ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

最近のトラックバック
ブロとも申請フォーム
スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

関連記事 [スポンサー広告]
スポンサー広告 | コメント(-) | ------------ | 編集
痴漢を撃退する101の方法~上級編~

 「兄弟再会を祝し乾杯」
 テーブルの中央でふたつのグラスがぶつかりあい、研ぎ澄まされた音が弾ける。
 某有名ホテルの一階に入った高級レストランは完全予約制。
 内装にこだわった店内には歓談に興じる紳士淑女の華やかなざわめきが満ちる。
 お仕着せを着た給仕が粛々とワゴンを運んできてお辞儀。
 手際よく栓を抜き、兄さんが干したグラスに宝石を溶かしこんだような液体を注ぐ。
 下僕に傅かれる姿がひどく絵になる人というのが第一印象。
 されど彼は博愛の王子でなく、足の組み方ひとつとっても生来の気位あふれる傲慢な暴君。
 兄さんは奉仕の享受に慣れている。
 人に奉仕されるのが日常だからいちいち感謝の念なんか抱かない。
 兄さんのまわりには多くの人が集まる。
 ぼくが思い出す兄さんは、いつもまわりに人を侍らしご機嫌に笑っていた。
 そう、今日みたいに。
 グラスの中で不安定に波打つワインを見つめる。
 グラスの水面越しに透かし見た兄さんは、悪名高きチェシャ猫のように目を細めて笑う。
 「お前のために予約したんだ。いい店だろう」
 深呼吸し、かすかに震える手でグラスを持ち、口をつける。
 味なんて殆どわからないが、世辞を言う。
 「……美味しいですね」
 「だろう?モントレーシャルドネ、めずらしいアメリカ産の白ワイン。酸はなめらかで、果実の香りが口の中で広がる。バタートーストの香りが特徴。魚にはやっぱ白だよな」
 すらすら流暢に解説し、社交上の博識を披露する。
 飲みたくもないワインに申し訳に口をつけながら、対面の兄さんを観察する。
 千里有里。ぼくの兄。
 といっても、血は半分しか繋がってない異母兄。
 顔はあまり似てない。
 ぼくは死んだ母親似、兄さんは父親似。
 こうしてひとつのテーブルでワインを飲み交わしていても兄弟だと気付く人は少ないだろう。
 千里有里は優秀な男だ。
 若くして財閥の系列の会社を任され、現在は社長の地位にある。
 多忙で世界中を飛び回っていて、日本にはめったに帰ってこない。現在売り出し中の若社長という事と秀麗なルックスが相まって話題を呼び、国内外の経済誌にたびたび取り上げられる。
 疎遠でいた間、忘れていたコンプレックスがじくじくと膿んで疼く。
 涼しげな切れ長の目を細め、熱烈な注目と称賛を浴び慣れた手振りで嘯く。
 「元気そうで安心したよ、バンリ。寂しがってるんじゃないか心配した」
 「自意識過剰です。電車の中でも言いましたけど、あなたがいなくなってほっとしました」 
 「痩せ我慢するなよ。うちに来たばかりの頃はよく泣いてたじゃないか。あの頃は可愛かった。兄さん兄さんて懐いて甘えてきて……」
 「やめてください、愚にもつかない昔話は」
 「恥ずかしいか?久しぶりに会ったんだ、思い出話に華を咲かせようぜ」
 子供の頃の思い出。
 兄さんの冗談めかした言葉が呼び水となって次々と蘇る。
 ぼくが泣いてると慰めてくれた、絵本を読んでくれた、一緒に遊んでくれた。

 優しい兄さん。
 なんでもできる兄さん。
 それが虚像だと気付くのに、しばらくかかった。

 兄さんは豪快にワインを飲む。
 右手に預けたグラスを緩慢に弄びつつ、秀麗な貌にそぐわぬ下劣な笑みを浮かべる。
 「会社はどうだ。慣れたか。ちゃんと猫かぶってるか?まわりの連中は知らないんだろ、お前の正体」
 「……言う必要感じませんから」
 「レベルの低い連中に合わせてやるのは大変じゃないか?同情するよ」
 職場の人間には出自を話してない。
 ぼくの生い立ちは秘密だ。ばれたら会社にいられなくなる。
 兄さんは面白そうにほくそえみ、唇を噛んで俯くぼくをじろじろ眺める。
 粘着で不愉快な視線にさらされ、頬の温度が上昇する。
 「社会勉強か?」
 意外な台詞に顔を上げる。
 正面、グラスを回しながら兄さんがにこやかに口を開く。
 「一・二年勤めてやめるつもりなら構わない、大目に見てやる。若いうちは使われる側の気持ちになってみるのもいい。俺はごめんだけど」
 「兄さんらしいですね」
 「くだらないじゃないか」
 「銀の匙を咥えて生まれてきた人にはわからないでしょうけど」
 「俺がしゃぶった匙にはたっぷりと蜜がのっていた」
 「……今の会社をやめるつもりはありません」
