ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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脅迫するものはされるもの11

 「ようこそバンリ。クライマックスに間に合ったな」
 千里にしちゃやけに低い声、一癖ありそうな含み笑い。
 こんな声俺は知らない、じゃあ目の前の男は千里じゃない。
 俺は?
 千里以外の男に服従したのか?
 みっともない、浅ましい、負け犬の降伏行動。
 淫蕩な熱に浮かされ溺れた最前までの行動を反芻し、悔恨の念に奥歯を噛みしばる。
 「どけ………」
 指をすり抜ける砂を一握り掴むような、儚い抵抗。
 ちょっとシーツと擦れただけで悩ましい性感を生む体を叱咤し震える腕で有里を突きのけようにもさっぱり力が入らず役に立たねえ。
 有里が感心し口笛を吹く。
 「すごいな、まだ逆らう気力と意志が残ってるのか。この薬を使った人間で最中に自我を取り戻したのはあんたが初めてだ。大抵はとびっぱなし、イキっぱなしだってのに……ぎりぎりで理性が残ってたんじゃかえって辛いだろう」
 「やめ……ろ……いい加減、おりろ、乗馬の時間はおしまいだ勘違い王子……」
 耳朶に触れる吐息さえ刷毛でくすぐるようなもどかしい官能を煽って、ぞくぞくと下半身が疼く。
 「じゃじゃ馬だな」
 「……従わせてえなら、鞭持って来い……」
 「息が切れてるぞ?」
 「………ふ………ぅあ、っぐ、動くな……」
 中を穿つペニスが一番感じる場所をこそぎ、痛みとも痒みとも知れない疼きがへその裏を炙る。
 「ここがいいのか?ひくついてる」
 「!よせ、」
 生々しい粘膜の色した結合部が千里や張たちにはっきり見えるよう姿勢と角度を変え、俺の尻を馴れ馴れしく抱いた有里が、さらに残忍な笑みを深めて行動に出る。
 両手で俺の尻たぶを割って、窄まりに剛直をあてがい……
 一息に持ち上げ、落とす。
 「!?―――っああああっ、」
 先走りとローションでぬるつく剛直が泡の潰れる音たて根元まで一気に刺さり、前立腺が放電したような衝撃が脳天まで貫いて海綿体に血を送り出す。
 「あっ、ふあ、あああっあっひあっあっあっ」
 腰使いが突然激しさを増す、腕が挫け不可抗力で有里のシャツを掴む、振り落とされないよう懸命に必死に掴まってないと彼方まで吹っ飛ばされそうで怖い、自分がどうにかなっちまいそうで怖い、こんなの嘘だ、俺がこんな声出すわけない痴態を見せるはずない人がいるのに千里が見てるってのに、腰振って悦んでまるで変態……
 「あっ、やっ、ふあっ、んあっ」
 声が畜生とまらねえ自制できねえ、快感が加速に次ぐ加速、有里が腰を強く打ち込むごと狂ったように体が仰け反る、怒張したペニスが腹を裏漉し一突きごとに腰の奥でマグマの源泉が沸き立って前立腺を打たれて有里の腹を叩くペニスが歓喜の汁をこぼす。
 「可愛いだろう、乱れるクズミは」
 横髪を一筋頬にはりつけ、退廃した色気纏う有里が腰をグラインドさせる。
 「クズミとは体の相性がいいみたいだ。クズミはこの通り、俺の腹の下で別人のように甘い声を上げる。どうだ?お前の時もこんな素直で可愛い顔を見せてくれるか、色っぽく喘ぐか、シャツにつかまってもっともっととねだってくるか、自分から腰をすりつけてくるか?」 
 「………」
 千里は黙りこくったまま。
 その顔がどんな表情を浮かべているか、眼鏡を奪われた裸眼では正確に識別できない。
 軽蔑?幻滅?憤激?嫌悪?
 わからない、沈黙が怖い、何か言ってくれ千里。
 シャツを掴む手を軽く叩き、子供をあやすように有里がほざく。
 「見ろよ、クズミの手。しっかりつかまって放さないだろう。よだれと汗と涙ぐちゃぐちゃどろどろの子供みたいな顔を近づいてよく見ろ、ほら、目の焦点が合ってないだろう。さっきからずっとこの調子、俺がなに話しかけても上の空だ、まったくびっくりしたね、お前の恋人が初めての男に組み敷かれてあんあん喘いで腰振る淫乱だなんて。もっと根性あるんじゃないかって期待したんだが、買いかぶりだったか」
 「あっ、や、うあっ、ひうぐ、ぅぐ、あああっ」
 腰に大胆な捻りを加え襞を巻き込んで律動的に抜き差し、手錠ががちゃがちゃ鳴る、一度加速がついた快感は絶頂に向かいひたすら疾走する、動きに合わせばらけた前髪が視界を覆う、額にへばりついて目を覆う、口の端からたれた唾液が鎖骨の窪みにたまって光沢を放つ、シーツと肌が擦れ合うもどかしい感覚がやみつきになる。
