ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

最近のトラックバック
ブロとも申請フォーム
スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

関連記事 [スポンサー広告]
スポンサー広告 | コメント(-) | ------------ | 編集
されどそれは受難の日々 中編

 腹の奥で機械が唸る。
 「う…………」
 体が熱い。
 仕事に身が入らねえ。
 奥に埋め込まれた玩具が意地悪く震えを発し、尻の表皮全体に微電流が通って甘く痺れる。
 「久住さんどうしたんですか?汗すごいですけど」
 「~暑がりなんだよ、俺は」
 「あ、そっか。今日あったかいですもんねえ、最高気温23度だっけ?すっかり春めいてきて……もうそろそろクールビズの季節っすもんね。背広だとちょっと暑いくらい……今冷房入ってんのかな?」
 どうでもいいが、同い年の同僚に敬語を使われるって激しく微妙だ。
 俺がいかに職場で敬遠されてるかわかってもらえたろう。
 同僚の軽口に上の空で答えつつ、間接が錆びたような拙い手つきでキーを打つ。
 今のところ俺の異変には誰も気付いてない、周囲の連中は仕事に集中してるか息抜きに同僚とだべってるか上司に説教されてる。
 オフィスは騒がしい。
 さまざまな音程の人声とパソコンの音とコピーの作動音に電話の呼び出し音がごっちゃに混じり合って、俺の体内から僅かに漏れる、くたばりぞこないの蚊の羽音みたいなローター音をかき消す。
 頭の上を飛び交う声を唇を噛みやり過ごす。
 声をかけてきた同僚を三白眼で睨み、苛立たしげに追い払う。
 「~いいから、無駄口叩いてる暇あったらとっとと仕事もどれよ!会議に出す資料できあがってんだろうな、また課長にどやされんぞ!?」
 「はーい、わかりましたー。ったく、カルシウム不足なんだから……」
 口の中で愚痴を呟き、反省の色ない足取りで自分の机へ引き返していく同僚を見送り、ワード画面開きっぱなしのパソコンに向き直る。 
 ばれてない?
 ……よかった。こっそり息を吐く。
 安堵でゆるみかけた顔が、振動が強くなるにつれまた強張る。
 「く、あいつ……」
 さっきから延延この繰り返し。いつ終わるともしれず続くお遊び。
 いい加減業を煮やし、椅子に掛けた姿勢から身をよじって千里の横顔を睨みつける。
 千里は女子社員がコピーしてきた書類の束を受け取りがてら、好感度満点の笑顔で雑談してる。
 いつでもどこでもだれにでも愛想をまくのを忘れない男だと感心。
 そつのない笑顔で女子社員をあしらいつつ、ちらりと意味深な流し目をくれる。
 「千里くん、それでこっちの資料なんだけど」
 「会議で使うからもう十部余計にコピーお願いします。経理の斉藤さんも見たいっておっしゃってて……」
 クソ忌々しいことに千里は職場のほぼすべての未婚女子社員から少なからぬ好感をもたれている。
 女子社員にそれだけ人気がありゃモテない同僚のやっかみで孤立しそうなものなのに、話の分かる相槌と気配り上手な性格のせいで、男からも可愛がられている。
 まったく忌々しい、存在自体が目障りだ、癇にさわってしょうがねえ。
 なんで俺が好きなのか理解できない。
 千里のルックスだったらわざわざ俺なんか脅しておもちゃにしなくても相手に不自由しないだろうに……。
 受難の二字が脳裏にちらつく。
 悪魔に魅入られた心境に近い。
 力一杯断言するが、千里の性格はくさりきってる。
 実際ここに仕事中も束縛される哀れな犠牲者が一人。
 千里と目が合うやプイとそっぽをむく。
 あいつ、完璧楽しんでやがる。
 俺が沸々とこみ上げてくる色々なもんを必死に我慢する様を、遠目に観察してうっそりほくそえんでやがる。
 今すぐ椅子を蹴飛ばして、背広の胸掴んで殴り倒したい。それができたらどんなにすかっとするか。
 でもダメだ。千里に逆らえない。
 一ヶ月間、あの手この手で体に叩き込まれた。千里いわく「調教」だ。
 内容は……言えねえ。察してくれ。
 ぎたぎたにされたとはいえ、俺にもプライドと羞恥心があるのだ。
 千里は俺の写メを掴んでる。俺の首にがっちり手をかけてるも同然、こっちはいつ絞め殺されるかわからずひやひやもんだ。
 行為を拒むか渋るかしたら写メをばらまくと脅された。
 もちろんそんなことしたら千里だってただじゃすまないだろうが、あいつならやりかねない。
 時々わからなくなる。
 あの時、晴れ渡った青空の下、気持ちよい風に吹かれながら千里が言った台詞は嘘なんじゃねえかって。

