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リーマン×リーマン | コメント(-) | 20010419225113 | 編集
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