ロールシャッハテストB

まさみの18禁オリジナルBL小説ブログ。

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白の鳥と黒の鳥(いしいしんじ)



「おまえさん、むだじに、じゃないぞ」
「おれたち、いきていける。おまえさん、むだじに、じゃないぞ」
(「肉屋おうむ」)

「歌詞に限らず詩ってもんは、歴史からちぎれた言葉やろ。それだけで完結してるわけで、だから長年変わらんまんまなんや。こうやって歴史に浸すと、別のいのちが入るやろ。水中花みたいにな」
(「オールド・ブラック・フォスター」)


いしいしんじさんの短編集です。
なんか……いいんだよ……いいんだって………!
これじゃ説明になってないな……ああでもこの独特な読後感はちょっと言葉にしにくいです。
「なんでこんなの思いつくの!?」という奇想を贅沢にぶちこんだ聖俗清濁併せ呑む物語が収録されてるのですが、いしいしんじさんはファンタジー要素をまるっとぬいた現実の悲哀を描かせても上手い!と思い知りました。
滑稽味のある人物造形がその裏にひそむ哀しみを引き立てるというか……ひょうたん島さながら泣くのはいやだ笑っちゃお的な人の日常の一瞬が切り取られていて、胸が詰まる。
中年にさしかかったニューハーフの孤独な暮らしを描く「紫の化粧」、河原の彼岸と此岸に分かれてのホームレスのカラオケ合戦「薄い金髪のジェーン」など、もうね……こういう話も書けるのかと懐の広さに驚かされました。

人は本質的に汚いということ。
でもそれだけじゃないということ。

居場所を失って河原に流れてきたジェーンが呟く言葉、「俺、ず、ずっとこの着物着てるよ。そ、そうすりゃきっと、も、もっとちゃんと、み、みんな俺のこと好いてくれんだろよ」がたまらなく切ない。
「肉屋おうむ」の息子が死の床の父の耳元で囁く言葉、「カラタチとブルーベル」のおまじないに目から涙がこぼれた。
そんないい話があるかと思えば、「赤と青の双子」に出てくる奈津川家さながら異形の家族にぎょっとする。
跡継ぎの長男、父に疎まれる白痴の次男、赤男青男とぞんざいな名前を付けられた末の双子のみ溺愛する母、酒乱の父。家の呪縛から逃れられないと悟った長男の最後の言葉がひしひしとおそろしい……背筋が冷える短編です。「すげかえられた顔色」は世にも奇妙な物語で実写化されたらさぞ怖そうなシュールな一編。「紅葉狩り顛末」の大胆な奇想、老マタギ二人のかっこよさに痺れた……!「ボーリングピンが立つ場所」は傑作です。
全体の印象として古川日出男の「gift」に似た感触。短編は同一傾向なのかな……長編となるとまたイメージちがうけど。
古川日出男の「gift」も面白いです!
こちらは結構読む人選ぶみたいですが個人的に大当たり。
子供の世界を卒業する少女がマンション内を逃げ回るスリリングな一編(名前忘れた)と「光の速度で祈ってる」が特に大好き。

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