 きっぱり断言し、挑むように兄さんの目を見据える。緊張の一瞬。
 「今の職場は居心地良くて気に入ってるんです。皆いい人ばかりだし、仕事にもやり甲斐を感じる。できるものならずっと勤めていたい……自分がどこまで出来るか試したいんです」
 「ご高説どうも。青くさいね」
 ふざけて拍手のまねをする。
 わざとらしく手を叩くやふと笑みを消し、挑発的な眼光で指摘する。
 「たかが営業だろ?そんなにこだわる仕事とは思えないな。意地を張らずに帰ってこい、可愛い弟のために最高のポストを用意して待ってるこっちの身になれ、下にしめしがつかない。いつまで椅子を空けとくつもりだ?」
 「営業は奥が深いんです。まだまだ学びたい事もあるし」
 仕事を馬鹿にされた腹立たしさと軽んじられた怒りとで声が尖る。
 だけど兄さんは、ぼくの態度を虚勢だと決めつけて真剣に取り合おうとしない。
 ナイフの腹でグラスのふちを叩き、悪戯っぽくぼくをねめつける。
 「いつになったら俺の匙をしゃぶってくれる?」
 「死んでもごめんです」
 この人の庇護は受けたくない。
 要求される見返りが大きすぎる、もう自分の人生を犠牲にしたくない。
 椅子にふんぞりかえってワインを一口嚥下、傷心のため息を吐く。
 「大学出たら帰ってくるんじゃなかったのか」
 「そんなこと一言も言った覚えありませんが」
 「勝手に就職決めちまうんだもんな。薄情なやつだ」
 「そっちこそ、成人したら籍を抜いてくれるって……父さんに話を通してくれるって」
 「色々めんどくさいんだよ、法律関係は」
 「嘘つきですね」
 「知ってるかバンリ。信用は金で買える、でも血じゃ買えない。つけくわえるなら、俺は俺の物を手放す気がない。やなこった。とんでもない。だって俺の物じゃん」
 「正当化するつもりですか」
 「誠意が伝わらなくて哀しいよ。お前のためを思って言ってるのに」 
 弟の意固地さを嘆く、物分りよい兄の演技。
 唇を噛む。
 ボーイが前菜を持ってくる。
 盆を上げて大皿の前菜をしずしずと取り分け、お辞儀をして去っていく。
 「!!―あっ、」
 来た。
 「どうなさいました?お加減でも悪いのでは」
 「……なんでもありません、気にしないでください……」
 「味つけがお気に召さなかったのでは」
 「違います、本当に……美味しいです……」
 疑わしげなボーイを追い払う。
 味なんかろくにわからない、せっかくの本格フランス料理を味わう余裕もない。
 下半身に甘美な痺れが広がる、電車内で挿入されたローターが唸る、電車を降り駅前に停められた車に乗りこみホテルに来るまで来てからもずっとローターは入りっぱなし、ランダムで動き続けて一瞬たりとも気がぬけない。
 正面の兄さんが意地悪くにやつき、ポケットに手を忍ばせ、リモコンを操作する。
 ボーイが給仕にやってきたのを見計らって突然振動を強くされ、沸々とこみ上げる快感を堪えるあまり、不自然な前傾を余儀なくされる。
 膝をしきりに擦り合わせびくつく、傍らに立つボーイが当惑顔でぼくを見る、視線を感じ横顔が火照る、その間もローターは止まらず前立腺を揺すりたてる、音が聞こえないか漏れないか不安が苛む、視姦の恥辱で全身が燃え立つ、膝にぎりぎりと指が食いこむ痛みで自我を保つ。
 「遠慮せず食え、バンリ。俺のおごりだ。気に入らないなら取り替えるけど?」
 「……いただきます」
 すべてを知った上で兄さんは愉快げに促す。
 逆らえるわけがない。
 フォークで刺した前菜を口に運び、咀嚼し、嚥下。
 砂を噛むように味けない。
 異物が喉を通っていく感覚がひどく不快で、もとからない食欲がさらに減退する。
 兄さんの監視とボーイの傍観のもと、努めて平静を装い、冷静な演技をし、極端に緩慢な動作で前菜を切り分ける。
 「……っ…………ふ、」
 なんでもないふりをしろ、平静を装え、全力で。
 動揺を表に出すな、悟られるな、全力でごまかせ。
 ボーイが首を傾げる。
 上品な笑い声と話し声、空疎なざわめきが華やかにライトアップされた店内を満たす。
 盛装した男女が豪勢な料理に舌鼓を打つレストランで、ぼくはひどく浮いている。
 円卓を挟み向き合う兄さんが、唇についたソースを親指で拭う。
 「行儀悪い。スーツに汁がとんでる。もうちょっとキレイに食べられないのか?」 
 相変わらず子供だなとからかう兄さんに、ボーイがそつなく相槌を打つ。
 淡白な舌平目のソテーにフォークを突き刺しソースを絡め、口に運ぶ。
 食卓にならぶ料理は本当に美味で、盛りつけも美しく目を楽しませ食欲をそそる。
 悪趣味な玩具が今も体内に残っていなければ、こうして座ってる間中前立腺に刺激を送りこんでこなければ、お世辞じゃなくて心から賛辞の送りたい。