 「はっ、はははっ、目が虚ろだな。疲れたのか。汗びっしょりだ」
 「あいやーこいつ変態ね、どんどん腰が上ずってるね、大勢に見られてよがてるある」
 「はっ、はあっ、は……」
 もうどうでもいい。
 いっそ殺してくれ体の細胞一個残らず蒸発しちまえ跡形残らず、俺が俺じゃなくなるのがいやだ俺なら絶対言わない台詞を口走るのがいやだ大嫌いなくそったれな有里の野郎にしがみついたままシャツから手を放せないのが癪だ。
 一体どうしちまったんだ、体と心が引き裂かれ体が心を裏切って快楽に溺れて欲望に飲み込まれてブレーキがきかない、原寸大の鋳型にでもなったように亀頭から根元まで銜えこんだおぞましい性器の形状がよくわかる。
 直腸の襞ひとつひとつが生き物のように蠕動し、へその裏あたりが波打つ。
 俺の顔をのぞきこみ、余裕ある表情で有里が揶揄する。
 「クズミ、『頂戴』をしてみせろ。上手にできたらご褒美をやる」
 ご褒美。
 物欲しげに喉が鳴る。
 無意識に―いやだ、なにを―体が動く、耳裏の血流がどくどくどくどく脈を打つ、体が熱い、火照りを逃がしたい、有里が哂う、哂いながら俺の頬を手で包む、悪戯に舌を這わせ上唇の表皮をついばむ、じゃれつくようなキス……
 「んむ、ぅ」
 唾液でぬめる粘膜が吸着し甘美な電流が走る。
 顔を背け拒む、今の自分に許された範囲で出来る限り抵抗する、執拗に唇をつけねらう有里を必死に振り払う、はねつける、千里の前で無理矢理キスされてたまっか、これ以上ぶざまな姿を見せたくない、その信念だけでしぶとく抗うも顎を掴み固定しこじ開けられる。
 「!―んぅっ!?」
 「へたくそが。もう少し経験を積め」
 有里が俺の手を振り解き、自分の首をくぐらせ背へと回す。
 「あっあっ、あっあっあ!」
 下肢がびくつく、膝裏がわななく、ラストスパートに入る。
 振り落とされぬよう頭を真っ白にしてしがみつく、シャツの背中にたまらず爪を立てる、ひっかく、抉る、乱暴に揺さぶられ貫かれいきりたったペニスで前立腺を突かれ瞼の裏で閃光が爆ぜる、中でローションと腸液が攪拌され潤沢に泡立つ局部が擦れ合う。
 「どうしてほしいクズミ」
 「……ふ……」
 「イかせてほしいならそう言え。寸止めで放置してもいいんだぞ。それとも張たちに輪姦されたいか?こちらとしてはそれも歓迎だが……せっかく招待したんだ、色々趣向を変えて楽しまないとな」
 千里の耳と目を意識する、張と毛と黄が興味津々こっちを見る、全身が恥辱に染まる、強要された台詞の恥ずかしさに伏せた目が揺れる、潤む。
 「どうした?黙ってちゃわからない」
 「……っ、く……追っ払ってくれ……」
 千里に見られるのは耐え難い。何対もの視線が身を切り刻む。
 なんでこんな場所に来た、どうして黙ってる?俺に、失望したのか。
 「出てけ、ちさと……ほかのやつ、らも……っ、でてけ、ふたりっきりにしてくれ……」
 「俺と二人きりがいいのか?わがままだなクズミは。でもだめだ、お前がイくところを皆に見てもらいたくてわざわざ呼んだんだから」
 「てめ……ざけんな、変態やろ……ひあうっ!?」
 ずるりと湿った音をたてローションの糸引くペニスが半ば抜け出る。
 生々しい肉色で繋がった部分が千里をはじめとしたギャラリー全員に見えるよう体位を調整し、指示を飛ばす。
 「上の口が物足りないだろ?張、来い」
 心得たとばかり歩み出た張が、笑みを含んだ目配せを有里と交わし、おもむろにズボンを脱ぐ。
 「な………」
 下半身を露出した張がベッドに乗っかり、俺の顔を跨いで仁王立つ。
 必然、張の股ぐらにぶらさがったペニスが目の前にくる。
 「お前しゃぶるね。お前うるさいから有里さん怒たよ、怖い怖いよ。これ咥えてだまてるよろし」
 いっそ、泣きてえ。
 「……貧相なもんだしっぱなしにすんな、たくあんかよ、そりゃ……」
 「おお、怖い怖いね。でも嘘よ、お前そんなことできないよ、お前気持ちよくなるためなら男のアレでも平気でしゃぶるド淫乱よ、張ずっと見てたよ」
 前髪を掴み無理矢理顔を上げさせるや、俺の口に、無理矢理それをねじこもうとする。
 近づくペニスから顔を背ける、独特の生臭い臭気が鼻をつき吐き気がこみ上げる、ペニスが頬にぶつかる、張が痙攣するように笑いつつ竿の振り子で往復ビンタする。
 肉と肉が打ち合う妙に間の抜けた音が響く、ヒステリックな嘲笑に煽られ嫌悪と羞恥が膨らむ、絶叫したい、発狂したい、身の内で暴力と破壊の衝動が荒れ狂う、有里が抽送を再開、荒々しく突き上げられた拍子に口が開いてその隙を逃さず張がブツを押し込む……

