ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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脅迫するものはされるもの5

 『早上好』
 頬を軽く叩かれ薄く目を開ける。
 すわ接吻かと見まがう近距離でおぼろな人影が像を結ぶ。
 「う………おはようって時間か?」
 頭がどんより曇って働かない。
 起き上がろうと腹筋に力を入れるや激痛が苛み呼吸が途絶、もがく俺を手真似で押さえベッドの端に腰掛けた張が大げさなアクションをとる。
 「おねんねしてるがいいよ、お前スタンガンくらた、無理するとぽんぽん痛い痛いね。後遺症よ」
 「どこだここ……」
 私は誰だと続かなかっただけもうけもの。
 目覚めたらどこか知らない場所に移動していた。
 シルク素材のベッドはなめらかな質感で身を包む。
 ベッドに上体を起こし見渡せる範囲だけでもかなり広く、いかにもセレブ御用達といった洗練された内装でまとめられている。壁の一面は天井から床近くまである窓になっていて、その向こうに栄えある高さを競い合う摩天楼の展望が聳え立つ。
 視線を手前に戻しぎょっとする。
 改めて自分が置かれた異常な事態に気付く。
 俺は外国の映画でしかお目にかかったことねえようなクイーンサイズのベッドに転がっていた。純白のシーツは染みひとつ皺ひとつなく糊が利き、土足で汚すのが気が咎め、慌てて靴を脱ぎ捨てる。
 「あんま動くいくない。お前病み上がりよ」
 二度と見たくないつらが唇を舐め含み笑い、ガキを寝かしつけるような手つきで、一旦は起き上がりかけた俺を宥めて押し戻す。
 「病んでるのはお前の日本語と頭だ!」
 張の手を邪魔っけに払いどやしつけ、金属が擦れ合う音に振り向き、凍りつく。
 冷たい銀の光沢を放つ手錠が右手に嵌まってる。
 「なんだこりゃ」
 「逃がさないよう処置ね。お前ぐすりおねんね、よいせよいせ運ばれても気付かなかた」
 右手に嵌まった手錠の反対側はがっちりベッドの頭の支柱に繋がっている。
 試しに引っ張ってみる。鎖がうるさく軋り擦れ合う。今度はもっと強く……
 駄目だ。
 俺の力じゃ引きちぎれない、金属の輪が食い込んで手首に血が滲む溝がつくだけで終わる。
 努力が無駄と文字通り痛感し、金槌で内側からぶん殴られるように頭がガンガン響く。
 「……拉致ったのか……」
 張は否定も肯定もせずのらくら笑い、ベッドの端に腰掛け体をずらし楽しそうに俺を覗きこむ。ズボンのポケットが不自然に膨らんでるのに気付き眉をひそめりゃ、わざとらしい手つきで物騒なブツを引っこ抜く。
 「スタンガン、秋葉原で買た。安いから性能今いち」
 「んなやばいもん人に使うんじゃねえ」
 「自分使うちがうからいいよ。張電撃ビリビリでイく趣味ないね、そんなの変態よ、張マゾちなう。でもヒト痛がるの見るの結構好きよ、生意気な日本人なら尚更」
 諦め悪く手錠を引っ張りつつもう一方で本能的に身の危険を感じ、張の手を追う。
 張はおふざけ半分遊び半分スタンガンの電源を入れ、先端の電極から火花を放つ。
 あれを使われたのかと毛穴から脂汗が噴き出し、鈍痛に疼く下腹部がフラッシュバックで微痙攣を引き起こす。
 「安物だけど結構便利で使えるよ。包丁してるよ」
 「重宝だろ」
 「ドスとおなじくらい危険だからいいのよ」
 「白昼堂々……往来で……大勢見てるのに……とちくるったのか?今頃通報されてるぜ、警察が踏み込んできたらどうする。蜂の巣にされんの怖くないのか」
 滴る脂汗を隠し、せめても虚勢を張って脅す。
 内心の怯えを悟られるのはプライドが許さない。
 引き攣りがちに笑えば、張がリズミカルに舌を打ちつつ首を振り、鷹揚に言う。
 「日本の警察腰抜けヨ。まず銃抜かないネ。発砲問題になるヨ、不祥事怖い怖いヨ。少しは中国の警察見習ういいヨ、祖国では毎年二万人死刑になるネ」
 「さすがに二万は嘘だろ。人口過密事情んな深刻なのか」
 素人のハッタリなんざ屁でもねえと鉄壁の笑みを崩さず、俺のほうへと乗り出して、仰け反る鼻面にスタンガンをつきつける。
 「堂々やたほうが案外バレない。お天道様高い高い白昼の犯行、まわりのヒトはみな映画の撮影かなんかだと思うね。張プロだから手際いいよ、チームワーク抜群ある」
 張の言い分も一理ある。
 俺が通行人だったら、目撃者だったらどうだ?
