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まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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トーキョー・プリズン(柳広司)



「なにがおかしい?」
いや、とゆっくり首を振ったキジマは、懸命に笑いをこらえる様子で逆にたずねた。
「絶対に外れない予言を知っているかい?」
黙っていると、彼はなおくつくつと笑いながら、私の眼をまっすぐに見つめてなぞなぞの答えを口にした。
「人は必ず死ぬということだ」
 
「騙されていたのは、嘘ではありません」キョウコが言った。
「おそらく彼らはーそして、わたしもー本当に騙されていたのでしょう。
 けれどそれは、真実を知りたくなかったからー騙されていたかったからー騙されただけなのです」


戦時中に消息を絶った知人の情報を得るため巣鴨プリズンを訪れた私立探偵のフェアフィールドは、調査の交換条件として、囚人・貴島悟の記憶を取り戻す任務を命じられる。
捕虜虐殺の容疑で拘留されている貴島は、恐ろしいほど頭脳明晰な男だが、戦争中の記憶は完全に消失していた。フェアフィールドは貴島の相棒役を務めながら、プリズン内で発生した不可解な服毒死事件の謎を追ってゆく。
戦争の暗部を抉る傑作長編ミステリー。

管理人の方なら一回か二回出来心で自分の作品名サイト名で検索してみることありますよね?
私も例に漏れず何回か試したことがあるんですが、東京プリズンで検索すると恐ろしい数でヒットするんで「え!?」と見返したら、どうやら巣鴨プリズンー通称東京プリズンーなる戦犯収容所が日本に実在したそうです。
「ジョーカー・ゲーム」で見事このミス二位を獲得し一躍脚光を浴びた柳広司の意欲作「トーキョー・プリズン」は、その東京プリズンで密室変死事件にニュージーランド人の私立探偵エディと戦犯キジマのコンビが挑むミステリー。
これはもー面白かった!!すごい面白かった!!もともと刑務所ものが好きでよく読むんですが戦後の、それも戦犯専用刑務所が舞台のミステリーは新境地。目新しい事実が色々発覚し勉強になりました。何よりキャラが立ってる!キジマが抜群にかっこいい!
脱獄の常習犯にして頭脳明晰、ニヒルな笑みが似合う日本人にしては整いすぎた容姿の持ち主。戦時中に捕虜を残忍に虐待した容疑で投獄され、「悪魔じみたサディスト」と唾棄されるも、五年間の記憶を失っている。
エディが房に入ってくるなりその出身地・経歴・考えてることを言い当てる洞察力観察力推理力、脱獄の為なら手段を選ばず錆びた釘を十数本とのみこむ強靭な精神力と人を食ったユーモアセンスをあわせもつ特異な人物造形に心を持ってかれます。
しかし一方で記憶喪失故現実と夢の区別がつかず苦悩し、記憶を失った五年間の自分が本当に悪魔のようなサディストだったのか自問し続ける。孤独と高潔と野卑が綯い交ぜとなったキジマに徐徐に関心を持ち始めるエディ、二人の距離の縮まり方がすごくいい……!
戦争問題を扱っていながら固くならず読めるエンターテイメントとしても完成度高いです。

何が悪で善なのか。
キジマは本当に捕虜を虐待したのか。

「捕虜を虐待するのが悪なら女子供の頭の上に爆弾を落とすのは悪じゃないのか?」
「戦時中だから人殺しは許される?そんなことはない、人殺しは許されるか許されないか二択だ」

重い命題。責任の不在。本当に責任をとるべき人間は誰か?
敗戦国の日本人が天皇を変わらず仰ぐ一方マッカーサーに熱狂的な声援を送る心理が鋭く解剖されていて唸らされました。

というかもう……どうにもならないとおもってたんだけど、どうにかなってほしかった……
キジマ……なんでこんないい男が………別れ際、エディに送ったウィンクとかもうね……

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