 畜生、ああ、いよいよだめみたいだ。
 助けてくれ。

 「待ってください」

 凛とした声が行為を制止する。
 張が俺を跨いだまま振り返る、有里が動きを止める。シャツの前をしどけなく開き、仰向けに寝転がって、男二人にされるがまま屈辱をなめていた俺も、呆けたように声の主を仰ぐ。
 千里がいた。
 敢然たる足取りで前に進み出るや、張に前髪を掴まれ、今まさに口をこじ開けフェラチオを強制される寸前の俺を、無表情に見詰める。
 「あ………」
 組み敷かれた体勢から、余力をふりしぼり、千里のほうへと震える指先をのばす。
 無意識な動作。俺自身、そうやって千里に触れて、どうするつもりだったのかわからない。
 千里がいる。目の前に、触れられる距離にいる。
 約束を守って迎えに来た、助けに来てくれた。泣きたくなるような安堵。
 今自分が晒してる醜態とか痴態とか一瞬跡形もなく消し飛んで。
 千里に触れたい、近くに感じたいという肉の快楽さえ圧する純粋な願望と欲求が苦しいほど切実にこみ上げて、ふらりと左手をのばす……


 乾いた音。
 そっけなく払われた左手に痛みが走る。 

 「汚い。触るな」

 拒絶された左手が宙をさまよう。
 一瞬、耳を疑う。
 聞き間違いじゃないかと、空虚な希望に縋りたくなる。
 けれども現実は、依然千里の姿をとってそこにあった。
 「………は……?」
 顔が変な具合に歪んで引き攣る。
 俺の左手をまるで汚物の如く叩き落とした千里は、一瞬でも俺に触れてしまった失態とそれを許した愚かさを悔やむかのように、忌々しげに顔を歪める。
 「……なんですか、今の。ぼくじゃなくたって、別に構わないんじゃないか」
 なに言って
 「今、自分がなにされてるかわかってますか。誰に抱かれてるかわかってますか、いや違う、抱かれてるなんてなまやさしいもんじゃない、レイプされてるんですよ?手錠で繋がれて、沢山の人に見られて、ベッドの上で……なのになに、感じまくってるんですか。腰振って。声上げて。拉致されたんですよ?誘拐ですよ?」
 軽蔑のまなざしを、俺にたたきつける。
 「……がっかりだ、本当に。先輩がこんな人だったなんて。男なら誰でもいいんでしょう?ぼくである必要なんかない。あなたは酷くされるのが好きなんだ、そういうふうに好きでもない男に無理矢理されるのが好きなんだ、だから悦んで腰振るんだ、相手が誰だろうがぼくの実の兄だろうが極悪で卑劣な誘拐犯だろうが自分を犯してくれるなら誰でも構わない、酷くされればされるほど感じてしまう体質なんだ」
 千里が口の端を持ち上げ嘲笑う。
 有里が今さっき見せた表情とよく似た、酷薄で無慈悲な微笑。
 優しげな童顔にはひどく不釣合いな倒錯を引き起こす冷笑。
 「もうちょっと手ごたえあるとおもってたのに、見損ないました」
 「どういうことだ」
 「ゲームだったんですよ、ぜんぶ」
 冗談めかし肩を竦める。