 こんな状態で料理を味わえというほうが無茶だ、食事を楽しむなんて不可能だ。
 不満は顔に出さず、できるだけソースをはねちらかさぬよう気を配り、フォークとナイフを機械的に行き来させる。
 「は………んく」
 嚥下に伴う喉の動きだけで力を使い果たす。
 滑らかとは到底いえぬナイフさばき。
 フォークがかちゃかちゃ小刻みに皿とふれあう。
 唇が脂とソースでねとつく。
 咀嚼と嚥下を繰り返しながら、どうかそれ以上よらないでくれと何も知らないボーイに願う。
 前菜の皿を半分ほど食べ終えた時、今までと比較にならない衝撃が襲う。
 「!!-っひ、」
 ナイフとフォークを落とす。
 狂ったように前立腺を揺すりたてるローター、強烈な振動が尾てい骨を痺れさせ全身に波紋を広げる、たまらず円卓に突っ伏す、テーブルクロスを握り締め掻き毟って声を殺す、皺くちゃのクロスに顔を埋める、膝が笑う、がくがくと震える、背筋を正そうと精一杯努力する、何回も深呼吸しどうにか上体を起こすのに成功したそばから笑い声が爆ぜる。
 「お行儀悪いぞ、バンリ。どうしたんだ」
 ボーイが即座にナイフとフォークを拾おうとするのを兄さんが優雅に制す。
 「結構。弟に拾わせます」 
 「え?」
 「うちの躾なのでお気になさらず。自分が落としたものは自分で拾うのが常識でしょう。なんでも人がやってくれると甘えて癖になりますから」
 よく言う、自分の事じゃないか。
 自分は身のまわりのことすべて他人にさせてるくせに。性欲処理まで。
 成人済みの男に対し平然と放たれた「躾」「甘え」の単語に、さすがのボーイも引く。
 戸惑うボーイを片手でいなし、わざと怖い顔でクロスに突っ伏すぼくへと向き直る。
 「拾え」
 腹が熱い、どろどろに溶けていく、ぐちゃぐちゃのどろどろにかきまぜられてわけわからなくなる。
 二回生唾を飲み、表情をださぬよう用心し、従順な返事を返す。
 「………はい」
 観念し、慎重に席から滑り落ちる。
 最初は膝から、ついで手のひらを這わせる。
 「くっ………」
 四つんばいになったせいで腸内の異物がずるりとすべり、それだけで達してしまいそうになる。
 スーツ姿で這い蹲り、床に手を這わせ、落とし物をさがす。
 這いずるたびこまめに強弱を調節されるローターがずれ動き窄まりが収縮、内から炙られるもどかしさが苛む。
 寄せては返す波のように忍び笑いが沸き立つ。
 炭酸の泡の如く弾けるざわめきが遠のく。
 レストランに集った人々はぼくの体内のローターの存在など知らない、悪趣味なおもちゃをはめ込まれて跪かされてるなんて知らない。
 晒し者、見世物、食事の合間の余興。
 ちらりと上目でうかがえば兄さんは洗練されたナイフさばきでソテーを切り分け口に運びながら飼い犬の芸を眺めるように弟の醜態を見下ろす、時折ワインで口直し給仕に顎をしゃくり空き皿を下げさせる。
 「うくっ……」
 膝に自重がかかる、今にも挫けそうな腕を懸命に支える、毛穴から沸々と脂汗が滲む。
 下腹が熱い、前がきつい、もどかしい、ローターが唸る、弱く―強く―弱く、振動が不規則に切り替わる、めちゃくちゃに攪拌され思考が朦朧と霞んでいく。
 唇を噛み声を殺す、喘ぎ声なんて漏らしたら聞かれたら生きてけない、これ以上を恥をかくのはごめんだ、兄さんが見てる、人前でイきたくない、先輩だって久住さんだって頑張ったんだ、ぼくにもできる、へこたれてどうする。
 さっさと拾って席に戻ろう、早く食事をすまそう。
 フォークはテーブルの下にもぐりこんでる。
 テーブルクロスのカーテンをかきわけ、下に頭を突っ込む。
 あった。
 安堵の息を吐く。
 これで救われる、許してもらえる、やっと。
 フォークとナイフは向こう側、兄さんの足元に転がってる。早くとって、拾って……
 ナイフを掴むと同時に、激痛。
 「痛あっぐ!」
 黒い光沢の革靴が、手の甲をおもいっきり踏みにじる。
 兄さんの靴。
 兄さんは引かない、ひっこめない、クロスの下で何が起こってるか周囲には見えないボーイにも客にも見えない兄さんはそれをいいことにぼくの手をぎりぎり踏みにじる。
 「どうした?早く拾って席にもどれ、料理が冷めちまう」
 親切ごかして忠告するも、足は相変わらず手を踏み付けたまま。
 ナイフを強く強く握り締める握りこむ、激痛に耐える、ローターの振動がまた強く―最大に―
 「兄さんっ……………」
 自由な方の手で兄さんの膝を掴んで縋る、プライドを捨てしがみ付く、懇願する。
 「腹が減ったんだ、俺は」
 「お願いです、足……手から、どかし……」
 固い靴裏を容赦なく手の甲にねじりこむ、皮膚が引き攣る痛みに顔が歪む、濁った呻きがこぼれる。
 いっそ、刺してしまおう。
 物騒な考えが朦朧とした頭にしのびこむ。殺意が芽生える。