 『先輩がずっと好きでした』
 口からでまかせ。
 『だから、安子さんから奪いたかった』
 俺のことを尊敬してるとか、かっこいいとか憧れてるとか、全部あとづけのこじつけで。

 だって普通、好きなヤツにこんな事するか?
 小学生ならまだしも、いい年した大人が、好きなヤツをいじめて楽しむなんてアリか?

 ……ダメだ、だいぶヤキが回ってる。ぐるぐるぐるぐる思考が靄がかって迷走する。
 考えたって始まらない、今は仕事に集中しろ。デキる男の外面を保て。
 俺にもプライドがある。職場で恥をさらしてたまるか、千里が意地悪く観察してんなら尚更だ。 
 やや前のめりになり、そろそろ手を動かしキーを叩く。
 ローターはランダムに設定されていて、強くなったり弱くなったりを不規則にくりかえす。
 一定の振動に設定されていれば慣れてもくるし忘れたふりもできるんだろうが、千里はそれを見越した上で、「退屈しちゃうといけないから」とランダムを選んだ。
 机の下で膝をもぞつかせ擦り合わせる。
 できるだけ体を動かさず、余計な刺激を与えないよう細心の注意を払う。
 ともすれば息が上擦り、耳まで赤く染まる。
 尻に物を挟んだまま椅子に座ると、すげえ変な感じだ。
 ローターは奥、前立腺のすぐ近くまで突っ込まれていて、クッションで包んだ椅子の表面がズボンの上から窄まりを圧迫すると、さんざん異物でかき回されて充血しきった入り口がきゅっと収縮する。 
 「あいつ……ぜってー殺す……」
 どす黒い憤りに駆られて呪詛を吐く。
 シャツと肌が擦れ合う感触さえ妙に意識してしまう。下着がきつい。前が張り詰めている。
 ギッ、と椅子が軋む。
 下半身に体重をかけるとより窄まりが圧迫されて、中の振動を一層感じてしまう仕組みだ。かといって、体重をかけないよう浅く腰を浮かした不自由な体勢を保つのはキツイ。これがホントの拷問椅子……ぜんっぜん笑えねえ。
 まわりの目が痛い。ばれねーように、それだけを一心に念じる。同僚のだれひとりとして、俺がこんなもん尻に突っ込まれてるなんて思わないだろう。
 ばれたら?耳がよいヤツがいたら?隣の机のヤツが「なんだろうこの音」と言い出さないかとはらはらする。
 「んっく………ふ」
 慎重にキーを叩く。
 いつもしてる事をなぞるだけなのに、物凄い疲労がずっしりのしかかる。
 口、塞ぎてえ。
 だめだ、あやしまれる、声を出さないように我慢しろ。
 唇を噛み、噛み締めた歯の間から暑く湿った吐息だけを逃がす。
 腰の中心から響く振動がむずむずと性感をこねて脊髄を溶かす。
 千里に強姦される前は、後ろをかきまぜられて反応するなんて考えられなかった。
 後ろと前は繋がっている。
 連動し相乗する快感。
 ちょっとでも気を抜けば無意識に前に手が伸びそうになり、散りかけた理性をかき集めてそれを制す。
 服と肌が擦れ合う感触さえもどかしい。
 同僚の視線に過敏になる。
 俺がこんな悪趣味なもん突っ込まれてパソコンやってるなんて職場の誰も想像しねえ。酷く場違いに孤立した感じがする。