 『千里が男を落とす、俺がそれを引き裂く、千里が逃げる、それを俺が追う。ずっと昔から続けてきた他愛ないゲームだ』
 さっき聞いた有里の話が耳の奥でこだまする。

 頭が急激に冷えていく。
 「嘘だろ?」
 声が動揺に上擦る。
 食い入るように千里を見る。
 千里ははぐらかすような笑みを浮かべたまま、ルールを説明する。
 「まずはぼくが男を落とし倒錯したセックスを仕込んで兄さんに献上する、そして心ゆくまで二人で挟んで嬲る。願わくば、獲物はしぶといほうがいい」
 「嘘だよな」
 「あなたに目をつけた理由教えてあげましょうか」
 悪びれず開き直る。
 無関心に冷めた声と不誠実な笑顔に人懐こい後輩の面影はなく、千里の姿を借りた見知らぬ男と対峙してる錯覚を来たす。
 人の心と体を弄んで愉悦に酔う、狂った価値観を持つ男の顔。
 見せかけの優しさで人を毒する悪魔の顔。 
 「単に職場で一番落ちにくいと踏んだからですよ。真面目で堅物で融通の利かない、仕事はデキるけどプライベートはツイてない、他人にも自分にも厳しく故に友人が少なく敬遠されがちな久住さん。どこまでいっても常識人で潔癖なあなたは、ぼくみたいに卑劣で姑息な人間を毛嫌いする。同性愛者を嫌う。わかります?あえてハードルを高くしたんです、張り合いが欲しかったから。ゲームも最近マンネリ化してたし、刺激が欲しかった。彼女と別れたばかりで傷心の、ガチガチノンケの男を無理矢理犯し、一からアナルセックスを仕込んで身も心も攻略していく。面白い試みでしょう?」
 ねじくれた着想を自慢するように軽薄に嘯き、有里に同意を仰ぐ。
 「兄さんも賛成してくれたしね」
 「騙してたのか」

 ずっと嘘をついてたのか。
 優しくしたのも嘘で。
 好きだというのもうそで。
 嘘で嘘で嘘ばかりで塗り固めてどこにも本当はなくて俺は落ちるか否か賭けの対象にされて

 「本当、なのか?」
 生唾を飲む。
 「好きだってのは嘘で、でまかせで、ずっと兄貴しか眼中になくて、俺は……暇つぶしの相手でさえない、ただのコマだったのか」
 ずっと嘘をついてたのか。
 屋上でふたり爽やかな風に吹かれ話し合った時もホームで痴漢から助けた時も部屋でカレーをつついた時も、ぜんぶぜんぶぜんぶ嘘だったってのか?
 千里の芝居に完璧騙されて、俺のこと好きかもしれねえなんておめでたく思い込んで、好きな相手を縛って強姦したり無理矢理ローター突っ込んだり常識に照らし合わせりゃ矛盾だらけの行動だって明白なのに耳元で甘く囁かれる好きって言葉が心地よくて
 俺の目をまっすぐ見つめ、千里は微笑む。