 手の震えが伝わりナイフの切っ先がかちゃかちゃ床を叩く、下半身が熱い、思考がまともに働かない、前立腺を揺すりたてるローターの動きが全身に広がって火照って火照ってしょうがない、今すぐ下着をおろして前をしごきたい、イきたいだしたい射精したい、もう限界だ、だれか、兄さん……
 「兄さん、お願いします、もう……」
 兄さんが鼻白み、ぼくの手に乗せた足をどかす。
 「!!!ひあっ、ぅ」
 汚れた靴裏で、勃起した股間を軽く押す。
 肩がテーブルの脚にぶつかり、ごとんと鈍い音がする。
 卓上のワインが倒れ、白い液体がみるみるクロスに染みていく。
 椅子に腰掛けた兄さんの膝に身を投げ出したぼくの頭上にも、大量に降り注ぐ。
 髪の先からぼたぼた雫が滴る、顔が濡れて気持ち悪い、兄さんがポケットから手を抜く、下半身の震えが少しだけ弱まってまた射精の瞬間が遠のく。
 「大丈夫ですか!?」
 「仕方ない。飯どころじゃないな、これじゃ」
 フォークとナイフを食べかけの皿に投げ出し、嘆かわしげに席を立つ。
 無理矢理ぼくの腕を引っ張り立ち上がらせるや、ワインに濡れそぼった髪に指をいれかきまわす。
 「後始末お願いします」
 「あの、大丈夫ですか?弟さん、顔が赤いようですが熱でもあるんじゃ……」
 「大した事ありません。上の部屋で休めばじき治ります。……どうも酔ったみたいだ。アルコール弱いんですよ、むかしから」
 当店では受け取れない規則ですので、と恐縮するボーイにチップを渡し、強引にぼくをひきずってレストランをでる。
 「ぅあ、あ、ぅっく、」
 大股に歩く兄さんにぐいと腕を引かれ足が縺れる、もたつく、けっつまずく。
 踵を突くごと下半身をずくんと突き上げる衝撃に翻弄され、息が切れる。
 客の不審げなまなざしに追い立てられ、逃げるようにレストランを出て、多くの宿泊客で賑わう広壮なエントランスホールを抜けてエレベーターにのりこむ。
 ワインを吸ったシャツがへばりつき体がべとつく。
 ドアが閉まり、エレベーターが一揺れしたのち円滑に上昇を開始。
 「兄さん、おねがいします……っ、も、くるし……これ、とってください、はずしくてください」
 壁に背中を預けるようにしてなんとか姿勢を保ち、兄さんの手を自分の股間へと導く。
 車の中でコックリングを嵌められた。
 後ろをさんざんローターで嬲られながら、前は金属のリングで塞き止められイけない苦しみは尋常じゃない。
 真実、発狂しそうなほどの苦しみ。
 「行儀が悪いぞバンリ。エレベーターの中でイきたいのか?後始末する人間の事も考えろ」
 「痛ッ……もうもたない、早く……」
 「俺の手が欲しいのか。夢中で股間にこすりつけて、腰ふって、足踏みして……」 
 兄さんの手をとり、律動を刻んで股間に押しつける。
 「どうしてほしいか言えよ」
 「はずして、とって……ローター、リングも……立ってるの、辛い、んです、膝が……」
 「下だけ脱いでオナニーするか。人がのってきたらどうする?フロントに通報されるぞ。弟が変質者として突き出されたら哀しいな」
 わかっていてとぼける、しらをきる、じらす。
 耐え切れず腰を揺する、兄さんの手を借りて火照りをもてあました股間を慰撫する、浅ましく腰を揺すり他人の手で自慰にふけるぼくを兄さんは勝ち誇って見下す、死ぬほどみじめで泣きたくなる。
 「もう少しだから。部屋に着くまで我慢しろ」
 ドアが開く。
 兄さんに引きずられ廊下に出る、歩く、ドアの横に長身痩躯の黒背広が控える。
 「有里さま。万里さま」
 「鍵を貸せ、椎名。終わったら呼ぶから、いいって言うまで入るなよ」
 「畏まりました」
 黒服の男の名は椎名。兄さんの有能な秘書で忠実な下僕。ぼくとも顔見知りだ。
 「椎名さん………前も言ったけど、ぼくはさんか呼び捨てでいいですって」
 「いえ、そういうわけにはいきません。けじめはつけないと」
 椎名が申し訳なさそうな顔をする。
 「お久しぶりです。お元気そう……には見えないですね」
 白々しい。全部計画通りのくせに。
 「監視してたんですね……気付かなかった。いつからですか。家を出て、一人暮らし始めてからずっと?」
 「一年ほど前から。有里さまのお言いつけで」
 椎名。小さい頃はよく遊んでもらった。
 兄とは同い年の友達同士だった。
 主従関係に変わったのはふたりが中学に上がってから。
 二人の間に何があったかは知らない。
 椎名は薄く灰色がかった眼鏡をかけているが、視力は悪くない。
 あの眼鏡は右の眉尻の傷を隠すためだ。
 兄さんがつけた、傷。
 「立派な犬ですね」
 薄く笑うぼくに、椎名は沈痛な面持ちを守る。同情されるのが一番癪だ。
 兄さんは椎名から受け取ったキーでドアを開錠する。