 目の前でいきなり見ず知らずの会社員が嵐のような勢いで拉致られたら即体が動くだろうか、ドラマや映画の撮影に偶然出くわした可能性もあるし真面目に地味に地道に生きてる俺の前で黒塗りの高級車が突然現れて拉致とか犯罪絡みのトラブル起きるわけねえと煮え切らず逡巡して判断を先送りにしそうだ。
 常識人ほどいざトラブルに出くわすと弱い。
 「尾行……してたのか」
 質問には答えず意味深な笑みでとぼける。食えねえやつ。単なる脅しのつもりだったのだろうスタンガンを引っ込めるや、肩を竦める仕草つきであっさりこう嘯く。
 「張、お金さえ貰えばなんでもするよ。仲間だてそう、依頼人は神様。たんまり報酬弾めばご奉仕するある」
 「仲間とはもう仲直りしたのか」
 いや、待て、ほかにもっと聞くことあるだろ。問い詰めるべき重要なことが。
 ここはどこかとか俺はだれだとか記憶喪失じゃあるまいし後者はいらないか、なんで俺をさらったのかとか、そう、それが一番大事だ。
 「会社……帰らねえと……」
 はっきりしない頭で朦朧と呟く。呂律が回らない。
 まだ電撃のショックが残ってるのかと、他人事みたいに分析する。
 「はずせよ、これ」
 「玩具ちなう。暴れてもとれないよ」
 「なんで拉致ったんだ……昨日の仕返しか。見逃してやったろ。ほんとなら警察に突き出すとこだったんだから、感謝してほしいくらいだ」
 ベランダから蹴り落としときゃよかった。そしたら面倒なトラブルに巻き込まれずにすんだ。
 受難は続く。
 災難が見舞う。
 むしろ人災の範疇だ。
 と、張が鼻をむずむずさせ、一発派手にくしゃみをかます。
 「わっ、きったね!」
 顔面に唾のしぶきが飛ぶ。
 豪快にくしゃみした張が人さし指で鼻を拭きつつ恨みがましい目つきでこっちを睨む。よく見りゃ頬に青タンができている。マンションを出てから千里に小突き回されたらしい。
 「お前の朋友のせいで風邪ひいた。さんざんある」
 「え?まさか路上に素っ裸で放置って、実践したのか……」
 「夜で人通りなくてよかた。人いたら無難に逮捕で強制送還、福建の恥に成り下がるとこだた。故郷に褌飾るまで張帰れないよ」
 「スケールでっかく中国人民十二億の恥といこうぜ」
 「いつ警官通りかかて職質されるかハラハラドキドキ着た心地しなかた」
 「全裸ならな」
 「股間隠すの大変だたね。森サン迎えにくるまで寒い寒い。あやつ酷いサドね」
 大げさに肩を抱いて震えるまねをする。
 つまり千里はこいつを素っ裸に剥いて道路にほっぽりだしたわけか。グッジョブ。
 仕置きに溜飲さげるも冷静に考えりゃ千里がチャイニーズを放置プレイしたせいで俺がとばっちりくってるわけで、感謝の念はすぐ消える。
 おもいっきり警戒し歯を剥く俺に、摩天楼を背景に胡散臭く両手を広げ、自分の手柄でもポケットマネーでもないだろうに誇らしげに宣言する。
 「某ホテルのスイートルーム。一晩泊まるン十万かン百万とぶ。お前羨ましね、ふかふか」
 「どうやって連れ込んだんだ。さすがにフロントが怪しむだろ」
 「お前馬鹿か。真正直に正面から行たりしないよ、従業員通用口からコソーリ侵入したよ、直通エレベーター使て」
 「セキュリティずさんだ……」
 「コネ偉大。見逃してくれたある」
 「仲間はどうした」
 「表で見張り。逃げようたて布団屋おろさないよ」