 「当たり前じゃないか。なんであんたみたいな可愛げない人好きにならなきゃいけないんだ?」

 胸を殴りつけられたように息がとまる。
 千里は続ける。
 「鈍感で。怒りっぽくて。融通がきかなくて。インテリぶってるくせに打たれ弱くて」
 緩慢な足取りで室内をぶらつき、抑制の利いた口調で俺の悪い点を挙げていく。
 「……カルシウム不足で、いつもいらいらしてて。目つきが尖ったきつい顔で。セックスは退屈、フェラチオもろくにできないくせに口ばかり達者。時々手が出る。血の気が多く直情的、お人よしも過ぎるとうざい。たまたま電車で乗り合わせただけの女性をわざわざ痴漢から庇うとか、あなたのそういうところが鼻につくんですよ。偽善者ぶって、自分がフォローできない分は他人に尻拭いさせて」
 抑揚なく紡がれる否定の言葉ひとつひとつが、胸を抉る。
 糾弾と呼ぶほどの怒りはなく、中傷というほどの悪意もなく。
 どこまでも落ち着き払って、実験動物の交尾でも見るような熱の伴わない目で、有里と繋がったままの俺を観察し本音を述べていく。
 「久住さん、今自分がどんなかっこしてるかわかってます?職場でのクールなイメージが台無しですよ。眼鏡もとられちゃって……あちこちに精液こびりついて。アナルセックス、気持ちいいですか?そっちで感じるよう仕込んであげたのは誰でしたっけ。もとから素質あったんだな、きっと。はは、見込み違いもいいとこ。もっと根性あるかと期待したんだけど、あっけない」
 「ちさと」
 「ストイックって言うかクレバーって言うか……とにかくそんな感じで、職場で一番落ちにくそうな人を選んだのに。そんなによかったかな、ぼくのは。後ろで感じた?同性にペニスをしごかれて泣いて悦んでましたよね。嫌い嫌いって口ばっかり、結局最後には言う事聞いてくれる。お前なんか嫌いだ、顔も見たくない、死んじまえってぎゃあつく吠えるくせに、セックス中は夢中で腰振って抱きついてくる。正直、笑えました。ギャップがすごくって。職場じゃいつも偉そうに威張ってるくせに、口ほどにもない」
 「もういい、やめろ」
 「まんざらでもなかったんでしょう?ねえ久住さん素直に言っちゃってください、同性愛者嫌いを吹聴するあなたが行為を重ねるにつれ後ろの方がよくなってく姿はなかなかそそりましたよ、ローター突っ込まれてよがるくらいですもんね。冷たいプラスチックの卵で犯されて、びくびく痙攣しながらイきまくって、手遅れなマゾだなあ」
 「やめてくれ、お願いだ、頼む」
 左手で耳を押さえかぶりを振る俺に迫る、唇があでやかに綻ぶ、嬉々として暴言で鞭打つ。

 「幻滅しました。こんな淫乱だったなんて興ざめだ。男なら誰だっていいんだろ?」
 
 心がずたずたに引き裂かれる。
 
 「後ろに突っ込まれれば即勃つんだろう?」 
 俺の痴態を映し陰険に濡れ光る目を細め、歪に笑う。
 
 馬鹿にしたように股間を見る、俺のペニスは固く勃起して腹につきそうに急角度で反り返って白濁の混じった先走りがだらだら滴る、違うと否定したところで体の反応がそれを裏切る、俺は紛れもなく欲情してる、快楽に溺れてる、有里に犯され辱められ興奮してる、だけど頭の片隅だけ妙に醒めて麻痺してる、手荒く揺さぶられ喘ぎ声を上げる自分を天井から客観的に見下ろしてる。
 もう一人の俺は酷い顔、シャツの前がはだけて貧弱な胸板が露出して痩せた腹筋がそれに続いて下は剥き出しで股間のものは切なく滾りたって涙を流す「ああっ、ああっ、あうっ、ぃうっ」おもいっきり掻き毟りたい、溜まったもん全部一滴残らず搾り出したい、傍らに添う千里がそんな俺を倦んだ目つきで眺める、退屈そうな顔つき、もう完全に興味を失ってどうでもいいと言わんばかりに……