 「入れ」
 奴隷の足取りで中へ入る。
 最後に振り向けば、閉まりゆくドアのむこうで椎名が慇懃に頭を下げていた。
 ドアが閉じる音が無慈悲に響く。
 最上階のスイートルーム。
 一面強化ガラス張りの窓からは、陳腐な比喩だけど、ダイヤモンドを砕いて散りばめたような夜景が一望できる。
 窓の外には都心の高層ビル群、近代建築の粋を凝らした絢爛な摩天楼。
 床に敷かれた毛足の長い絨毯が靴音を吸いこむ。
 一晩借りるだけで会社員の安月給なんかたちまち吹っ飛びそうな、無駄に豪華で広い部屋。
 「見栄っ張りですね、相変わらず。こんな部屋とらなくたっていいのに」
 「雰囲気だしたくてさ」
 ワインレッドのソファーに身を投げ出し足を組む。
 のろのろと進み、前に来る。立ち止まる。立ち尽くす。
 「お前のせいでせっかくの夕食が台無しだ。まだぜんぜん飲み足りないのに……どう責任とってくれる?」
 「兄さんこそ、クリーニング代請求しますよ」
 「強がり言うなよ。……欲しいんだろ。どうすればいいかわかるよな」
 意地悪く笑う。組んだ足の先がぶらつく。
 今すぐズボンをおろしたい下着を脱ぎたい悪趣味なリングを外しておもいきりしごきたい射精したい、だけどそれは許せない、許可なくそんなことをしたら恐ろしい罰が待つ。
 ぼくの葛藤と苦悩さえ楽しむように、兄さんが腕をのばし、傍らのテーブルからルームサービルのワインをひったくる。
 ワインオープナーをコルク栓にさしこんで開封後、華奢なグラスをとって中身を注ぐ。
 「さっきは白、今度は赤。口直しといくか」
 ワインのふちをこえてあふれそうな赤い液体をじっと見つめる。
 ワインを飲む兄さんをじっと見詰め、深くうなだれて、口を開く。
 「シャワー浴びさせてください」
 「ご奉仕させてくださいだろ」
 前髪の先からぽたぽた雫が滴る。
 スーツがしみになるなと、妙に冷めた頭の片隅で考える。
 兄さんがテーブルに手をのばし、ワインの付け合せとして銀のアンティーク小皿に盛られたジャムを指ですくい、口にはこぶ。
 人さし指にねっとり舌を絡める。
 ワインのつまみにジャムを舐めつつ、悪戯を思いついたように無邪気に笑う。
 「屈め」
 言われた通りに、する。跪く。
 ジャムを塗した人さし指が唇の上下をしつこくなぞり、口をこじ開けもぐりこんでくる。
 「どうだ、味は?甘いもの好きだろう、お前。ちゃんと覚えてるんだ、弟の好み」
 「……胸焼けします……」
 「舌を使え」
 命令に従う。不器用に、おずおずと、指先をなめる。それで許してくれるはずがない。
 「かはっ、」
 喉の奥まで指を突っ込まれ激しくえずく。ジャムをまぶした指が口の中をさまよう、かきまぜる、這い回る。歯の裏側舌の裏側頬の裏側、口腔の粘膜をすみずみまで犯されぞくぞくする。甘ったるく濃厚なジャムの味が広がり胸が焼け付く。
 兄さんの指を夢中で舐める、丁寧にしゃぶる、しゃぶり尽くす。さぼらずに、ごまかさずに、一心不乱になめる。唾液をこねる音も卑猥に泡立て、もっともっととお代わりをねだれば、小皿からすくいとったジャムが舌の上に落とされ、濃縮された甘みが広がる。
 「あふ、は、はふ」
 「思い出したか、俺の味」
 可愛いバンリと、耳元で囁く。
 後ろの窄まりで唸り動き続けるローターが直腸を攪拌し前立腺に刺激をおくりこむ、前はリングで締め付けられて射精させてもらえず高めるだけ高められた火照りの捌け口をなくして切なさが募る、イきたい、イかせてほしい、その一心で無意識に兄のベルトを外す。
 ズボンごと下着をおろす。兄さんは時折思い出したように小皿からジャムをすくいぼくの口元に持ってくる、それを舌で舐めとる、傍ら手を動かし勃起したペニスをまさぐる、根元を掴んでしごく、最初は手で。次第に感覚を取り戻す、思い出す。
 イきたい、それしか考えられない、自分を慰めたい、どうにもならない火照りを冷ましたい。
 兄さんが足でぼくの股間を気まぐれに揉む、刺激する、マッサージする、リングで縛られた状態での刺激は拷問でしかない、激痛しか生まない、だけどそれが裏返って被虐的な快感になる。
 ジャムで甘ったるくべとつく口を窄め、ペニスを含む。
 夢中でペニスをしゃぶる、フェラチオする、奉仕する、兄さんの股間に顔を埋め手と口と舌で技巧をこらし快感を高め射精に導く、先端を含み転がす、裏筋をなであげる、陰嚢を手で包み揉む、時々前髪からワインの雫がたれて目に入る、ペニスの表面で弾ける。
 頭の中で飛び回る機械の羽音、窄まりの奥深く埋め込まれたローターが発する唸りがドロドロに体を煮溶かし汗と吸いきれない先走りとで下着がぐっしょり湿る。
 ペニスを含む口の端にジャムを付けた指がもぐりこむ、頬の内側にジャムを塗る、べたべた塗りたくる。