 「問屋だろ……」
 なんだかどっと疲れが襲う。
 そうだ携帯。
 不自由な片手で慌てて背広の懐をさぐれば、確かにあった携帯がなくなってる。
 「捜し物コレね?没収」
 「こら待て似非中国人しゃべり」
 「水洗トイレにぼちゃんするよ」
 「すいません」
 携帯は営業の生命線。あの中には取引先の番号もごっそり入ってる、水洗トイレに流されたらおしまいだ。
 歯軋りして詫びる俺の鼻先で携帯をぶらつかせ振り回し高笑いする張を絞め殺してえ。
 深呼吸で煮え立つ怒りをしずめつつ張をにらみつける背後でドアが開き、何者かが入ってくる。
 敷き詰められた絨毯が靴音を吸い込む。
 優雅な足取りでやってきたのは白スーツの男。
 モデルみたいにスタイルが良く、鼻筋が通ったしゃらくせえ顔をしてる。
 颯爽と歩く姿に漂う気品、一挙手一投足が放つ傲慢な権威みたいなものが、強烈なオーラとなって存在感を引き立てる。
 「起きたか、お姫様」
 「おひ」
 思考停止。
 「なんてな。冗談だよ。王子様のが気に召すか?」
 などと、自分のほうがよっぽど王子らしいツラをした男があざ笑う。王子というよりは若くして権力を握った帝王に近い驕慢さだ。 
 ベッドの足元に予め用意された一人掛けソファーに座り、申し分なく長い足を優美に組む。
 一挙手一投足が音楽を奏でるような洗練ぶり。 
 男のつらには見覚えがある。
 交差点で目撃した光景が甦り、知らず足を崩しベッドの上をあとじさる。
 ベッドの足元に俺が蹴り捨てた革靴を一瞥、面白い芸を見たように目を光らせる。
 「正式にお目にかかるのは初めてだな。俺は千里有里」
 「千里の兄貴か」
 「弟がいつも世話になってる」 
 肘掛けに頬杖つき、口の端を皮肉っぽく歪める。
 「女子高生が好きらしいな」
 「はあ?」
 「AVの話だよ。あんたが持ってる」
 こともなげに言い放つ。全身からさっと血の気がひく。
 俺の反応を見るや、男……有里はくつくつと喉を鳴らす。
 「声、聞かせてもらった。マスターベーションの頻度自体はそう多くないがな。だけど女子高生、女子高生ね。こっちの若い女は肌が汚くて好きじゃないんだが、アレに欲情するなんてマイナー趣味だ」
 「こっちじゃメジャーなんだよ」
 改めてこいつが盗聴を指示した事実を思い出し、こめかみが怒りで脈打つ。
 「あんたの声も聞けたらよかったんだけどAVの喘ぎのがうるさくて、残念、よく聞こえなかった」
 「変態野郎」
 「万里にはいつも聞かせてやってるんだろう」
 嗜虐の光に濡れた目が細まる。背筋に寒気が沿う。
 「さっそく用件に入ろうか。あんたをここに呼んだのはほかでもない」
 そばのテーブルにのっていた封筒を手にとり、俺のほうへと投げてよこす。かなり厚みがあるそれを不審げに見下ろす。
 手錠をかけられ使えない右手の代わりに、不自由な左手でのろのろ拾い、中を確かめて絶句。
 「五百万入ってる。それで万里と別れてくれないか」
 要するに手切れ金だ。

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リーマン×リーマン | コメント(-) | 20010419225844 | 編集
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