ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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ジェネラル・ルージュの凱旋(海堂尊)



「何でもかんでも論理、論理とわめきたてるのはやめにしてもらいたい。
俺を裁くことはだれにもできない。ただひとつの存在を除いて、な」
「それは何ですか?」
沼田がかろうじて口にした最後の言葉に対し、速水は昂然と答える。
「俺を裁くことができるのは、俺の目の前に横たわる、患者という現実だけだ」

「取材のヘリは飛ぶのに、ドクター・ヘリはどうして桜宮の空を飛ばないんだ」



大蔵省の派遣役人、異様に軽いフットワークとごきぶりの如く厚顔無恥な性格、論理の隙を突く詐術が得意の白鳥シリーズ三冊目。
白鳥シリーズ二作目にして賛否両論物議を醸した前作「ナイチンゲール」と同じ時系列で進みます。  
「ナイチンゲール」は奇跡の歌唱力に恵まれた小児科看護師・小夜を中心に進行する物語ですが、「ジェネラル・ルージュ」は小夜の親友・翔子、ナイチンゲールでも風聞だけは流れていた速水医師率いるオレンジ病棟の行く末を巡る医療ドキュメント。もちろんフィクションなのでエンターテイメントと呼ぶのが正しいんですが、ドキュメントといっても遜色ない充実の読み応えに仕上がってます。

嵐を呼ぶキーパーソンはオレンジ病棟に君臨する血まみれ将軍、速水。
愚痴外来の看板にして我らが万年講師・田口の大学の同窓で、財政破綻から沈みゆくと夕日と揶揄されるオレンジ病棟で孤軍奮闘辣腕をふるい、患者の搬送ヘリ導入の悲願を抱く医師。
なんといっても速水がかっこいい!
後輩医師をなれなれしく「佐藤ちゃーん」呼ばわりしたかと思ったら処置の手際に点数つける茶目っ気披露、いつもチュッパチャップスを咥えてる、自由奔放・唯我独尊キャラとおもいきや患者と相対するや一転凄まじい外科手術のスキルを発揮……
もう言うことなすこと全部かっこいい!抱いて!
そりゃ翔子や花房さん佐藤ちゃん(?)じゃなくても惚れるってなもんです。イイ男きわまれり。
多彩な脇役陣にもここぞ!という見せ場が用意され実に魅せてくれる。
「ナイチンゲール」の小夜が静なら翔子はその対極、考えるより先に手を動かし足で歩き回って逆境を打破する典型的な動のキャラ。自分が間違ってないと思ったら意地でも信念を変えない強気でまっすぐな看護師。
「ナイチンゲール」の翔子は不謹慎な言動にちょっと引いてたんですが(瑞人が眼球を摘出する事になったと知って「神様はなんて残酷な事をなさるんでしょうね……」と薄幸の美少年に萌えたり)「ジェネラル・ルージュ」を読むとそのパワフルでアグレッシブ、自分が間違ったと思ってなければ吊るし上げにあっても毅然とした態度を取り続ける姿が素敵で、めちゃくちゃ応援したくなる。
翔子の上司・花房師長も凛々しくてかっこいい。
花房師長のライバル猫田師長もとぼけた味だしてるし、速水のワンマンぶりに振り回される佐藤ちゃんの哀れっぷりがたまんない。そしてミス・ドミノ!白鳥の優秀な部下(?)氷姫が遂に本シリーズに殴りこみです。その戦々恐々の働きぶりにはこんな看護師には絶対担当されたくない……と全読者が身の危険を感じること請け合い。

「ジェネラル・ルージュ」は「ナイチンゲール」と同時進行・表裏一体の構成となっているので、ナイチンゲール既読だと「あの時こっちじゃこんなことがおこってたのか!」「この人こんなことしてたのか!」と目から鱗の発見が数々。
両作が両作を補完し面白さが相乗で二倍になる理想的な構成。
遊び心と職人の仕掛けが憎い!

「ナイチンゲール」は殺人事件が起きたりと一応推理小説の枠組みを借りてるのですが、「ジェネラル・ルージュ」はそういうけれん味をいっさい排し、現代医療の矛盾を追求する重厚な人間ドラマとなっています。難解な医学用語も出てくるのですが、しかし面白い!リーダビリティーの高さには毎度驚かされます。
医療の事なんてさっぱりわからん私でもすらすら読めちゃうのはやっぱキャラ立ちまくりの人物の魅力とテンポ良く練られた文体の効果でしょうか。
もーホントかっこいいんですよ、出てくるキャラ出てくるキャラ男女問わずアクが強くて一人として没個性な人物がいないのは凄い。 
中でも速水のかっこよさが際立ってますが(ジェネラル・ルージュの異名を冠するに至った口紅のエピソードとか反則……)翔子視点の田口の描写がなかなか新鮮で(笑)「優しい風貌に似合わず切れ者」「食えない人」「桜宮病院の策士」とか……一作目二作目と田口のトホホな一人称語りに慣れた読者は思わず笑っちゃいます。
白鳥も相変わらず白鳥で面白かった。
イヤミで陰険な沼田をやりこめるところはすっとしました!
エーアイ導入に反対するエシックス・コミティの理不尽な主張(「死体を寝かせた機械を使うのは患者が嫌がるんじゃないか」)を、盲点突いて百八十度ひっくり返すシーンの鮮やかさときたら……ロジカルモンスターの面目躍如、さすがです、脱帽です、痛快です。
エーアイについて説明しますと、突然死・変死した患者を解剖にふさず臓器などの異状をスキャンして調べる装置のこと。
本来、健康な人間が突然死・変死した際は死因を明らかにするため行政解剖が義務付けられているのですが、残念ながら全国的に見て正常に機能してないのが現状。
このへんは上野正彦さんの「死体は語る」で読んで知ってましたが、「ジェネラル・ルージュ」では遺族の反発を和らげなおかつ死因を解明できるエーアイという画期的な装置に焦点を当てています。
死体解剖は今だに遺族の抵抗根強く、拒否される事例が多い。
しかし解剖しなければ本当の死因が不明のまま闇に葬られる。
故人を悼む気持ちから拒否する遺族が大半を占めるのだが、中には突然死だと思われた女児が実は虐待死だったケースなど、犯罪の隠蔽が目的で抵抗する悪質なものも存在し問題となっている。
上のようなケースを一例でも減らすため、遺体に傷ひとつつけず検査できるエーアイ導入を推奨してるのが田口の同窓の島津なんですね。
詳しく知りたい方は上野正彦さんの一連の著作を読んでください、大変面白くて勉強になります。
行政解剖の第一人者たる作者がこれまで出会った奇妙な遺体の真実を解き明かしていくノンフィクションドキュメントで、世知辛い世の中で何かとおざなりにされがちな死者の権利や尊厳を見直すきっかけになります。

「ナイチンゲール」は小夜ちゃんの選択(ロマンチックだけど看護師が手をだしちゃいかんだろうと……)と超能力(あれは超能力の領域です)に若干腑に落ちないものがありましたが、「ジェネラル」の方はそういうモヤモヤする箇所があまりないので読後感爽快でした!
院内政治の確執など人間関係は相変わらずドロドロしてますが、速水を筆頭にした現場の医師たちの個性や舌鋒が強烈でクライマックスまで一気に読めます。
速水が彼女を選んだラストでは「よっしゃ!」とガッポーズ。
そうこなくっちゃな!幸せになってくださいお二人さん。

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