 「兄さ、イきた、い、もう無理……手使うの、許してください、せめてローターとめて、ぐちゃぐちゃで……も、やあ」
 先輩もこんな気持ちだったんだろうか、こんなに苦しんだんだろうか、酷いことをした、後悔したって反省したって謝罪したって手遅れだ、だけどぼくはああいうやりかたしか知らない、教えてもらってない、快楽を教え込んで心を縛る方法しか学んでない。
 絨毯の上で腹を庇い身を丸める、びくびくと痙攣が襲う、びくつきひくつく、イきたいのにイけず極限の苦痛を舐める。
 兄さんが傍らのテーブルから何かを取り上げる。大判の封筒。
 中にしまってあった束をとりだし、腕の一振りで天井高くばらまく。
 それは、写真。
 被写体はすべて同じ人。共通の人物。
 無数の写真が空を舞う、腹を抱え突っ伏すぼくのまわりにばらけて降り注ぐ、なにげなく目で追って驚愕。
 「誰だ、こいつ」
 ソファーにふんぞりかえった兄さんが、抑制の利いた口調と穏やかな顔つきで問う。
 何十枚、何百枚はあろうかという写真には全て先輩が映っていた。
 どれも盗み撮りしたものらしく、被写体は自分を狙うカメラに気付いてない。
 駅で電車を待つところを撮ったもの、道を歩きながら携帯をチラ見するところを撮ったもの、近所のコンビニにぶらり私服で出かけるところを撮ったもの、フィギュア付き缶コーヒーを真剣に選ぶところ、立ち食いそばを啜るところ……
 全部、全部、先輩だ。久住さんだ。
 何枚かは僕と一緒だった、ぼくも映っていた、隣に寄り添っていた。
 先輩は決まって迷惑そうな顔でぼくは嬉しそうに微笑んで、
 「ずいぶん仲良さそうだけど」
 「ただの同僚、先輩です。なんでもありません」
 「一緒に行動してる」
 「外回りで組むこと多くて、ぼくまだ一年足らずの新人だしお目付け役で、しかたなく」
 「名前は」
 「……関係ありません、兄さんに……」
 ローターが最大に、腹の奥で衝撃が炸裂、言いかけた台詞が喉に詰まって嗚咽に濁りゆく。
 絨毯でのたうつぼくを冷ややかに見つめ、兄さんがすらすらそらんじる。
 「久住宏澄、二十五歳。N大卒。出身茨城、A型、九月二十一日生。中学は将棋部、高校も同じく。マイナー好みか?現在吉祥寺の独身者用マンション美晴コーポで一人暮らし、彼女に振られて傷心中……趣味は読書とレンタルDVD鑑賞と食玩集め。こんな男のどこがいいんだ?」
 絶望で目の前が暮れていく。
 ぼくが必死で隠し通そうとしたことを、すでに兄さんは知っていた。
 ぼくも知らない情報を完全に把握していた。
 絨毯の上に舞い落ちた写真を一枚拾い上げ、退屈そうにひらつかせ、とどめに先輩の顔を弾く。
 「お前には釣りあわない。ただの会社員じゃないか、スーツも顔も安っぽい」
 「ちがう、そんなんじゃ……先輩、久住さんは違う、兄さんが思ってるようなのじゃ……ほんとにただの職場の同僚で……」
 動揺に縺れる舌で弁解する、ごまかす、嘘を吐く。
 兄さんがぼくの前に写真を投げ出す。
 「じゃあ破け」
 「え?」
 「どうでもいいヤツなら破けるだろう」
 目を瞑る。開く。手のひらがじっとり汗ばむ。
 兄さんは面白がってこっちを観察してる、ぼくの行動をさぐっている。
 先輩の写真を破く。できるはずだ。簡単だ。
 震える手を写真にのばし、やっとの思いで引き寄せる。
 「どうした、早く。できないのか」
 兄さんの前に跪き、写真の真ん中あたりに両手を添える。
 乱れた呼吸を整えて、生唾を飲む。
 写真の先輩は笑ってる。
 珍しい、ぼくにはめったに見せてくれない笑顔。ずっとずっと、ぼくが見たかった笑顔。
 受付嬢と雑談してるところを撮ったもので、先輩は自分を付けねらうカメラの存在も知らず、柔和な笑みを見せている。
 「早く」
 一気に写真を破く。
 先輩の笑顔がまっぷたつに裂ける。
 「はあっ、はっ、は……」
 仕方ない、だってこうしないと騙せない、納得してくれない。
 「もっと」
 「もういいじゃないですか、意味ない、こんなことしたって……」
 「もっとだ。ラクになりたいんだろ、バンリ。それ、抜いてほしいんだろ」
 唇を噛む。片っ端から写真を拾って破く、次第に心が麻痺していく、破きたくないと叫ぶ心を封じてひたすら手を動かす、苦しい、ラクになりたい、自分の手で先輩を破く、引き裂く、蹂躙する、一枚引き裂くごとに自分の心臓を破く気がした、ぼくの汗とワインの雫とが表面におちて写真がふやける、唇を噛む、噛み縛る、破く、ごめんなさい、しかたない、こうでもしないと兄さんは邪推する、ぼくが必死になって隠してる本当の気持ちを見抜く、好きだってバレたら……
 「言うとおりにしました」
 無残に引き裂かれた写真の残骸が絨毯のあちこちに散らばる。