 「―っ、すごい……よく締まる……」
 「当たり前です、ぼくが調教したんだから」
 「仕上げは俺だな」
 
 まるで物みたいに、俺の事を明け渡す。

 「バンリに見られて感じてるのか?どうしようもない変態だな、クズミは。顔が赤い。どうした、誘うように目を潤ませて……泣いてるのか、大の男が」
 「………い、てね……」
 「振られて哀しいか?裏切られてショックか?運が悪かったんだ、お前は。たまたまバンリに目をつけられたせいでいいとばっちりだ」
 「もう興味ないです、その人。よかったら、兄さんにあげますよ」
 「いいのか?」
 「久住さんもそっちのがいいでしょう?声、すごいですよ。腰もすごく上がってるし」
 有里と千里の笑い声が混じり合う。それに張たちの哄笑が被さって悪意の波長が共鳴し部屋に渦巻き満ちていく。
 「一緒にヤッてもいいんだぞ?」
 俺の尻を抱いて、今にもはちきれんばかりに怒張したペニスを打ち込みつつ有里が問えば、千里は明朗に断る。
 「遠慮しときます。兄さん一人で楽しんでください。ほら……靴とスーツ汚したくないし」
 俺の価値は、スーツ以下か。
 千里が踵を返す。非情な背中がぼやけた視界を遠ざかっていく。
 血統書つき猫のように優雅に絨毯を踏みしめドアへ向かう千里へと無意識に手を伸ばす、宙を掻き毟る、信じられない信じたくない信じるしかない、千里は俺の目を見てはっきりそう言った、騙される方が馬鹿だと訣別を宣言した、絶縁状を叩きつけた。
 有里に組み敷かれ上擦る腰、結合した局部がぐちゃぐちゃ濡れた音をたてる、千里がどんどん遠ざかっていく、距離が開いていく。
 「いくな、ちさと、もどれ」
 助けてくれとは言えない。言う資格がない。
 俺は勘違いしてた。好きだという言葉を真に受けて、それが千里の本心だと信じきって、こそばゆさを感じていた。
 限界まで腕を伸ばす、宙を掻き毟る、戻ってこいと発狂せんばかりにひたむきに念じる、喘ぎ疲れて声が出ない、喉が痛い、腰がだるい、汗で濡れそぼった体が気持ち悪い、行為はまだ続く、有里が飽きて放り出すまで延々と続く、若く精力が漲ったペニスはまだ力を失う気配なく俺の体内を卑猥な水音と共に出入りする、薬の効果が切れる予兆はないー……


 ―「俺は、なんなんだよっ!!!」― 


 ドアの手前で千里が立ち止まり、無言の背中を晒す。
 構わずその背中に吠え立てる、千里を振り向かせたい繋ぎ止めたい一心でかすれきった喉を酷使し喘ぎ声の合間に問いを繋ぐ。

 「俺は、お前の、なんだったんだ!?お前がしたこと言ったことぜんぶ嘘でほんとはひとっつもないって言うのか、お前なんか大嫌いだ千里、そいつは本当だ、神かけて誓う、だけど嫌いだけど許してたんだ、お前は俺となにもかも正反対で猫かぶりで愛され上手で友達多くて人気者で要領よくてそういうとこが虫唾走った、だけどなんでか許しちまうんだよ、お前がごめんなさいってしょげたふりすっから、ガキみてえにしおらしくなるから、だから仕方ねえなってどんな酷い事されてもその繰り返しでいつのまにか本気で憎めなくなってた、なんでだよ、憎いはずだろ、事無理矢理ヤったヤツだぜ、なんで許せるんだよ、知るかよ、んなの俺が一番知りてえよ!!」

 殺したいほど憎んだ日もある。
 だけど、それ以上に、一緒にいた時間が長くて。
 殺意は持続せず。憎しみは日常で摩滅して。時折見せる優しい言動が、事後のさりげない気配りが嬉しくて。
 
 「………っ………俺は…………」

 忘れたふりをしてるだけ。本当は許してない。そうかもしれない。
 
 「お前のこと、ただの後輩じゃなくて……少し、面白いヤツだって、思い始めてたのに……」

 あの日、マンションの部屋でカレーを食べながら他愛ない話をしたように、もっといろんな話をしたかった。 
 
 ドアの前にたたずんだ千里が、ノブに手をかけ捻りながら、最後の一言を落とす。
 「あなたは、ぼくの、先輩です。恋愛感情はありません。でまかせです、全部。………忘れてください」
 ドアを開けて踏み出しつつ、俺にした仕打ちも与えた影響も自分にとっては気まぐれの範疇だと、軽快な抑揚をつけ言う。
 「勘違い、鬱陶しいんで」

 俺が最後に見た千里は。
 有里と瓜二つの顔で、哂っていた。

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リーマン×リーマン | コメント(-) | 20010419225251 | 編集
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