 頭のてっぺんから爪先まで恥辱で燃え立つ。
 だれかが後ろを通るたび、近くの席のヤツが立つたび、背中がびくりと緊張する。
 「やだー千里くん、超ウケるんだけど今の!」
 千里の名に過剰反応、キーに手を添えデータを打ち込みつつぎくしゃく振り向く。
 ……野郎、まだおしゃべり中かよ。人に放置プレイかましといて。
 いい加減仕事にもどれと体調が万全なら喝を飛ばしたい。
 会社は社交場じゃねーんだぞ?いつまでたっても学生気分がぬけね……
 「お茶どうぞ」
 すっ、と机上にのびた手に促され顔を上げる。傍らに女子社員が立っていた。茶を淹れてきてくれたらしい。
 「サンキュ」 
 自慢じゃないが、俺は職場の女子に敬遠されてる。気難しい眉間の皺と三白眼がいけないそうだ。
 俺に茶をもってきてくれた女子も心なしかちょっとびくびくしてる。たしか千里と同期の新人だ。
 反射的に身を引き距離をとる。
 千里は音が漏れる心配ないと豪語したが、変態の言い分が信用できるか。
 俺の分まで茶を淹れてくれた親切は嬉しいが、正直今のこの状態ではありがた迷惑でしかない。早く追っ払いてえ。
 だからって女の子をびびらせるのも大人げない、「久住さんてば大人げない」「いくら安子さんにフられたからって女全員目の敵にしなくてもいいのに……」と音速で噂が流れそうだ。
 ガチガチに固まった顔の筋肉を酷使し、強張った笑みを浮かべる。
 新人の女子は俺の反応をびくびく上目で窺ってる。
 ……別に舌火傷したからってひっくり返したりしねーのに。そんなにおっかねーか、俺。
 「あー……自分で淹れるから気ィ遣わなくてい」
 言いながら手を出し、俺専用のマグカップを受け取ろうとした、瞬間。
 今までの比じゃねえ情け容赦ない振動が襲う。
 「-----------------っあ!?」 
 たまらず机に突っ伏す。
 キーにのっけた手がすべり、連続で誤字を打ちこむ。
 視界の端、千里が相変わらずおしゃべりを続けながら片手を背広のポケットに突っ込む。
 スイッチを操作する、「最大」に。
 目の端で俺の様子をうかがう。
 野郎、笑ってやがる。
 こっちはそれどころじゃねえ。
 尻の奥のローターが狂ったように動いて前立腺を揺すりたてる、下腹全体がじんわり熱を持って痺れる、ズボンの前が突っ張って苦しい。
 キャスターが床をひっかく、腰の奥でローターが唸り練り上げられた粘膜が収縮する、鼻梁に眼鏡がずり落ち液晶の字がゆがむ。
 「っ………今手がはなせねーから、そこにおいといてくれ」
 震える指で指示をだす。
 新人は目を丸くするも、机の隅に大人しくマグカップをおく。
 自然と丸まりそうな背中を意地で伸ばす。
 下腹の広範囲に粘着な熱が広がって前と後ろが同時に疼く。
 毛穴から汗が噴き出し、頬に赤みがさす。
 努めて平静を装うも息は浅く乱れ、湧き起こり渦巻く快感を堪える声は不自然に掠れる。
 女子社員が机の端、書類の隙間にカップを置き、一礼して去っていく。
 ローターが窄まりの奥、前立腺に接し、もっとも敏感な場所を徹底していじめ抜く。