 自分の手で切り裂いた、ぼくの心臓の残骸が散らばる。
 絨毯の真ん中に虚脱してへたりこむ。兄さんがソファーを立ってやってくる、ぼくの背広を脱がす、ワインを吸って皮膚を透かすシャツをじろじろ見る。
 「乳首勃ってる。感じすぎだよ、お前」 
 腕を掴み立たせる。
 兄さんが歩く、窓辺にひきずられる、都会のきらびやかな夜景が視界一杯に広がる。
 衛星と交信するように高層ビルのネオンが瞬く。
 はるか眼下に敷かれた環状道路をテールランプの残光曳いて自動車の列が流れる。
 「手をつけ」
 「いやです、ここは……窓、外から見えたらどうするんですか」
 「この距離と高さじゃわからないさ。向かいのビルからならひょっとしたら見えるかもしれないけど」
 「ベッドかソファーで、あう!」
 両腕を後ろで一本にまとめ捻られる。
 片手でぼくの腕を拘束し、もう一方の手でベルトをずらしズボンごと下着をおろす。
 外気に晒された下半身がひやりとする。
 リングで戒められたペニスが勢いよく跳ね上がり、鈴口に透明な先走りが滲む。
 「兄さ、」
 「いやなら椎名を呼ぶ。椎名の前で犯されるのとここで犯されるのどっちがいい、お前の好きなほうでしてやる」
 ずるい。反則だ。そんなの選べない。
 「あう、は、や……うあ、あうぐ、あっあああっあ!」 
 兄さんの手が双丘を直接掴んでねっとり淫猥に捏ね回す、円を描くように濃厚な愛撫に窄まりが収縮する、ローターのコードが垂れる孔に指を突っ込んでプラスチックの卵を中からゆっくり掻き出す。
 赤く勃起したペニスから大量の先走りがあふれて糸を引く、兄さんの指が中を抉るたび前も連動して震えわななく。
 窓ガラスに肩でもたれて息をする、熱い吐息でガラスが白く曇る、解き放たれた手を窓に付いて今にも崩れ落ちそうな体を辛うじて支える。
 「どっちがいい?椎名も仲間にいれてやるか、外で立ちっぱなしじゃかわいそうだし。あいつ今頃お預けくらって泣いてるぜ」
 「ちが、やめ、いいです、こっちで」
 「こっちで?なんだ?どうしてほしい?」
 「こっちで、犯してください……」
 「窓に手をついて立ちっぱなしで犯されたいのか、見られるかもしれないのに……自分がイくとこ、エロい顔、見せたいのか?露出狂め」
 「前、はずしてください、兄さ……きつ、イかせて」
 後ろから兄さんに抱かれる。兄さんはわざとじらす、すぐにローターを抜かず肛門の入り口付近をかき回す、掻き出したかとおもいきやまた深く突っ込むくりかえしでどんどん気が遠くなる。
 待ちかねた手が前にのびる、パチンと音がして根元のリングがはずれて落ちる、全身の血が尿道を駆け抜けるような熱い感覚
 「あああああああああっあああああああっああ!!」
 ぐっと力をこめローターを引き抜く、とろけきった粘膜を巻き込んで抜かれたローターに絶叫する、連動して失禁に似た熱い感覚が尿道を通り抜ける。
 窓ガラスに手を付き仰け反る、火照った額をもたせて戦慄く、足元に放り出されたローターに代わり熱く脈打つ肉が穿つ。
 「ひあっ、や、にさ、やっ、ぅく、も、きつ」
 「おかえりなさいまだ聞いてない」
 うなじを吐息の湿り気がなでる、兄さんの手が胸板をまさぐり存在を主張し始めた突起を緩急つけ抓る、窓ガラスにすがる、もたれる、ずりおちる、ローターでさんざんほぐされ感度が良くなった窄まりを容赦なく剛直が突き上げて口から涎と悲鳴が迸る。
 「言える、わけない、あなたに……顔も見たくなかった、帰ってこないでほしかった!!」
 頭ごと掴んで窓ガラスにごり押し、卑屈な前傾ポーズを強制される。
 その間も突き上げる動きはやまぬどころか激しさを増し、剛直が粘膜を練り上げて奥を突きまくる。
 「あいつとはもう関わるな。自分の立場を忘れるなよ、バンリ。お前は俺の愛玩物だろう?」
 「契約、期限、切れたのに……まだそんなこと、ぅあ、約束ちがう、自由にしてくれるって」
 「育ててやった恩を忘れるな」
 「あなたに育てられた覚えはない、千里の家には感謝してる、義母さんにも、義姉さんにも、でもあんたは別だ!!」
 快感さえ上回る憎悪が身の内に燃え広がり呪詛を吐く、きつく握りこんだ手で窓をぶつ、怒号の波動でびりびりと空気が震える。
 兄さんがぼくの腰を抱く、挿入の度合いが深まる、剛直が深々と中を抉りつま先が突っ張る。
 「………いいのか?壊しちゃうぞ」
 耳裏で囁かれた声は、ひどく酷薄で。 
 窓ガラスに映りこんだ兄さんを、慄然と見返す。細く刈り整えた眉、秀でた鼻梁、若社長よりもホストが似合う危険な色香匂い立つ容姿。
 「お前の大好きなセンパイ。久住さん、だっけ」
 「兄さん……何を」
 「俺のタイプじゃないけどさ。金さえ出せばなんでもやる連中が裏には沢山いるんだよ……」
