ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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ジョーカー・ゲーム(柳広司)



 写真を睨みつける本間の頭に、連想的に、いくつかの単語が浮かんだ。
 悪霊(デーモン)。
 悪魔(デヴィル)。
 危険(デンジャラス)。
 あるいは、暗闇(ダークネス)。
 いずれも頭文字はDだ。D機関とは、まさか……


 「貴様が何を信じていようがかまわん。キリストだろうがマホメットだろうがイワシの頭だろうが、勝手に信じるがいい。もし本当に自分の頭で考え抜いたすえに、それを信じているのならな」
 「何かにとらわれて生きることは容易だ。だが、それは自分の目で世界を見る責任を放棄することだ。自分自身であることを放棄することだ」



 引退した伝説のスパイ、結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。
 「スパイとは“見えない存在”であること」
 「殺人及び自死は最悪の選択肢」
 軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は猛反発を招くも、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」―結城中佐は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果をあげ陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。
 東京、横浜、上海、ロンドンで繰り広げられる最高にスタイリッシュなスパイ・ミステリー。

 全編通してのキーパーソンとなる結城中佐の不気味な存在感が圧倒的。
 味方の裏切りで窮地に陥り、過酷な拷問を受けてもなお敵の機密情報を奪取し生還した伝説のスパイにして、化け物じみた12人の精鋭を集めたD機関の創立者。
 拷問の痕を隠すため常に白手袋をはめ杖をつき片足をひきずって歩く中年男だが、「魔王」の異名は伊達じゃなく、そのカリスマ性は凄まじい。
 D機関選抜試験の内容も凄い。目的地に辿り着くまでに通り過ぎた階段の段数や窓の数の暗記に始まりサイパンを消した地図を見せて場所を問うなどは序の口、地図をのけた机の上においてあったものをすべて口頭でしゃべらせるなど「こんなの絶対突破できない!」という異様な内容。
 その試験を易々とこなしD機関入りを果たした若者はいずれも化け物ぞろい、この世のなにものも信じず囚われず肥大した自尊心だけを頼みに任務にいどむ。
 リーダビリティが非常に高く久しぶりにページをめくる手がとまらない興奮を覚えた。魔王結城中佐は言うに及ばず登場人物が個性的。生白い肌に赤い唇が艶かしい美形の三好などぞくぞくする。自白剤を飲まされてこれはもう絶対だめだ……!って危機一髪の局面があざやかにひっくりかえされる快感はやみつきになる。
 偽名で呼び合い経歴の一切を秘し、時に数十年も外国で別人になりきらねばならないスパイの過酷な任務を彼らにこなさせるのは、究極的には「自分にはこれくらいできる」「自分にはこれくらいできねばならない」という苛烈な自尊心のみ。
 結城中佐の目にかないD機関に集められたのは、異形の能力が突出した自尊心の化け物たち。
 愛とも憎しみとも無縁に冷徹な知略を駆使し、死と隣り合わせの危険を孕む任務さえ一種の「ゲーム」と割り切って、鼻歌口笛まじりに危局の盤面をひっくりかえしていく彼らの姿は強烈な毒をもって読者を魅せる。
 国の存亡に命を賭けるスパイを描いた小説が多い中で「ジョーカーゲーム」は異色。
 この小説に出てくる男たちは国家になんら信仰を持たない。
 敵や身内を出し抜き諜報戦に身を投じるも、国の利益のためというのは建前で、要するに彼らは作中何度も繰り返される「自分にはこれくらいできねばならない」という至上の命題に取り組み続けているのだ。
 信義も大儀もなく、なにものにも囚われず、己がどこまでできるか自分の人生さえルーレットに投げ込むサイコロの如く軽快に振って試し続ける彼らの姿はストイックというよりスタイリッシュ。
 収録作の中ではとくに「魔都」と「ロビンソン」が面白かった。
 前者は戦中の魔都・上海で起こったテロ事件の犯人をさぐる話、後者はスパイ容疑をかけられ英軍当局に連行された男の心理戦。
 結城中佐が表に出てこない話もありますが(むしろそれが大半)、誰が味方か敵かわからない疑心暗鬼の状況の中、錯綜した人間関係の裏で暗躍する「D機関」精鋭の存在感が、物語の緊迫を加速度的に高めていきます。 
 面白いスパイ小説を読みたい方、悪魔のように頭が切れるニヒリスティックな男が好きな方はぜひご一読を!

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