 今の、ヘンじゃなかったか。
 声、音、平気だったか?

 早く終わってくれ止まってくれ、もういい加減にしてくれ、こんなのもたねえ、ばれたらどうする……同僚がこっちをちらちら見てる。

 自意識過剰?
 被害妄想?

 電話に対応しながら茶を飲みながらコピーを使いながら俺の醜態を目の端で探ってる、ほんとはみんな知ってて知らねえふりしてんじゃねえか、みんなグルで……
 時間の経過がひどく緩慢に感じる。
 太股の筋肉が突っ張り痙攣する。背広の下、シャツが汗を吸ってぐっしょり湿る。  
 だめだ、おかしくなっちまう。頭が沸騰しそうだ。
 血管中に麻薬が拡散して思考が散漫で冗長になっていく。
 熱はもはや下半身全体に広がって、机の陰になったズボンの股間が勃起する。

 俺は、断じて、誓って、変態なんかじゃあない。
 後ろにローター突っ込まれて感じたりもしねえ。

 反発し抗う心と裏腹に一ヶ月かけて慣らされた体はずぶずぶと泥沼に沈んでいく。
 職場で、まわりには大勢の同僚や上司がいるのに、俺は……
 自尊心の痛み。
 プライドを踏みにじられる痛み。
 片腕で腹を庇い、椅子から浅く腰を浮かし、余裕をかなぐり捨て猛烈に叫ぶ。
 「千里、ちょっとこい!!」
 千里と話してた女子がびっくりしてこっちを見る。
 まわりの何人かも仕事の手をとめる。
 女子を適当にいなした千里が、鼻歌でも口ずさみかねないご機嫌な様子で赴く。
 「千里なにやったんだ?」「久住さんキレてるぜー」「こぶしではさんでぐりぐりの刑じゃねえか」……畜生、聞こえてるっつの。お仕置きされてんのは俺のほうだ。
 悔しさで目が曇る。千里がすぐ横にやってくる。
 「どうしたんですか」
 「どうしたんですかじゃねえ……もうとめろ……」
 「え?なにをです?」
 張り倒してえ。
 「……っ、お前最悪だ……性格ゆがみきってる……俺が女子と話してる時にわざと……茶あこぼして、火傷したらどうすんだよ。クリーニング代弁償しろよ」
 「負け惜しみしか言えないんですか?」
 周囲をはばかり声をひそめる。
 俺の耳に口を近付け、愉悦に酔って囁く。
 なにげないしぐさで椅子の背もたれに肘をかける。ぎっ、と椅子が軋む。
 そうしてさらに乗り出し、俺の肩越しにパソコン画面をのぞきこむ。
 あたかも仕事の相談をしてるふりで、パソコンについて教えるふりで。
 「違うもので汚す心配したほうがいいです」
 あからさまな嘲弄。
 憤死寸前、思わず殴りかかろうと手を振り上げるも、千里の冷ややかな目に怖じてぐっと拳を握りこむ。
 「………頼む、せめて小さく……弱く……音、聞こえる……」
 切れ切れに紡ぐ声は、殆ど吐息にかき消されていた。懇願というより喘鳴に近い。
 千里が背広のポケットに手を入れリモコンを操作、じれったいほどゆっくりと振動を弱める。
 両隣の机は今留守、同僚は席を外してる。
 オフィスは今一番忙しい時間帯で、よっぽど大声で話さない限り会話を聞かれる心配はないが、念を入れる。
 「はあっ………」
 ようやっと息を吹き返す。
 ローターは止まないが、背筋を伸ばせる程度には体調が回復。
 体の奥を無機物が嬲る。
 カプセル状の器具が粘膜を練り上げて、ドロリと濃厚な快感を生む。
 「だめじゃないですか、我慢できずにぼくを呼んだりして」
 首の後ろを吐息の湿り気がなでる。
 振り向かなくてもわかる。満足そうな声。千里は微笑んでる。
 「………仕事、ぜんぜん集中できねえ……いいだろう、もう……さんざん恥かかせて気がすんだろ、おしまいにしろ」
 「全然。序の口ですよ」
 「~ちゃんと仕事したいんだよ!」
 「どうぞご自由に。先輩が真面目なのはわかってますから、励んでください。腕を拘束されてるわけじゃないんだ、パソコンできるでしょ」
 千里の手が肩に触れる。びくりと身がすくむ。
 「すごい熱い……汗かいてる」
 「やめろ、人が見てる……」
 「ひとに見られて興奮してるんですか?」
 とんでもねーことを抜かす。
 ぎょっとする俺の肩を掴んでむりやり前へ向かせ、自分はその耳元でにやつく。
 「へえ、まんざらでもないんだ。ズボンの前もぎちぎちだし。ローター初体験のくせに、すっかりよくなってる」
 「よくねえよ」
 「嘘ばっか、後ろの穴ぐちゃぐちゃにかき混ぜられて気持ちいいくせに。もしばれたらどうします?みんな、こっち見てますよ」
 「やめろ……」
 「先輩の様子おかしいの気付いてるかなあ。気付いてる人もいるんじゃないかな?久住さん今日なんかへん、風邪かな、顔赤い……背中伸びてないし……久住さんいつもすごく姿勢いいから、そうやって背中丸めてるとすっごく目立ちます」