 優しくぼくを抱擁する。お気に入りの人形でも抱くみたいな抱き方。うなじに接吻をおとし、抑揚なく続ける。
 「何年お前と付き合ってると思ってる?すぐわかったよ、写真のお前ときたらだらしなくにやけまくって……正直妬けた。俺が日本はなれてる間に勝手に好きな男作って、家を出て、ダメだろうそんなの。お前は一族の人間だ。親父だってお前に期待してた、お気に入りの息子に会社を継がせたかったのにさ」
 聞きたくない。
 「あいつとは別れろ。会社は辞めろ。家にもどってこい」
 「いやだ、」
 「そうか。それじゃあしかたない、お前の未練を全部絶つ。お前をこっち側に引き止める人も物も全部ぶち壊してやる」
 兄さんが笑う。狂気渦巻く笑み。欲望ぎらつく目。
 窓ガラスに映りこんだ顔はどこまでも端正でどこまでも狂っていて、ぼくはその虚像に向かい、弱々しく首を振る。
 「久住さんには手を出さないでください、先輩は関係ない、ほんと違う、ただの会社の同僚で、兄さんの勘違いなんです、あの人は違う、全然そうじゃない、普通に女の人が好きなんです、結婚考えて付き合ってた人もいた、兄さんが思ってるような関係じゃ……」
 「アイス買い込んでマンション行くような関係だろ?」
 「あれはお見舞いに、」 
 「袖口を握ってはなさなかった。……はは、懐かしいな。むかしむかしの、甘ったれのガキを思い出す。依存の相手乗り換えたのか?」
 見られていた。どこから?向かいのマンションの屋上?
 あの時近くに人はいなかった、でも見られていた、連絡が行った、兄さんは知ってる、ぼくの気持ちを見抜いてる。
 先輩の顔が脳裏に浮かぶ、像を結んでは弾けて消える、よく思い出せない、兄さんが激しく突き上げる、抽送、瞼の裏にちらつく残像は掴みかけたそばから散らされる。

 『千里』
 『まったくどうしようもねえなあ、お前。自分がされていやなこと人にすんな、常識だぞ』

 まだ先輩に好きになった理由話してない、ちゃんと向き合ってない、逃げて逃げて逃げ続けて本当の気持ち話してない
 窓ガラスにぶつかりあう、快楽でぐちゃぐちゃになった酷い顔が映りこむ、先輩の顔、ぼくに犯されてる時の顔がそれに重ねり溶け合って沸騰する。
 「ふあ、誤解なんです、先輩はちがう、あの人はすごくまっすぐな人なんです、ぼくみたいにずるくて汚い人間は毛嫌いしてる、先輩とはなんでもない、久住さんは関係ないんだからあの人に危害を加えたって意味ない、どうでもいい、傷付かない、他人がどうなろうが知らない、ちが……」
 先輩を好きになったきっかけ、理由、ちゃんとある。
 誰でもよかったなんて嘘だ、あの人じゃなきゃだめだった、譲れなかった。
 ガラスの表面と火照った肌が擦れ合う、尖りきった乳首をガラスが押し潰す、兄さんが笑う、息が上擦る、ぼくの嘘なんて全部お見通しとばかり含み笑って剥き出しの肩やうなじを啄ばみつつ腰を抉りこむ……
 「あっああああああっあああああっああああああっ!!」
 絶頂に達してしまう。
 窓ガラスに映る情景が急速に霞みゆく、兄さんの手の中で兄さんの手に導かれ精を放つ、下腹に白濁が粘つく。
 「バターの味だ。イけてる」
 指に絡んだ白濁を舌でねぶり、背後で兄さんが呟く。
 窓ガラスに額を預けてずりおちる。濡れ髪と濡れたシャツが気持ち悪い。
 ワインを吸ったシャツの不快さにも増して、たった今、行為中に耳に注ぎ込まれた言葉に打ちひしがれる。 
 「はあっ、はっ、は………」
 それだけは、どうかやめてくれと。
 言わなきゃ。
 起き上がろうとしてぐらつき、そのまま派手に転ぶ。
 転んだ体勢から肘を付いて上体だけ起こし、シャワーの身支度を始めた兄さんの足首に、震える手を伸ばす。
 「兄さん、待って……話、最後まで聞いてください。久住さんは」
 唇を唇で塞がれる。
 床を這いずるぼくの顎を掴み、むりやり上げさせ、兄さんが唇を吸う。
 生理的嫌悪に鳥肌が立つ。
 舌を絡めようとしてくるのを必死でふりほどき、胸を突きのけてあとじされば、ぼくの白濁を絡めた指を舐め、呟く。
 「久住ヒロズミね……お前がそんなに守りたがるヤツに興味が湧いた」
 そして兄さんは、笑ったのだ。
 この上なく邪悪に。唯我独尊に。窓ガラスと二重になって。
 「味見してやるよ」

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

リーマン×リーマン | コメント(-) | 20010419230352 | 編集
ブログ内検索
     © 2017 ロールシャッハテストB  Designed by 意地天
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。