 千里の指摘に慌てて姿勢を正す。
 途端、また一段振動が強くなり、せっかく立て直した体が前に傾ぐ。
 「同僚にじろじろ見られて感じてる?恥ずかしいかっこ見られるのが好きなんですね。昼間っからローター後ろに突っ込まれて、椅子に座りっぱなしで、外っ面はあくまで涼しげに保って……自分じゃ上手くごまかしてるつもりかもしれないけど、ボロ出まくりですよ。初めてのローターのご感想は?僕の指とどっちがいいですか」
 「お前のパソコンにスパム大量に送り付けてやる」
 「隔離設定にしてるからむだです。……往生際悪いなあ」
 息がくすぐったく耳の裏をなでる。それだけで感じてしまう。
 騙せない。
 ごまかしきれない。
 千里の言うとおり、次第にボロが出はじめている。
 「……いいからはずせ、一日中こんな……頭がどうかなる……」   
 「トイレが近い人って噂立っていいんですか?それに……一度ならず二度もぼくとトイレにこもったら、さすがに怪しまれますよ」
 言い聞かせながら、またポケットに手を入れる。
 制す暇もなくスイッチを調整し、小刻みに振動を切り替える。
 「!あっ、あう、んっく」
 「前向いて。仕事してください。あ、ここ変換ミス。伸び率がノブ率になってる」
 「千里………」
 「だめだなあ、しっかりしなきゃ。あ、ここも。一行目の利益還元が甘言に」
 「千里!」
 切羽詰った声。
 今の俺は相当追い詰められた顔をしてるだろう。 
 千里が画面を指さしミスを指摘する。もう片方の手をさりげなく俺の肩に添え、微妙に指を動かす。
 千里に触られた場所がジンと熱を帯びる。
 朦朧とした頭で、千里に言われるがまま、のろのろとミスを直していく。
 ちょっと腕を動かすだけで下半身がずくんと疼く。
 体温調節が狂い発汗を促す。
 俺をこんな状態にした張本人にミスを指摘されるなんて。
 ぴたりと付き添って変換ミスの修正を促されるなんて、最大の屈辱だ。
 片手を俺の肩に添え、もう一方の手でマウスを導き、丁寧に教える。
 「ほら、スクロールして……最後の行、数字間違えてますよ?15パーセントじゃなくて25パーセント」
 「はなせ……ひとが見てる、べたべたすんな、とっとと席もどれよ」
 「先輩が呼んだんじゃないですか。ぼくが必要でしょう」
 にっこり、悪びれもせず。二人羽織りの要領で俺の手を操りつつ、椅子の横にぴたりと寄り添い、わざと俺の腿に体を触れさせる。
 びきびきと眉間が攣る。顔の筋肉が反乱をおこす。憤りと怒りと憎しみと悔しさと羞恥で頭が爆発しそうだ。
 千里のアドバイスは、悔しいが、非常に的確だった。実はコイツは仕事もできる。……って、俺が教えられてどうすんだ、後輩に。
 あんまり密着してると周囲に不審がられる。
 というのは思い過ごしで、実際そこまで気にされてない。他の連中は会議の準備で忙し……
 会議?
 さっと頭が冷える。
 慌てて時計を確かめる。午後一時五十分、二時から会議が始まる。
 「千里、これ抜け。しゃれになんねーぞ」
 声が険を孕み真剣になる。これ以上千里の悪ふざけに付き合ってらんねえ。
 「言いましたよね、ぼくがいいっていうまで出しちゃだめだって。一人でトイレも禁止。用足しは我慢してください」
 「-っ、お前頭煮えてんのか、知ってるだろ、あと十分で会議が始まるんだよ!こんなもんはめたまま出ろってのか、会議には他の部署の連中もくる、そこで恥かけってか、もしトチったら俺の出世が」
 「意外と野心家なんですね。安子さん寝とった男を見返したい?」
 「失恋の傷えぐんなよ!」
 「先輩の傷口に塩をすりこむのが趣味なもので」
 どす黒い殺意が湧く。こいつ絞め殺したい。
 誠意のない謝罪にはらわた煮えくり返り、射殺さんばかりの目つきで睨みつけるも効果は薄く、千里が言う。
 「大丈夫ですよ。会議、ぼくも出ますから」
 「……………は?」
 それがなにを意味するか理解するのに時間がかかる。
 「大事な会議ですよね。他部署の人もくる。今回のコンセプト説明、先輩の担当でしたっけ」
 「待て待て」
 「原稿、ちゃんと読めるといいですね」
 ほくそえむ千里の目には欲望のぎらつきがあった。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

リーマン×リーマン | コメント(-) | 20010419230859 | 編集
ブログ内検索
     © 2017 ロールシャッハテストB  Designed by 意地天
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。